書籍

みてわかる!ニキビ診療 虎の巻

: 黒川一郎/乃木田俊辰/野村有子
ISBN : 978-4-524-23394-6
発行年月 : 2023年6月
判型 : A5
ページ数 : 196

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

ニキビ診療について,“みてわかる”をコンセプトに写真やイラストを多用し,ビジュアルに解説した.『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』の内容を反映し最新情報を掲載.「ニキビはなぜできる?」,「薬はいつまで継続すべき?」,「手軽にできる自費診療には何がある?」など,あらゆる疑問を解説するニキビ診療の決定版.皮膚科医,内科医はもちろん,メディカルスタッフにも読んでほしい一冊.

Chapter 1 ニキビとは?
 1.ニキビとは?
  ニキビは青春のハードル
 2.ニキビの病理所見
  ニキビはすでに目に見えない面皰から始まっている
 3.ニキビはなぜできる?
  4つの重大因子をチェックしよう
 4.ニキビの疫学
  ニキビはいつどこにできる? どうして悪化する?
 5.ニキビを知る
  ニキビ関連皮疹の種類をおさえよう
Chapter 2 ニキビ治療のA to Z
 1.ニキビ治療の重症度の考え方
  赤ニキビ+黄色ニキビの数で決まる
 2.ニキビ治療薬の種類と使用法
  面皰治療薬=根本治療薬
 3.ニキビ治療薬選択の実際
  急性炎症期には配合外用薬が最優先
 4.ニキビ治療における
  「急性炎症期・維持期」の考え方
  ニキビを再燃させない戦略があります
 5.ニキビと鑑別すべき疾患は?
  一覧表でチェックしよう
 6.年代別ニキビの治療と患者指導
  ニキビ治療は年代で変わる
 7.ニキビと面皰圧出
  保険診療でできる非薬物療法(施術)
 8.民間療法で悪化したニキビの治療
  患者さんの心理を理解する
 9.ニキビのスキンケア
  お化粧はしてもよい?
 10.ニキビ患者さんへの生活指導
  悪化要因を見つけて適切な指導を
Chapter 3 ニキビとニキビ痕の対応
 1.ニキビ痕とは?
  ニキビとニキビ痕は別のもの
 2.自費診療による
  ニキビとニキビ痕の治療
  ニキビ痕をきれいに治すには
Chapter 4 ニキビ関連疾患
 1.難治性ニキビ関連疾患(毛包閉塞性疾患)一覧表でチェックしよう 
 2.集簇性痤瘡  囊腫,結節,肥厚性瘢痕を形成 
 3.化膿性汗腺炎(HS)  迷路のようなトンネル(皮下瘻孔)形成が特徴 
 4.膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎(PCAS) 後頭部に好発し,毛が抜ける 
 5.毛巣洞(PS)  男性の殿裂部に好発 
 6.頭部乳頭状皮膚炎(DPC)  嚢腫+tufted hairs 
 7.禿髪性毛包炎(FD)  脱毛+tufted hairs 
 8.その他のニキビ関連疾患  一覧表でチェックしよう 
 9.新生児痤瘡  赤ちゃんのニキビ 
 10.老人性面皰  アダパレンが有効な場合も 
 11.acné excoriée des jeunes filles(ひっかきニキビ) 精神的側面からアプローチ 
 12.ステロイド痤瘡  均一な皮疹で面皰なし,自覚症状なし 
 13.酒皶  赤ら顔,ヒリヒリ感,温度差で悪化 
 14.酒皶様皮膚炎  ステロイド外用の既往をチェック 
 15.毛包虫性痤瘡  紅暈を伴う赤色丘疹が特徴(ニキビダニ) 
 16.マラセチア毛包炎 前胸部・背部に好発し,かゆみを伴うニキビ様皮疹 
 17.顔面播種状粟粒性狼瘡(LMDF) 眼瞼周囲の赤色丘疹で確定診断は皮膚生検 
 18.好酸球性膿疱性毛包炎(EPF) 膿疱が環状に集簇,確定診断は皮膚生検 
 19.稗粒腫  眼瞼周囲に多発 
 20.汗管腫  女性に好発 
 21.脂腺嚢腫  確定診断は病理所見でノコギリ状の囊腫壁 
 22.分子標的治療薬による痤瘡様皮疹 分子標的治療薬投与の90%以上に発症,面皰なし 
 23.ニキビと全身疾患  適切な診療科へ紹介を 
Chapter 5 ケーススタディ
 1.初級編! 軽度な顔面の皮疹(20歳代,男性)
 2.初級編! 1年前から治らないニキビ(20歳代,女性)
 3.初級編! 市販薬で治らないニキビ(10歳代後半,女性)
 4.中級編! 頬部の丘疹(20歳代,男性)
 5.中級編! 1年間未治療で最近悪化したニキビ(10歳代後半,女性)
 6.中級編! 顔のかゆみとニキビ(40歳代,男性)
 7.上級編! 背中の丘疹(10歳代後半,男性)
 8.上級編! 長年治らないニキビ@(20歳代,女性)
 9.上級編! 長年治らないニキビA(20歳代,女性)
Chapter 6 ニキビ治療をもっと理解する
 1.OTC治療薬の考え方・使い方
  限界を知って正しく利用
 2.ニキビ治療における看護師の役割
  医師と看護師で役割分担を
 3.ニキビ治療における管理栄養士の役割
  便秘対策と低GI食のススメ
 4.ニキビ治療における薬剤師の役割
  くすりの作用・副作用を理解する
 5.ニキビの最近の話題と今後の展望
  最新知見をおさえよう
 6.ニキビにまつわるQ & A
  よくある疑問に答えます
索 引

