これからのIPE(専門職連携教育)ガイドブック
編集 | : 酒井郁子/井出成美/朝比奈真由美 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-23467-7 |
発行年月 | : 2023年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 224 |
在庫
定価2,970円(本体2,700円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
これからの専門職教育に求められる,実現可能なIPEを実装するためのガイドブック.千葉大学専門職連携教育研究センターの15年以上の取り組みをもとに,各教育機関の理念に沿ったカリキュラム設計や管理方法,実施者・協力者を巻き込みチームを形成するためのノウハウ,さらに実習を効果的に進行させるための授業開発などを具体的に解説.多岐にわたるIPE導入および運営上の課題を乗り越え,自信をもってIPE教育を構築・推進できるようになる一冊.
目 次
第1章 IPEをスタートさせ軌道に乗せる
1 IPEをスタートさせ軌道に乗せるための準備
A スタートする前に,教員がIPEを理解し説明できるようになる
B 私たちのIPEを作るためにみんなで考え共有する
2 IPEを実装する
A IPE発展のプロセスを理解しよう
B IPEを実装する際のポイントを理解して進めよう
C IPEをカリキュラムとして開発しマネジメントしよう
D IPEを規制し阻害する要因を理解しよう
E 教職員のインタープロフェッショナルな社会化が成功のカギを握る
■ピットフォール■ 教員の温度差問題
■コラム■ 他の大学とカウンターパートを組む目的と運営の実際
■コラム■ 日本におけるIPE実装の状況と課題
■コラム■ チャンピオンを探せ
3 IPE運営拠点の形成と運営
A IPE運営拠点の役割
B IPE運営拠点に備えるべき機能と必要な会議体
C IPE運営拠点の開発に必要な教訓
D IPE運営拠点の持続的発展のために必要な教訓とは
第2章 IPEの組み立て方と教育の実際
1 教育プログラム設計の基礎
A 大学教育とカリキュラム,プログラム
B カリキュラムの目的と編成権
C 3つのポリシーと学部教育カリキュラム
D カリキュラムの体系化
E 授業設計(コースデザイン)
F カリキュラム編成のパターン
G カリキュラムと学習の評価
H 特別な目的をもった教育プログラム
2 IPEのデザイン
A インストラクショナル・デザインの基本
B IPEへのインストラクショナル・デザイン実装例
■ピットフォール■ ロジの構築をどうするのかの問題
■ピットフォール■ 「IDって難しくてわかりません」と言われるのですが,どうしたらいいのでしょうか
3 クラスルームIPE授業コンテンツの開発
A クラスルームIPEに入れ込むべき学習内容
B 学習とリフレクション
C コミュニケーション
D 患者利用者中心性
E チームワーク
F 地域包括ケアシステムにおける多職種多機関連携
G IPEの教育実践例
4 IPE授業の手法
A 協働学習とアクティブラーニング
B アクティブラーニングを促す課題の与え方,授業運営の8つのTips
C 教員によるグループ・ファシリテーション
D オンラインでのIPEにおけるファシリテーションのコツ
■コラム■ 「たこつぼ」現象に気を付ける
■コラム■ 隠れたカリキュラム(Hidden Curriculum)
5 臨地IPE実習の企画運営と実際
A 地域セッティングでの臨地IPE実習
B 病院セッティングでの臨地IPE実習
6 ICTを活用したIPE
A ICTとは何か
B ICT,その帰結点の1つとしてのオンライン教育にまつわる固定観念
C IPEにおけるICTの活用事例
D 各機関を取り巻く状況の確認とファカルティ・ディベロップメント
■ピットフォール■ ICTを活用したIPEで学生が満足する要因,不満足になる要因
7 教員と職員を対象としたIPEのための研修
A ファカルティ・ディベロップメントとは
B ファカルティ・ディベロップメントの対象
C ファカルティ・ディベロップメントの開催形式
D ファカルティ・ディベロップメントの形態
E ファカルティ・ディベロップメントが与える影響
F ファカルティ・ディベロップメントで遭遇する課題
