書籍

本日の内科外来改訂第2版

編集 : 村川裕二
ISBN : 978-4-524-23424-0
発行年月 : 2023年4月
判型 : A5
ページ数 : 400

在庫あり

定価5,060円(本体4,600円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

“内科外来を担当する”,“専門領域以外の内科診療にもあたる”,そんな状況下で,“今,何をすべきか(どうしのぐか)”を重た過ぎず,読破できる最小限なサイズで,やさしく解説した手引き書,待望の改訂版.検査値異常や診察室で遭遇する症状・症候に対して,“初診時に何を聞くか”,“何を診るか”,“どう対応・対処するか”に素早くたどり着けるというコンセプトはそのままに,「もう少し知りたい……」そんな声を受けて,めまい,しびれ,のどのつかえ感,発疹といった内科外来でよく遭遇する症状・症候をさらに追加し,内容をアップデート.“すぐに電話で相談する専門医”の代わりとして,卓上に置いてもらいたい一冊.

検査値の異常
 1 尿蛋白≧150mg/日―蛋白尿
 2 腎炎とネフローゼ症候群
 3 血清尿酸値>7.0mg/dL―高尿酸血症と痛風
 4 ペプシノゲン検査―胃がんのリスクマーカー
 5 AST,ALT,γ-GTPの上昇―パターンで見分ける
 6 血小板数≧45万/μL―血小板の増多
 7 血小板数≦15万/μL―血小板の減少
 8 汎血球減少症―白血球,赤血球,血小板すべてが減少
 9 貧血―鉄欠乏性貧血,消化管出血,造血器腫瘍
 10 HbA1c 6.5〜7.0%―糖尿病
 11 HbA1c 10%―進行した糖尿病
 12 収縮期血圧140〜160mmHg―軽症から中等度の高血圧
 13 収縮期血圧180〜220mmHg―重症高血圧
 14 脂質異常症―家族性に要注意
 15 二次性の高コレステロール血症糖尿病かメタボかをチェック
 16 低LDLコレステロール血症―基本的に治療は不要!?
 17 低アルブミン血症―隠れた原因を突き止める
 18 血清ナトリウム≦136mEq/L―低ナトリウム異常(低ナトリウム血症)
 19 血清カリウム≦3.5mEq/L―低カリウム血症
 20 血清カリウム≧5.0mEq/L―高カリウム血症
 21 血清カルシウム≧10.4mg/dL―高カルシウム血症
 22 血清カルシウム≦8.0mg/dL―低カルシウム血症
 23 血清リン≧5.0mg/dL―高リン血症
 24 血清リン<2.5mg/dL―低リン血症
 25 心房細動―抗凝固療法の適応を判断
 26 胸部X線における心胸郭比増大―呼吸困難を伴う?
 
頻度の高い自他覚徴候
 27 めまい―末梢性めまい,脳出血,脳梗塞
 28 失神(時間が短い)心原性失神,神経調節性失神,起立性低血圧
 29 目が赤い―結膜下出血と結膜炎
 30 口唇の皮疹,粘膜疹口唇ヘルペス,口唇炎,口角炎,血管浮腫
 31 嗄声―声帯の障害?神経の障害?
 32 血痰と喀血―出血を見きわめる
 33 食べ物が飲み込みにくい―嚥下障害
 34 咽喉のかゆみ,つかえ感―アレルギー,咽喉頭がん,不安症 
 35 舌苔,舌がん,舌痛症,ドライマウスなど口の訴え
 36 首の腫れ―頸部リンパ節腫大
 37 顔面の浮腫―むくみは顔だけ?
 38 皮膚・粘膜が黄色い―黄疸
 39 発疹―蕁麻疹,アトピー性皮膚炎
 40 労作時の息切れ―心不全,喘息など
 41 喫煙者の息切れ―COPD,肺気腫
 42 喘息の初期治療―コントローラーとレリーバー
 43 脈が飛ぶ―期外収縮・結滞,脈の不整
 44 脈が速い―洞頻脈
 45 頻拍と動悸―発作性上室頻拍,心房細動など
 46 みぞおちの痛み(心窩部痛),胃もたれ機能性ディスペプシア
 47 腹部大動脈瘤,腹壁の静脈瘤
 48 肥満―健康障害をチェック
 49 体重減少―消化器疾患,内分泌疾患,精神疾患
 50 繰り返す下痢―過敏性腸症候群
 51 便秘―習慣性便秘の処方の考え方
 52 下痢,嘔吐,腹痛―腸炎
 53 しびれ―脊柱管狭窄症,末梢神経障害,脳障害
 54 頻尿―膀胱炎,前立腺炎,過活動膀胱など
 55 排尿困難と尿閉前立腺肥大症,前立腺がん,神経因性膀胱など
 56 ふらつきと転倒―脳梗塞,脳出血,パーキンソン病
 57 手の震え,歩行障害,動作緩慢,ふらつきパーキンソン症候群
 58 下肢の浮腫―片足だけか,両足か
 59 こむら返り―下肢の筋肉の緊張・激しい痛み

