ケア場面で考える ICU/CCUのくすり
なるほど! 処方意図,使い分け,与薬方法がよくわかる
編集 | : 茂呂悦子/長谷川隆一/前田幹広 |
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ISBN | : 978-4-524-23479-0 |
発行年月 | : 2024年10月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 416 |
在庫
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
ICU/CCU領域の9つの臨床場面について,治療・ケアの考え方の解説と,薬剤情報の解説の2つのパートで構成したハンドブック.考え方のパートでは,クリティカルケア領域でのモニタリング・アセスメントや薬剤の処方意図・使い分けのポイントを,また薬剤情報のパートでは,副作用や要注意患者のほか,併用禁忌,配合禁忌,希釈方法,診療ガイドラインの推奨,薬剤師のアドバイスなどを詳しく解説した.
1 循環を安定させる―強心薬,昇圧薬,降圧薬,抗不整脈薬
🅰 血圧低下に対応する
メモ 循環の3要素からみるショックの分類
🅱 血圧上昇に対応する
🅲 不整脈に対応する
メモ 徐脈への対応1
🅳 循環を改善させる主な薬剤
強心薬,昇圧薬
アドレナリン/ドパミン/ノルアドレナリン/バソプレシン/フェニレフリン/ドブタミン/ミルリノン
Q&A γの算出方法は?
Q&A バソプレシン(AVP)を使うのはどのようなときですか?
Q&A ドパミンとドブタミンはどのように使い分けしていますか?
降圧薬
ニカルジピン/ニトログリセリン/硝酸イソソルビド/アムロジピン/エナラプリル/ロサルタンカリウム/ビソプロロールフマル酸塩/カルベジロール
Q&A ニカルジピンを投与すると酸素化が悪くなるのはなぜですか?
Q&A 定時処方の降圧薬を中止するのはどのようなときですか?
抗不整脈薬
アミオダロン/リドカイン塩酸塩/ランジオロール塩酸塩/ベラパミル塩酸塩/ジルチゼム塩酸塩
Q&A 心房細動に対してはリズムコントロールとレートコントロールのどちらを行うべきですか?
Q&A 抗不整脈薬のジルチアゼムを降圧目的で用いるのはどのようなときですか?
コラム 配合変化をどこまで気にするの?
2 痛み・不穏・せん妄に対応する―鎮痛薬,鎮静薬,抗精神病薬,抗不安薬
🅰 痛みに対応する
🅱 不穏に対応する
🅲 せん妄に対応する
🅳 痛み・不穏・せん妄に対応する主な薬剤
鎮痛薬
フェンタニル/モルヒネ塩酸塩/ケタミン/ブプレノルフィン/ペンタゾシン/アセトアミノフェン/トラマドール/ロキソプロフェン/セレコキシブ
鎮静薬
ミダゾラム/プロポフォール/デクスメデトミジン/ロラゼパム
Q&A 鎮痛薬の投与後に血圧が低下した場合はどのように対応すればよいですか?
Q&A 鎮痛薬に抗不安作用はありますか?
抗精神病薬
ハロペリドール/クエチアピン/リスペリドン
Q&A ハロペリドールやリスペリドンは「寝たら中止して」と指示されるのはなぜですか?
Q&A クエチアピンはどのような患者に使用しますか?
コラム 重症患者における薬剤の投与経路について
3 敗血症患者に適切に介入する―抗菌薬,抗真菌薬,抗ウイルス薬
🅰 敗血症に対応する
🅱 敗血症に対応する主な薬剤
抗菌薬
アンピシリン/アンピシリン・スルバクタム/ピペラシリン・タゾバクタム/セファゾリン/セフトリアキソン/セフェピム
Q&A 血液透析と持続的血液透析のときで投与のタイミングが異なるのはなぜですか?
メロペネム/バンコマイシン/レボフロキサシン/アジスロマイシン/メトロニダゾール
Q&A バンコマイシンは投与時間や量の管理が厳密なのはなぜですか?
抗真菌薬
ホスフルコナゾール/ボリコナゾール/ミカファンギン/アムホテリシンBリポソーム製剤
抗ウイルス薬
アシクロビル/ガンシクロビル/ペラミビル/レムデシビル
4 イン・アウトバランスを適正化させる―輸液,輸血,利尿薬
🅰イン・アウトバランスに対応する
A-1 イン・アウトバランスを評価する
メモ 酸素はどのように運ばれるか?
