エキスパートをめざす循環器診療
1.心不全・ショック
総編集 | : 井上博/増山理 |
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担当編集 | : 増山理 |
ISBN | : 978-4-524-24065-4 |
発行年月 | : 2006年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 198 |
在庫
定価8,250円(本体7,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
循環器専門医をめざす若手医師のためのシリーズの第一弾。「循環器専門医研修カリキュラム」の達成目標に沿った構成を特徴とする。要点をまとめた「Check!!」と明快な「用語解説」、セルフチェックのための「診断知識のQ&A」、治療指針を示す「治療のケースアプローチ」を盛り込む。本書では、心不全の基礎知識から評価法、薬物・非薬物治療を第一線のエキスパートが解説。
I. エキスパートになるための基礎知識
1. 心不全とは何か(概念)
2. 心不全の分類
3. 心機能はどのように評価するか(評価法)
4. 神経体液性因子を理解する
5. リモデリングと心不全の予後
II. 心不全の評価法・検査法
1. 心不全の診察法
2. 心不全の画像診断法
3. 神経体液性因子による評価法─BNPの応用
III. 急性心不全・ショックの診断と治療
1. 急性心不全の評価法と治療戦略
2. ショックの分類と治療戦略
IV. 慢性心不全の診断と治療
1. 慢性心不全の診断と治療のガイドライン
2. 慢性心不全の薬物療法
3. 慢性心不全の原因疾患別治療戦略
4. 合併症を有する心不全の治療
V. 心不全の非薬物療法
1. 内科的治療の実際
2. 外科的治療の実際
本シリーズは、将来循環器専門医をめざす研修医または内科レジデントを対象に企画された。私たちは、若いドクターたちに循環器内科の臨床においては、単なる暗記は役に立たない、病態を考えると自ずと治療方針がたってくるので、そういう思考回路を育成することが最も重要だ、と吹聴してきた。
だからと言っても、記憶すべき知識はそれなりにある。特に、治療にかかわる大規模臨床試験の結果が続々と出てきて、循環器の臨床が必ずしも理屈(予想)どおりにはいかないことが判明してきた。心不全関連においても、「心不全というのは当然心臓の収縮が悪いから起こるのだ、と思っていたら、最近心臓の収縮が正常な心不全があることがわかってきた、しかもその頻度が従来考えられていたよりもずっと高い」とか「心臓の収縮が悪いと予後不良である、だから収縮を良くする薬剤(強心薬)を投与すると予後がよくなるかと思ったら、かえって悪くなった。そこで、心臓の収縮を悪くする薬剤を投与したら逆に予後だけでなく心臓の動きもよくなった」とか、枚挙にいとまがない。したがって、特に理屈どおりいかないことを中心にエッセンスを知っておくこと、理解しておくことは循環器内科診療を行う上で重要なのである。
慢性心不全は、わが国でもすでに約100万人が罹患しており、今後の高齢化社会の到来に伴い激増することが予想されている。一方、慢性心不全の病態または症候の概念は時代とともに大きく変遷してきた。その結果、治療の考え方も大きく変わった。最近の考え方に沿った心不全の教科書はここ2〜3年の間だけでも数冊以上刊行された。その中で、あえて本書を刊行したのは、診療を行う立場に立って現況での最先端なエッセンスを網羅しつつ生涯学習につながるような基本的な考えを学べる書が必要と考えたからである。そういう書こそが特に若い医師たちにとって重要ではなかろうか。したがって、本書では基本的な理解のための記載に割いたページ数が多く、最新の知識についてはエッセンスに留めた。ただし、将来発展しそうなところに関しては十分なページ数を割いたつもりである。本書により循環器に進む若いドクターがひとりでも増え、さらには心不全に関心を持ってくれる循環器専門医がひとりでも増えることを期待したい。
2006年5月
増山 理