NEW薬理学改訂第8版

編集 | : 田中千賀子/加藤隆一/成宮周 |
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ISBN | : 978-4-524-23377-9 |
発行年月 | : 2025年3月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 708 |
在庫
定価10,120円(本体9,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

薬理学のバイブルとして,初版から30年以上にわたり,医学・薬学部学生から研究者まで多くの読者に支持され高い評価を得ている教科書.薬物治療の原理の理解には「情報伝達の細胞生物学」の視点が不可欠との基本方針で編集している.今改訂では, 進みつつある 疾患・病態の分子メカニズムとそれに対応する抗体,DNA,RNAなどをモダリティーとした医薬の理解を促進する記載を充実させた.
第Ⅰ章 総 論
1 薬理学とは
2 薬の作用様式と作用機序
薬物受容体の概念
薬物濃度と薬理反応
アゴニストとアンタゴニスト
薬の作用強度を規定する諸因子
3 薬の生体内動態
薬の吸収
薬の生体内分布
薬の代謝
薬の排泄
薬物トランスポーター
4 薬はどのようにして創られるか
医薬品の研究開発の歴史
現代の医薬品の研究開発の始まり
蛋白質・ペプチド医薬品
医薬品の研究開発・承認のプロセス
5 生物医薬
核酸医薬
細胞医薬
細胞医薬品開発
抗体医薬
抗体分子の構造と抗体医薬の特徴
抗体医薬の作用機序
抗体医薬の改良技術
第Ⅱ章 生体内情報伝達機構
生体内情報伝達の概要
細胞膜受容体と情報伝達
イオンチャネルと情報伝達
G蛋白質共役型受容体(GPCR)と情報伝達
酵素共役型受容体と情報伝達
炎症のシグナリング(含む細胞死のシグナリング)
転写因子受容体
転写調節:遺伝子の発現制御機構
第Ⅲ章 チャネルとトランスポーター
1 イオンチャネル
カルシウムイオン
Ca2+シグナルと細胞機能
細胞膜のCa2+チャネル
Ca2+放出チャネル
カリウムイオン
K+の生理的役割
K+チャネル
ナトリウムイオン
生体内のNa+とその役割
Na+チャネル
クロライドイオン
生体内のCl-とその役割
Cl-チャネル
アクアポリン
2 イオントランスポーター
第Ⅳ章 生理活性物質
1 神経性アミノ酸
γ-アミノ酪酸(GABA)
生体内のGABA
GABA受容体
GABAの生理的役割
GABAシナプスに作用する薬
グリシン
興奮性アミノ酸
グルタミン酸受容体
2 生理活性アミン
アセチルコリン
生体内のアセチルコリン
アセチルコリンの作用
アセチルコリン受容体
カテコラミン
生体内のカテコラミン
カテコラミン受容体と細胞内情報伝達系
セロトニン
生体内のセロトニン
セロトニン受容体
セロトニンの作用
セロトニン神経系に作用する薬
ヒスタミン
ヒスタミン受容体
ヒスタミンの作用
ヒスタミン受容体拮抗薬
3 生理活性ヌクレオチド・ヌクレオシド
4 生理活性ペプチド
神経ペプチド
生体内の神経ペプチド
オピオイドペプチド
視床下部・下垂体ペプチド
視床下部ペプチド
下垂体後葉ペプチド
下垂体前葉ペプチド
オレキシン
摂食調節ペプチド
中枢での摂食調節
末梢からの摂食調節
消化管ペプチド
膵臓ペプチド
血管作動性ペプチド
ナトリウム利尿ペプチドファミリー(ANP, BNP, CNP)
アンギオテンシン
エンドセリン
ブラジキニン
5 血管内皮細胞由来弛緩因子―NO
6 エイコサノイドとその他の脂質メディエーター
エイコサイノド
生体内のエイコサノイド
エイコサノイド受容体と情報伝達
エイコサノイドの作用
エンドカンナビノイド
リン脂質メディエーター
7 PAMPs/DAMPs自然免疫
8 サイトカインとケモカイン
サイトカイン
サイトカイン関連薬
ケモカイン
第Ⅴ章 神経薬理
1 末梢神経の構造と機能
末梢神経作用薬の分類
2 コリン作用薬
ムスカリン受容体作用薬
コリンエステル類と天然アルカロイド