メモ 蒸留水はなぜ輸液に用いないのか?
A-2 脱水に対応する
メモ 分類別の症状
A-3 溢水に対応する
メモ 尿が出ない? 利尿薬,もしくは輸液?
🅱イン・アウトバランスを適正化させる主な薬剤
輸血用血液製剤
赤血球液/血小板輸液/血漿輸液製剤/アルブミン製剤
Q&A 輸血は単独ルートがよいといわれるのはなぜですか?
Q&A 輸血はなぜ末梢ルートが第一選択になるのでしょうか?
Q&A 新鮮凍結血漿の大量投与時にはなぜカルシウム補正が必要になるのでしょうか?
利尿薬
フロセミド/カンレノ酸/トルバプタン/カルペリチド
Q&A ICUにおける利尿薬の使い分けを教えてください
5 血栓を予防する―抗凝固薬,抗血小板薬
🅰凝固,血小板,線溶の機能を評価する
メモ1 出血リスクのスコアリングツール
メモ2 PT・APTTの測定方法と解釈
メモ3 ヘパリン置換
🅱血栓症に対応する
メモ4 海外ガイドラインでの薬物的予防の推奨
メモ5 心房細動患者への抗凝固療法
🅲血栓を予防する主な薬剤
抗凝固薬
ワルファリン/未分画ヘパリン/エドキサバン/アピキサバン/リバーロキサバン/タビガトラン
Q&A 抗凝固薬はどのように使い分けていますか?
Q&A 抗凝固薬の投与量は何を指標に決めていますか?
抗血小板薬
アスピリン/クロピドグレル/プラスグレル/シロスタゾール
Q&A 抗血小板薬はどのように使い分けていますか?
Q&A 抗血小板薬は術後何を指標にして再開すればよいですか?
6 消化管のコンディションを整える―潰瘍予防薬,下剤,蠕動促進薬
🅰潰瘍に対応する
メモ 循環血流量減少性ショックに注意する
メモ クッシング潰瘍に対応する
🅱下痢に対応する
メモ 腸管マネジメントで多臓器不全を防止する
🅲便秘に対応する
🅳消化管のコンディションを整える主な薬剤
潰瘍予防薬
オメプラゾール,エソメプラゾール/ファモチジン
Q&A 消化性潰瘍予防薬はどのように使い分けていますか?
下剤,蠕動促進薬
酸化マグネシウム/ピコスルファート/センノシド/ナルデメジン/マクロゴール4000/大建中湯/メトクロプラミド
Q&A 透析患者で酸化マグネシウムを内服しないのはなぜですか?
Q&A 下痢を認める場合,下剤は即,中止したほうがよいですか?
Q&A 下剤の服用について「コップ一杯(多め)の水」と書かれていますが,経管栄養や静脈栄養中にも必要ですか?
7 炎症・発熱をコントロールする―ステロイド,NSAIDs
🅰炎症反応に対応する
🅱発熱に対応する
🅲炎症・発熱をコントロールする薬剤
ステロイド
プレドニゾロン/デキサメタゾン/メチルプレドニゾロン/ヒドロコルチゾン
Q&A ステロイドはどのように使い分けていますか?
Q&A ステロイド投与は精神状態に影響しますか?
8 栄養状態を維持・改善させる
―高カロリー輸液,アミノ酸製剤(肝不全用),アミノ酸製剤(腎不全用),脂肪乳剤
🅰栄養状態の維持・改善への対応
メモ1 サルコペニア
メモ2 リフィーディング症候群
🅱栄養状態を維持・改善させる主な薬剤
高カロリー輸液
エルネオパ
Q&A 「ワルファリンを服用している場合,高カロリー輸液の投与に注意が必要」と聞いたのですが,なぜですか?
Q&A 静脈栄養ルート内で一部,白くなっているのですが,これは薬剤の配合変化ですか?
アミノ酸製剤(肝不全用)
アミノレバン
アミノ酸製剤(腎不全用)
キドミン
脂肪乳剤
ダイズ油
Q&A イントラリポス輸液は卵や大豆にアレルギーがある患者には使用してはいけないのですか?
Q&A イントラリポス輸液を投与する際は通常の点滴ラインで問題ないですか?
