シンプル病理学改訂第8版
編集 | : 笹野公伸/岡田保典/安井弥 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-24934-3 |
発行年月 | : 2020年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 428 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
正誤表
-
2020年09月08日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
1990年の初版発行から、長い間版を重ねてきた病理学の教科書。エッセンスを体系立てて解説し、各医療系国家試験の出題基準に対応。今改訂では、新知見の追加・内容の更新と共に、重要疾患の肉眼・病理組織画像に画像加工やシェーマを追加し、初学者でもより効率的に学習が進められるよう工夫をはかった。
I.総論
第1章 病理学とは何か
1-1 われわれはなぜ病理学を学ぶ必要があるのか
1-2 疾患の概念の変遷と近代病理学の確立
1-3 疾患の病因と病理学
第2章 細胞傷害と細胞増殖
2-1 細胞の微細構造と機能
2-2 細胞増殖と進行性病変
2-3 細胞傷害と退行性病変
2-4 細胞死
2-5 遺伝子傷害とその修復
第3章 組織,細胞の修復と再生
3-1 再生
3-2 過剰再生
3-3 化生
3-4 創傷治癒
3-5 異物の処理
第4章 循環障害
4-1 局所的循環障害
4-2 全身的循環障害(全身性循環不全)
第5章 炎症
5-1 炎症とは何か
5-2 急性炎症−炎症の開始とその分子機構
5-3 炎症の全身への影響
5-4 持続する炎症(慢性炎症)
第6章 感染症
6-1 病原体の種類
6-2 定着と発症,常在菌と病原菌
6-3 感染の成立
6-4 感染の体内進展
6-5 病原体の標的細胞,標的臓器
6-6 感染症の経過
6-7 感染防止対策
6-8 感染防御機構
6-9 中和抗体と持続感染
6-10 日和見感染症
6-11 内因性感染症と外因性感染症
6-12 病原体ないし感染細胞の形態学的特徴
第7章 免疫機構の異常
7-1 免疫反応の守備範囲
7-2 免疫機構の構成要素
7-3 生体防御反応としての免疫反応
7-4 アレルギー反応とその種類
7-5 自己免疫疾患の機序
7-6 免疫不全症候群
第8章 遺伝と先天異常
8-1 先天異常の病因
8-2 遺伝病
8-3 染色体異常症
8-4 単一遺伝子病
8-5 遺伝子診断とその応用
8-6 遺伝カウンセリング
8-7 発症を予防できる遺伝性疾患とその対応策
第9章 腫瘍
9-1 腫瘍の概念と命名法
9-2 腫瘍の形態
9-3 腫瘍細胞の特徴
9-4 腫瘍の組織学的分類
9-5 腫瘍の発生・増殖と発育パターン
9-6 悪性腫瘍の進展と転移
9-7 腫瘍の良性と悪性の鑑別
9-8 腫瘍の分化度
9-9 機能性腫瘍
9-10 腫瘍マーカーと組織マーカー
9-11 腫瘍のクローン発生と癌幹細胞
9-12 腫瘍発生の要因
9-13 腫瘍の発生と遺伝子
9-14 腫瘍と宿主の関係
9-15 癌の病期
9-16 多発癌と重複癌
9-17 癌の病理診断(組織診と細胞診)
9-18 癌の分子病理診断
9-19 腫瘍の組織学的分類−実例
9-20 腫瘍の疫学
第10章 代謝異常
10-1 糖尿病
10-2 その他の糖質代謝異常症(糖原病,遺伝性ムコ多糖症)
10-3 脂質代謝異常症(脂肪肝,粥状硬化症,高脂血症)
10-4 タンパク質代謝異常症(尿毒症,アンモニア血症,アミロイドーシス)
10-5 黄疸
10-6 痛風
10-7 肥満
10-8 生活習慣病
10-9 骨代謝異常
10-10 ミネラル欠乏症
10-11 ビタミン欠乏症
第11章 老化
11-1 老化とは
11-2 老化のメカニズム
11-3 老化による微細構造・物質の変化
11-4 老化による細胞・臓器の変化
11-5 個体の変化
11-6 老化と疾患との関連
II.各論
第12章 循環器
12-1 心臓
12-2 血管
第13章 呼吸器
13-1 上気道(鼻,咽頭)
13-2 下気道(気管,気管支,肺)
13-3 胸膜
13-4 縦隔(胸腺を除く)
第14章 口腔・唾液腺
14-1 奇形(発育異常)
14-2 炎症
14-3 皮膚粘膜疾患
14-4 白板症
14-5 嚢胞
14-6 腫瘍
第15章 消化器
A.上部消化管
15-1 消化管の構造と機能
15-2 食道の病気
15-3 胃の病気
B.下部消化管
15-4 腸の病気
C.肝臓,胆道,膵臓
15-5 肝臓の病気
15-6 胆道の病気
15-7 膵臓の病理
D.腹膜
15-8 腹膜の病気
第16章 内分泌系
16-1 内分泌疾患を知るための予備知識
16-2 視床下部と下垂体
16-3 甲状腺
16-4 副甲状腺
16-5 副腎
16-6 膵臓ランゲルハンス島
16-7 遺伝的に発症する内分泌腺の疾患
第17章 血液および造血器系