痛 み
 60 脳血管障害による頭痛―突発・最悪・増悪がポイント
 61 眼による頭痛―緑内障発作
 62 感染による頭痛―髄膜炎,副鼻腔炎
 63 慢性頭痛―片頭痛,群発頭痛,緊張性頭痛 
 64 胃痛―消化性潰瘍,急性胃炎
 65 ピロリ菌の検査と治療
 66 側腹部痛―胆囊炎,憩室炎など
 67 上腹部の急性腹痛発作と圧痛―膵炎
 68 右下腹部痛―虫垂炎を疑うとき
 69 胸部の痛み―肋間神経痛,気胸,胸膜炎,心膜炎,帯状疱疹,前胸部キャッチ症候群など
 70 最近発症の心筋梗塞―recent MI
 71 安静時の狭心症―異型狭心症
 72 中高年の体の痛み―リウマチ性多発筋痛症
 73 膝の痛み―痛風,偽痛風,化膿性関節炎
 74 歩くと足が痛い―閉塞性動脈硬化症,間欠性跛行,下肢痛
 75 片側の刺すような痛み―帯状疱疹
 76 腰や背中が痛む・曲がる―骨粗鬆症
 77 ビタミン欠乏症―かなり危険なビタミンB1欠乏
 78 肝機能異常やリンパ節腫大を伴う発熱―伝染性単核球症など
 79 関節痛と発熱―関節リウマチ,膠原病
 80 皮疹と関節痛―全身性エリテマトーデスと関連疾患
 81 頻尿,排尿時痛,残尿感―膀胱炎,腎盂腎炎

スッキリしない…
 82 遷延する発熱―発熱以外の情報をチェック
 83 倦怠感,ふらつき―身体疾患か精神疾患かその他か
 84 のどの違和感―咽喉頭異常感症
 85 遷延する咳嗽―感冒症状が先行する

感 染
 86 インフルエンザ―冬から春先の咳・発熱
 87 マイコプラズマ感染―非定型肺炎のスコアリングを活用
 88 市中肺炎の診断―外来or入院をスクリーニング
 89 咳・痰と胸部X線異常―結核
 90 ノロウイルス―鑑別疾患に注意
 91 足の感染―蜂窩織炎

専門医に送ることを念頭に
 92 ものわすれ―認知症
 93 食後のめまいとふらつき―食後低血圧
 94 肺異常陰影―サルコイドーシスなど
 95 甲状腺機能亢進症―バセドウ病
 96 甲状腺機能低下症―慢性甲状腺炎(橋本病)
 97 肺がんの診断―胸部X線で異常陰影を見逃さない
 98 骨髄異形成症候群―血球減少(WBC,Hb,PLT)に注意

処方と検査の希望
 99 咽頭炎と感冒薬―急性ウイルス感染症,細菌感染症 
 100 口内炎―丸くて白いアフタ
 101 花粉症―アレルギー性鼻炎,モーニングアタック
 102 咽頭炎や腰痛に用いる鎮痛薬の使い方―NSAIDsなど
 103 慢性疼痛治療薬の使い方 
 104 肝炎ウイルスと梅毒のデータの見方

 診察室で<こころぼそい思い> をしたことはありませんか.
 どんな医師も苦手な分野があります.
 この本は<内科外来を担当する先生> に<現場で役に立つ診療のヒント
 をお届けするために作りました.

