整形外科医のための神経学図説原書第2版
脊髄・神経根障害レベルのみかた,おぼえかた
訳 | : 長野昭 |
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ISBN | : 978-4-524-24695-3 |
発行年月 | : 2019年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 214 |
在庫
定価6,050円(本体5,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
Hoppenfeldの名著『Orthopaedic Neurology』第2版。神経高位診断のわかりやすいガイドブックとして、神経学上の基礎知識から臨床現場に即した診断の進め方までを著者独特のアイデアに基づいた図説を用いて明快に理解できるように工夫されている。今版では、わかりやすい内容はそのままにイラストがフルカラー化され、脊髄損傷患者の診療が追加された。
序論
A.筋力
B.感覚
C.反射
第1部 神経根の障害
第1章 上肢の神経根障害の診断
A.個々の神経根の検査法(C5-T1)
1.C5根障害の神経学的特徴
2.C6根障害の神経学的特徴
3.C7根障害の神経学的特徴
4.C8根障害の神経学的特徴
5.T1根障害の神経学的特徴
6.まとめ
B.高位診断の臨床応用
1.頚椎椎間板ヘルニア
2.頚椎捻挫と頚椎椎間板ヘルニアの違い
3.鉤状突起と変形性頚椎症
4.神経根引き抜き損傷
第2章 体幹と下肢の神経根障害の診断
A.個々の神経根の検査法(T2-S4)
1.T2-T12根障害の神経学的特徴
2.T12-L3根障害の神経学的特徴
3.L4根障害の神経学的特徴
4.L5根障害の神経学的特徴
5.S1根障害の神経学的特徴
6.S2-S4根障害の神経学的特徴
7.まとめ
B.高位診断の臨床応用
1.腰椎椎間板ヘルニア
2.腰部捻挫と腰椎椎間板ヘルニアの違い
3.脊椎分離症と脊椎すべり症
4.帯状疱疹
5.ポリオ(脊髄性小児麻痺)
第2部 脊髄障害の高位診断
第3章 頚髄損傷:四肢麻痺
A.脊髄損傷の高位診断(C3-T1)
1.C3脊髄損傷(C3健存)の神経学的特徴
2.C4脊髄損傷(C4健存)の神経学的特徴
3.C5脊髄損傷(C5健存)の神経学的特徴
4.C6脊髄損傷(C6健存)の神経学的特徴
5.C7脊髄損傷(C7健存)の神経学的特徴
6.C8脊髄損傷(C8健存)の神経学的特徴
7.T1脊髄損傷(T1健存)の神経学的特徴
B.上位運動ニューロン障害時の病的反射
C.高位診断の臨床応用
1.頚椎の骨折と脱臼
2.損傷レベルと日常生活動作(ADL)
3.頚椎椎間板ヘルニア
4.頚椎腫瘍
5.脊椎カリエス
6.横断性脊髄炎
第4章 T1以下の脊髄損傷(馬尾神経を含む)
A.対麻痺
1.T1-T12脊髄損傷の神経学的特徴
2.L1脊髄損傷(L1健存)の神経学的特徴
3.L2脊髄損傷(L2健存)の神経学的特徴
4.L3脊髄損傷(L3健存)の神経学的特徴
5.L4脊髄損傷(L4健存)の神経学的特徴
6.L5脊髄損傷(L5健存)の神経学的特徴
7.S1脊髄損傷(S1健存)の神経学的特徴
B.上位運動ニューロン障害時の反射
1.病的反射
2.正常の表在反射
C.高位診断の臨床応用
1.脊髄損傷診断補遺
2.胸椎椎間板ヘルニア
D.神経症状の増悪予防のための脊柱支持性の評価
1.診断
2.屈曲損傷
3.屈曲-回旋損傷
4.過伸展損傷
5.圧迫損傷
第5章 脊髄髄膜瘤
A.高位診断
1.L1-L2脊髄髄膜瘤(L1健存,L2機能喪失)の神経学的特徴
2.L2-L3脊髄髄膜瘤(L2健存,L3機能喪失)の神経学的特徴
3.L3-L4脊髄髄膜瘤(L3健存,L4機能喪失)の神経学的特徴
4.L4-L5脊髄髄膜瘤(L4健存,L5機能喪失)の神経学的特徴
5.L5-S1脊髄髄膜瘤(L5健存,S1機能喪失)の神経学的特徴
6.S1-S2脊髄髄膜瘤(S1健存,S2機能喪失)の神経学的特徴
7.S2-S3脊髄髄膜瘤(S2健存,S3機能喪失)の神経学的特徴
B.運動能力発達段階の目やす
1.坐位
2.立位
3.歩行
C.脊髄片側障害
D.水頭症
E.上肢罹患の神経学的検査
F.脊髄髄膜瘤患者診察への示唆
推奨文献
索引
訳者序