17-1 骨髄
17-2 リンパ節
17-3 脾臓
17-4 胸腺
第18章 泌尿器系
18-1 腎臓の構造と機能
18-2 腎臓の病気の特徴と考え方
18-3 代表的な原発性糸球体疾患(糸球体腎炎および関連病変)
18-4 全身性疾患の一部としてみられる続発性糸球体腎炎,腎疾患
18-5 遺伝性腎疾患
18-6 腎腫瘍
18-7 尿路腫瘍(腎盂尿管癌と膀胱癌)
18-8 尿路結石
18-9 尿路の炎症性疾患
第19章 生殖器
A.女性生殖器,乳腺
19-1 外陰部の病気
19-2 腟の病気
19-3 子宮頸部の病気
19-4 子宮体部の病気
19-5 妊娠に関連した病気と絨毛性腫瘍
19-6 卵巣・卵管の病気
19-7 乳腺の病気
B.男性生殖器
19-8 男性生殖器の構造と機能
19-9 精巣(睾丸)と精巣上体(副睾丸)の病気
19-10 前立腺の病気
第20章 感覚器
20-1 眼
20-2 耳・平衡器
第21章運動器
21-1 骨・軟骨の構造と機能
21-2 骨・軟骨の病気
21-3 関節の構造と機能
21-4 関節の病気
21-5 筋・末梢神経の構造と機能
21-6 筋,腱,末梢神経の病気
第22章 皮膚
22-1 皮膚疾患を知るための予備知識
22-2 反応性皮膚疾患
22-3 膠原病
22-4 角化症
22-5 水疱症,膿疱症
22-6 光線・温熱皮膚障害,薬疹,色素異常症
22-7 皮膚付属器疾患,代謝異常症
22-8 肉芽腫性疾患
22-9 感染症
22-10 皮膚腫瘍
第23章 小児病理
23-1 肺
23-2 肝臓
23-3 消化器
23-4 小児腫瘍
第24章 脳・神経系
24-1 中枢神経系
24-2 脊髄
24-3 末梢神経系
第25章 病理組織細胞診断
25-1 病理組織細胞診断と現在医療における意義
25-2 病理組織細胞診断/検査および病理解剖の実際
付1.病理組織診断,細胞診診断に用いられる主な染色法の解説
付2.主要略語
索引
改訂第8版の序
ヒトの疾患の本質的な理解には、「どのようにして疾患が生じ、なぜ個体に種々の悪い影響が出現するのか」という観点から学習することが重要である。すなわち、疼痛、発熱、下痢などの症状・徴候をいかに詳細に観察しようとも、科学的な所見に基づいてこれらの症状の原因となっている病因・機序を理解していなければ、患者の的確な診断/治療を行うことは不可能である。病気の原因や疾患の進展機序の理解に基づく臨床症状の解釈とそれへの対応には病理学の知識は必須であり、病理学は医学分野の必須科目と位置付けられている。一方、近年の臨床医学の進歩は目覚ましく、ヒト疾患の様相も非常に複雑になってきた。これに伴い病理学が取り扱う領域も幅広くかつ複雑化し、ともすれば学生にとって取っ付きにくい学問体系の1つになっていることが懸念される。このようなことから病理学の教育に従事する者には、いかにして昨今の学生に分かりやすく病理学を教授するかが強く求められている。
本書は1990年に初版が発行され、医療技術系の学生を対象とした病理学の教科書の中では最も多くの学生に読まれてきた。2004年の改訂第4版では、全国レベルで編者・執筆者に専門領域の適任者を選び、内容的にも大幅な改訂を行って、多くの教育施設で指定教科書として採用されてきた。改訂第5版と改訂第6版では、看護師、管理栄養士、臨床検査技師、柔道整復師、理学療法士、作業療法士の国家試験出題基準をほぼ完全に網羅するように全面的な改訂が行われ、本書1冊で各領域の国家試験受験に向けた最低限の知識が得られるように内容が整えられた。医療技術系の養成課程では、病理学の年間講義数が限られていることから、学生・教官のニーズに沿った教科書の編纂を目指して、病理学の教官並びに学生に対するアンケート調査を行った。改訂第6版では可能な限りそれらの意見を取り入れて、コンパクトかつミニマムな項目を漏れのないようにカバーし、種々の病理組織所見・肉眼画像をオールカラーで示し、しかも値段を据え置いたことで、教官・学生双方にとって非常に使い勝手の良い病理学の教科書を実現した。さらに、改訂第7版では、再生医療などの医学の最新内容をアップデートし、かつより読みやすいように文章表現を改訂した。
病理学は肉眼/顕微鏡レベルの数多くの画像を学習する学問領域であり、画像所見の理解が肝要である。しかし、多くの学生にとっては画像所見を文章による説明だけで正確に理解することは容易ではない。そこで、改訂第8版では、学生にとって重要な画像に関しては、画像加工の追加やシェーマ化をはかり、より効率的に理解できるようにした。本書はヒト疾患の理解を深めるために非常に良い教科書となっており、医学部・歯学部の学生にとっても病理学の入門書として優れており、いわゆる病理学アレルギーをなくす意味でも適している。これまでの何回かの改訂を経て、本書の読者対象は広がってきているが、改訂第8版においては、どのような養成課程においても、「病理学入門書として最適な教科書」という位置付けがよりいっそう確固としたものになったと自負している。
2020年6月
笹野公伸
岡田保典
安井弥