ニコチン受容体作用薬
コリンエステラーゼ阻害薬
コリンエステラーゼ再賦活薬
3 抗コリン作用薬
ムスカリン受容体拮抗薬
ベラドンナアルカロイド
ベラドンナアルカロイド誘導体および合成ムスカリン受容体拮抗薬
ニコチン受容体拮抗薬
神経節遮断薬
神経筋接合部遮断薬
骨格筋直接弛緩薬
4 アドレナリン作用薬
カテコラミン
非カテコラミン・アドレナリン作用薬
間接型アドレナリン作用薬
混合型アドレナリン作用薬
アドレナリン受容体作用薬
5 抗アドレナリン作用薬
α受容体拮抗薬(α遮断薬)
非選択的α受容体拮抗薬
選択的α1受容体拮抗薬
β受容体拮抗薬(β遮断薬)
非選択的β受容体拮抗薬
選択的β1受容体拮抗薬
αβ受容体拮抗薬(αβ遮断薬)
6 中枢神経の構造と機能
神経情報処理の多様性
7 抗精神病薬
第一世代(従来型)抗精神病薬
フェノチアジン誘導体
ブチロフェノン誘導体
ベンズアミド誘導体
イミノジベンジル誘導体
チエピン誘導体
インドール誘導体
第二世代(非定型)抗精神病薬
8 抗うつ薬・気分安定薬・精神刺激薬
抗うつ薬
三環系抗うつ薬
非三環系抗うつ薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
その他の抗うつ薬
気分安定薬
気分安定薬としての抗痙攣薬
気分安定薬としての非定型抗精神病薬
中枢興奮薬
覚醒アミン
その他の精神刺激薬
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
選択的α2A受容体アゴニスト
キサンチン誘導体
9 Parkinson病治療薬(酒井規雄)
ドパミン作用薬
ドパミン受容体作用薬
モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害薬
カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬
その他のカテコラミン系薬
中枢性抗コリン作用薬
アデノシンA2A受容体拮抗薬
付.神経変性疾患治療薬
10 抗認知症薬,脳卒中治療薬
Alzheimer型認知症治療薬
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬
NMDAグルタミン酸受容体拮抗薬
認知症の疾患修飾薬
認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療薬
脳卒中治療薬
急性期の治療薬
脳梗塞・脳出血後遺症の治療薬
脳エネルギー代謝賦活薬
脳卒中後の精神・神経症状治療薬
11 抗不安薬・催眠薬
抗不安薬
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
5-HT1A受容体作用薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
催眠薬
ベンゾジアゼピン系催眠薬
非ベンゾジアゼピン系催眠薬
バルビツール酸系催眠薬
メラトニン受容体作用薬
オレキシン受容体拮抗薬
その他の催眠薬
脂肪族アルコール類
断酒補助薬
酒量抑制薬
12 抗てんかん薬・中枢性筋弛緩薬
抗てんかん薬
その他(新世代抗てんかん薬)
痙攣薬
中枢性筋弛緩薬
13 全身麻酔薬
麻酔の目的・分類と全身麻酔の必要条件
吸入麻酔薬
静脈麻酔薬
静脈麻酔法
14 局所麻酔薬
エステル型局所麻酔薬
アミド型局所麻酔薬
15 鎮痛薬
麻薬性オピオイド鎮痛薬
非麻薬性オピオイド鎮痛薬
オピオイド受容体拮抗薬
その他のオピオイド受容体に作用する治療薬
非オピオイド鎮痛薬
神経障害性疼痛治療薬
鎮痛補助薬
16 薬物の耐性と依存性
依存性薬物の種類
オピオイド
中枢抑制薬
中枢興奮薬
大麻類
幻覚発現薬
有機溶剤
ニコチン
禁煙補助薬
付.ドーピング
第Ⅵ章 循環器薬理
1 心臓作用薬
抗不整脈薬
Na+チャネル遮断薬
K+チャネル遮断薬
Ca2+チャネル遮断薬
β受容体拮抗薬
その他の抗不整脈薬
心不全治療薬