 使い方のイメージは……
  ■時間があるときに,パラパラッと眺めてください.
   何が・どこに・どの程度の詳しさで書かれているか分かります.
   深く読み込まなくてもかまいません.

  ■診察室で困ったとき,関連するページを開いて「何を考えるか」,「何を検査するか」を調べてください.

 今でもたくさん<診療の手助けになる本> は出版されています.
 これまでの本には「もりだくさんで,もれのない情報」が載っています.
 一方,本書には「とりあえずの情報」だけ書いてあります.

 ねらったのは……
 「知りたいことにすぐたどり着ける」ことです.

  はじめて内科外来を担当する若いかた
  専門外の疾患も診るベテラン

 どんな年代の先生にも,「あってよかった」と思っていただける本になっています.
 
 最後に…
 忙しい中にもかかわらず,ご協力いただいた執筆者の先生方に感謝.

2023年4月
編 者

馬手に本書,弓手に『ハリソン内科学』―最高の時を過ごせる組み合わせ

 「医学生は与えられた問題を解けばよいが,臨床の場ではまず問題自体を組み立てないといけない」とよく言われる.そうは言っても関心(専門)領域以外で,そこまで十全にはなかなかこなせない.そこまでできていれば,「総合診療マイスターレベル」である.本書の特徴や一読した印象を以下に記す.

本問題集では,臨床でよく遭遇するであろう状況を予想正答率別に提示している
そして数学の文章問題のように,無益な情報は載っていない.陽性所見・陰性所見だけで構成されている.性別・年齢は,むろん記載されている
さらに重要な部分には下線まで引かれている
親切すぎる? こんな風には臨床現場では提示されない?
まず定型を知って,大切な情報の意味を理解しておくことが重要である
初診外来と同じで,疾患別には並べていない.何がくるのかわからないのが現実である

 編集者の村川裕二先生は,現在診療所の院長をされている.本書を読み終えた読者(医療者)の行動変容につながることを意図されて,多くの執筆者を募ったと思う.そして執筆者の方々は,その趣旨をしっかりと理解されて,設問・解答を組み立てている.
 専門領域をもつと,その周辺知識や思考法の習得に熱心になり,ほかの領域はだんだん疎かになる(どうしてもそうなってしまう).本書のリアルな症例提示を受けて,思考実験を行ってみよう.忘れ去ってしまった知識や思い出せなかった経験を想起させられるであろう.
 本書で症例・疾患を体験した後には,『ハリソン内科学(第5版)』(日本語版監修:福井次矢・黒川清,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2017)の出番である.ほかの内科学書ではなく,『ハリソン内科学』が好ましい.
 ここで,岩田健太郎先生(神戸大学)の言葉を引用する.「ハリソンには「程度」の記載に,臨床的な眼差しがある.簡潔な記載で患者像を容易にイメージできる.これを読めば診療に使える」(ジェネシャリスト宣言(第28回)「なぜ日本の内科教科書は“ダメ”なのか」,医学界新聞,医学書院,https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2015/PA03146_06)
 『臨床力を評価する リアルな内科診療の問題集』で典型的な心内膜炎の症例提示を読んだ後に,『ハリソン内科学』を紐解いてみる.すると,どのような状況で心内膜炎を想起すべきかについての理解が広がる.また,ブドウ球菌性心内膜炎では緊急対応が必要であると納得する.
 3周くらいこのリアルな設問と解説(思考過程)をたどってみると,診療上の足腰が鍛えられていく.ここから学びとれるのは,臨床のTipsではない.患者さんと相対したときに,どのように思考を働かせていくかの体験である.さらには,目の前の患者からどのような情報を得るべきかを,学びとっていくと思われる.
 馬手(右手)に『臨床力を評価する リアルな内科診療の問題集』,弓手(左手)に『ハリソン内科学』,この2冊で内科的臨床体験を繰り返せば,知識より思考のパターン・組み立てが進化する.あなたの前に,愉悦の時が待っている.

