はじめての講義シリーズ
リハビリテーションのための臨床心理学
著 | : 牧瀬英幹 |
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ISBN | : 978-4-524-24653-3 |
発行年月 | : 2021年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 272 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
理学療法士・作業療法士養成課程の学生のために、臨床心理学を効率的に学べるよう簡潔にまとめたテキスト。臨床で出会いうる症例に沿って心理療法の各理論を解説しているため、興味をもって読み進められるだけではなく、患者に対する臨床心理学的アプローチの方法が頭に入りやすくなっている。コラム、練習問題も充実した最強の初学者向け教科書。通読すれば国家試験への対応力が自然と身につく一冊。
第1章 リハビリテーションのための臨床心理学
A.なぜ臨床心理学を学ぶのか
B.臨床心理学とは何か
C.臨床心理学は“きく”ことから始まる−身体を“きく”ということ
第2章 心理アセスメントの方法と倫理
A.心理アセスメントの意義とその方法
B.心理アセスメントにおける倫理
第3章 心理検査
A.心理検査を実施する前に考慮すべきこと
B.各心理検査の特徴とその方法
C.心理検査を実施した後に考慮すべきこと
第4章 無意識の欲望を探る精神分析
A.なぜ精神分析を学ぶ必要があるのか
B.精神分析とは何か−無意識を探る理論
C.フロイトから離れていった精神分析家たちの理論
第5章 行動や認知の変容・制御を目指す−行動療法・認知行動療法
A.なぜ行動療法・認知行動療法を学ぶ必要があるのか
B.行動療法とは何か
C.認知行動療法とは何か
D.行動療法・認知行動療法の方法論
E.近年の行動療法・認知行動療法の動向
第6章 人間の実現傾向を重視する−クライエント中心療法
A.なぜクライエント中心療法を学ぶ必要があるのか
B.“自分自身”として生きることを促すクライエント中心療法
C.クライエント中心療法的アプローチを行ううえで知るべきこと
D.ロジャーズ以降のクライエント中心療法の展開
第7章 さまざまな心理療法的アプローチ−家族療法・森田療法・交流分析
A.家族療法
B.森田療法
C.交流分析
第8章 発達と心の問題−フロイト・エリクソン・ピアジェの理論
A.発達の各時期の特徴とそれを踏まえたアセスメント・治療の意義
B.フロイトの発達理論とエリクソンの心理社会的発達理論
C.発達障害に対する支援の方法と発達理論
第9章 認知機能のアセスメントと支援−記憶・注意・遂行機能
A.認知機能とは何か−記憶・注意・遂行機能
B.認知機能障害のアセスメント
C.認知機能障害に対する支援の方法
第10章 臨床心理学の成り立ちと今後の展望
A.学問の成立以前に人々はどのように心の病とかかわってきたのか
B.精神医学の誕生
C.臨床心理学の誕生とその発展
D.臨床心理学の今後の展望
索引
まえがき
本書は、リハビリテーションにこれから携わりたいと考えている、あるいはすでにリハビリテーションに携わっている人に向けて、臨床心理学のエッセンスを伝えることを目的として書かれたものです。
時代の変化に伴い、さまざまな人がリハビリテーションにかかわるようになっています。障害を有する人に対して治療・支援を行い、環境への適応を促すような医療従事者はもちろんのこと、そうした人々を取り巻く環境や社会全体に介入し、社会とのつながりを生み出していくようなすべての人がそこには含まれます。そして、そのように多くの人がかかわっていくこと、それは、世界保健機関(WHO)がリハビリテーションの目指すべき姿であると言っていることでもあります。このため、本書を執筆するにあたっては、理学療法士・作業療法士などのリハビリテーション専門職はもちろんのこと、その他の幅広い分野でリハビリテーションにかかわっている人にも手に取ってもらえるような内容とすることを心がけました。
本書の主な特徴として、次の3点をあげることができます。
(1)臨床心理学のさまざまなエッセンスを、具体的な臨床事例に即して理解できるようにまとめています。各章で取り上げた臨床事例は、実際にリハビリテーションの現場でよくみられるものを選択しており、学習した内容を臨床の場にて直接活用することも可能となっています。
(2)精神障害や発達障害のリハビリテーションだけでなく、身体障害のリハビリテーションにおいても、常に精神面の問題を考慮する必要性があるということに注目してもらえるよう、そのための工夫を随所に施しています。もちろん、長年現場で経験を積んできた人からすると、そんなことは当たり前であると思われるかもしれません。しかし、各章で取り上げるように、患者さんの症状が身体面で際立っている場合、身体面の問題ばかりに注意が向いてしまい、ともすると精神面とのつながりを見失ってしまう傾向が少なからずあるようにみえます。両者の接点において、身体はさまざまな仕方で語っているにもかかわらず、そのことを見過ごしてしまう、つまり、身体を“きく”ことができない結果、患者さんの症状は変わらずに維持されてしまうことになるのです。このため、本書では、両者の密接な関係性を踏まえ、臨床心理学的な観点からどのような治療的アプローチが可能であるかを検討できる機会を多く設けました。
(3)本書全体を、理学療法士・作業療法士の国家試験に出題される内容に則して構成しています。また、各章の要点を細かくエッセンスとしてまとめ、国家試験に向けた復習がしやすいように工夫するとともに、各章末には国家試験問題を意識した練習問題を配置しました。
リハビリテーションの現場では、身体面と精神面の問題が複雑に交錯しています。そのような接点において、“身体が語ること”の理解を深め、そこから患者さんだけでなく、患者さんを取り巻く環境や社会に対してもアプローチしていくことができる知を提供してくれるもの、それが臨床心理学です。そして、そのエッセンスをもとにした実践は、本書のキーワードである身体を“きく”というあり方に集約されるのです。
では、身体を“きく”とはどのようなことなのか。それを考えながら、早速、臨床心理学のエッセンスを学んでいきましょう。まず、第1・2章において、身体を“きく”ことの重要性について知り、第3〜9章で、どのように身体を“きく”のかを学びます。そして、最後の第10章において、臨床心理学の歴史を振り返りながら、身体を“きく”実践としての臨床心理学の今後の展望について考えたいと思います。
2021年2月
牧瀬英幹