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン(RAA)系阻害薬
β受容体拮抗薬
グアニル酸シクラーゼ-cGMP系活性化薬
利尿薬
Na+/グルコース共輸送体(SGLT2)阻害薬
洞房結節HCNチャネル遮断薬
強心薬
cAMPを増加させる強心薬
抗狭心症薬
有機硝酸エステル(硝酸薬)
Ca2+チャネル遮断薬(カルシウム拮抗薬)
β受容体拮抗薬(β遮断薬)
抗血小板薬・抗凝固薬
2 高血圧治療薬およびその他の血管作用薬
高血圧治療薬
利尿薬
β受容体拮抗薬(β遮断薬)
αβ受容体拮抗薬(αβ遮断薬)
α1受容体拮抗薬(α1遮断薬)
中枢性および末梢性交感神経抑制薬
Ca2+チャネル遮断薬(カルシウム拮抗薬)
アンギオテンシン変換酵素阻害薬
アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
エンドセリン受容体拮抗薬
レニン阻害薬
アルドステロン受容体拮抗薬
低血圧治療薬,昇圧薬
ドパミン作用薬
アドレナリン作用薬
血管拡張薬
付.頭痛薬
3 血液・造血器作用薬
血液凝固・血栓形成と血栓溶解
止血薬
抗血栓薬
血小板凝集阻害薬(抗血小板薬)
血液凝固阻止薬,抗凝固薬
血栓溶解薬
造血薬
貧血治療薬
造血因子(造血作用薬)
第Ⅶ章 利尿薬と泌尿器・生殖器作用薬
1 腎臓の機能と利尿薬
腎臓の機能
利尿薬
浸透圧利尿薬
炭酸脱水酵素阻害薬
チアジド系利尿薬
ループ利尿薬
カリウム保持性利尿薬
バソプレシン受容体拮抗薬
2 泌尿器・生殖器作用薬
排尿障害治療薬
前立腺肥大症治療薬
勃起不全治療薬
子宮収縮薬
子宮弛緩薬
第Ⅷ章 炎症・免疫・アレルギー薬理
1 炎症とその制御
2 ヒトの免疫・アレルギー疾患の病態
3 非ステロイド・ステロイド抗炎症薬
非ステロイド抗炎症薬
シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬(酸性抗炎症薬)
サリチル酸類
アリール酢酸系―インドール酢酸誘導体
アリール酢酸系―フェニル酢酸誘導体
その他のアリール酢酸系
アリールプロピオン酸誘導体
オキシカム誘導体
アントラニル酸誘導体
選択的COX-2阻害薬
塩基性抗炎症薬
解熱鎮痛薬
非ピリン系解熱鎮痛薬
ピリン系解熱鎮痛薬
ステロイド抗炎症薬
4 免疫・アレルギー疾患治療薬
免疫抑制薬
アルキル化薬
プリン代謝拮抗薬
カルシニューリン阻害薬
mTOR阻害薬
その他
免疫調整薬
抗リウマチ薬
分子標的薬
生物学的製剤
低分子化合物
抗アレルギー薬
高尿酸血症・痛風治療薬
尿酸排泄促進薬
尿酸合成阻害薬
痛風治療薬
第Ⅸ章 呼吸器・消化器作用薬
1 呼吸器作用薬
呼吸刺激薬
鎮咳薬
去痰薬
気管支拡張薬
気管支喘息治療薬
2 消化器作用薬
胃(食道)に作用する薬
胃酸分泌抑制薬
胃運動促進薬
Helicobacter pylori除菌薬
制吐薬
腸に作用する薬
腸運動抑制薬
制瀉薬(止痢薬)
消化管運動改善薬
抗便秘薬,下剤
炎症性腸疾患治療薬
鎮痛薬
肝臓・胆道・膵臓に作用する薬
肝臓・胆道疾患治療薬
肝炎治療薬
肝硬変治療薬(肝不全治療薬)
脂肪肝治療薬
膵臓疾患治療薬
膵炎治療薬
第Ⅹ章 感覚器作用薬
眼科薬
耳鼻咽喉科薬
皮膚科薬
第Ⅺ章 ホルモン・内分泌・代謝性疾患治療薬
1 下垂体ホルモン(須賀英隆)
下垂体ホルモン放出促進ホルモン
下垂体ホルモン放出抑制ホルモン
下垂体前葉ホルモン
下垂体後葉ホルモン
2 ステロイドホルモン
副腎皮質ホルモン
糖質コルチコイド
糖質コルチコイド関連薬
糖質コルチコイド合成阻害薬
鉱質コルチコイド
鉱質コルチコイド受容体拮抗薬
性ホルモン
卵胞ホルモン(エストロゲン)
卵胞ホルモン関連薬
抗卵胞ホルモン関連薬
黄体ホルモン(プロゲステロン)
黄体ホルモン関連薬
経口避妊薬
選択的プロゲステロン受容体モジュレーター
男性ホルモン(アンドロゲン)
男性ホルモン関連薬
3 甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモン関連薬
抗甲状腺薬
4 脂肪細胞由来因子
