書籍

基礎から学ぶ医療関連感染対策改訂第3版

標準予防策からサーベイランスまで

: 坂本史衣
ISBN : 978-4-524-23758-6
発行年月 : 2019年2月
判型 : B5
ページ数 : 192

在庫あり

定価3,080円(本体2,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

感染対策を“しっかり学べる”テキストの改訂版。感染対策の基礎知識から臨床において議論の分かれる点まで網羅。こまかい予備知識がないビギナーはもちろん、専門看護師、認定看護師をめざしている方にも有用。今改訂では、関連するガイドラインに基づく記述のアップデートに加え、輸入感染症対策の項目を新設。臨床での具体的な感染対策に活用できるチェック項目などを提示し、実用的な部分も意識して解説を加えた。患者の安全を守る医療者として必須の知識がこの一冊に。

第I章 感染の成立と予防に関する考え方
 A 医療関連感染とは
 B 感染の成立を疫学的な視点でとらえる
 C 感染成立の連鎖に基づく医療関連感染予防の考え方
第II章 基本的な感染予防策
 1 標準予防策
 2 手指衛生
  A 手指衛生とは
  B 手指衛生の感染予防効果
  C 手指を介した微生物の伝播様式
  D 手指衛生のタイミング
  E 手指衛生の方法と選択基準
  F 手術時手洗い
  G 効果的な手指衛生を行うためのポイント
  H 手指衛生の実施率を上げるためのポイント
 3 個人防護具の活用
  A 手袋
  B ガウン,エプロン
  C 外科用マスク,ゴーグル,フェイスシールド
 4 感染経路別予防策
  A 接触予防策 総論
  B 接触予防策 各論
  C 飛沫予防策
  D 空気予防策
 5 新興感染症対策
  A 新興感染症とは
  B 新興感染症対策を構築するための情報収集
  C 新興感染症の早期発見と隔離
第III章 医療器具・処置関連感染対策
 1 血管内留置カテーテル由来血流感染
  A 血管内留置カテーテル由来血流感染とは
  B 微生物の侵入経路
  C 血管内留置カテーテル由来血流感染対策
 2 膀胱留置カテーテル関連尿路感染
  A 膀胱留置カテーテル関連尿路感染とは
  B 微生物の侵入経路
  C 膀胱留置カテーテル関連尿路感染対策
 3 人工呼吸器関連肺炎
  A 人工呼吸器関連肺炎とは
  B 微生物の侵入経路
  C 人工呼吸器関連肺炎対策
 4 手術部位感染
  A 手術部位感染とは
  B 手術部位感染のリスク因子
  C 手術部位感染対策
  D 手術室の環境整備
第IV章 職業感染予防
 1 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染
  A 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染による感染リスク
  B 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染の予防
  C 針刺し・切創・汚染発生時の対応
 2 結核
  A 結核の現状
  B 結核の病態と伝播経路
  C 結核の早期発見と隔離
  D 医療施設における結核対策
 3 流行性ウイルス感染症と予防接種
  A 麻疹,水痘,風疹,流行性耳下腺炎
  B 季節性インフルエンザ
  C 流行性角結膜炎
第V章 洗浄,消毒,滅菌
 A 再処理工程の選択
 B 再処理工程の中央化
 C 使用済み医療器具の回収と搬送
 D 血液,体液の固着予防
 E 洗浄
 F 消毒
 G 滅菌
 H 開封・調製後の消毒薬の使用期限
第VI章 医療環境の管理
 1 医療環境
 2 建築・改築・解体工事におけるリスク評価と管理
  A 建築・改築・解体工事に伴う医療関連感染リスク
  B 工事前のリスクアセスメントと対策
 3 水質管理
  A レジオネラ対策
  B 加湿器の管理
  C 製氷機の管理
  D 透析用水の管理
  E 生花の取り扱い
 4 空調管理
  A 病院環境における空気の清浄度区分
  B 陰圧室(空気感染隔離室)と陽圧室(防護環境)
 5 清掃
  A 接触頻度が低い水平面の清掃(床など)
  B 壁,ブラインド,窓,カーテンなどの垂直面の清掃
  C 高頻度接触環境表面の清掃
  D 血液・体液汚染が生じた場所の清掃
  E 手術室の清掃
  F 免疫不全患者の病室の清掃
  G 清掃作業における注意点
 6 洗濯
  A リネン
  B 布団,枕
  C マットレス
 7 感染性廃棄物の管理
 8 給食
  A 特定給食施設における食品衛生管理
  B 病棟配膳室における食品衛生管理
  C 食中毒の集団発生の早期発見と対応
第VII章 部門別感染対策
 1 外来における感染対策
  A 外来における医療関連感染リスク
  B 外来における標準予防策のポイント
  C 外来における感染経路別予防策のポイント
  D 他の部門や医療施設との情報共有
 2 検査室における感染対策
  A 検体検査を行う医療従事者の感染予防(バイオセーフティ)
  B 検査室関連感染とは
  C バイオセーフティガイドライン
  D 検査室に求められるバイオセーフティレベル
  E バイオセーフティレベル2検査室で行う感染対策
 3 NICUにおける感染対策
  A NICUに収容される新生児の感染リスク
  B NICUの特性に基づく感染対策のポイント
第VIII章 医療関連感染サーベイランス
 1 医療関連感染サーベイランスの定義と意義
 2 アウトカムサーベイランス
  A 対象の選択
  B アウトカム指標
  C アウトカムデータの評価
 3 プロセスサーベイランス
 4 サーベイランスデータのフィードバック
索引

