バセドウ病治療ガイドライン2019
編集 | : 日本甲状腺学会 |
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ISBN | : 978-4-524-24622-9 |
発行年月 | : 2019年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 204 |
在庫
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2011年に刊行した『バセドウ病治療ガイドライン2011』を最新の内容にアップデートし、2019年版として刊行。今版では、Minds2016に準拠し、CQ方式(FCQ、BCQ)を採用。コラムを9つ盛り込み、一般内科医も遭遇する機会が多いバセドウ病の鑑別診断や他科との連携について、知識を深められる。
CQ一覧
用語解説
診断基準
略語一覧
発展的重要検討課題
FCQ1.妊娠初期における薬物治療は,第一選択薬として何が推奨されるか?
FCQ2.無顆粒球症にG-CSFは推奨されるか?
FCQ3.抗甲状腺薬服用中および治療後にヨウ素制限を行うか?
FCQ4.18歳以下のバセドウ病患者に131I内用療法は推奨されるか?
FCQ5.授乳中のバセドウ病患者にMMI,PTU,無機ヨウ素薬は推奨されるか?
FCQ6.131I内用療法後,挙児計画はいつから許可するか?(男性の場合)
基礎的重要検討課題
第1部 抗甲状腺薬による治療
BCQ1.薬物療法の適応は?
BCQ2.抗甲状腺薬治療の第一選択は何か?
BCQ3.抗甲状腺薬の投与方法は?
BCQ4.未治療時の甲状腺機能に応じて抗甲状腺薬の初期服用量を選択するのか?
BCQ5.抗甲状腺薬の減量方法は?
BCQ6.抗甲状腺薬中止の目安は?
BCQ7.抗甲状腺薬中止後の経過観察の方法は?
BCQ8.無機ヨウ素薬単独療法の投与方法は?
BCQ9.抗甲状腺薬と無機ヨウ素薬併用療法の有効性は?
BCQ10.抗甲状腺薬とL-サイロキシン併用療法の適応は?
BCQ11.甲状腺中毒症状のコントロール方法は?
BCQ12.炭酸リチウムの適応は?
BCQ13.抗甲状腺薬使用中の注意点は?
コラム1.バセドウ病の標準治療として副腎皮質ホルモン薬が用いられない理由
第2部 抗甲状腺薬の副作用
BCQ14.抗甲状腺薬の副作用の特徴と注意点は?
BCQ15.抗甲状腺薬にて治療開始前に必要な説明は?
BCQ16.抗甲状腺薬による皮膚症状の特徴と対処法は?
BCQ17.無顆粒球症の発見方法と対策は?
BCQ18.抗甲状腺薬による肝障害の対処法は?
BCQ19.抗甲状腺薬によるANCA関連血管炎の早期発見と対処法は?
BCQ20.抗甲状腺薬変更時の注意点は?
第3部 バセドウ病患者の生活指導
BCQ21.喫煙のバセドウ病への影響は?
BCQ22.バセドウ病の増悪因子は?
コラム2.ヨウ素を多く含む食品
第4部 特殊な病態と合併症の治療
BCQ23.バセドウ病の合併症と対処法は?
BCQ24.甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(TPP)の治療と予防は?
コラム3.アミオダロン誘発性甲状腺中毒症の治療
BCQ25.潜在性甲状腺機能亢進症の治療方針は?
コラム4.甲状腺クリーゼの治療ガイドライン
コラム5.眼症の治療ガイドライン
コラム6.小児バセドウ病の診療ガイドライン
第5部 131I内用療法
BCQ26.131I内用療法の適応と禁忌,注意は?
BCQ27.131I内用療法の甲状腺機能に対する目標は?
BCQ28.131I内用療法の前処置はどのようにするか?
BCQ29.131Iの投与線量はどのように決めるか?
BCQ30.131I内用療法後の経過観察はどのように行うか?
BCQ31.131I内用療法の再治療の適応は?
BCQ32.131I内用療法後,挙児計画はいつから許可するか?(女性の場合)
コラム7.妊娠に気づかず131I内用療法を行った場合はどうするか?
BCQ33.甲状腺眼症を有する場合の131I内用療法の注意点は?
第6部 手術
BCQ34.外科治療として甲状腺全摘術は推奨されるか?
BCQ35.術前の準備は?
第7部 妊娠・出産
BCQ36.妊娠を避けるべき状態とは?
コラム8.妊娠中・授乳中の甲状腺中毒症の鑑別診断
BCQ37.妊娠中のバセドウ病の治療方針と管理方法は?
BCQ38.TSH受容体抗体高値時の留意点は?
コラム9.産科医,新生児科医や小児科医との連携
BCQ39.新生児バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の治療は?