G IPEにおけるファカルティ・ディベロップメントの実践例
8 継続教育としてのIPE
A 大学院におけるIPE
B 現任教育としてのIPE/IPL
■コラム■ 回復期リハ病棟での現任IPEプロジェクトの実際と効果
第3章 IPEの評価
1 IPE教育プログラムの評価
A 教育プログラムと評価
B プログラム評価の特徴
C プログラム評価の種類
D ロジック・モデルとIPE
E IPEプログラムと基準
F 教育プログラム評価とInstitutional Research
2 IPEカリキュラム評価
A 自校のIPEカリキュラム評価
B 自校のIPEカリキュラム改定と評価の実際
C IPEカリキュラムの評価とインパクト
3 IPEの学修者評価
A 学修者評価の要素
B IPE科目の学修者評価の実際(千葉大学における実践)
4 IPEのアウトカム評価
A IPEのアウトカムとは
B IPEのアウトカム指標
C IPEのアウトカム評価の課題
第4章 IPEをより深く理解する
1 IPEの歴史と発展
A IPE前史:ブリティッシュ・コロンビア大学での取り組み
B IPE前史:日本の「チーム医療教育」
C IPE黎明期:国際的な動向
D IPE黎明期:日本でのIPEの始まりと普及
E IPE発展期:日本での取り組み
F IPE後史:未来に向けた課題
■コラム■ 「協働」の意味するところ
2 IPEを支える理論
A 学習理論
B IPE・IPCPを支える社会心理学理論
C IPEにおける学習理論,社会学的理論の活用
■コラム■ 人種差別と接触仮説
3 世界のIPE,アジアのIPE,日本のIPE
A 世界のIPE
B 海外諸国のIPE
C 日本のIPE
IPEに関する書籍の発行は,医療者教育に関係する多くの方々から要望され,私たちもずっと考えてきたことでした.しかし教育,臨床,研究の実務で多忙であり,とくにIPEという大仕事を1年中展開しているため,なかなか出版への大きなプロジェクトに踏み切ることができなかったと同時に,引き受けてくれる出版社もなかなかありませんでした.
企画の途中に,「どの職種をターゲットにするのか?」と問われ,「専門職全てです」と答えると,それだと難しいということになっていくつかの企画は泡と消えていくという経過の中から,医療系出版社の構造も職種別にサイロ化されていることにも気づきました.そんな中で,このたびこの本を世に出すことができたのは,いろいろな専門職の基礎教育課程においてコアカリキュラムの中にIPEが包含され明示されたこと,COVID-19のパンデミックにより教員がPCに向かう時間が増えたこと,理解のある出版社がこの企画を引き受けてくださったことなどいくつかのミラクルが重なった結果であると思います.
執筆者欄を見てくださるとお分かりのことと思いますが,教育学,保健学,医学,看護学,薬学,理学療法学,社会福祉学などのそうそうたるメンバーがIPEについて堅牢な根拠をもとに,あるいは豊かな経験をもとに論を展開してくれています.
この本は,第1章で,IPEをどうスタートさせ軌道に乗せるのか,についての解説をします.これからIPEをスタートさせるという方にはここから読んでいただくとよいかと思います.第2章では,IPEのデザイン,カリキュラム,プログラム,授業,演習,実習をどう組み立てるか,IPEに関連したファカルティ・ディベロップメント,そして継続教育についてまとめて解説しています.実際にIPEを行うとき,プログラム構築や授業の運営の参考にしていただければと思います.第3章は,IPEの評価を真正面から取り上げました.教育プログラムの評価,IPEカリキュラムの評価,IPEの学習者評価,そしてIPEのアウトカム評価についてそれぞれ根拠をもとに詳しく解説されています.そして第4章はIPEをより深く理解する章です.IPEの歴史と発展,IPEを支える理論,世界のIPEの紹介とIPE関係者ならこれを読みたかった,と思っていただける内容と自負しています.
IPEはこれからの専門職教育に必須の科目であり,すでに連携協働の「必要性」を教える段階は過ぎ,「何のために,どう組み立て,どう実施し評価するのか」を明確にする段階に入っています.本書を手に取っていただき,参考にしていただけると嬉しいです.
2023年5月10日 亥鼻IPEステップ1初日
酒井 郁子
井出 成美
朝比奈真由美