骨系統疾患マニュアル改訂第3版
編集 | : 日本整形外科学会 小児整形外科委員会 骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループ |
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ISBN | : 978-4-524-23423-3 |
発行年月 | : 2022年12月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 236 |
在庫
定価13,200円(本体12,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
骨系統疾患の諸データをまとめた実務便覧の全面改訂版.臨床所見やX線所見,遺伝子診断,国際分類の概説をまとめた総論と見開き2頁で全83疾患を解説した各論との二部構成となっている.細分化・複雑化した分類や,疾患名に合わせアップデートされている専門家の知見,本書ならではの希少な画像を収載した全整形外科医,関連医療者に贈る比類なき一冊.
T 総 論
1.臨床所見
A.臨床所見
B.粗大運動発達
C.社会生活(就学・就労など)
2.画像所見
A.頭部側面
B.全脊柱(胸郭含む)正面
C.全脊椎側面
D.骨盤正面
E.両下肢正面
F.両手正面
3.遺伝子診断
A.骨系統疾患と遺伝子診断
B.骨系統疾患と遺伝子診断の歴史
C.遺伝学的検査の基本
D.保険適用となった遺伝学的検査
E.次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析による診断
F.遺伝子診断における倫理的配慮
G.遺伝カウンセリング
H.これからの遺伝子診断
4.国際分類の概説
U 各 論
■FGFR3軟骨異形成症グループ
1)タナトフォリック骨異形成症
2)軟骨無形成症,軟骨低形成症
■2型・11型コラーゲングループ
1)軟骨無発生症,軟骨低発生症
2)先天性脊椎骨端異形成症
3)Kniest骨異形成症
4)中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(Czech異形成症)
5)Stickler症候群
6)耳脊椎巨大骨端異形成症
■硫酸化障害グループ
1)軟骨無発生症1B型/骨発生不全症2型
2)捻曲性骨異形成症
■Perlecanグループ
1)分節異常骨異形成症
2)Schwartz-Jampel症候群
■Filaminグループと関連疾患
1)Melnick-Needles症候群
2)耳口蓋指症候群
3)Larsen症候群
■TRPV4グループ
1)変容性骨異形成症
2)変容性骨異形成症以外のTRPV4異常症
■大きな骨変化を伴う繊毛異常症
1)軟骨外胚葉性異形成症(Ellis-van Creveld)
2)短肋骨多指症候群
3)呼吸不全性胸郭異形成症
■多発性骨端異形成症および偽性軟骨無形成症グループ
1)偽性軟骨無形成症
2)多発性骨端異形成症
■骨幹端異形成症
1)骨幹端異形成症(いろいろな型を含む)
■脊椎骨幹端異形成症(SMD)
1)脊椎内軟骨異形成症
2)脊椎骨幹端異形成症
■脊椎・骨端(・骨幹端)異形成症[SE(M)D]
1)Dyggve-Melchior-Clausen異形成症
2)遅発性脊椎骨端異形成症,X連鎖
■遠位肢異形成症
1)毛髪鼻指節異形成症
2)ゲレオフィジック骨異形成症
3)先端異骨症
■遠位中間肢異形成症
1)遠位中間肢異形成症Maroteaux型
■中間肢・近位肢中間肢異形成症
1)異軟骨骨症(Leri-Weill症候群),中間肢異形成症(Langer型)
2)肩骨異形成症
■弯曲骨異形成症グループ
1)屈曲肢異形成症
■多発性脱臼を伴う骨異形成症
1)Desbuquois骨異形成症
2)関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症(Beighton型,Hall型)
■Ehlers-Danlos症候群グループ
1)Ehlers-Danlos症候群
■点状軟骨異形成症グループ
1)点状軟骨異形成症(すべての型を含む)
■新生児骨硬化性異形成症
1)Caffey病
■大理石骨病と関連疾患
1)大理石骨病
2)濃化異骨症
■他の骨硬化性疾患
1)骨斑紋症
2)流蝋骨症(メロレオストーシス)
3)頭蓋骨幹端異形成症
4)骨幹異形成症Camurati-Engelmann病
5)皮膚骨膜肥厚症(肥厚性皮膚骨膜症)
6)Pyle病
■骨形成不全症と骨密度低下を示すグループ
1)骨形成不全症
2)Bruck症候群
■異常骨石灰化グループ
1)低ホスファターゼ症
2)低リン血症性くる病
■骨変化を伴うライソゾーム病
1)ムコ多糖症
2)ムコ脂質症
■骨溶解症グループ
1)Hajdu-Cheney症候群
2)多中心性手根骨・足根骨溶解症(腎症を伴う/伴わない)
■骨格成分の発生異常グループ
1)多発性軟骨性外骨腫症
2)線維性骨異形成症,多骨型(McCune-Albright症候群)
