看護学テキストNiCE
病態・治療論[8] 脳・神経疾患
編集 | : 川上徳昭/綿貫成明 |
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ISBN | : 978-4-524-23748-7 |
発行年月 | : 2020年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 308 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
専門基礎分野において疾病の病態・診断・治療を学ぶためのテキストシリーズ(全14冊)の脳・神経疾患編。医師と看護師の共同編集により、看護学生に必要な知識を網羅。(1)さまざまな症状を理解できる、(2)診断の進め方、考え方がわかる、(3)臨床看護に結びつく知識が得られる、の3点を重視して構成している。
序章 なぜ脳・神経疾患について学ぶのか
1 医師の立場から
2 看護師の立場から
第I章 脳・神経の構造・機能と障害・症状
1 神経細胞と神経伝達
1 ニューロン(神経細胞)
2 中枢神経系
1 脳
2 脊髄
3 脳室系と髄液循環
4 脳の血管
3 末梢神経系
1 脳神経
2 脊髄神経
第II章 脳・神経疾患の診断・治療
1 神経症状からの診断の進め方
1 意識障害
2 頭蓋内圧亢進症状
3 運動機能の障害
4 知覚障害
5 言語障害
2 脳・神経の検査
1 画像検査
2 その他の検査
3 脳・神経疾患の治療の考え方
1 脳・神経疾患の治療
第III章 脳・神経疾患 各論
1 脳血管疾患
1 脳梗塞,一過性脳虚血発作(TIA),慢性脳循環不全症
2 脳出血
3 くも膜下出血
4 もやもや病
5 血管奇形
6 脳静脈・脳静脈洞血栓症
7 脳動脈解離
8 静脈性梗塞
2 脳腫瘍
1 悪性腫瘍
2 良性腫瘍
3 小児脳腫瘍
3 脊椎・脊髄疾患
1 頸椎変性疾患(頸椎症),腰椎変性疾患(腰椎症)
2 脊髄血管障害,脊髄動静脈奇形
3 脊髄損傷
4 脊髄腫瘍
5 その他の脊椎・脊髄疾患:脊髄炎,脊椎炎
4 神経変性疾患,脱髄疾患
1 神経変性疾患
2 脱髄疾患
5 筋疾患,神経筋接合部疾患
筋疾患(ミオパチー)
1 筋ジストロフィー
2 先天性ミオパチー
3 筋炎(炎症性筋疾患)
4 ミトコンドリア病
5 周期性四肢麻痺
神経筋接合部疾患
6 重症筋無力症(MG)
6 脳・神経系の感染症
1 髄膜炎
2 脳炎,脳症
3 脳膿瘍
4 ポリオ
5 HTLV-1関連ミエロパチー(HAM)
6 後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する脳障害
7 神経梅毒
8 破傷風
9 プリオン病
7 末梢神経障害(ニューロパチー)
1 単ニューロパチー(モノニューロパチー)
2 多発性単ニューロパチー
3 ポリニューロパチー
4 機能性疾患
8 てんかん
1 成人のてんかん
2 小児のてんかん
9 認知症
1 アルツハイマー型認知症
2 血管性認知症
3 レビー小体型認知症(DLB)
4 前頭側頭葉変性症(FTLD)
5 治療可能な認知症
6 認知症と区別すべき病態・疾患
10 その他の神経内科疾患
1 髄液の異常による病態
2 中毒
3 ナルコレプシー
4 先天代謝異常
5 全身疾患
11 機能的脳神経外科疾患
1 不随意運動がみられる疾患
2 てんかん
3 慢性疼痛
4 神経血管圧迫症候群
5 脳卒中後遺症
12 頭部外傷
1 頭蓋骨骨折
2 急性硬膜外血腫
3 急性硬膜下血腫
4 外傷性くも膜下出血
5 脳挫傷
6 びまん性軸索損傷
7 慢性硬膜下血腫
13 小児脳神経外科疾患
1 発生異常
2 小児の脳血管疾患
3 小児脳腫瘍
4 小児期水頭症
5 小児の頭部外傷
索引
はじめに
医療の根本にあるもの、それは「目の前にいる患者の異常状態を正確に把握し、それに対して適切な処置を下すこと」と言える。医学部卒業後、ひたすら脳神経外科臨床に携わり30年になるが、その第一歩となった、すなわち医師として最初の患者に接したときの緊張感と感激は今でも鮮明に記憶されている。
「知らないことは恥である。しかし、覚えることは恥ではない。」これは医学部時代の臨床実習の時に、呼吸器内科の教授がおっしゃっていた言葉で、いつも念頭に置いている。医療は基本的に過ちが許されない仕事である。しかし、人間である以上、さらに医学という学問の奥深さと日進月歩が故に、前述の医療の根本を必ずしも常に遂行できるわけではない。「人間は考える葦(あし)である」というパスカルの言葉のとおり、人間は本当に弱い動物である。中でも脳をはじめとする神経組織は脆弱な部分と言える。だが、そういった弱い面をカバーするための知恵が、私たちにはある。それが脳(とくに大脳)の働きである。また、人間は一人ではない。チームワークで個々の不足した、不得手な面をお互いに補うことが可能である。一人で医療をすべて完璧に網羅することなど不可能であるが、チームの力を得て知らなかったことを克服し、覚えることよって次に生かすことができる。このような姿勢は、患者に対しての最低限のエチケットであると思う。ナイチンゲールも、「どんな仕事をするにせよ、実際に学ぶことができるのは現場においてのみである」と言っている。歴史的に見ても、臨床医学において経験的要素はかなりの重要性を持っており、医学が発達した今日においても、それに変わりはない。しかし、医学全体の進歩とともに、その中に論理性や倫理観が組み込まれてきていることも事実である。患者の異常状態の把握とそれに対する適切な処置のためには、より論理的、倫理的な姿勢をもって臨まなければならない。そのためにも、わからないことに出合えば、そのたびに教科書に戻るなどして、改めて理解を深める必要がある。
本書は、看護学生の教科書として役立てていただくことが第一であるが、卒業後の臨床においても、必要に応じて復習できるという役目も持たせるために、学生にとってはやや高度と思われることまで記している。本書を教科書として使われる教員の方によって、本書から教授する内容を適宜取捨されることを期待する。
本書制作に当たって、構成、記述、用語、全体の統一など、綿貫成明教授はじめ編集・執筆協力の先生方の労を多とした。刊行に当たっては、当初より多大な熱意をもって、根気よく一字一句まで確認し、編集上の多くの難題を見事に処理して下さった、南江堂の鈴木詠子氏、松本岳氏に深謝する。
2020年1月
川上徳昭