誰も教えてくれなかった 心筋梗塞とコレステロールの新常識
著 | : 伊苅裕二 |
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ISBN | : 978-4-524-24535-2 |
発行年月 | : 2018年3月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 146 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
PCSK9阻害薬の登場により注目が高まっている脂質低下療法に関して、とくに患者さんや医療者でも誤解がある心筋梗塞患者におけるコレステロールとの付き合い方について、Q&A形式でやさしく解説。“コレステロールは高いほうがよいのか低いほうがよいのか?”、“どんな人が、どうやって、何のために下げるべき?”などの疑問から、心筋梗塞予防に有効な脂質低下薬スタチンやPCSK9阻害薬の使用に関する一般医家が抱く疑問、患者さん・医療スタッフから寄せられる質問に対して、具体的な根拠や対応までが明快に学べるオススメの一冊。
はじめに −なぜ今コレステロールが注目されるのか−
I章 心筋梗塞
Question01.心筋梗塞とはどんな病気ですか?
Question02.心筋梗塞による死亡数は多いでしょうか?
Question03.心筋梗塞の治療法は何ですか?
Question04.心筋梗塞を発症したことのある患者さんには,どのように生活指導していけばよいでしょうか?
Question05.心筋梗塞を起こした冠動脈はどうなっていますか?
Question06.心筋梗塞の死亡率・再発率は?
II章 生体におけるコレステロール
Question07.コレステロールの体内での役割とその分布とは?
Question08.血液を循環するコレステロールについてですが,油であるコレステロールは水である血液には溶けないのでは?
Question09.LDLレセプターとは何ですか?
Question10.LDLコレステロールの正常値を教えてください
Question11.コレステロールを下げ過ぎるとがんになるのでしょうか?
Question12.コレステロールを下げ過ぎると認知症や脳の病気になりませんか?
Question13.コレステロールを下げ過ぎると脳出血が生じないか心配です
Question14.コレステロールを下げ過ぎると死亡率が上昇してしまうのでは?
III章 コレステロールと心筋梗塞の予防
Question15.心筋梗塞予防のためのコレステロール低下療法の原則は何ですか?
Question16.心筋梗塞を発症したことのある患者さんのコレステロール値が正常値より低い場合,薬を減らすべきでしょうか?
IV章 家族性高コレステロール血症とPCSK9の発見
Question17.家族性高コレステロール血症とは何ですか?
Question18.家族性高コレステロール血症の自然歴は?
Question19.第2,第3の家族性高コレステロール血症とは何ですか?
Question20.PCSK9が過剰で家族性高コレステロール血症になるなら,PCSK9が少なければコレステロール値は低いのですか?
Question21.家族性高コレステロール血症の治療は?
V章 コレステロール低下療法に用いられる薬剤
Question22.スタチンとはどんな薬ですか?
Question23.スタチンが心筋梗塞予防に効くという根拠について教えてください
Question24.スタチンで一律にリスクが減るなら,なぜ全員に処方しないのですか?
Question25.スタチンによる筋肉障害や横紋筋融解症とは?
Question26.「医師に勧められてもスタチンを飲む必要はない」といった週刊誌の情報により,患者さんから薬をやめたいと相談されました
Question27.エゼチミブについて教えてください
Question28.EPAやDHAについて教えてください
Question29.PCSK9阻害薬について教えてください
Question30.PCSK9阻害薬を始めたら,患者さんのLDLコレステロールが148mg/dLまで下がりました.薬を減らしたほうがよいでしょうか?
Question31.HDLコレステロールを増やす薬はありませんか?
VI章 リスク管理の諸問題
Question32.リスク管理全般について教えてください
Question33.夫婦でまったく同じ食べ物を食べている患者さん,一人は血液中のコレステロールが低く,もう一人が高い……なぜでしょうか?
Question34.糖尿病患者さんから「なぜ糖尿病なのにコレステロールを下げる薬を処方されるのか?的外れでは?」と言われました
Question35.コレステロールを下げ過ぎると低血糖のような問題が起こりませんか?
Question36.薬剤師さんから「コレステロールが正常値より低いのにスタチンを処方されているのは誤りでは?」と問い合わせが入りました
Question37.「私は心筋梗塞のハイリスクですか?」と患者さんから聞かれることはありませんか?
Question38.検診結果がLDLコレステロール148mg/dLで高値といわれ受診してきた患者さん,即治療開始でしょうか?
Question39.高コレステロールの場合,コレステロール制限食が治療の基本ではないのですか?