改訂第3版の序

 第2版が発行された2012年3月から早くも7年が過ぎようとしている。その間、医療関連感染の領域ではさまざまな変化があった。なかでも特筆すべきは、効果的な治療薬が限定される薬剤耐性菌の出現であろう。2017年に世界保健機関(WHO)は、薬剤耐性菌の出現速度に抗菌薬開発が追いついておらず、治療の選択肢が枯渇しつつあるとの警告を発した。Clostridioides(Clostridium) difficile感染症も増加傾向にある。接触伝播するこれらの病原体は国内の医療施設においてしばしば検出されており、施設間の患者の移動に伴い、地域全体への拡散が懸念されている。
 新興・輸入感染症も世界各地で発生した。例えば、2012年9月以降、中東呼吸器症候群(MERS)の発生が続いており、2015年には韓国で輸入例が発端となった大規模な集団感染が起きた。年からは散発的だが、中国を中心に鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの感染例が報告されている。2014年から2016年には西アフリカで、2018年からはコンゴ民主共和国でエボラウイルス疾患が流行している。また、新型インフルエンザは今後必ず出現するといわれている。これらはいずれも持ち込まれれば医療施設内で伝播し得る感染症であり、多くの人やモノが国や地域間をかつてないスピードで移動している現在、どの医療施設においてもリスクアセスメントに基づく備えが必要である。
 医療関連感染対策については、一部の病原体に対する接触予防策の効果が疑問視されるようになった一方で、環境表面を介した病原体の伝播を防ぐための方法が熱心に模索されている。長年廃れていた鼻腔培養と除菌は、手術部位感染対策として再び注目を浴びている。医療器具関連感染予防では、ケアバンドルを用いた多角的介入の効果が示され、手指衛生の推進要因に関する研究も進んでいる。2018年に市中で発生した麻疹や風疹の流行は、医療施設の職員がワクチンで予防可能な感染症に対する免疫を獲得するための体制を見直す機会となった。
 第3版では医療関連感染を取り巻くこれらの状況を可能な限り反映させるために、第2版に大幅な加筆修正を行った。また、初学者の理解を助けるよう、重要語句をハイライトし、説明を加えた。可能な限り主観を排除し、対策の根拠を明確にすること、また主観を述べる場合はそれと分かるようにするスタンスはこれまでと変わらない。さらに、南江堂出版部の佐藤氏と松本氏によりレイアウトが一新され、読みやすい紙面になったのは見ていただいての通りである。
 本書がこれからも医療関連感染対策にかかわるあらゆる方にとって日々の悩み事を解決する手助けとなり、また、学生の皆様にとっては医療関連感染対策に興味をもつきっかけとなれば幸いである。

2019年2月吉日
坂本史衣

9784524237586