3)メタコンドロマトーシス
4)進行性骨化性線維異形成症
5)神経線維腫症1型
6)片肢性骨端異形成症
7)内軟骨腫症(Ollier),および血管腫を伴う内軟骨腫症(Maffucci)
■骨格病変を包含する過成長(高身長)症候群
1)Sotos症候群
2)Proteus症候群
3)Marfan症候群
4)先天性拘縮性くも状指症
5)Loeys-Dietz症候群
■遺伝性炎症性/リウマチ様骨関節症
1)進行性偽性リウマチ様骨異形成症
■鎖骨頭蓋異形成症と類縁疾患群
1)鎖骨頭蓋異形成症
■頭蓋骨癒合症候群
1)Pfeiffer症候群
2)Apert症候群
3)Crouzon症候群
4)Antley-Bixler症候群
5)Shprintzen-Goldberg症候群
■脊椎罹患(肋骨異常を伴う/伴わない)を主とする異骨症
1)脊椎肋骨異骨症
2)Klippel-Feil症候群
■膝蓋骨異骨症
1)爪・膝蓋骨症候群
■短指症
1)短指(趾)症
2)Rubinstein-Taybi症候群
3)偽性副甲状腺機能低下症
■四肢低形成/欠失グループ
1)Poland症候群
■多指・合指・母指三指節症グループ
1)遺伝性の多指症・合指症
■関節形成不全・骨癒合症
1)多発性骨癒合症候群
付 録
骨系統疾患の診療に役立つ文献・サイト
改訂第3版の序
日本整形外科学会は骨系統疾患診療の向上に積極的に取り組んできた.その歴史を振り返ってみると,1989年に骨系統疾患委員会が設立され,同年に日本整形外科学会の分科会という形で骨系統疾患研究会も開催されて今に続いている.翌1990年には骨系統疾患登録制度が開始されており,1994年には骨系統疾患診断の手引き書として『骨系統疾患マニュアル(初版)』が刊行された.その後,分子遺伝学の著しい進歩による関連遺伝子の解明と国際分類の改変を受け,2007年に『骨系統疾患マニュアル(改訂第2版)』が刊行された.この時は骨系統疾患委員会から改組された小児整形外科委員会による編集であった.その後も4〜5年おきに改訂される骨系統疾患国際分類をアップデートする目的で,小児整形外科委員会・骨系統疾患和訳ワーキンググループで作業を行い,その時々の最新版を日本整形外科学会雑誌(2007年,2013年,2017年,2020年)に掲載してきた.
さて,『骨系統疾患マニュアル(改訂第2版)』から15年の歳月が流れた.この間,多くの新たな関連遺伝子が同定され,国際分類には新グループも加えられた.加えて次世代シークエンサーによる網羅的な遺伝子解析技術の普及に伴い,まれな疾患の遺伝子解明が進み,新規の病態も明らかになっている.現在の国際分類では42グループ,461疾患に分類され,そのうち90%以上で関連遺伝子が同定されている.このような変化を受け,骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループが立ち上がり,改訂第3版が刊行される運びになった.前版と同様に総論として,「臨床所見」「X線所見」「遺伝子診断」「国際分類」の概説が記載されており,各論では概ね国際分類に準拠する形でグループごとに各疾患の診断と治療が記載されている.また「診断のポイント」および「鑑別診断」も加えられ,診断の手引きとしての役割も高い.
本書は骨系統疾患について,実臨床に役立ち,かつ最新知見を網羅した内容である.ぜひ,ご一読いただき骨系統疾患に対する理解をいっそう深め,診療にご活用いただければ幸いである.
末筆ながら,本書の作成にご尽力いただいた骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループおよび小児整形外科委員会の委員,そして多くの執筆者の方々に敬意と謝意を捧げる.
2022年10月
日本整形外科学会
理事長 中島康晴
改訂第3版刊行にあたって
骨系統疾患マニュアルの初版が1994年に刊行されてから28年が経過した.本書が整形外科医をはじめとして骨系統疾患にかかわるすべての医療関係者に果たした役割は大きく,骨系統疾患の診断ならびに治療につながった場合も多いと考える.初版から13年が経過した2007年に,当時の骨系統疾患国際分類に基づいて改訂がなされ第2版が刊行された.1980年代から骨系統疾患の関連遺伝子が明らかにされてきたが,近年の分子生物学,遺伝子工学の発展には目を見張るものがあり,骨系統疾患の分野においても遺伝子の同定,病態の解明,治療法の確立など,長足の進歩を遂げている.これにともなって,本書第2版刊行以降も骨系統疾患国際分類は2010年,2015年,2019年と短期間で改訂がなされている.日本整形外科学会においては,その都度,日本整形外科学会骨系統疾患委員会,小児整形外科委員会が和訳を行い日本整形外科学会誌にて報告しており,会員に最新の知見を提供してきている.2019年の骨系統疾患国際分類には42グループ,461疾患が収められており,その中で437の原因遺伝子が同定され,425疾患(全体の92%)との関連が明らかになっている.このような状況において,本書も現状に即した改訂が待たれていた.