5 代謝性疾患治療薬
糖代謝―糖尿病治療薬
インスリン製剤
経口糖尿病薬
インクレチン関連薬
脂質代謝―脂質異常症治療薬
脂質代謝のメカニズム
脂質異常症治療薬
骨代謝―骨カルシウム代謝異常症治療薬
骨粗鬆症治療薬
骨吸収抑制薬
骨形成促進薬
骨吸収抑制・骨形成促進薬
その他
カルシウム代謝異常症治療薬
副甲状腺機能亢進症治療薬
副甲状腺機能低下症治療薬
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症治療薬
第Ⅻ章 化学療法薬
1 抗微生物薬
抗菌薬(八木澤守正)
抗生物質
β-ラクタム系抗生物質
アミノグリコシド系抗生物質
マクロライド系抗生物質
リンコサミド系抗生物質
テトラサイクリン系抗生物質
ペプチド系抗生物質
抗結核抗生物質
他の系に分類されない抗生物質
合成抗菌薬
ピリドンカルボン酸系合成抗菌薬
オキサゾリジノン系合成抗菌薬
サルファ剤系合成抗菌薬
ピリジン系合成抗菌薬
ニトロイミダゾール系合成抗菌薬
他の系に分類されない合成抗菌薬
特定の病原菌に適応を有する抗菌薬
抗真菌薬
抗真菌性抗生物質
イミダゾール系抗真菌薬
トリアゾール系抗真菌薬
その他の系の抗真菌薬
抗原虫薬
抗ウイルス薬
単純ヘルペスウイルスおよび水痘・帯状疱疹ウイルス
サイトメガロウイルス
肝炎ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
インフルエンザウイルス
コロナウイルス
2 抗悪性腫瘍薬
殺細胞性抗腫瘍薬
アルキル化薬
代謝拮抗薬
葉酸代謝拮抗薬
ピリミジン代謝拮抗薬
プリン代謝拮抗薬
その他の代謝拮抗薬
微小管阻害薬
トポイソメラーゼ阻害薬
抗腫瘍性抗生物質
内分泌療法薬
分子標的薬
抗体薬
小分子標的薬
選択的チロシンキナーゼ阻害薬
その他のキナーゼ阻害薬
mTOR阻害薬
マルチキナーゼ阻害薬
プロテアソーム阻害薬
HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害薬
PARP阻害薬
CDK4/6阻害薬
抗体薬物複合体
免疫チェックポイント阻害薬
第ⅩⅢ章 臨床薬理学
臨床薬理学序説
臨床薬物動態学
薬物動態理論
薬物動態の種差
ヒトにおける薬物動態
薬理遺伝学
発達および老人薬理学
薬物相互作用
薬の適用法と処方学への導入
薬物療法の個人別化―TDMと薬物投与設計
個人最適化医療
Therapeutic drug monitoring (TDM)
薬の血漿中濃度からの投与方法の調整
病態時における薬物動態
薬の有効性と安全性
薬物毒性の発現機序
臨床薬物中毒学
薬の副作用とその対策
ジェネリック医薬品とバイオシミラー医薬品
和文索引
欧文索引
【改訂第8版の序】
21 世紀も4 半世紀が過ぎようとしている.この間の医学の進展は目覚ましいものがある.一つは,医学の究極の目的であるヒトの病気によって引き起こされる構造と機能の変化,病態の分子的理解が進んだことであり,もう一つは,この進歩に対応して,病態を制御するモダリティーとして,これまでの低分子化学物質に加え,抗体などの蛋白医薬,RNA,DNA また細胞医薬などが続々と登場したことである.COVID-19 に対するmRNA ワクチンの有効性はまだ記憶に新しい.これらの知見が明らかにしたことは,多くの病態は,おのおのの疾患の場における生体内情報伝達の異常によって生じること,薬物の治療効果はこれを矯正することによってなされているということである.これは,まさに「NEW 薬理学」の初版以来の基本方針である「多くの薬の標的は疾病により何らかの異変をきたした生体内情報伝達であり,薬物治療の原理の理解には情報伝達の細胞生物学の視点が不可欠」に一致,裏付けるものである.今回の改訂は,「薬理学は,薬と生体との相互作用を解析して,ヒトの治療学の基礎となる学問である」という認識に基づき,上記の進歩を大きく取り入れ,これまでの薬理学の体系と合わせた包括的な視点とともに今後の医学とさまざまなモダリティーの進展への展望をも与えることを目的とした.
