看護学テキストNiCE
微生物学・感染症学
編集 | : 中野隆史 |
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ISBN | : 978-4-524-23798-2 |
発行年月 | : 2020年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 396 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
サポート情報
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2023年03月28日
最新情報に基づく補足
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
微生物に重点をおいた講義、感染症や感染対策に重点をおいた講義のどちらにも対応できるよう、微生物学編と感染症学編の2本立てとした教科書。老年看護学、母性看護学など看護学とのつながりも意識し、「性感染症と母子感染」「高齢者の感染症」などの項目を設けた。感染制御についての臨床的な内容も充実。紙面もビジュアルでわかりやすい!
1 微生物学・免疫学
第1章 微生物学総論
1 微生物学を学ぶ意味
2 微生物と環境,微生物とヒト
A 微生物と環境
B 微生物とヒト
3 微生物学の歴史
A 微生物が発見されるまで
B 微生物の発見
C 自然発生説の否定と病原微生物の発見
D ウイルスの発見
E 免疫学の発展とワクチンによる感染症の予防
F 抗生物質の発見と抗微生物療法の発展
4 微生物の種類と特徴
A 生物の分類と微生物
B 原核生物と真核生物
C 微生物の種類
D 微生物の大きさ
第2章 細菌総論(細菌の性質)
1 細菌の形態・構造と機能
A 細菌の形態とグラム染色性
B 細菌の構造
2 細菌の生育環境・増殖と遺伝・変異
A 細菌の代謝・生育環境と増殖
B 細菌の遺伝・変異
3 細菌の病原性
A 定着に関与する因子
B 細胞内侵入に関与する因子
C 細胞や組織の破壊をきたす因子
D 外毒素と内毒素
E 炎症反応を惹起する因子
F 殺菌から逃れる因子
4 常在細菌叢
第3章 細菌各論(主な細菌)
1 細菌の分類
2 グラム陽性球菌
A ブドウ球菌の仲間(スタフィロコッカス属)
B レンサ球菌の仲間(ストレプトコッカス属・エンテロコッカス属)
3 グラム陰性球菌
A ナイセリア属
B モラクセラ・カタラリス
4 グラム陰性好気性桿菌
A シュードモナス属とその仲間
B その他の臨床上問題となる主なグラム陰性好気性桿菌
5 グラム陰性通性嫌気性桿菌
A 腸内細菌科
B ビブリオ科ビブリオ属
C パスツレラ科ヘモフィルス属
6 グラム陽性桿菌
A 有芽胞菌
B CMNグループ
C その他のグラム陽性桿菌
7 抗酸菌
A 抗酸菌の分類
B 主な抗酸菌
8 嫌気性菌
A 主な嫌気性菌(有芽胞菌をのぞく)
9 らせん菌
A 主ならせん菌
10 特殊な細菌
A リケッチア
B クラミジア
C マイコプラズマ
第4章 ウイルス総論(ウイルスの性質)
1 ウイルスの形態・構造
A 大きさ
B 基本的な構造
C カプシド
D エンベロープ
E 形態
F ゲノムの性状
2 ウイルスの増殖
A 吸着
B 侵入
C 脱殻
D ゲノムの複製とタンパク質の合成
E ウイルス粒子の組み立て
F 放出
G ウイルスの増殖様式の特徴
3 ウイルスの遺伝・変異
4 ウイルスの病原性
A 感染の経路
B ウイルス感染と病気の発症
C 発症までの経過
5 ウイルスによる発がん
A 腫瘍ウイルスの発見
B ヒトの腫瘍ウイルス
C ウイルスによるがん化
第5章 ウイルス各論(主なウイルス)
1 DNAウイルス
A ポックスウイルス科
B ヘルペスウイルス科
C アデノウイルス科
D パピローマウイルス科
E ポリオーマウイルス科
F パルボウイルス科
G ヘパドナウイルス科
2 RNAウイルス
A ピコルナウイルス科
B オルソミクソウイルス科
C パラミクソウイルス科
D ニューモウイルス科
E コロナウイルス科
F フラビウイルス科
G トガウイルス科
H レオウイルス科
I カリシウイルス科
J ラブドウイルス科
K フィロウイルス科
L ブニヤウイルス目
