みんなの眼科検査メモ
編集 | : 千原悦夫/辻川明孝/谷戸正樹 |
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ISBN | : 978-4-524-24883-4 |
発行年月 | : 2020年8月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 296 |
在庫
定価4,400円(本体4,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
眼科検査のコツ・注意点、検査値の意味と正常値の瞥見など、臨床現場で求められる「要点」をまとめたポケットサイズの必携書。最新検査機器の仕様のポイントから、熟練医が教える検査の手順やコツなどを網羅した。ロービジョンエイドも章として盛り込むほか、眼科分野の最新トピックは「ワンポイント」として充実し、初学者から熟練者まで使い勝手のよい一冊。
1.検査にあたって(丁寧・迅速・正確を目指して)
A.検査の心がまえ,問診の技術
1)検査の心がまえ
2)問診
3)親近感と事故・セクハラ
B.検査の説明,同意,検査結果の伝え方
1)インフォームド・コンセント(説明と同意)
2)研究におけるインフォームド・コンセント
3)検査結果の伝え方
2.視力と屈折検査
I.屈折検査
A.近視,遠視,乱視
B.調節麻痺薬
C.自覚的屈折検査
1)レンズ交換法
D.赤緑試験
E.他覚的屈折検査
1)オートレフラクトメーター
2)検影法
3)スポットビジョンスクリーナー
4)波面収差解析
II.視力検査
1)視力の定義
2)測定条件
3)測定距離
4)測定環境
A.視力の表記法と種類
1)少数視力
2)分数視力
3)log MAR
4)ETDRS文字数視力
5)コントラスト感度,グレア検査
6)近見視力
7)小児,障害者の視力測定
3.調節と輻湊の検査
I.調節検査
A.近点測定
B.調節機能解析装置(AA-2,アコモレフ2)
II.輻湊検査
A.輻湊近点検査
B.AC/A比の検査
4.眼鏡処方
A.眼鏡の構造
B.眼鏡レンズの素材とその特徴
1)眼鏡レンズの性能を示す3要素−屈折率,比重,アッベ数
2)眼鏡レンズの種類
3)眼鏡レンズのコーティング
C.眼鏡の処方・調整・フィッティングのポイント
D.累進屈折力レンズ,二重焦点レンズ,小児の眼鏡
1)構造と特徴
2)小児の眼鏡
E.レンズメーターの測定と注意点
1)レンズメーターの目的と種類
2)望遠鏡式の測定法
F.特殊眼鏡(保護用眼鏡)
1)遮光眼鏡
2)プリズムレンズ−Fresnel膜の利点と欠点
3)サングラス
4)眼保護具
G.眼鏡処方におけるチェックポイント
5.角膜・前房の検査
A.角膜屈折力
B.角膜内皮
C.角膜厚
D.角膜形状解析
E.屈折矯正手術の際の角膜検査
1)細隙灯顕微鏡検査
2)角膜厚
3)角膜トポグラフィー
4)角膜トモグラフィー
5)角膜波面収差検査
6)角膜内皮細胞,前房検査
F.涙液層の検査,涙の検査,角膜知覚検査
1)涙液分泌量の評価
2)涙液貯留量の評価
3)涙液層破壊時間(BUT)の測定
4)涙液スペキュラー検査
5)角膜知覚検査
G.マイボグラフィー
H.レーザーフレアセルメーター
I.前房・隅角の検査
6.白内障の検査
A.眼軸長測定(光学式,超音波A モード)
1)眼軸長測定の原理
2)眼軸長測定の実際と注意事項
B.IOL度数の算出
1)希望屈折と目標屈折値(予測値)
2)計算式
3)注意点
C.特殊なIOL,トーリックIOL,多焦点IOLの度数決定
1)毛様溝(嚢外)固定の場合
2)トーリックIOL
3)多焦点IOL
D.レーシック既往眼におけるIOL度数計算
E.ICLの検査
7.コンタクトレンズにおける検査
A.コンタクトレンズ検査の流れ,チェックすべき項目
B.コンタクトレンズの材質・形状とその特徴
C.ソフトコンタクトレンズのフィッティングと理論
1)単焦点レンズ,カラーコンタクトレンズ
2)遠近両用コンタクトレンズ
3)トーリックレンズ
D.ハードコンタクトレンズのフィッティングと理論
E.オルソケラトロジーレンズ
F.コンタクトレンズのケア
G.コンタクトレンズによる障害
