看護学テキストNiCE
がん看護
様々な発達段階・治療経過にあるがん患者を支える
編集 | : 鈴木久美/林直子/佐藤まゆみ |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-24812-4 |
発行年月 | : 2021年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 340 |
在庫
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
看護基礎教育向けに「がん看護」についてまとめたテキスト。がん患者の発達段階別の対象理解、社会参加の支援などを学べるよう構成。多様な発達段階・臨床経過の事例について、情報関連図で情報を整理し、看護問題を挙げ、看護の考え方と実践例を示した。療養の場の移行支援や、アドバンス・ケア・プランニングなど近年重視されていることも事例を通して学ぶことができる。
第I章 がん看護とは
A.「がん看護」を学ぶとは
B.がん患者が抱える苦痛
C.がんの臨床経過と治療
D.がん看護における看護師の役割
E.科学的根拠に基づくがん看護実践
第II章 がんおよびがん医療の理解
1 がんの疫学とがん対策
A.がんの疫学
B.がん対策
2 がんの病態と集学的治療
A.がんの病態
B.がん予防・がん検診
C.治療の視点からみたがんの経過
D.がんの診断と集学的治療
E.オンコロジックエマージェンシー
F.サイコオンコロジー
G.がんリハビリテーション
H.補完・代替医療
I.最新のがん医療
3 がん医療における専門職連携
A.専門職連携とは
B.チーム医療をめぐる社会の動向
C.がん医療におけるチーム医療の必要性
D.がん医療における専門職
E.専門職連携の方法
F.専門職連携における看護師の役割
4 がん医療における倫理
A.がん医療における倫理的課題
B.看護師の役割
第III章 がんになった人とその家族の理解および看護
1 がんの臨床経過におけるがん患者の特徴と援助
A.診断期にあるがん患者の特徴と援助のポイント
B.治療期にあるがん患者の特徴と援助のポイント
C.再発・転移がんの診断・治療期にあるがん患者の特徴と援助のポイント
D.エンド・オブ・ライフ期にあるがん患者の特徴と援助のポイント
2 発達段階におけるがん患者の特徴と援助
A.小児期発症のがん患者の特徴と援助のポイント
B.AYA世代のがん患者の特徴と援助のポイント
C.成人期のがん患者の特徴と援助のポイント
D.老年期のがん患者の特徴と援助のポイント
3 がんサバイバーシップとソーシャルサポート
A.がんサバイバーシップとは
B.がんサバイバーの特徴
C.がんサバイバー・がん患者を支えるソーシャルサポート
4 がん患者の家族の特徴と支援
A.患者と家族を取り巻く課題
B.家族を支えるケア
第IV章 がん患者に対する治療
1 手術療法
A.手術療法の目的と種類
B.手術療法の流れ
C.術後合併症予防と対策
D.治療の効果判定と経過観察
E.晩期合併症
F.手術療法後の再発
2 薬物療法
A.薬物療法の目的と種類
B.薬物療法の流れあるいは治療方針の決定
C.治療レジメン
D.副作用(有害反応)の管理・対策
E.治療の効果判定・副作用の評価
F.晩期合併症(晩期障害)
G.薬物療法後の再発
3 放射線療法
A.放射線療法の目的と種類
B.治療方針の決定
C.治療計画
D.放射線療法の実際
E.治療中の有害事象の管理・対策
F.治療の効果判定と経過観察
G.晩期有害事象
H.放射線療法後の再発と再照射
4 造血幹細胞移植
A.造血幹細胞移植の目的と種類
B.造血幹細胞移植の決定
C.造血幹細胞移植前の準備,移植の実際
D.合併症の管理
E.移植後の再発
5 免疫療法
A.免疫療法の種類
B.免疫チェックポイント阻害薬治療方針の決定
C.治療計画
D.治療の実際
第V章 がん治療を受ける患者の看護
1 手術療法を受ける患者の看護
A.術前期の援助
B.術後期の援助
2 化学療法を受ける患者の看護
A.化学療法前の援助
B.化学療法中の援助
C.曝露対策