序文
今回の改訂は、『バセドウ病治療ガイドライン2011』から8年ぶりの改訂になります。
この間ガイドライン作成の手引きとなるMindsの方針が大きく変わりました。Mindsの最新の方針を理解するために、診療ガイドライン作成方法の専門家に2回の勉強会を開いていただきました。私たちもはじめて耳にする方法、概念があり、ガイドラインの作成方法が大きく変わったこと、また、現在進行形で変わりつつあることを理解しました。
記載形式がClinicalQuestion(CQ)になり、そのCQもすでにコンセンサスが得られている教科書的な内容を記載するBackgroundCQ(BCQ)と、臨床的に重要ではあるがまだ結論の出ていない問題を対象にするForegroundCQ(FCQ)の2つに分かれるということで、この方針に沿って記載方法の変更、システマティックレビューを行いました。論文のシステマティックレビューを行うためのKeyword作成はP(Patients、Problem、Population)、(IInterventions)、C(Comparisons、Control、Comparators)、O(Outcomes)のPICO形式で行い、最も重要な検索式の作成は日本医学図書館協会に依頼し、検索に使用するデータベースはPubMed、Cochrane、Embase、医学中央雑誌を選びました。選択された論文から一次、二次スクリーニングを行い、FCQ作成に使用する論文を決定しました。この過程はFCQ毎に掲載しました。また、検索式と選ばれた論文のリストは、日本甲状腺学会ホームページ会員サイトに公開しました。アウトカム毎にエビデンス総体の質の評価を行うわけですが、ランダム化比較試験(RCT)の論文があまり多くなく、この作業は難渋しました。推奨の作成は作成委員が行いましたが、推奨レベルとエビデンスレベルの決定は外部委員(患者2名、臨床検査技師、看護師、薬剤師各1名)に入っていただき審議と票決を行いました。票決の結果は合意率として掲載しました。
これらの作業過程で感じたのは、可能な限りエビデンスを正確に選んで客観的に評価するという姿勢でした。システマティックレビューを行ったあとは、できるだけ早く作業を進めないとエビデンスが古くなってしまうので、委員の先生方にはかなりご無理をお願いしました。この場を借りてお礼申し上げます。
ガイドラインは、よく言われているように決して個々の患者に対する治療を拘束するものではなく、また、ガイドラインに従って治療すればよいというものでもありません。個々の患者の状態に応じて最も適した治療法が選ばれるべきで、ガイドラインはあくまでひとつの基準を示すものです。バセドウ病の治療においてこのガイドラインがお役に立つことを願います。
2019年4月
「バセドウ病治療ガイドライン」作成委員会委員長
吉村弘(伊藤病院)
このたび、日本甲状腺学会よりバセドウ病治療ガイドラインが8年ぶりに改訂され、『バセドウ病治療ガイドライン2019』として上梓された。バセドウ病は内分泌疾患のなかでも頻度が高く、内分泌を専門としない医師も臨床の現場で遭遇する機会の多い疾患である。現代医学の進歩はめざましく、世界中で最新の診断法、治療法に関する研究成果が発表され、日常診療にその成果が導入されている。その一方で、最新・最善の治療の普及が進まず、同じ病態であるにもかかわらず異なる治療法が行われ、結果として診療の質にばらつきがみられる状況も散見される。このような最新のエビデンスと日常診療の乖離を改善する目的で導入されてきたのが診療ガイドラインである。内分泌疾患のなかでは頻度が多いとはいえ、生活習慣病に比較すれば格段に症例数の少ないバセドウ病の治療ガイドラインでもシステマティックレビューに準拠した内容が求められるようになってきた。
『バセドウ病治療ガイドライン2019』は吉村弘委員長をはじめとするガイドライン作成委員の先生方の多大な尽力によりまとめられたものである。ガイドライン作成の指針であるMindsの手法に基づき、P(patients、problem、population)、I(interventions)、C(comparisons、control、comparators)、O(outcomes)のPICO形式を用いて細心の作成プロセスを経たうえで、重要臨床課題を一般的なコンセンサスが得られている教科書的・基礎的臨床課題と、まだ結論の出ていない発展的臨床課題の2つに大別し、clinical question(CQ)形式で記載されている。本ガイドラインに目を通してまず気づくのが、一般のガイドラインと異なり、最初に発展的臨床課題に関するCQ(foreground clinical question:FCQ)を記載していることである。FCQ作成の根幹をなすシステマティックレビューの実施および推奨としてまとめていく過程に客観的な視点を堅持しつつ膨大な労力を費やすことにより、これまで成書をみても満足のいく回答が得られなかった臨床上の未解決問題に対してもエビデンスに基づいた科学的な判断が示されていることは特筆すべきことと思われる。
最後に、この新たに作成されたガイドラインが甲状腺専門医、内分泌代謝専門医のみならず、広く一般の臨床医に必携の書として活用されることで、バセドウ病診療の質の向上に不可欠な情報源となることが期待され、ここに本書を推薦する次第である。
臨床雑誌内科124巻6号(2019年12月号)より転載
評者●学校法人慈恵大学 参与 東條克能