新訂NBI内視鏡アトラス
編集 | : 武藤学/八尾建史/佐野寧 |
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ISBN | : 978-4-524-24183-5 |
発行年月 | : 2023年6月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 316 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
NBI(narrow band imaging)内視鏡診断における貴重な写真を満載したアトラスの新訂版.持ち歩いていつでも参照できるハンディサイズながら,通常光,拡大内視鏡,病理像も盛り込み,咽頭・喉頭〜大腸・直腸を一冊で網羅.新訂版では経鼻の画像や超拡大内視鏡のアトラスも追加.NBIの開発時から先駆的に取り組んできた編者らによる,消化器科医,内視鏡医,内視鏡診療に携わる実地医家必携の一冊.
第1部 NBIの基礎知識
【NBIの原理と歴史】
【NBIのエビデンス】
A.咽頭〜食道
B.胃・十二指腸
【NBIを用いた最良の観察条件を得るためのコツ】
A.咽頭
B.食道
C.胃
D.十二指腸
E.結腸〜直腸
F.下部直腸〜肛門
第2部 NBIアトラス
T章 咽頭〜食道
【総 論】
1.診断体系
2.咽頭の解剖@(中・下咽頭の部位,亜部位)
3.咽頭の解剖A(亜部位の解剖学的な位置)
4.日本食道学会分類
5.食道扁平上皮の血管像@(IPCL分類)
6.食道扁平上皮の血管像A(拡大内視鏡による表在食道病変の微細血管分類)
7.Endocyto-NBI(超拡大内視鏡)
【アトラス】
●正常像
A.正常扁平上皮
●疾患別各論
<非腫瘍性病変>
A.毛細血管拡張
B.メラノーシス
C.炎症性変化
D.乳頭腫
E.扁平な乳頭腫
F.放射線照射後の変化
G.ESD後瘢痕
H.異所性胃粘膜
I.逆流性食道炎
J.非びらん性胃食道逆流症(NERD)
K.Barrett上皮
<腫瘍性病変>
A.多発ヨード不染帯
B.小さな表在癌(下咽頭)
C.極めて微小な上皮内癌(食道)
D.発赤調の0-Ua型病変(咽頭)
E.白色調の0-Ua型病変(咽頭)
F.上皮内腫瘍(食道):0-Ua型
G.咽頭および食道の表在癌の辺縁所見
H.隆起の目立つ表在咽頭癌:0-T型
I.隆起の目立つ表在食道癌:0-T型
J.口蓋垂の表在癌
K.軟口蓋の表在癌
L.喉頭の表在癌
M.隆起性腫瘍周囲に広がる表層進展(咽頭)
N.隆起性腫瘍周囲に広がる表層進展(食道)
O.血管の豊富な表在咽頭癌
P.血管の豊富な表在食道癌
Q.血管変化が目立たない下咽頭の表在癌
R.血管増生が目立たない表在食道癌
S.Barrett腺癌@
T.Barrett腺癌A
U.Endocyto-NBI使用例
<経鼻内視鏡像>
A.咽頭リンパ濾胞性びらん
B.Barrett食道
C.腫瘍性病変@(下咽頭表在癌)
D.腫瘍性病変A(下咽頭表在癌)
E.腫瘍性病変B(転移のあった下咽頭表在癌)
U章 胃・十二指腸
【総 論】
1.診断体系
【アトラス】
●正常像
A.正常胃体部腺粘膜
B.正常胃幽門腺粘膜
C.正常十二指腸粘膜
●疾患別各論
<非腫瘍性病変>胃
A.慢性胃炎,萎縮性胃炎
B.腸上皮化生(LBC+)
C.腸上皮化生(WOS+)
D.過形成性ポリープ
E.胃底腺ポリープ
F.胃癌と鑑別が必要な限局した胃炎(平坦)
G.胃癌と鑑別が必要な限局した胃炎(陥凹)
H.胃潰瘍瘢痕
I.胃黄色腫
J.血管病変
<腫瘍性病変>胃
A.胃腺腫(隆起型)
B.胃腺腫(陥凹型)
C.超高分化腺癌@
D.超高分化腺癌A
E.早期胃癌(分化型):0-T型
F.早期胃癌(分化型):0-Ua型@
G.早期胃癌(分化型):0-Ua型A
H.早期胃癌(分化型):0-Ua型B
I.早期胃癌(分化型):0-Ua+Ub型
J.早期胃癌(分化型):0-Ub型