1)摩擦関連の障害
2)アレルギー関連の障害
3)コンタクトレンズ関連角膜感染症
H.特殊なコンタクトレンズ
1)虹彩付きソフトコンタクトレンズ
2)カラーコンタクトレンズ
8.視野検査
A.視野の意味するもの
B.標準的な視野測定
1)動的視野測定の実際
2)自動視野計による静的視野測定
3)身体障害認定基準と視野
C.特殊な視野計
1)フリッカー視野計
2)ヘッドマウント型視野計
D.簡易視野
1)ノイズフィールド
2)クロックチャート(CLOCK CHART)
3)アムスラーチャート(Amslar charts)
4)M-CHARTS
E.中心フリッカー
9.眼圧の測定
A.Goldmann圧平眼圧測定の原理
B.眼圧に影響を与える因子
C.Goldmann圧平眼圧測定の実際
D.その他の眼圧計
1)非接触眼圧計(ノンコンタクト・トノメーター)
2)反跳式眼圧計
3)トノペン(Tono-Pen XL,Tono-Pen AVIA)
4)ライカートORA
5)DCT
6)SchiÖtz眼圧計(圧入型)
E.トノグラフィー
10.色覚検査
A.先天色覚異常の分類・特徴と生活指導
1)先天色覚異常の分類
2)遺伝形式
3)先天色覚異常の色誤認
4)社会生活上の問題点
5)カウンセリングの実際
B.後天色覚異常の特徴と原因
1)後天色覚異常の特徴
2)後天色覚異常の原因
C.色覚検査
1)仮性同色表
2)色相配列検査
3)アノマロスコープ
4)色覚検査の流れ
11.光覚・瞳孔検査
A.Kohlrausch屈曲点とその意味
B.Haab瞳孔計,電子瞳孔計など
12.眼位・斜視・弱視検査
I.共同性斜視
A.眼位の異常と斜視
1)斜位と斜視
2)共同性,非共同性斜視の鑑別
3)第1,第2,第3眼位について
B.定性的眼位検査
1)角膜反射法(Hirschberg試験)
2)遮閉試験,遮閉-遮閉除去試験,交代遮閉試験
C.定量的眼位検査
1)優位眼(固視眼)検査
2)Hirschberg試験
3)Krimsky試験
4)プリズム遮閉試験
5)大型弱視鏡検査
D.斜視手術量の決定方法
1)手術眼・手術筋の決定
2)矯正する斜視角ターゲットの決定
3)手術量の決定
II.特殊な斜視
A.開散と輻湊の異常
1)開散や輻湊の異常に関連する疾患
2)AC/A比
B.回旋斜視
1)回旋斜視を呈する主な疾患
2)回旋偏位の検査法
C.特殊な病態の斜視
1)A型,V型斜視
2)交代性上斜位(DVD)
3)Duane症候群
4)Brown症候群
5)固定内斜視
6)機械的斜視
7)その他のまれな疾患
III.麻痺性斜視の検査
A.麻痺性斜視とひき運動,むき運動
1)外眼筋の神経支配と作用
2)ひき運動の正常範囲
3)上下筋の上下転・回旋作用が最大となる視方向
4)むき運動の定性的評価と定量的評価
B.Hess赤緑試験の検査方法と読み方
1)検査方法
2)検査結果の判定
C.斜筋の異常とParks 3-step法
IV.両眼視機能検査
A.両眼視機能検査とは
B.日常視下眼位での検査
C.両眼分離視下眼位での検査
1)大型弱視鏡
V.弱視検査
A.小児の視力の発達
B.視覚感受性期と弱視の要因
C.弱視の分類
D.弱視検査法
1)固視検査
2)屈折検査
E.弱視治療
1)完全遮閉
2)不完全遮閉
3)遮閉法の副作用
13.眼科医が読むCT/MRIの要点
1)CT検査
2)MRI検査
3)CT・MRI共通の注意事項
14.外眼部検査
A.眼球突出度
B.眼瞼の検査
15.前眼部・眼底撮影
I.前眼部撮影
A.フォトスリットによる撮影
1)拡散照明法,広汎照明法(ディフューザーを使用)
2)直接照明法
3)間接照明法
4)反帰光線照明法(徹照法)
5)強膜散乱法
6)生体染色法(フィルターを使用した撮影法)
B.血管造影撮影
II.眼底撮影(画像解析)
A.散瞳型眼底カメラ,無散瞳型眼底カメラ
1)撮影前の準備
2)作動距離,アラインメント,ピント
3)撮影時の開瞼と固視誘導
B.蛍光眼底造影法
1)フルオレセイン蛍光眼底造影
2)インドシアニングリーン蛍光眼底造影
C.眼底自発蛍光
D.走査型広角眼底撮影装置
E.OCTによる網膜硝子体検査
1)OCTの進歩
2)正常断層像
3)アーチファクト
F.OCTによる緑内障検査