D.化学療法(終了)後の援助
3 内分泌療法を受ける患者の看護
A.内分泌療法前の援助
B.内分泌療法中の援助
C.内分泌療法後の援助
4 放射線療法を受ける患者の看護
A.放射線療法前の援助−治療計画CT撮影と治療開始に向けた援助
B.放射線療法中の援助
C.放射線療法(終了)後の援助
D.放射線防護対策
5 造血幹細胞移植を受ける患者の看護
A.造血幹細胞移植前の援助−移植に向けての準備
B.造血幹細胞移植中から退院までの援助
C.退院後の外来での長期フォローアップ
6 免疫療法を受ける患者の看護
A.免疫療法前の援助
B.免疫療法中の援助
C.免疫療法後の援助
第VI章 緩和ケア
1 緩和ケアとは
A.緩和ケアの定義
B.専門性からみた緩和ケアの分類
C.緩和ケアを受ける対象の全人的な理解
D.緩和ケアにおけるチームアプローチ
2 症状マネジメントとは
A.症状マネジメントの概念
3 各症状のマネジメント
A.がん疼痛
B.倦怠感
C.悪液質
D.呼吸困難
E.消化器症状(1)−悪心・嘔吐
F.消化器症状(2)−食欲不振
G.消化器症状(3)−腹水
H.リンパ浮腫
I.不安・抑うつ(希死念慮)
J.せん妄
第VII章 がん患者の療養の場における看護
1 外来における看護
A.近年のがん患者の療養の特徴
B.外来看護の構造
C.外来看護の役割・機能
D.外来で提供している看護の実際
2 在宅における看護
A.訪問看護の役割・機能
B.地域包括ケア/地域連携クリティカルパス
C.訪問看護の実際
3 緩和ケア病棟/ホスピス病棟における看護
A.緩和ケア病棟の役割
B.緩和ケア病棟の機能
C.緩和ケアの実際
4 がん患者の療養の場の移行支援
A.がん患者の療養の場の移行とは
B.がん患者の療養の場の移行の特徴
C.がん患者の療養の場の移行支援の実際
第VIII章 事例で考えるがん看護
1 小児がん患者への看護−急性白血病の女性
場面1 医師から診断・治療方針について説明を受けた場面
A.病態・診断・治療
B.診断時の看護
場面2 初回治療開始後の時期
C.初回治療開始後の看護
場面3 治療経過に伴う意思決定が必要となった場面
D.新たな治療の選択が必要になった時の看護
場面4 治療終了後,長期フォローアップの時期
E.長期フォローアップの時期の看護
2 AYA世代(若年成人)のがん患者への看護−精巣がんの男性
場面1 医師から診断・治療方針の説明を受けた後の看護師面談の場面
A.病態・診断・治療
B.医師による診断,治療方針説明後の面談時の看護
場面2 高位精巣摘除術後の化学療法オリエンテーションの場面
C.高位精巣摘除術後の化学療法オリエンテーション時の看護
3 成人(壮年前期)のがん患者への看護−乳がんの女性
場面1 診断がついた場面
A.病態・診断・治療
B.診断時の看護
場面2 治療の選択・実施の場面
C.初期治療選択時の看護
場面3 術前化学療法を受ける場面
D.化学療法時の看護
場面4 術後3日目の場面
E.周手術期の看護
場面5 放射線療法を受ける場面
F.放射線療法時の看護
4 成人(壮年後期)のがん患者への看護−肺がんの男性
場面1 初回抗がん薬治療(1次治療)終了後から2次治療を開始するまでの場面
A.病態・診断・治療
B.1次治療終了後,腫瘍の増大時の看護
場面2 2次治療を中止し,緩和ケアを中心とした治療への移行を意思決定する場面
C.2次治療の中止,および緩和ケアを中心とした治療への移行を意思決定する時の看護
場面3 緩和ケアを中心とした治療への移行後,療養の場を決定するまでの場面
D.療養の場を意思決定する時の看護
場面4 在宅での療養の経過
5 高齢のがん患者への看護−大腸がんの男性
場面1 外来化学療法を終了し手術のために入院した場面
A.病態・診断・治療
B.入院時の看護
場面2 術後早期の場面
C.術後早期の看護
場面3 在宅療養に向けて:人工肛門のセルフケア確立への支援を行う場面
D.在宅療養に向けたセルフケア確立時の看護
索引
はじめに
