書籍

タイプ2炎症バイオマーカーの手引き

編集 : タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会
ISBN : 978-4-524-23372-4
発行年月 : 2023年4月
判型 : A4変型
ページ数 : 120

在庫あり

定価3,190円(本体2,900円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

呼気NO濃度,血中好酸球,喀痰中好酸球,血清IgEをはじめとするタイプ2炎症のバイオマーカーの分子機序や測定方法,交絡因子などを整理し,臨床で活用できるよう要点をまとめた手引き書.気道・肺疾患におけるバイオマーカーの測定意義や結果の解釈の根拠となるエビデンスを記載し,最新の情報を提供.呼吸器専門医のみならず,気道のアレルギー疾患を診療する医師や関連する医療従事者必携の一冊.

第1章 気道・肺疾患におけるタイプ2炎症評価の臨床指針
  1.タイプ2炎症の定義
  2.タイプ2炎症バイオマーカーの特徴
  3.軽症・中等症喘息
  4.重症喘息
  5.COPD
  6.びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患
 
第2章 タイプ2炎症とバイオマーカー
 A.総論
  1.タイプ2炎症の定義
  2.炎症病態・治療とバイオマーカー
 B.呼気一酸化窒素濃度(FeNO)
  1.分子機序(喘息病態との関係)
  2.測定方法
  3.安定性・再現性
  4.交絡因子
  5.臨床運用の要点
 C.血中好酸球
  1.分子機序(喘息病態との関係)
  2.測定方法
  3.安定性・再現性
  4.交絡因子
  5.臨床運用の要点
 D.喀痰中好酸球
  1.分子機序(喘息病態との関連)
  2.測定方法
  3.安定性・再現性
  4.交絡因子
  5.臨床運用の要点
 E.血清IgE,特異的IgE,プリックテスト
  1.分子機序(喘息病態との関連性)
  2.測定方法
  3.安定性・再現性
  4.交絡因子
  5.臨床運用の要点
 F.上気道のタイプ2炎症のバイオマーカー
  1.FeNOと鼻腔呼気NO
  2.鼻汁中好酸球,組織中好酸球
 G.その他のタイプ2炎症バイオマーカー
  1.気管支粘膜生検と気管支肺胞洗浄液
  2.その他の血液バイオマーカー
 
第3章 タイプ2炎症評価の意義と結果の解釈
1 喘息(重症喘息を除く)
 A.総論
  1.疫学と病態
  2.喘息におけるタイプ2炎症の病態
  3.タイプ2炎症バイオマーカーの種類と意義
 B.診断における意義
  1.FeNO
  2.血中好酸球数
  3.血清総IgE値と吸入抗原への特異的IgE抗体
 C.治療の選択
  1.未治療患者において吸入ステロイド薬反応性予測に有用なタイプ2炎症バイオマーカー
  2.既治療患者において治療ステップアップ時の治療薬選択に有用なタイプ2炎症バイオマーカー
  3.既治療患者において治療ステップダウン時の治療薬選択に有用なタイプ2炎症バイオマーカー
  4.タイプ2炎症バイオマーカーは治療薬選択に有用か?
 D.モニタリング
  1.FeNO
  2.喀痰中好酸球比率
  3.血中好酸球数
  4.FeNOと血中好酸球数の組み合わせ
2 重症喘息
 A.総論
  1.重症喘息におけるタイプ2炎症バイオマーカーの概要と解釈
 B.診断における意義
  1.重症喘息におけるタイプ2炎症バイオマーカーのかかわり
  2.重症喘息におけるタイプ2炎症バイオマーカーの診断における意義
 C.治療の選択
  1.抗IgE抗体[オマリズマブ(ゾレア®)]
  2.抗IL‑5療法[メポリズマブ(ヌーカラ®),ベンラリズマブ(ファセンラ®)]
  3.抗IL‑4受容体α(IL‑4Rα)抗体[デュピルマブ(デュピクセント®)]
  4.抗TSLP抗体[テゼペルマブ(テゼスパイア®)]
  5.生物学的製剤の選択におけるタイプ2炎症バイオマーカーの位置づけ
 D.モニタリング
  1.抗IgE抗体[オマリズマブ(ゾレア®)]
  2.抗IL‑5抗体[メポリズマブ(ヌーカラ®)]
  3.抗IL‑5受容体α(IL‑5Rα)抗体[(ベンラリズマブ(ファセンラ®)]
  4.抗IL‑4受容体α(IL‑4Rα)抗体[デュピルマブ(デュピクセント®)]
3 COPD
 A.総論
  1.喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)
  2.治療薬選択におけるタイプ2炎症バイオマーカーの意義
 B.診断における意義
  1.診断基準の変遷
  2.ACOの診断基準とバイオマーカー
  3.COPDにおけるタイプ2炎症
 C.治療の選択とモニタリング
  1.COPDと好酸球
  2.喀痰中好酸球
  3.血中好酸球
  4.FeNO
  5.血清総IgEと抗原特異的IgE抗体
4 びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患
 A.総論
  1.びまん性肺疾患
  2.EGPA,N‑ERD,ABPA/M
  3.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS
 B.びまん性肺疾患
  1.特発性肺線維症(IPF)
  2.全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc‑ILD)
  3.好酸球性肺炎
  4.閉塞性細気管支炎症候群(BOS)
 C.ABPA/M,EGPA,N-ERD
  1.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症(ABPA/M)
  2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
  3.NSAIDs過敏喘息(N‑ERD)
 D.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS
  1.アレルギー性鼻炎,花粉症
  2.慢性副鼻腔炎,鼻ポリープ

