運動器スポーツ外傷・障害の保存療法 体幹
監修 | : 福林徹 |
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編集 | : 西良浩一/金岡恒治 |
ISBN | : 978-4-524-24637-3 |
発行年月 | : 2020年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 218 |
在庫
定価6,600円(本体6,000円 + 税)
サポート情報
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2021年03月31日
競技スポーツ選手に対する「糖質コルチコイド」注射経路の禁止について
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
整形外科医をはじめとしたスポーツ関連医療スタッフを対象に、スポーツ外傷・障害の保存療法についての最新の知識を提供し、その具体的方法と進歩をビジュアルな紙面で解説するシリーズ(全3巻)。難治化しやすく、保存療法の種類が多くて複雑な体幹部の外傷・障害について、指導が難しい運動療法を写真で細かく解説し、物理・装具療法の気づきにくいポイント、最近のトピックであるPRPや体外衝撃波治療のポイントから最新の実績まで網羅している。
1 疫学
2 保存療法に必要な機能解剖とバイオメカニクス
3 各種保存療法の基礎知識
1.運動療法
2.装具療法
3.多血小板血漿(PRP)
4.各種ブロック療法(神経根・椎間板・椎間関節・分離部)
4 疾患別保存療法
1.頚椎
A.頚椎捻挫
B.Burner症候群
C.頚椎脱臼骨折,頚髄損傷
D.一過性四肢麻痺
2.胸郭(肋骨・鎖骨)
A.胸郭出口症候群
B.鎖骨・肋骨疲労骨折
3.腰椎
A.腰椎分離症(分離すべり症)
B.腰椎椎間板ヘルニア
C.椎体終板変性
D.筋筋膜性腰痛
E.椎間関節性腰痛
F.非特異的腰痛
G.仙腸関節障害
索引
序文
この度、「運動器スポーツ外傷・障害の保存療法」体幹編を編集させていただいた。体幹スポーツ障害の種類は多岐に及ぶが、その多くに保存療法が奏功し、手術を必要とすることは少ない。私見であるが90%以上が保存療法で完治し、手術を必要とする症例は10%以下と感じている。したがって、アスリートの診療に携わるスポーツドクター・メディカルスタッフは保存療法に精通してなければならない。
保存療法には、ドクターが行う治療法に加え、理学療法士やトレーナーが行う運動療法がある。スポーツドクターが局所の治療を行い障害の治癒を導く。さらに理学療法士により損なわれた機能を100%に持っていく。そしてトレーナーに引き継ぎ、様々な理論を駆使し、再発防止を念頭に全身を100%を超える状態に引き上げる。体幹のスポーツ障害に対する保存療法は、まさにチームワークによりはじめて成功に導くことができる。
本書ではまず、保存療法をより良く理解するために、疫学とバイオメカニクスを解説していただいた。次に、体幹の保存療法の武器となる、運動療法、装具療法、ブロック療法に加え、最先端の手法としてPRPを取り上げた。そして、各種疾患への応用とつながる。
執筆者は、いずれもスポーツ医科学の最前線で活躍している、日本を代表する方々である。多くはスポーツドクターであるが、理学療法士とトレーナーにも参画賜った。ドクター視点に加え、セラピスト・トレーナー視点も加わった濃厚な内容となった。校正刷りを通読し、期待を超える内容に安堵している。アスリート診療に携わるすべての方々に手にとって頂きたい。そして本書の理論に従いアスリート治療を行い、100%を超える復帰を可能として頂きたい。
最後に、現時点でのgold standardな情報そして、next decadesを先導するleading edgeな情報が満載の成書の編集に携わらせていただいたこと、福林徹先生に厚く御礼申し上げる。
2020年7月 コロナ収束を願い
徳島大学整形外科 西良浩一
早稲田大学スポーツ科学学術院 金岡恒治
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、56年ぶりの東京オリンピック・パラリンピックは残念ながら延期となった。しかしこの状況においても、野球やサッカーなどのプロフェッショナルスポーツをはじめ、多くの試合が実施されている。先のみえない不安感と閉塞感のなかにあるわれわれに、今年も喜びや感動を与えてくれた。
このような状況のなか上梓された『運動器スポーツ外傷・障害の保存療法 体幹』を紹介したい。本書の表紙をみると、まず帯の「保存療法の判断で迷ったことはありませんか?」というキャッチフレーズに目がとまる。治療法の判断は時としてアスリートの人生に影響を及ぼしうることを考えると、判断を任せられる責任は重大である。アスリートと一言でいっても、年齢、競技レベルや外傷・障害の程度など多様であり、もっとも効率的で効果の高い治療法を、個々のアスリートの状況に応じて選択することは決して簡単ではない。本書は「運動器スポーツ外傷・障害の保存療法」シリーズ全3巻のうちの1巻であり、長年にわたって日本のスポーツ医科学を牽引された福林徹先生監修、西良浩一先生、金岡恒治先生編集のもと、スポーツ医科学の最前線で活躍する日本を代表するスポーツドクター、理学療法士、トレーナーの方々の執筆による。緊急処置、保存療法の選択、スケジュールなど、前述の疑問を体幹における疾患別に解決することのできる最先端の教科書である。
まずはじめに、保存療法の理解を深めるのに必要な体幹部のスポーツ外傷・障害の疫学と、機能解剖ならびにバイオメカニクスについて解説されている。次いで、体幹の保存療法の要となる運動療法、装具療法、ブロック療法について、その目的、具体的な手技や注意点が詳細に記載され、日常診療において即座に導入できる内容となっている。また、最先端の手法として多血小板血漿(PRP)が取り上げられ、その生物学的特性、作製方法、注入法について解説がある。
次に、疾患別保存療法として、頚椎疾患として、頚椎捻挫、Burner症候群、頚椎脱臼骨折、頚髄損傷や、一過性四肢麻痺といった頚椎疾患、胸郭(肋骨、鎖骨)の疾患として、胸郭出口症候群、鎖骨・肋骨疲労骨折、腰仙椎疾患として、腰椎分離症(分離すべり症)、腰椎椎間板ヘルニア、椎体終板変性、筋筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、非特異的腰痛、仙腸関節障害がとりあげられている。これら疾患の病態、評価方法、発生メカニズム、保存療法の適応と治療の流れ、競技別のアスレティックリハビリテーション、スケジュールなど、多数の図や、X線像、MRI、エコーなどの検査画像、運動療法の写真などを用いて、わかりやすく解説されている。あるいは、疾患の発生メカニズムにもとづいた対処方法として、メディカルチェックや、傷害の予防に必要な筋力訓練およびウォーミングアップ、試合中の注意点、受傷直後の対処にいたるまで懇切丁寧に記載されている。
以上のように、本書には保存療法のいわゆる「gold standard」から、最先端の情報にいたるまで満載されており、評者自身、体系的にまとめられた内容はたいへん勉強になり、「迷う」ことなく判断するための一つの「武器」として実践していく所存である。本書の内容を十分に理解したうえで、アスリートやトレーナー諸氏と相談しながら診療をすすめることができれば、アスリートにとって疾患から回復、競技へ復帰していくうえで最善の路が開けるものと考える。スポーツにかかわるドクターはもちろんのこと、理学療法士、トレーナーの方々にも、まずは手にとってご一読いただきたい。
臨床雑誌整形外科72巻3号(2021年3月号)より転載
評者●日本大学整形外科教授 中西一義