看護学テキストNiCE
看護と研究 根拠に基づいた実践
Evidence-based Practice(EBP)
編集 | : 西垣昌和 |
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ISBN | : 978-4-524-24864-3 |
発行年月 | : 2023年8月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 176 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
根拠に基づいた実践(EBP)のステップをわかりやすく解説.臨床の疑問からどのように文献を探し,研究結果を解釈・吟味して臨床の実践に適用するのかを,さまざまな研究デザインの実際の文献を通して例示.基礎的な統計知識や研究デザインの解説も収載.エビデンスを看護実践に活用するために必要なスキルを身に付けることができる1冊.
目次
第T章 根拠に基づいた実践(EBP)の概要を知る
1 根拠に基づいた実践(EBP)とは
1 臨床実践と看護師の意思決定
2 根拠に基づいた実践(EBP)
3 EBPの3要素
4 EBPの5つのステップ
5 EBPと研究:循環的発展
第U章 根拠に基づいた実践(EBP)の5つのステップを学ぶ
EBPの5つのステップ
1 課題・疑問を形式化する
1 解決しようとする課題を明確にし,検索対象となる研究疑問を挙げる
2 研究疑問の形式化
3 PECO/PICOの各要素
2 エビデンスを入手する
1 情報とエビデンス
2 エビデンス検索の方法
3 文献を吟味する
1 文献を吟味するとは
2 文献(論文)の質とは
3 論文の構成と読むプロセス
4 研究デザイン・研究方法の種類と概要
5 リスク・オブ・バイアスについて
4 研究結果を適用し実施する
1 研究は適用させたい状況と合っているか
2 研究結果を実現可能な方法で適用する
3 より質の高い研究結果を実践に適用するには
5 実施結果(アウトカム)を評価する
1 ケア実践のアウトカムとは
2 アウトカムの種類
3 アウトカムを評価し,さらなる実践・研究につなげる
4 研究論文におけるアウトカムと臨床評価のアウトカム設定の例
5 アウトカム設定時の注意点
6 エビデンスに忠実なアウトカムを測定するのが難しい
6 研究をする:エビデンスを「つくる」
1 研究計画の立案
2 研究を計画・実施するうえでの注意点
第V章 さまざまな研究方法の文献(論文)を読む
1 横断研究
2 ケースコントロール研究
3 後ろ向きコホート研究
4 前後比較研究
5 ランダム化比較試験(RCT)
6 システマティックレビュー
7 ケーススタディ
8 内容分析
9 グラウンデッド・セオリー・アプローチ
10 現象学的研究
第W章 根拠に基づいた実践(EBP)に活用される知識
1 情報リテラシー
1 情報に対する考え方・理解
2 基本的な統計の知識
1 統計の使い方を区別する:「記述」と「推定」
2 得られた結果は真実なのか?:仮説検定
3 研究論文で頻出する指標
3 研究デザイン・研究方法の紹介
1 横断研究
2 ケースコントロール研究
3 コホート研究
4 前後比較研究
5 非ランダム化比較試験
6 ランダム化比較試験(RCT)
7 システマティックレビュー
8 メタアナリシス
9 ケーススタディ
10 質的記述的研究
11 内容分析
12 グラウンデッド・セオリー・アプローチ
13 現象学的研究
14 ミックスドメソッド
15 尺度開発
16 概念分析
索引
「ところで,EBP の研修はしていますか?」看護の研究に携わっていると,ありがたいことに各所の医療機関や看護協会から「看護研究」の研修・講義の依頼をいただくことが少なくない.そのようなとき,決まってこの質問を投げかけてきた.あくまで編者の経験上ではあるが,最後にこの質問を投げかけた2020 年までに,EBP の研修がすでに行われていた施設はなかったと記憶している.場合によっては,「EBP とは??」と首を傾げられることもあった.
研究はエビデンス(根拠)を「つくる」こと,EBP(evidence-based practice)はエビデンスを「つかう」ことである.臨床現場において,どちらのスキルの優先順位が高いかは明らかである.それなのに,EBP の研修をしていないのに看護研究の研修をするというのは,順番がちがうのではないか,と(やんわりと)伝えることを繰り返してきた.これに対して,すんなりと受け入れていただける場合もあれば,「根拠に基づいた実践は研修をしなくてもすでにやっている」「研究をつかうにしても,一度研究をしてみることが大事」といったご意見をいただくこともある.これらの誤解を持った研修企画担当者に,どのような説明をすれば誤解が解けるかは,本書を読了していただいたらきっとわかるだろう.
さて,上記は臨床現場でのエピソードであるが,看護職を育てる養成機関(大学,短期大学,専門学校等)においても同じことがいえる.看護職養成機関は,看護職として国家資格を得て,その資格を活かして活動する者を養成することが至上命題なので,「エビデンスをつかう」という,現場で必須のスキル修得が優先されるべきことはいうまでもない.もちろん,養成機関のうち,大学は研究機関でもあるわけなので,研究の素地を養うことも重要なミッションの1 つではあるが,その方法を必ずしも研究をしてみる,ということに限る必要はないだろう.EBP を学ぶ過程でさまざまな研究に触れ,それらが自身の看護に活かされるという経験をすることは,研究に関する知識や論理的思考能力を高めるとともに,研究に興味・関心を持つきっかけになる.EBPを学ぶことは,かくのごとく得られるものが極めて大きいのである.
本書は,これまでありそうでなかった「エビデンスをつかう」ことに特化したテキストである.読者の皆様には,すべての医療職にとって必須のスキルとして,また,研究と向き合う最初のステップとして,EBP を存分に学んでほしい.本書で学んだ皆様によって,EBP が臨床現場に浸透し,「ところで,EBP の研修はしていますか?」がするまでもない質問になることを心待ちにしている.
最後に,編者の力不足による刊行スケジュールの大幅な遅れに寛大な心で付き合ってくださった執筆者の先生方と,破格の忍耐強さで刊行にご尽力いただいた南江堂の皆様に心より感謝申し上げる.
2023 年6 月
西垣 昌和