新版 心疾患の診断と手術
編集 | : 新浪博士 |
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ISBN | : 978-4-524-24918-3 |
発行年月 | : 2024年11月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 336 |
在庫
定価16,500円(本体15,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
1974年の初版より改訂を重ねてきた名著を継承し,東京女子医科大学心臓血管外科の総力をあげて全面的に刷新.小児(先天性)・成人心疾患および各部位の主要な疾患が網羅され,低侵襲心臓手術や体外循環法を含む心臓血管外科領域の全容を解説している.実践に裏打ちされた診療指針を学ぶ教科書として,心臓血管外科を志す若手外科医に最適の一冊.
日本の心臓血管外科の歩み
第1章 体外循環法
第2章 人工弁
第3章 大動脈弁疾患
1.解剖・疫学
2.大動脈弁狭窄症
3.大動脈弁閉鎖不全症
4.大動脈弁輪拡張症
5.感染性心内膜炎に起因する弁膜症
6.閉塞性肥大型心筋症
第4章 僧帽弁疾患
1.僧帽弁狭窄症
2.僧帽弁閉鎖不全症
3.心房細動に対する外科治療
第5章 三尖弁疾患
1.三尖弁閉鎖不全症
第6章 虚血性心疾患
1.冠動脈外科の歴史
2.冠動脈造影法
3.冠動脈バイパス術の手術適応
4.急性冠症候群に対する補助循環装置の使用と手術適応
5.冠動脈バイパス術の手術手技
6.グラフトデザイン
7.心筋梗塞後機械的合併症に対する手術
第7章 大動脈疾患
1.大動脈疾患に対する外科治療
2.腹部大動脈瘤
3.胸部大動脈瘤
4.大動脈解離
5.大動脈瘤に対するステントグラフト治療
6.解離性大動脈瘤に対するステントグラフト治療
第8章 先天性疾患および複合心奇形
1.動脈管開存
2.大動脈縮窄
3.大動脈弓離断
4.左冠動脈肺動脈起始
5.部分肺静脈還流異常
6.総肺静脈還流異常
7.心房中隔欠損
8.心室中隔欠損
9.房室中隔欠損
10.Fallot四徴
11.完全大血管転位
12.修正大血管転位
13.心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖
14.両大血管右室起始
15.総動脈幹(遺残)
16.純型肺動脈閉鎖
17.Ebstein病
18.単心室
19.三尖弁閉鎖
20.左心低形成症候群
第9章 成人先天性心疾患
1.外科治療の概要と再手術時の検討事項
2.Fallot四徴手術後の肺動脈弁置換術
3.APC-Fontan術後に対するTCPC conversion
第10章 低侵襲心臓外科
1.経カテーテル大動脈弁置換術
2.minimally invasive direct coronary artery bypass(MIDCAB)
3.minimally invasive cardiac surgery(MICS)
第11章 重症心不全
1.重症心不全に対する人工心臓治療
2.心臓移植
第12章 心臓腫瘍・その他
1.心臓腫瘍
2.収縮性心膜炎
3.心膜欠損症
東京女子医科大学心臓血管外科の歴史は,昭和26年5月に本邦心臓手術第一例目となる動脈管開存症手術の成功に端を発す.初代教授の榊原仟先生は昭和24年7月に東京女子医科大学に赴任され,戦後の物のない時代,試験管数本しかない教室でわずか2年後にこうした偉業を成し遂げられたと聞く.私は平成29年8月にこの日本最古の心臓血管外科教室で第七代目の主任教授を拝命し,今日まで本領域すべての治療に広く深く携わってきた.
榊原先生も使ったであろうこの古めかしい教授室に多少は慣れてきた平成29年の年の瀬,南江堂から『心疾患の診断と手術』を内容刷新して新版として世に出してほしい,と執筆の依頼があった.日本の心臓血管外科医であれば誰もが手にしたであろう,最も標準的な心臓血管外科学の教科書.初版は昭和49 年.著者は新井達太先生.多大な業績を残された東京慈恵会医科大学心臓外科の名誉教授で,言わずと知れた本学の大先輩である.若輩の私がこの名著を刷新とは何とも畏れ多いこと,身の縮まるような緊張感と共に,伝統ある教室の講座主任としての責任,去来する複雑な感情に翻弄されつつ悩んだ初春の日に,新井先生ご自身から「ぜひ新浪君に頼みたい」とのご連絡をいただいた.「やらせていただきます」とお返事してから早6年余,ようやく新井先生との約束を果たすに至った.医学の進歩は著しく新しい情報が多くなったため,本書は改訂ではなく全編を執筆しなおす新版となった.しかしながら,新井先生が一字一句に魂を込めて書かれたその文体はできる限り残すようにした.令和4年9月,新井達太先生はこの新版を見届けることなく旅立たれてしまい,本書を先生の手に取っていただくことは叶わなかった.これは私をはじめ執筆関係者にとってまさに痛恨の極みであった.
新井先生の書かれた旧版には榊原先生の序言が付されている.そこには「この書は多忙な臨床医が臨床の間に一寸みて,診療の参考にすることもできるし,また時間をかけて熟読し,図や写真をよくみて心臓外科の本質を知ることもできるようになっている.座右に置かれれば益するところが多いと信ずるのである」とある.
私をはじめほとんどの同僚が,この旧版を座右に置いて多くを学んだ.同書の目的はまさにそれである.新版もこのコンセプトを変えず,医学生,研修医,そして専門医試験に臨む若き心臓血管外科医に向け,小児の複雑心奇形から冠動脈,弁膜症,大血管,心臓移植,カテーテル人工弁と有らん限りのメッセージを詰め込んだつもりである.
医学,特に循環器の領域は矢の如き速度で進歩する.ガイドラインも短時間で改訂されてしまう.情報が溢れるこの時代に普遍的な紙の教科書に意味はあるのか? と疑問を呈する向きもあろう.しかし手に取っていただければわかる.この教科書は日本最古の心臓血管外科教室が送り出す重厚で広大な経験と知識の集大成である.ノートパソコンと共にいつも持ち歩き,通勤電車の車内で,コーヒーショップのカウンターで,家のソファで,病院の当直室で,まさに座右に置いてボロボロになるまで読み込んでもらいたい.必ずや糧となるものを得よう.
本書が若き心臓血管外科医の気持ちを奮い立たせ,ひいては我が国の心臓血管外科学の発展につながることを願って.
令和6 年(2024年) 秋
新浪博士