 気道・肺におけるタイプ2炎症とは,「抗原,ウイルス,大気汚染物質などの刺激により,主に2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球が産生するIL‑4,IL‑5,IL‑13などのタイプ2サイトカインが好酸球などの炎症細胞や気道構築細胞に作用し,気道・肺に惹起される炎症」のことです.現在,タイプ2炎症が脚光を浴びているのは治療と直結しているためです.
 日常診療で測定可能な血中好酸球,呼気NO濃度(FeNO),血清IgEなどの炎症バイオマーカーが,喘息やCOPDの診断や管理において不可欠な臨床指標であることを示すエビデンスが豊富に集積されてきており,国内外のガイドラインが臨床現場での活用を推奨しています.喘息やCOPDでは,臨床像が類似していても炎症表現型は多様であることが知られており,バイオマーカーで気道の炎症病態を正確に把握することにより,診断精度の向上,より安全で効果的な治療方針の決定,環境抗原の回避,増悪や呼吸機能低下などの将来リスクの予測と治療介入,が可能となることが実証されてきました.しかしながら,本邦の日常診療ではタイプ2炎症の評価が定着し,十分に実践されている状況にはいたっておりません.
 このような状況のなか,日本呼吸器学会肺生理専門委員会は,気道・肺疾患におけるタイプ2炎症評価の臨床指針をわかりやすくまとめた手引き書をはじめて刊行することになりました.喘息やCOPDに加え,びまん性肺疾患,アレルギー性気管支肺真菌症,好酸球性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎など広範な気道・肺疾患を対象にしました.また,血液および呼気を試料とする臨床的なバイオマーカーを網羅した,国際的にも類のない包括的な指針となります.
 本手引きの目的は,タイプ2炎症評価の意義や結果の解釈の根拠となる最新エビデンスを示すとともに,実臨床での具体的な状況において簡便に活用できる指針を提供することで炎症評価の普及につなげ,気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指していくことです.本書が,呼吸器疾患の診療に携わる多くの皆様に活用いただけることを願っております.
 最後に,本書の作成に多大なるご尽力をいただいた作成委員をはじめとする関係者の皆様ならびにコメントをいただきました学会員の先生方に深く感謝いたします.

2023年3月
一般社団法人 日本呼吸器学会
タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会

9784524233724