Stanley Hoppenfeldによる原著『Orthopaedic Neurology』の初版は1977年に出版され、その日本語版は1979年に故津山直一東京大学名誉教授により監訳、さらに2005年に図を拡大してよりわかりやすくした新装版が発行され、好評を博してきたが、この度、原書第2版が41年ぶりに改訂され、図版がフルカラー化されて格段にビジュアル性が増し、内容もアップデイトされたことに伴い、日本語版(原書第2版)も発行されることになった。
整形外科医に求められる能力は、1)正確な診断、2)患者個々にあった治療法の選択、3)高度な手術手技、4)後療法に対する熱意である。この中でもっとも重要なのは診断で、障害部位と病態が明らかとなれば診断と治療法は自ずと決まってくる。近年画像診断法などの補助診断法が進歩してきたが、すべてがそれにより診断できるわけではない。十分な病歴聴取と詳細な診察を行い、それらからそれぞれの所見が持つ意味を論理的に組み立て、そこから障害部位と病態を診断する。そうすれば、余分な補助診断は無用となるか、診断を確認する手段に過ぎなくなる場合も少なくない。すなわち、診断がすべてと言っても過言ではない。
この観点から言っても、本書は上下肢の脊髄・神経根の運動・感覚支配と腱反射をわかりやすく解説し、神経学上の基礎知識から診断の進め方までを著者独特のアイディアに基づいた図説により明快に理解できるように工夫されている、神経高位診断のためのわかりやすいガイドブックとして優れた良書である。
この度、日本語版初版の翻訳に協力した小生がその第2版を担当することになったが、改めて原書を一から読み直してみて本書のすばらしさを実感した次第であり、本書が整形外科医のみならず、神経内科医、脳神経外科医、さらに理学・作業療法士などの日常診療に大きく貢献する書であると確信している。
2019年4月
浜松医科大学名誉教授
長野昭
懐かしい本が装いを新たにしてやってきた。Hoppenfeld先生の『整形外科医のための神経学図説(原書第2版)』である。訳者は筆者が整形外科に入って以来ずっと指導を受けている浜松医科大学名誉教授の長野昭先生である。訳者序には原著の初版は1977年、わずか2年後の1979年に故津山直一東京大学名誉教授により監訳されたとある。本書は、原書第2版が41年ぶりに改訂されたのに合わせての日本語訳である。図は新たに描き起こされ、いっそうみやすい本になっている。
筆者が整形外科に入局したのは1987年であるが、神経障害の診断では正確な神経学的所見と障害高位の決定が圧倒的に重要であった。当時の解像度の低いMRIは画像診断の主流であった造影CTに劣る点が多かった。しかし格段の進歩により、スクリーニングとしてのMRIの意義はかつてないほど高まっている。また神経の連続性を反映するtensonographyやエネルギー代謝を示すfMRIは準機能診断として徐々にその使用が広まりつつある。もっとも、真の脊髄機能診断といえるものはいまだに制限の多い電気診断と東京医科歯科大学の川端茂徳教授を中心に実用化された脊磁計しかないはずである。
しかし、神経学的所見の重要性が減じることはないであろう。現在、さまざまな診断において画像が重宝されている一方、費用も格段に増加している。四肢・体幹の痛みやしびれを訴える患者は高齢者の比率と合わせて増える一方であり、希望するすべての患者に高次画像検査を行えば医療経済は破綻するであろう。そもそも、そうした患者の相当数は軽症の患者であり、過度に医療介入を行うべきではない。一方で、手術など本格的治療が必要な神経障害患者の評価には患者の主観に基づくアウトカムとともに神経学的所見が欠かせない。病変高位の診断において、先輩から教わった例えであるが、神経学的所見は血液型の判定におけるオモテ試験、画像診断はウラ試験であり、両者の結果が一致したときは確固たる高位診断が行えたことになる。
神経学は多くの医学生にとってたぶん鬼門である。何せ複雑である。脳・脊髄のさまざまな伝導路の解剖学的走行と機能、神経根のデルマトームと支配筋、深部腱反射、メッシュのように入り組んだ腕神経叢、四肢の神経走行など限りなく習得することがある。医学生や研修医時代は語呂合わせでなんとか乗り切っていく。その後、臨床現場で繰り返し反復学習し、身につけていく。そうしたプロセスの各場面でこの本の副題である「脊髄・神経根障害レベルのみかた、おぼえかた」を伝授してくれる座右の書として本書を推薦したい。
臨床雑誌整形外科70巻13号(2019年12月号)より転載
評者●自治医科大学整形外科教授 竹下克志