むかしの頭で診ていませんか?神経診療をスッキリまとめました
編集 | : 宮嶋裕明 |
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ISBN | : 978-4-524-24891-9 |
発行年月 | : 2019年6月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 234 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
大好評「むかしの頭で診ていませんか?」シリーズ第5弾「神経診療」版。「専門」ではないけれども「診る機会」がある“めまい”、“しびれ”、“ふらつき”といった症候はもちろんのこと、睡眠障害や認知症、パーキンソン病などの一般臨床医が遭遇する可能性が高い病態・疾患について要点をギュッと凝縮。「そもそも、どう考えるの?」「具体的にどうするの?」「なぜ考え方が変わったのか」など、押さえておきたい知識・情報をスッキリ整理。全科医師におすすめの一冊。
1 それは緊急です[救急神経疾患]
2 けいれん出たら神経内科[てんかん]
3 ギラン・バレーかも[ギラン・バレー症候群]
4 めまいはまず耳鼻科[めまい]
5 頭痛−高いクスリを処方してよい?[片頭痛]
6 まぶたが下がれば神経内科[重症筋無力症]
7 止まらないしゃっくり[視神経脊髄炎]
8 なぜ,食べ物が気管に入ってしまうのか?[嚥下障害]
9 広がる手足,舌の痩せ[筋萎縮性側索硬化症]
10 ALSとどこが違う?[頸椎症]
11 不器用になる筋疾患[筋強直性ジストロフィー]
12 麻痺がないのに動けない[パーキンソン病]
13 いつもふらつく[小脳失調症]
14 そのしびれ,上か下か?[末梢神経障害]
15 自律神経失調症とは何だ?[自律神経障害]
16 鼻と眠りからパーキンソン[パーキンソン病]
17 とりあえずL-ドパ製剤だけど[パーキンソン病]
18 脳深部刺激療法でよくなる人,効かない人[パーキンソン病]
19 線は引きにくい−どこから認知症?[認知症]
20 アルツハイマー病患者はがんにならない,は本当?[アルツハイマー病]
21 睡眠薬で認知症になるか?[睡眠障害]
22 パーキンソン病は認知症にならないと言われたのに!?[レビー小体型認知症]
23 高齢者では認知症と間違われることがある[てんかん]
24 rt-PA静注療法のこれから[急性期脳梗塞]
25 いまどきの血管内治療[急性期脳梗塞]
26 ワルファリンかDOACか?[非弁膜性心房細動による脳梗塞]
27 アスピリン?2剤併用?[非心原性脳梗塞]
28 再発予防だけでは不十分[多発性硬化症]
29 非ヘルペス性辺縁系脳炎ってナニ?[髄膜炎・脳炎]
30 下手になるプロ!?[職業性ジストニア]
31 高齢者の手根管症候群[全身性アミロイドーシス]
32 アル中の意識障害に出会ったら?[アルコール関連性神経疾患]
索引
序文
今でも内科医の集まりに行くと“神経疾患は、難しい、治らない、覚えられない”と言われます。しかし、近年の神経科学の進歩は著しく、分子レベルの病態解明から新たな治療法開発までめざましいものがあります。にもかかわらず、やはり神経疾患は食わず嫌いの対象です。そんな時、この好評シリーズ「むかしの頭で診ていませんか?」のお話をいただきました。
神経系が専門ではない医師が日常診療で遭遇する可能性の高い疾患・病態に絞って、「必要な情報」を「簡単な言葉」でスッキリまとめて提示するというコンセプトに共感しました。そこで、日頃の臨床で疑問に思っていること、専攻医とのカンファレンスでの話題からテーマを選びました。