 「ニキビ本を書きませんか?」という南江堂の仲井さんの一言が本書出版のきっかけでした.2021年に横浜で開催された日本皮膚科学会総会・学術大会で私の座長終了後に仲井さんにお声をかけていただきました.私が親しくしている先生との共著でよいか確認した後,その足で会場にいらっしゃった私の“戦友”の野村有子先生に相談したところ,ただちに了解を得ました.実は野村先生はまさにちょうどこの総会で乃木田俊辰先生と一緒に本を書く相談をするところでした.野村先生から3人で書くのはどうかと提案していただき,そのまま会場付近のカフェにて3人で会い,いろいろと相談しました.そして,「“みてわかる”ことを重視した,ビジュアルを中心としたポケット判の本にしましょう」と3人の想いは一致しました.まさに渡りに船のタイミングで3人が集まり,丁々発止のやりとりを経て,本の出版の話は電光石火のごとく,案がまとまりました.「毛利三本の矢」の3人によるニキビのすべてを網羅した集大成の本といえるかもしれません.
 その後,3人でいろいろと連携を深めていきました.乃木田先生が以前から炎症後丘疹(postinflammatory papule:PIP)という概念を国内の学会や雑誌で提唱されていました.ただ,論文として国際的にみとめられていませんでした.ちょうど野村先生が企画編集した「Visual Dermatology」誌において,乃木田先生の論文のPIPという概念が目に止まったおりでしたので,乃木田先生に英語論文としてまとめましょうとお話をしました.その後,乃木田先生をfirst authorにして3人で新しいニキビの皮疹の概念を英語論文としてまとめることができました[Dermatology and Therapy(Heidelberg) 11:1867-1869,2021].また,3人の協力体制で外用ビタミンCのニキビの炎症後色素沈着を対象とする臨床研究も始めました.「3人寄れば,文殊の知恵」ということわざがありますが,それぞれの得意な部分を持ち寄り,不得意な部分を3人が補ってできたのが本書です.
 本書の内容は基本的には「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」に沿ったものですが,ガイドラインだけでは治療が困難な痤瘡,痤瘡関連疾患については保険適用外の治療が含まれています.したがって,読者の方がそれぞれの判断において,自己責任で活用してください.その結果について著者は責任を負うことはできません.免責事項として大きく掲げさせていただきます.
 本書は「ニキビとは?」,「ニキビ治療のA to Z」,「ニキビとニキビ痕の対応」,「ニキビ関連疾患」,「ケーススタディ」,「ニキビ治療をもっと理解する」(コラム的な内容やQ&A)という6つの章から構成されています.また,項目ごとにワンフレーズでポイントを記載しています.「みてわかる!」というタイトルのとおり,ビジュアル性を重視し写真を多用した実用的な内容になっています.外来において診察に活用できる虎の巻です.虎の巻には“秘伝”という意味がありますが,本書はエキスパートが各自の秘伝を秘することなく,惜しげもなく明らかにして,世の中のニキビに悩む患者さんに貢献したいという熱い想いから生まれました.ニキビ診療の第一線で活躍している3人の珠玉の集大成と自負しています.
 『人は見た目が9割』(新潮社)という本がありますが,ニキビも見た目が9割でほぼ診断可能ではないかと考えています.ニキビは顔に好発する病気で,患者さんにとってメンタル面で非常に重い病気です.ニキビ治療により,皮膚症状のみならず,メンタルも改善され,心身ともに前向きな人生に変わることができると考えています.本書は皮膚科医のみならず,一般診療に携わっている医師,看護師,薬剤師などの医療従事者を対象に,実用的でわかりやすい書籍を目指して執筆しました.ぜひ,日常診療の机に置いて,お役に立てていただければと願っています.
 最後に大変ご多忙のなか,執筆していただいた乃木田俊辰先生,野村有子先生,また南江堂 仲井丈人様,松下淳史様,鳥海知子様,関係の方々に心より深謝いたします.