がんは1981年以来日本人の死因第1位を占め、今や日本人の2人に1人ががんに罹患する時代となりました。一方、過去40年のうちにがん医療はめざましい進歩を遂げ、がんは不治の病から長期生存が可能な病気となり、5年生存率も60%以上と飛躍的に上昇しました。分子生物学の進歩により、がんの発生や進展のメカニズムも解明され、ゲノム解析に基づく遺伝子診断技術や治療薬が開発されるなど、現代のがん医療は日々高度化しています。さらに、遺伝子診断をもとにした個別化医療へと進むなど、がん医療はいっそう複雑化・多様化しています。
看護基礎教育課程において、これまでは急性期、回復期、慢性期、終末期という疾病の経過別に学習するのが主流でした。しかし、2007年のがん対策基本法の施行により、がん患者に対する全人的ケアが重視されたこと、また臨地実習で受け持つ患者の多くががん患者であることから、看護基礎教育課程で系統的に「がん看護」を学ぶ必要性が高まっています。近年「がん看護」を1つの科目に位置付けて教育する大学もみられるようになり、本看護学テキストNiCE シリーズの他書採用校の先生方からも、がん看護の教科書を刊行してほしいとの要望が多く寄せられていたこともその表れと言えるでしょう。そこで、このたびNiCE シリーズの一環として、「がん看護」を体系的に学習する本書を刊行する運びとなりました。
本書は、従来の「病気に対する看護」や「治療別の看護」の枠にとどまらず、患者の発達段階や臨床経過、実践の場に即した看護に重点を置いて構成しています。これは、がん患者の年齢や社会的背景、臨床経過の違いにより患者が体験する苦痛や生活上の困難が異なるため、治療的側面のみならず対象個々の特徴を踏まえて支援することが看護師に求められているからです。また、がんに関する専門知識や技術をもとに、包括的な視点で「根拠に基づいたがん看護」を実践できる看護師としての基礎が育まれることをねらいとしています。
【本書の構成】
本書は、8つの章で構成されています。第I章では、がん看護の全容を把握できるように、がん看護を学ぶ意味、患者が抱えている苦痛、がんの臨床経過、がん看護の役割について解説しています。第II章では、わが国のがんの動向とその対策、がんの病態や治療の基礎知識、がん医療を円滑に進めるための専門職連携やその中で起こりうる倫理的課題などを解説しています。第III章では、がんになった人とその家族を理解するために、がんの臨床経過や発達段階における患者の特徴と援助、がんサバイバーシップの概念、さらに家族の特徴と支援について解説しています。第IV章では、集学的治療の理解を深めるために、がんの5大治療である手術療法、薬物療法、放射線療法、造血幹細胞移植、免疫療法の基礎知識について、そして第V章ではこれらの5大治療を受ける患者の治療前から治療後までの一連の看護を系統的に学べるように構成しています。第VI章では、緩和ケアや症状マネジメントの概念を述べたうえで、がん治療に伴う副作用や機能障害、進行期や終末期に出現しやすい症状の観点から、がん患者に特有な症状を取り上げて発症機序から治療法、援助方法についてわかりやすく解説しています。第VII章では、がん患者は一般病棟のみならず多様な場で治療や療養をしているという視点を広げるために、外来、在宅、緩和ケア病棟/ホスピス病棟で実践されている看護について学習できるようにしています。最後の第VIII章では、第I章から第VII章までの知識を応用して思考力や臨床判断力を養えるように、各発達段階で罹患しやすいがんを取り上げ事例として提示し、その事例の看護展開を学習することにより問題解決的思考のプロセスを学べるよう工夫しました。
ますます発展するがん医療の場で将来活躍されるであろう看護学生の皆様にとって、本書ががん看護の考え方や看護実践の拠り所となりましたら幸甚です。そして、本書を授業等で活用される教員の方々や利用される学生の皆様から、忌憚のないご意見を頂戴し、厚みのある充実したテキストへと進化していけるよう努めてまいる所存です。
最後に、本書の刊行にあたり、快くご執筆くださいました多くの先生方に心より感謝いたします。また、企画から刊行までご支援いただきました南江堂の皆様に深謝いたします。
2020年11月
鈴木久美
林直子
佐藤まゆみ