ところで、科学のひとつである医学では、診療において患者さんをよく「観察」しなさい、と昔からよく言われています。なかでも神経の診療では、患者さんの症状・徴候を十二分に観察することから始まります。そうして、愚直に細部を一つひとつ詳細に丹念に観察し、おぼろげながらでも疾患の尻尾を掴まえられたらしめたものです。一方、細部を一つひとつクッキリと押さえるのではなく、大雑把ではあっても一次近似を粗くとって観察し、全体像を掴むというのもあります。言い換えれば、観察することの本態とは「何かを見ること」ではなく、「何を見たらよいか気づくこと」です。この「神経診療をスッキリまとめました」では、この気づきのポイントが随所にちりばめられています。日常診療でのコツから最新のトピックまで、神経疾患が苦手な人から神経専門医まで十分楽しんで読むことができる内容です。
最後に、37年前に田舎の病院で初期研修をたまたまご一緒した縁で、このシリーズへお誘いくださった村川裕二先生に厚く御礼申し上げます。そして、ご執筆くださいました専門医の皆様、興味を抱きこの本を手に取ってくださったあなたに深謝致します。
2019年4月
宮嶋裕明
このたび、私の敬愛する宮嶋裕明先生がユニークな本を出版されることになった。第一線の病院で診療している脳神経内科医のみならず、内科や外科を問わず診療全般に携わる医師、さらには医療従事者が読んでも参考になる、独特の視点から脳神経内科関連の疾患をわかりやすく解説した本である。宮嶋先生と話していると、独特の角度から物事を考えられていて、話の視点がおもしろく、しばし時を忘れる。一言でいうと、読んでいるときっとそんな思いに浸る本になるのであろう。だから私がエッセー集を出したとき、書評をまっ先にお願いしたのは宮嶋先生であった。
40年以上前、私が熊本大学医学部の学生だったころ、神経疾患といえば難しいうえ、よくわからない疾患として祭り上げられ、学生や一般内科の先生方に敬遠されていた感がある。おとなりの県の鹿児島大学医学部にいた友達が、「俺の大学の第三内科は神経内科の診療・研究が主体だが、「解らない、治らない、諦めない」疾患を扱っているから学生は“三無い科”だといっている」というのを聞いて、「たしかに!」と思ったのを覚えている。しかし21世紀となり、さまざまな神経疾患のバイオマーカーが明らかにされ、かなりの疾患で容易に診断がつくようになった。完治にまではいたらなくても有効な疾患修飾療法(disease modifying therapy:DMT)が登場してきて、患者に希望の光を与えるようになってきた。まさに“The sooner,the better”、何らかの症状や訴えを糸口にして早く診断すれば、治療に導くことができる時代になってきた。しかし、その診断には本書の各項目に掲げられているような、われわれが時としてスルーしてしまいそうなキーワードや視点が必要である。
一方で医学の進歩は単に直線的に右肩上がりではなく、われわれの想像をはるかに超えるスピードで指数関数的に情報量が増えていっている。脳神経内科は疾患数もやたらに多く、common diseaseから稀少難病まで奥が深く幅が広い。これを理解し、実臨床に生かすためには優れた海図と羅針盤がなければ、明後日の方向の無人島に着いてしまったり、難破しかねない。私のように、医師になりはるか数十年の時が流れると神経疾患以外はもちろん、そして神経疾患においてさえ、専門外の疾患はどうしても先入観で診てしまい、立ち往生することがある。「むかしの頭で診ていませんか?」と問われると、“Yes”と答えざるを得ない。私のような人間にこそ、重要な情報を簡単な言葉でスッキリまとめられたこのような本は必要である。
本書の題も、どの本にもない趣向を凝らした宮嶋先生らしいもので、書店でみるとすぐ買ってしまいそうなものだし、何より執筆者の方々はいずれも実臨床を大事にするその領域のスペシャリストばかりである。
宮嶋先生は脳神経内科の専門医であるが、消化器内科、腎臓内科も共存する内科学第一講座の長であり、内科全般にも幅広い知識を有する先生である。その先生が監修するのだから、この本はきっとブームになる!!!
臨床雑誌内科124巻5号(2019年11月号)より転載
評者●長崎国際大学 学長/同薬学部アミロイドーシス病態解析学分野 教授/熊本大学 名誉教授 安東由喜雄