M アレナウイルス科
N レトロウイルス科
3 肝炎ウイルス
A A型肝炎ウイルス(HAV)
B B型肝炎ウイルス(HBV)
C C型肝炎ウイルス(HCV)
D D型肝炎ウイルス(HDV)
E E型肝炎ウイルス(HEV)
4 プリオン
A プリオン病
B プリオンタンパク質の特徴
C ヒトのプリオン病の種類
第6章 真菌
1 真菌
A 真菌の性質
B 主な病原性真菌
第7章 原虫・蠕虫
1 原虫
A 原虫の性質
B 主な病原性原虫
2 蠕虫
A 蠕虫の性質
B 主な病原性蠕虫
第8章 免疫学
1 免疫の基本的なしくみ
A 抗原
B 免疫担当細胞
C 補体
D 抗体
E サイトカイン・ケモカイン
F 一次リンパ組織(骨髄・胸腺)
G 二次リンパ組織(脾臓・リンパ節・MALT)
H 主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原
2 自然免疫系
A 上皮におけるバリア
B 食細胞・補体による自然免疫
C NK細胞による自然免疫
D 樹状細胞の活性化
3 獲得免疫系
A 二次リンパ組織での抗原提示
B 液性免疫
C 細胞性免疫
D 免疫と老化
4 アレルギー
A I型アレルギー
B II型アレルギー
C III型アレルギー
D IV型アレルギー
5 自己免疫疾患
A 臓器特異的自己免疫疾患
B 臓器非特異的自己免疫疾患
6 感染防御免疫
A 自然免疫による感染防御
B 獲得免疫による感染防御
7 ワクチンと血清療法
A ワクチン接種の目的
B 有効成分によるワクチンの分類
C 予防接種法によるワクチンの分類(定期接種と任意接種)
D トラベラーズワクチン
E 医療従事者に必要なワクチン
G 血清療法
2 感染症学
1 感染症とは
A 感染・発症と宿主・病原体関係
B 感染の3要素・感染経路と侵入門戸
C 感染症の予防
2 感染症の検査・診断と治療
A 感染症の検査と診断
B 感染症の治療・化学療法
第10章 感染症各論1 全身性および器官別感染症
1 全身性ウイルス感染症
A 全身性ウイルス感染症とは
B 全身性ウイルス感染症の解説
2 発熱性感染症
A 発熱性感染症とは
B 発熱性感染症の解説
3 呼吸器感染症
A 呼吸器感染症とは
B 主な呼吸器感染症
C 呼吸器感染症の解説
4 消化器感染症・食中毒
A 消化器感染症・食中毒とは
B 主な消化器感染症・食中毒
C 消化器感染症・食中毒の解説
5 血液媒介感染症とウイルス性肝炎
A 血液媒介感染症
B ウイルス性肝炎
6 尿路感染症
A 尿路感染症とは
B 主な尿路感染症
C 尿路感染症の解説
7 神経系感染症
A 神経系感染症とは
B 神経系感染症の解説
8 皮膚・創傷感染症
A 皮膚・創傷感染症とは
B 皮膚・創傷感染症の解説
9 眼感染症
A ウイルス性眼疾患
B 細菌・原虫性眼疾患
第11章 感染症各論2 その他の感染症
1 性感染症と母子感染
A 性感染症と母子感染の関係,リプロダクティブヘルス
B 性感染症の特徴
C 性感染症各論
D 母子感染
E 母子感染各論
2 高齢者の感染症
A 高齢者の感染症の特徴
B 高齢者に多い感染症
C 医療機関で集団発生しやすい高齢者の感染症
3 日和見感染症
A 日和見感染症とは
B 主な起因微生物と日和見感染症の特徴
4 多剤耐性菌による感染症・菌交代症
A 耐性菌とは
B 耐性機序
C 主な耐性菌と感染症の特徴
D 菌交代症
5 敗血症
A 敗血症とは
6 人獣共通感染症
7 新興・再興感染症
A 節足動物媒介ウイルス感染症
B ウイルス性出血熱(VHF)
C SARS・MERS・SFTS
D ハンタウイルス肺症候群(HPS)・腎症候性出血熱(HFRS)
E バイオテロ関連の病原体
第12章 感染制御
1 感染対策総論
A 市中感染および医療関連感染(院内感染)の定義とその時代的変化
B 感染の3要素
C 内因感染と外因感染
D 感染予防策の考え方の歴史的変化と標準予防策
E 抗菌薬の適正使用
F 隔離
G バイオセーフティ
H 感染症法(1〜5類感染症)
2 消毒と滅菌
A 主な滅菌法
B 主な消毒法
3 院内感染対策
A 院内感染対策に必要な組織と人材
B サーベイランス
C アウトブレイク
D 感染症法にかかわる届け出
E トリアージ
F 標準予防策と感染経路別予防策
G 新興・再興感染症対策