①第Ⅰ章総論において,生物医薬を新たな項目として加え,抗体医薬,核酸医薬,細胞医薬の原理,技術,現況を概説した.
②第Ⅱ章 生体内情報伝達機構,第Ⅲ章 チャネルとトランスポーター,第Ⅳ章 生理活性物質は本書の特徴とすべき部分である.各章で内容をアップデートするとともに,オレキシン,PAMPs/DAMPs 自然免疫を新たな項目として加えた.
③治療学につながる各論では,分子標的薬や免疫作用薬を中心に,薬物作用を,明らかになりつつある病態の分子メカニズムと関連づけることを心がけた.このような薬物の分子レベルでの臨床関連性は今後ますます明らかになっていくものと思われ,改訂のたびにアップデートする予定である.
編者らは,本書に最新の情報を盛り込むことを心がけたが,最近の医学の爆発的な進展から日々刻々と新規の医学知見,新しい薬物が誕生している.本書は,読者の皆さんがこれらをフォローできる学問基盤を与えることを目的とした.これについて読者の皆さんより忌憚のない意見をいただけば幸いである.「NEW 薬理学」は,創刊以来35 年間,薬物治療の基礎としての薬理学に加えて,薬を通して生体の働きを探求する科学としての薬理学を学ぶ学生・研究者・臨床医にとっての標準的な教科書として成長してきた.改訂された本書が,今後ともその役割を果たしていくことができれば,編者らにとって大きな喜びである.
おわりに,改訂にあたり多忙のなか執筆の労を取って頂いた諸先生方,多大のご努力を頂いた南江堂の諸氏に心より御礼申し上げたい.
2024 年冬
編者ら
【初版の序】
草根木皮などの植物成分を用いての疾患の治療はギリシャや古代中国の時代から行われてきたが,薬理学が近代科学として誕生してからいまだ100 年も経っていない.
薬理学とは適正な薬物療法の基礎となる科学であり,また新しい薬の開発の基礎となる科学でもある.一方,薬を研究の手段として用いることにより,生体の調節機構をより明らかにすることも可能である.したがって薬理学は薬と生体との相互作用の結果起こる現象を研究し,その機構を明らかにすることを目的とした科学であるといえよう.それゆえ,これらの相互作用を分子レベル,細胞レベル,個体レベルで研究することが必要であり,このためには薬と生体の両面を十分に理解しておかなければならない.
本書は,学生が最新の薬理学的思考を身につけ,将来,より科学的な薬物療法,薬理学的研究の進歩発展に寄与する手助けとなるよう書かれたもので,従来の教科書と異なり,総論的な項目に多くの頁を割き,特に薬の作用を理解するうえで基礎となる生理活性物質について詳しく述べることにした.また,臨床における薬物療法に必要な臨床薬理学の基本的事項についても記述した.
個々の薬については,現在あまり使用されていない薬などはできる限り削除し,学生として知っておかねばならない最少限にとどめることにした.
多くの図表を入れ,基本的事項の整理や重要な作用機序の理解の助けとなるよう配慮した.一方,歴史的な事項は囲みで示し,参考になる生化学,生理学,解剖学的事項や最新の専門的知見は小文字で記し,基本的事項と区別してある.
なお,本書においては〇〇剤という言葉を用いず〇〇薬に統一した.本来,「剤」とは製剤されたものを示すものであり,その本体は「薬」であって,薬理学として学ぶものは薬であるからである.もちろん,臨床家が投与する薬は〇〇剤であるが,生体に入り作用するのは〇〇薬である.
本書が,我が国の薬理学の教育,研究,薬物療法の向上に少しでも貢献できれば,編者・筆者らの望外の喜びである.
終わりに,本書の校正に一方ならぬご尽力をいただいた慶應義塾大学医学部薬理学教室中館映夫講師および神戸大学医学部薬理学教室諸氏に心より感謝したい.また,本書の出版に多大の御努力をいただいた南江堂諸氏に心よりお礼申しあげたい.
1988 年秋
編者ら