臨床雑誌内科132巻2号(2023年8月号)より転載
評者●築島直紀(健和会大手町病院内科 主任部長)

親切で物知りな,心強い先輩医師のような本

 外来診療をしていると,ちょっとしたことで困ることが多い.近くに相談しやすい専門医がいれば電話して聞けばよいかもしれないが,そうした幸運な状況にいる医師は少ないだろう.専門書で調べれば専門的な見解に触れられるが,知りたい情報に到達するまでに時間がかかる.手早く知りたいとなるとインターネットで検索することになるが,それで得られるような情報は,患者さんも事前に知ることのできる情報ばかりだ.情報は「誰が書いているか」という情報源こそが重要だが,その点インターネットの情報はいつでも書き換えられることもあり,根拠としては心細い.今後,人工知能が進歩すると,専門医に聞くこと,専門書で調べること,気軽に検索して調べること,の間をつなぐものが生まれるだろうが,本稿を執筆している2023年の時点ではそのような便利なものは存在しない.やはり,困ったときは原点に戻って,アナログな本に頼るのが一番だ.
 本書は,外来診療で出会うちょっとした困りごとに対処するための知恵とアドバイスに満ちている.検査値の異常をみてどのように考えるか,患者さんの訴えを聞いてどのように考えるか.それぞれのトピックに対して,数頁で知りたい情報へ到達できるように工夫されている.通常の外来診療で慣習的に出す処方の見直しまで,本書の親切心は細部にまで至っている.
 たとえば,「労作時の息切れ」の訴えがあったとき,まず診察室で「聞く」「診る」べきポイントが記載され,「検査する」の項ではどのような検査をして,どこをチェックすればよいのか,といった実践的なアドバイスがある.「念を入れるなら」として,理想的な検査まで書かれているので参考になる.「治療する」の項には,状況に応じた治療法・治療薬が記載されている.具体的なイメージをもって読み進められるように,よく遭遇しそうな典型的な症例が年齢や病歴とともに紹介され,どのような思考プロセスで考えていくべきか,臨場感をもって学べる.処方例としても,点滴であればどの程度のスピードで投与を始めるべきかといった点について,目安となる無難で安全な使い方が紹介されているので,使ったことのない薬剤を使用する場合でも非常に安心である.また,「患者さんを安心させるコツ・ポイント」が記載されている項目もあり,おまけのようでありながら,ここが本書で一番感動した点である.外来診療で重要なのは相手との信頼関係である.もし,結果的にこちらの診断が不正確であっても,短い外来診療のなかでしっかりと患者さんとの信頼関係が築けてさえいれば,トラブルにもならず軌道修正ができる.相手の不安を取り除くことも含め,どのような説明をするのがよいのかを考えて,相手が理解しやすい言葉を使うことが重要であり,かゆいところにも手が届く書籍になっている.「このように説明すればよいのか」と学ぶことが多く,私自身も外来診療の実践で真似をしている.
 本書は,経験の浅い医師にとってはもちろんだが,何十年も外来をやっている経験豊富な医師であっても学ぶことが多いだろう.自信のない分野や経験の浅い分野だけではなく,自身の診療を見直すためにも.私は外来診療の隙間時間に読み物として読むようにしている.まるで,親切で物知りな,心強い先輩医師たちと雑談をしているような時間になるからだ.ぜひ外来診察室に置いてほしい一冊である.

臨床雑誌内科133巻1号(2024年1月号)より転載
評者●稲葉俊郎(軽井沢病院 院長・総合診療科医長)

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