9 不眠,けいれんに対応する―睡眠薬,抗けいれん薬
🅰不眠に対応する 齋藤浩二
メモ PADISガイドラインと鎮痛の重要性
メモ モニタリングによる睡眠評価は?
メモ ベンゾジアゼピン系薬による鎮静
🅱けいれんに対応する
メモ てんかん? けいれん?
メモ 不随意運動
🅲不眠,けいれんに対応する主な薬剤
睡眠薬
ゾルピデム/ラメルテオン/スボレキサント/レンボレキサント
Q&A 朝寝てしまう人は睡眠薬を中止したほうがよいですか?
抗けいれん薬
ジアゼパム/フェニトイン,ホスフェニトイン/フェノバルビタール/レベチラセタム
Q&A 内服後に入眠できない場合,どれくらい空ければ次の指示薬を内服してよいですか?
Q&A 抗けいれん薬は何を指標に投与量を調整すればよいですか?
Q&A 抗けいれん薬の経口薬と注射薬はどのように使い分けていますか?
コラム 添付文書を読むための用語解説
はじめに
クリティカルケア領域では,患者の状態が変化しやすいため,悪化の兆候を早期に発見・対応することで重篤化を防止し,回復を支援することが重要です.そのためには,緻密な観察と疾患や病態,治療を踏まえた適切なアセスメントと対応が求められます.
薬物療法はクリティカルケア領域で日常的に行われていますが,効果を最大限に,かつ,負の影響を最小限にする必要があります.例えば,鎮痛目的でモルヒネを投与することは,患者の苦痛を緩和し苦痛によって生じる交感神経の興奮など有害な生体反応を防止する効果が期待できます.しかし,呼吸抑制や便秘などを引き起こし,人工呼吸器からの離脱や栄養管理を困難にするなど回復を阻害する一因となる場合もあります.したがって,看護は,対処すべき様々な事象において,患者の状態を適切にアセスメントし,非薬理学的介入を実施・評価しながら薬物療法の必要性を判断することが必要です.
私は集中治療室に異動した際,集中治療領域で用いられる様々な薬剤について作用と副作用,作用の発現時間などをメモ帳にまとめ,ポケットに入れて持ち歩いていました.しかし,知りたい情報を集約した本は見当たらず,添付文書は複雑で情報量が多いため読むのに抵抗がありました.そのため,複数の本や資料から自分が欲しい情報を抜き取りメモ帳にまとめていました.
今回,集中治療や救急,急性期病棟などクリティカルケア領域に勤務する看護師の方々を対象にした薬に関する本を編集する機会をいただき,看護師の目線で知りたい情報が集約された一冊にしたいと考えました.
この本の特徴は,1つの場面を本論と各論の2部構成とした点です.本論では,臨床で遭遇しそうな9つの場面について,目の前の事象をどのようにアセスメントして非薬理学的介入と薬物療法を行うのか,薬物療法で用いられる主な薬剤の種類と特徴,処方意図,使い分けのポイントなどを簡潔にわかりやすく解説しています.また,各論では総論で挙げた9つの場面に関連する個々の薬剤情報(作用,効果,使用方法,副作用,禁忌,希釈法など)を便覧形式で解説しています.さらに,看護師の方々へのヒアリングで得られた薬剤に関する疑問をQ&A方式で解説しています.
クリティカルケア領域に配属された新人看護師の方や異動して新たな学びの機会となっている方にとっては,日々の実践経験と結びつけながら薬剤について学ぶことができる構成になっています.そして,後輩指導に関わっている中堅看護師の方々には,知識の確認や今更聞けない「こんな時どうするのが最善なのかな」という疑問の解決に役立てていただけると考えます.
この本は,いろいろな読み方・調べ方ができます.ある人には,総論で実際に遭遇して判断や対応に困った場面の項を先に読み,その場面で用いられる薬剤の各論の項を読んでいただけると学習しやすいかもしれません.またある人にとっては,個々の薬剤の知識を各論で先に読んだうえで,他の類似薬とどう異なるのだろうかと,総論・Q&Aにて処方意図や使い分けを確認するのがよいのではないでしょうか.薬剤についての学習はちょっと苦手という方にとって,少しでも使いやすい,役に立つと感じていただける一冊になれば幸いです.
2024年8月
編集者を代表して
茂呂 悦子