2023年4月
著者を代表して 黒川 一郎 

ニキビ治療のすべてがコンパクトにまとめられた切り札となる一冊

 かつては「ニキビ治療後進国」といわれた日本でも,近年急速にニキビ治療のツールが充実してきた.また,以前からあったツールでも,抗菌薬の使い方をはじめとして,治療法は大きく変わってきている.それに伴って,ニキビ治療は従来よりもはるかに複雑になってきており,医師のスキルによって大きな違いが出るようになっている.もちろん,診療にあたっては日本皮膚科学会から公表されているガイドラインが参考になるのだが,それだけで具体的なコツまで含めたすべてがわかるわけではない.そんなときに,ニキビ診療のすべてがコンパクトにまとまっている本書は絶好の書である.
 本書の著者の黒川一郎先生,乃木田俊辰先生,野村有子先生は,お三方とも皮膚科領域でご高名なニキビ診療の大家である.その三人がそれぞれのノウハウを詰め込んで作り上げられた本書は,まさに「毛利三本の矢」である.本書は,ガイドラインに準拠しながらも,保険適用外の治療も豊富に紹介しており,一般的な治療法はもちろんのこと,治療に困るような例にも多くのオプションが提示されている.近年,治療の標準化が重視されているが,その一歩上をいく達人の技は依然として必要である.本書は三人の共著であるがゆえに,独りよがりに陥ることなく逆に「文殊の知恵」が結集し,大変読み応えのある内容となっている.
 とはいっても,本書は肩に力を入れて通読する必要はない.「みてわかる」というタイトルのとおり,多数の写真や図を用いながら各項目が数頁単位でまとめられているため,必要なところからすぐに情報を得ることができる.ハンディな大きさなので,診察机のかたわらに置いて,隙間時間に読むもよし,わからないことを辞書として調べるもよし,毎日決まった量を少しずつ読み進めていくもよし,さまざまな利用法が考えられる.「メモ」や「ポイント」だけを拾いながら眺めていくのもよいだろう.本書を日常的に繰り返し使っているうちに,著者の先生方のようなニキビのエキスパートに少しずつ近づくことができるに違いない.
 本書は,皮膚科医はもちろんだが,ニキビ診療に関わることのある他科の医師,看護師,薬剤師なども含めて,医療従事者に幅広く利用していただきたい一冊である.また,意欲のある患者さんに薦めてもいいかもしれない(こちらの手の内がすべてバレてしまう危険はあるが……).本書が広く活用され,ニキビに悩む多くの患者さんの笑顔を取り戻すことに役立つことを願っている.

臨床雑誌内科133巻6号(2024年6月号)より転載
評者●藤本 学(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座皮膚科学教室 教授)

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