K.早期胃癌(分化型):0-Uc型@
L.早期胃癌(分化型):0-Uc型A
M.早期胃癌(分化型):0-Uc型B
N.早期胃癌(分化型):0-Uc型C
O.早期胃癌(分化型):0-Uc型(UL+)
P.早期胃癌(未分化型):0-Uc型@
Q.早期胃癌(未分化型):0-Uc型A
R.MALTリンパ腫
S.胃カルチノイド腫瘍,A型胃炎(自己免疫性胃炎)
<非腫瘍性病変>十二指腸
A.胃上皮化生
<腫瘍性病変>十二指腸
A.腺腫(十二指腸乳頭部)
B.腺腫(十二指腸非乳頭部)
C.十二指腸癌(十二指腸乳頭部)
D.十二指腸癌(十二指腸非乳頭部)
V章 大腸〜直腸
【総 論】
1.診断体系
2.NBI国際(NICE)分類(CTNIGコンセンサス)
3.Endocyto-NBI(超拡大内視鏡)
【アトラス】
●正常像
A.Peyer板
B.正常大腸上皮
C.正常肛門管上皮
●疾患別各論
<非腫瘍性病変>
A.便
B.炎症性ポリープ
C.過形成性ポリープ
D.潰瘍性大腸炎
E.リンパ濾胞過形成
<腫瘍性病変>
A.隆起型腺腫
B.隆起型腺腫:villlous 10mm未満
C.平坦型腺腫:10mm未満
D.陥凹型腺腫
E.腺腫:Endocyto-NBI
F.側方発育型腫瘍(LST-G)
G.平坦型腺腫(LST-NG)
H.早期大腸癌:T型@
I.早期大腸癌:T型A
J.早期大腸癌:Ua型@
K.早期大腸癌:Ua型A
L.早期大腸癌:Uc型@
M.早期大腸癌:Uc型A
N.早期大腸癌:Uc型B
O.早期大腸癌:Ts+Uc型
P.進行大腸癌
Q.sessile serrated lesion
R.sessile serrated lesion with dysplasia
S.serrated adenocarcinoma
T.colitic cancer@(潰瘍性大腸炎関連high grade dysplasia)
U.colitic cancerA(潰瘍性大腸炎関連low grade dysplasia)
V.家族性大腸腺腫症
W.悪性リンパ腫
X.カルチノイド
Y.肛門尖圭コンジローマ
Z.肛門管癌
「NBI内視鏡アトラス」が発刊されてから,13年が経ちました.NBIの登場により,咽頭・喉頭から消化管の早期癌診断が飛躍的に向上したことは言うまでもありません.そして,今では,内視鏡による低侵襲治療の適応となる症例が増え,臓器温存・機能温存で長期生存できる患者さんを日々経験するようになりました.
NBIの技術は,内視鏡診断領域に革命を起こしたと言っても過言ではないと思います.これまで,類似技術が次々開発され,光デジタル法による画像強調観察が一般的に行われるようになりました.また,拡大内視鏡,ハイビジョン内視鏡,ハイビジョンモニターも普及し,より客観的な診断ができるようになる一方,光量の増加により管腔の大きな胃の観察もしやすくなりました.経鼻内視鏡における画質も格段に向上し,全消化管におけるNBI観察は通常径の内視鏡と遜色なくできるようになりました.すなわち,NBIによる観察は,いまや日常診療にはなくてはならないものになったと言えると思います.
旧版の序文にも述べましたが,本書の企画に際し,共編者の八尾建史先生,佐野寧先生,そして小生の意見は,「写真は鮮明でわかりやすく」,「診断はシンプルで再現性をもつように」,「解説は簡潔で理解しやすく」の3点でした.発刊後13年経ちますが,当時の写真や解説は,今でも色あせず十分通用するものであり,大変お忙しい中,快く執筆をお引き受けくださり貴重な写真を提供してくださった諸先生方に改めて敬意を表したいと思います.
この13年の間に,内視鏡技術は更に進歩しました.そこで,今回,最新の内視鏡画像を交えて本書を新訂版として改訂することとなりました.本改訂により,本書が,初心者の先生から,専門の先生にとっても,より理解が深まるものになることを期待しています.そして,今後も癌の早期発見が増えることを願っています.