H 医療機関の工事に伴う真菌症の発症
I 医療廃棄物
付録−本書で扱う微生物と感染症の対応表
索引
はじめに
私は医学部の教員ですが、看護専門学校、看護学部でも微生物学を20年以上教えてきました。いつも最初にお話しするのは「微生物の知識が要いらない人はいない」ということです。将来どのような領域に進もうとも、微生物が起こす病気=感染症の患者さんは必ずいますし、感染症を予防することが必要になります。さらに医療専門職者としてはもちろん、社会人としても微生物・感染症の知識は必要なのです。たとえば自分に子供が生まれたなら、予防接種についていろいろ考えて判断しないといけなくなります。
教員として微生物学を教えながら、いままで何冊かの教科書を使いましたが、各々に一長一短がありました。それなら自分で一から教科書をつくりたいと思うようになりました。その気持ちをすべて注ぎ込んだ本書は、類書にない以下のような特徴をもっています。
○微生物・感染症を「面」で理解する
微生物学の各論では、微生物の分類順で勉強することが一般的です。しかし、患者さんは「私は○○菌に感染しているみたいです」といって病院を訪れるわけではありません。たとえば肺炎のような症状であなたの前に現れるわけです。そういう意味では、微生物が起こす病気を臓器・器官別に分けて、その順番で勉強したほうがより実際に近いかもしれません。ところが現場では、病気の原因となる微生物がいったん明らかになると、その続発症について予測して看護をしないといけませんし、同時に他の患者さんにうつさないよう感染予防策についても考えないといけません。すると「その微生物がもっている性質」を理解しておく必要があります。そのためには、微生物の分類や性質を理解することがやはり重要なのです。
本書では、微生物の分類を「縦糸」、臓器・器官別感染症の分類を「横糸」として、両方を記載することにしました。すると、どちらの切り口でも勉強することができますし、重要な微生物・感染症は本書では2回出てくることになります。たとえばインフルエンザ(ウイルス)は、「ウイルス各論」の「RNA ウイルス」のところと、「感染症各論」の「呼吸器感染症」のところで出てきます。あなたの頭のなかで、縦糸と横糸が織り合わさって、1つの布=面として、2次元で微生物・感染症を理解することができるようになります。
○臨地実習や生涯学習の「現場」でも使える
現場に出ると、たとえば患者さんの検査データを見ることになります。そこにはいろんな微生物の名前が出てきます。いままで聞いたことがない名前であれば、教科書で調べたいと思うでしょう。本書は、できる限りたくさんの微生物を収載するようにしました。せめてどんな種類の微生物かがわかるだけでも、その微生物の性質がわかりますので、その患者さんのケアについて考えることができますし、より深く調べるための一助となります。
○「総論」を重視している
本書を編集しているときに、新型コロナウイルス感染症が発生しました。もちろん、その時点ではどの教科書にも載っていないものです。さきほどは、できる限りたくさんの微生物を載せる方針だ、といいましたが、まだ知られていない病原体を記述することはできません。つまり、教科書の各論はいずれ古くなる可能性があるのです。しかし、総論で述べられている「原理・原則」は基本的には変わりません。たとえば本書では、感染症は感染源・感染経路・感受性宿主の「3要素」がそろわないと広がらない、と説明しています。この原則は、今回の新型コロナウイルス感染症にもそのまま当てはまります。もちろん、今後発生するかもしれない未来の「新興感染症」にも対応可能であり、その意味では古くならないのです。
その他にも、本書では、微生物学・感染症学に関する基本的な考えかたについて、理解しやすい記述と、わかりやすい模式図を掲載したこと、学びを深められるコラムや用語解説を多数設けたこと、微生物学の各論に出てくる微生物と感染症各論で扱う感染症との対応を一覧表にしたことなど、さまざまな工夫を施しています。
みなさまがこの教科書を活用し、そして長く使ってもらうことによって、多くの患者さんを助けてくださることを期待しています。
末筆ですが、本書がよりよい教科書になるようご提案くださり、絶えずご助力いただきました、南江堂編集部の竹田博安様、山口慶子様、赤間恵様に感謝申し上げます。
令和2年の秋
中野隆史