1)乳頭画像解析検査
2)黄斑画像解析検査
G.OCTによる脈絡膜検査,黄斑疾患検査,PCVの検出
1)Enhanced depth imaging(EDI)
2)高深達OCT
H.OCT angiography(OCTA)
1)OCTAの原理と特徴
2)OCTAの画像解析
3)プロジェクションアーチファクト
16.超音波検査,血流測定
I.超音波検査
A.Bモード
1)直接法
2)水浸法
3)ティッシュハーモニックイメージング(THI)法
B.超音波生体顕微鏡(UBM)検査
C.超音波カラードプラ法
II.血流測定
A.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)
17.電気生理検査
A.網膜電図(ERG)
1)ERG検査の目的,対象
2)ERG検査法の実際
3)特殊な条件下でのERG検査
4)ERGの正常所見
5)ERGの実際の波形
6)ERGの計測法
7)ERG異常所見とその読み方
8)PhNR
9)多局所網膜電図(multifocal ERG,VERIS)
10)黄斑局所網膜電図
11)皮膚電極網膜電図
B.視覚誘発電位(VEP)
1)VEP検査の目的
2)VEP記録の実際
3)VEPの正常と異常
C.眼球電図(EOG)
1)EOG検査の目的
2)EOG検査の実際
3)EOGの正常と異常
4)眼球運動記録時の実際
D.筋電図(EMG)
18.ロービジョンエイド
A.身体障害者障害程度等級表,国民年金法,厚生年金法,労災補償基準
B.ロービジョンとは
C.ロービジョンの補助具
1)補助具の選定と指導
2)網膜像を拡大する補助具の種類とその特徴
3)羞明の軽減や像のコントラストを改善する補助具とその特徴
4)視野を拡大する補助具の種類とその特徴
5)その他の補助具
索引
序
本書は眼科検査に携わる医師・医療スタッフ諸氏の日常業務に役立つことを目的としたもので、前身は2002年に刊行され8,000人を超える読者に愛読いただいた『眼科検査メモ』です。旧版が出てから18年の間に、眼科の検査はハードウェアとソフトウェアの両面において大きく進歩しましたが、本書においてはまず基本である視力・屈折、眼鏡、コンタクトレンズ、眼圧、視野、色覚、光覚、斜視、CT検査、電気生理、ロービジョンなどの検査が網羅されています。それとともに、近年発達した検査をくわしく記載しました。白内障手術は、よりよい術後視機能を目指して、多焦点眼内レンズやトーリック眼内レンズが発達し、角膜手術の分野ではLASIK,DSAEKなどの定着によって治療後の視機能の質が重要視されるようになってきており、新版では精密な前眼部画像解析について記載しました。網膜・脈絡膜領域ではOCTをはじめとする検査機器の進歩によって詳細な病態が解明され、断面だけでなくen face画像、広角撮影や造影剤を用いない血管撮影、自発蛍光像が得られるようになっていますので、その検査と解説も追加しました。社会的には2018年に身体障害者手帳の等級判断基準が変わりましたが、その基準を臨床現場で正確な資料を参照して判断することが重要ですので、新しい基準を掲載しました。
検査機器の進歩はすばらしいことですが、機械ですべてを行えるわけではありません。検査は人と人の触れ合いの場でもあり、人は機械にはない温かさをもち「気配り」ができますから、病める人に寄り添うという医の心の神髄を実践できます。検査結果の秘密保持は重要ですが、一方では検査の際に患者や家族の心を傷つけないよう最大限の配慮が求められます。
眼科の検査から得られる情報は治療手段を選択する上で貴重な情報であり、それぞれの検査が何を意味し、正常値が何かを知ることは眼科の実務において非常に大切なことです。これらの検査手段をコンパクトにまとめ、白衣のポケットに入るサイズで、検査の注意点、検査値の意味と正常値を瞥見できるように工夫した書籍は、現代においても貴重なものと考えられます。新版の上梓は長らく待望されてきたものですが、18年の歳月を超えて今回新版として実現することとなりました。この間に多忙にもかかわらず執筆にご協力いただいた各氏と南江堂臨床編集部の平原、笠井と仲井の各氏に感謝申し上げます。
2020年6月
編集者 千原悦夫、辻川明孝、谷戸正樹