2021年に日本整形外科学会骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループをたちあげ,鬼頭浩史先生を中心として本書の改訂に取り組んでいただいた.第3版では2019年の骨系統疾患国際分類に基づいて分類し,特に治療法の確立した疾患,骨系統疾患全国登録数の多い疾患を優先して収載いただいた.これまでと同様,1つの疾患を原則見開き2頁に掲載し,読者が使用しやすい構成としている.第3版においても初版,第2版と同様に骨系統疾患にかかわるすべての医療関係者の福音となり,ひいては治療につながることを期待している.
最後に,本書の作成に多大なるご尽力をいただいた骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループの先生方,各項目の執筆者の先生方,査読いただいた小児整形外科委員会の先生方に深甚なる謝意を表する.
2022年10月
日本整形外科学会 小児整形外科委員会
担当理事 三谷 茂
『骨系統疾患マニュアル』の改訂第3版が上梓された.この書評に目をとどめていただいたみなさまの中には,「骨系統疾患は特殊なマニアックな疾患で,一部の興味のある専門医だけが診療するもの」と考えられている方も多いと思う.しかし,本書には最先端の情報がわかりやすく掲載されており,一般の臨床整形外科医のみなさまに診療の座右において役立てていただけることを期待する.
まず,本書の初版は,1994年に日本整形外科学会の骨系統疾患委員会によって作成された.その後の10年余の間に,骨系統疾患の新しい遺伝子が次々と発見され,国際分類による診断名も大きく変化した.2007年に刊行された改訂第2版は,遺伝子診断と当時の国際分類を基に改訂がなされている.現在の2019年の骨系統疾患国際分類には42グループ,461疾患がおさめられており,その中で437の原因遺伝子が同定され,425疾患(全体の92%)との関連が明らかになっている.そのような背景のもとに改訂活動が行われたが,第3版では日本整形外科学会小児整形外科委員会と,2021年に立ち上がった日本整形外科学会骨系統疾患マニュアル改訂ワーキンググループのみなさま(鬼頭浩史委員長)が中心となり,本書の改訂に取り組まれた.
骨系統疾患の診断においては,病歴,臨床所見,画像所見(特にX線所見)が基本となり,さらに必要に応じて血液・生化学検査,染色体検査,遺伝子検査が行われる.骨系統疾患の病因・病態は多様で,臨床所見もさまざまであるが,臨床所見のみでかなり診断に近づくことができる場合が多く,それらはきわめて重要である.骨系統疾患は,骨格症状だけでなく全身的な症状を呈するものも多いため,小児科や皮膚科など多診療科での連携が必須となる.
また,骨系統疾患の診断においては,骨X線所見の読影が重要である.全身の骨X線撮影(skeletal survey)による系統的な骨所見の評価が求められる.新生児の全身X線像(baby-gram),乳幼児期以降の @ 頭部側面,A 全脊柱正面,B 全脊柱側面,C 骨盤正面,D 両下肢正面,E 両手正面が特に重要で,必要に応じて所見のある部位を追加する必要がある.
骨系統疾患の多くは遺伝性疾患である.診断の基本は,臨床症状と画像診断の組み合わせであるが,一般臨床医にとって日常診療の中でその診断を的確に下すことはきわめて困難である.また,特徴が重なる疾患同士の場合,臨床診断のみでは専門家でも鑑別は不可能である.ほとんどの骨系統疾患の遺伝子が明らかにされた現在,骨系統疾患の医療における遺伝子診断の重要さは増している.本書では,遺伝学的検査の基本的な流れ,解析の原理,拡大する保険適用の遺伝学的検査,遺伝学的検査に必須でもある遺伝カウンセリングなどについてもまとめてある.遺伝学的検査が保険適用となっている骨系統疾患は現在でもきわめて限られているが,それでも近年その疾患数は増える傾向にある.
本書はたいへんわかりやすく,また読み応えがある.本書の作成には,大勢の執筆者がたいへんな労力を要し完成したものと推察される.執筆者各位に心より敬意を表するとともに,適切な診療に本書が役立つこと,そして患者に少しでも福音となることを祈念する.
臨床雑誌整形外科74巻10号(2023年9月号)より転載
評者●岡山大学整形外科教授 尾ア敏文