追記
思えば,この本が発刊されたのは東日本大震災の年であり,地震と津波で多くの人々の命が奪われるとともに,世界最悪クラスの原子力発電所の事故により多くの人々の生活の場が奪われ,残された御家族や知人,友人,恋人などの心に大きな傷を残しました.いまでもそれは癒えることはないと思います.その後も,台風や地震による災害が何度もこの日本を襲い,そして,2020年2 月から現在に至るまで,COVID-19によるパンデミックは,対面で会う機会を激減させ,人々の生活を一変させました.さらに2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻,そして2023 年2 月のトルコ・シリアの大地震で,多くの命が奪われています.病気と闘う患者さんや医療者がいる一方,被災地や戦禍の地では,今でも明日が無事来るか不安で過ごす人々が多くいるのも事実です.我々,医療者は,目の前の患者さんのためにベストを尽くすしかありませんが,一日でも早く平和で安泰な日常が来ることを切に願います.
2023年4月
編集者を代表して
武藤 学
NBIに関する必須知識と内視鏡観察・診断のコツを学ぶことができる質の高いアトラス
『NBI内視鏡アトラス』が十数年の時を経て改訂された.初心にかえって本新訂版を読破したところ,実に新鮮で,心が躍る思いがした.各章の「アトラス」のパートは見開きの左頁に内視鏡所見,右頁に解説という統一した構成になっており,読みやすく,そしてわかりやすい.手軽に持ち歩くことができるように書籍のサイズがコンパクトでありながら,アトラスに掲載されている写真は,精細な拡大内視鏡所見も十分にわかるように工夫されており,すべての写真が鮮明で目を奪われる.
narrow band imaging(NBI)の市場導入時期に合わせて,私が編集した『特殊光による内視鏡アトラス』(日本メディカルセンター)が発行されたのが2006年5月である.その後,類似の技術が次々と発表されるとともに“特殊光”という用語そのものが曖昧に使用されるようになり,同時に国際的に通用する英語表現として整合する必要もあって,内視鏡観察法の目的別分類を提唱した.その結果,NBIは画像強調観察(image-enhanced endoscopy:IEE)の一つと位置づけられ,多くの内視鏡専門医の先生方をはじめ,実地医家の先生方にも評価されて,瞬く間に普及していった.そのような最中の2011年5月に『NBI内視鏡アトラス』の初版が発行されている.この17〜18年間にNBIは,内視鏡診断領域におけるIEEを大きく発展させ,同時に国際的に統一した内視鏡診断基準を作成する機運をもたらし,IEEに基づく診断学の世界的標準化を加速させてきた.そしてそれは,臨床研究のみならず,実際のがん医療に大きな貢献を果たしてきた.本書評を執筆する直前の2023年7月10日〜12日に,エジプトの消化器関連学会(EDDW)に参加して,世界内視鏡学会(WEO)主催の内視鏡診断学コースを欧州の先生方とともに担当した.このコースには,エジプトのみならず,リビア,エチオピア,ケニアといった北アフリカの若い先生方が300名ほど参加されていた.私は,早期胃がんの内視鏡診断とNBIを用いた拡大内視鏡診断の講演に続いて,インタラクティブな質疑応答を行った.アフリカの若い先生方は目を輝かせて,食い入るように講演を聴いていたのが印象的であった.日本で開発されたNBIの技術は,アジア諸国,欧米,南米のみならず,アフリカ大陸まで広がり,まさに世界規模での普及をみるまでになったものと実感している.本技術が世界的に普及することによって,がんの早期発見・診断に役立ち,世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献することを切に願っている.
本書は,内視鏡専門医を目指す若手医師,そして専門医,指導医の先生方にとって,NBIに関する必要不可欠な知識と内視鏡観察・診断のコツを学ぶことができる質の高いアトラスであり,編集に当たられた武藤学先生,八尾建史先生,佐野寧先生の内視鏡診断に対する真摯な姿勢と強い信念を感じ取ることができる.ぜひ座右に備えて,日常の内視鏡診療に役立てていただきたい.
臨床雑誌内科132巻6号(2023年12月号)より転載
評者●田尻久雄(世界内視鏡学会 理事長,東京慈恵会医科大学 名誉教授)