Question40.「酸化LDLが悪いので,スタチンをやめて抗酸化効果のあるビタミンEを内服したいです」と患者さんに聞かれたらどうすればよいでしょうか?
Question41.透析中の患者さんのコレステロール管理はどうしたらよいでしょうか?
Question42.高齢患者さんのコレステロールは気にしたほうがよいでしょうか?
索引
序文
本書は、心筋梗塞患者さんの指導に携わる医療従事者のために、コレステロール低下療法やコレステロールの管理といった治療・指導についての基本事項をわかりやすく解説したものです。
心筋梗塞患者さんには、リハビリテーション、生活指導、栄養指導、薬物指導、冠動脈インターベンションなど様々な方面から医師、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士、放射線技師、臨床工学技士、そのほか多くの医療スタッフの方が携わっています。
読者の皆さんは、コレステロール低下療法に関して様々な誤解や偏見を持っている方が受診してきた際や、あるいはマスコミから偏った報道がされたときなどに、患者さんへの指導が難しいと感じられたことはないでしょうか。
私は、多くの心筋梗塞患者さんの診療に携わってきました。心筋梗塞の再発予防に最大限の努力をしたにもかかわらず、残念ながら再発を少なからず経験しました。これは、再発予防の医療としては失敗であったわけで、何とかできないかとの問題意識を抱いてきました。
最近、PCSK9阻害薬が発売され、コレステロールを下げようと思えばいくらでも下げることができる時代になりました。しかし、コレステロール低下療法の基本が医療スタッフ間で共有できていないと、正しい治療法を多くの患者さんに届けられないという限界も感じています。
そこで本書は、心筋梗塞やコレステロール低下に関して専門外の先生方がよく抱かれる疑問や患者さんからよく質問される内容について、対応できるように逐一答える形式で執筆させていただきました。必要なときに必要なところを拾い読みしていただき、患者指導に使えると思いますし、通読いただければ全体像もわかるように努めました。本書により、基本的なコレステロール低下療法・コレステロール管理について、理解を深め、関係する医療スタッフ間で知識や情報を共有でき、よりよい診療を患者さんに届けられるようにと思います。ひいては、日本全体の心筋梗塞による死亡率がさらに低下することを願っています。
2018年2月
東海大学医学部内科学系循環器内科 教授
伊苅裕二
Ikariカテーテルで有名な伊苅先生が書かれた本です。心筋梗塞とはどのような病気か、また、心筋梗塞を予防するうえで重要な高コレステロール血症の治療はどのようにするのか、について、患者さんからの質問に答える形式で書かれています。実際に同じような質問を患者さんから受けたこともありますし、自分ならどう答えるだろうか、というようなことを考えながら読ませていただきました。脂質代謝というとVLDL、カイロミクロン、アポリポ蛋白などが出てきてなかなかハードルが高い部分がありますが、患者さんに説明する形式で書かれていますので、そのあたりについてもわかりやすい記載がされていますし、全体を通して読むと心筋梗塞の一次予防・二次予防や高コレステロール血症治療に関する十分な知識が得られるような構成になっています。
高コレステロール血症の治療は、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬など選択肢が増え、コレステロールを下げようと思えばかなりのところまで下げることができる時代になりました。しかしながら、コレステロールが高くてもそれだけで症状はありませんし、本当に治療が必要なのか、あるいは下げ過ぎるとかえってよくないのではないか、怖い副作用があるのではないか、といったことに疑問をもつ患者さんもおられます。数年前には日本人間ドック学会からLDLコレステロールの基準値を男性178mg/dLまで、45〜64歳の女性は183mg/dLまでとする、という発表があり、一般紙でも大きく報道されました。医学的に必ずしも正しいとはいえないような内容の週刊誌報道(コレステロールを下げるとがんが増える・認知症になる・死亡率が上がる、スタチンは副作用があるから飲んではいけない、など)も毎週のようになされており、記事のコピーをもって外来にいらっしゃる患者さんも少なくありません。高コレステロール血症の治療が必要な患者さんから、コレステロールを下げ過ぎるとよくないのではないですか、とか、スタチンは怖い薬ではないですか、と聞かれたときに、そうではないことを理解していただくようなきちんとした説明をするうえで、本書の内容は大変参考になるものと思います。
また、看護師、栄養士、薬剤師など心筋梗塞患者さんに関わる医療チームのメンバーが、心筋梗塞に対するコレステロール治療の重要性とその内容について正しい知識を共有することも治療において重要です。その意味で、医師以外の医療スタッフの方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
臨床雑誌内科123巻4号(2019年4月増大号)より転載
評者●関西医科大学内科学第二講座教授 塩島一朗