血液疾患最新の治療2023-2025
編集 | : 松村到/張替秀郎/神田善伸 |
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ISBN | : 978-4-524-23368-7 |
発行年月 | : 2022年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 342 |
在庫
定価10,120円(本体9,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新の治療シリーズの血液疾患版.診断から処方例までの標準的治療とともに, 近年進歩の著しい 血液疾患治療に関する最新の情報を提供する.巻頭トピックスでは,「溶血性貧血に対する新規治療薬」「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の最新治療」「造血器腫瘍に対する二重特異性抗体療法の進歩」など注目のテーマを11題取り上げ解説.巻末付録として日々の臨床に役立つ薬剤一覧も掲載.
巻頭トピックス
1.溶血性貧血に対する新規治療薬
2.腎性貧血に対する新規治療
3.Ph+ALLに対するchemotherapy—freeレジメン
4.中枢神経原発リンパ腫(PCNSL)に対する新規治療
5.monoclonal gammopathy of renal significance(MGRS)
6.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の最新治療
7.GVHDと腸内細菌
8.造血器腫瘍に対する二重特異性抗体療法の進歩
9.キメラ抗原受容体発現Tリンパ球(CAR—T)細胞の改良
10.血液腫瘍におけるクリニカルシークエンスの意義と循環腫瘍DNAを用いたMRD解析
11.POEMS症候群
T 主な血液疾患用薬剤の作用機序と適応
1.鉄剤・葉酸・ビタミンB12
2.造血因子
3.免疫抑制薬
4.抗がん薬
5.抗体医薬
6.抗凝固薬と抗血小板薬
7.止血薬と凝固因子製剤
U 赤血球系疾患
1.鉄欠乏性貧血
2.巨赤芽球性貧血
3.溶血性貧血
4.再生不良性貧血
5.赤芽球癆
6.全身疾患に伴う貧血
V 造血系・リンパ系疾患
1.急性骨髄性白血病
2.急性前骨髄球性白血病
3.高齢者白血病
4.小児白血病
5.慢性骨髄性白血病
6.骨髄増殖性腫瘍
7.低リスク骨髄異形成症候群
8.高リスク骨髄異形成症候群
9.急性リンパ性白血病
10.Ph染色体陽性急性リンパ性白血病
11.慢性リンパ性白血病
12.MALTリンパ腫
13.濾胞性リンパ腫
14.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
15.血管内リンパ腫
16.Burkittリンパ腫
17.成人T細胞白血病/リンパ腫
18.マントル細胞リンパ腫
19.末梢性T細胞リンパ腫・非特定型,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫,未分化大細胞リンパ腫
20.NK/T細胞リンパ腫
21.Hodgkinリンパ腫
22.多発性骨髄腫
23.原発性マクログロブリン血症
24.慢性活動性EBウイルス感染症
W 出血・血栓性疾患
1.先天性および後天性血管障害による出血
2.特発性血小板減少性紫斑病
3.血小板機能異常症
4.血友病
5.von Willebrand病
6.その他の先天性凝固異常症・線溶異常症
7.先天性血栓傾向
8.深部静脈血栓症
9.抗リン脂質抗体症候群
10.播種性血管内凝固(DIC)
11.血栓性微小血管障害(TMA)/血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)
12.heparin起因性血小板減少症(HIT)
X 造血幹細胞移植
1.移植に向けたブリッジング治療に伴う合併症(mogamulizumab,inotuzumab ozogamicin,免疫チェックポイント阻害薬)
2.造血幹細胞移植の前処置
3.臍帯血移植
4.HLA半合致移植
5.急性・慢性GVHDの二次治療
6.造血幹細胞移植後のウイルス感染症と対策
Y 主な診断法・治療法
1.PET診断
2.フローサイトメトリー検査
3.遺伝子診断
4.輸血療法
5.放射線治療
6.感染症とその対策(細菌)
7.感染症とその対策(真菌)
付 録
主な血液疾患用薬剤
索 引
本書を編集するにあたって,改めて実感したのはこの数年における造血器疾患治療の進歩である.この数年内に承認された,FLT3阻害薬,BCL—2阻害薬,STAMP阻害薬などの小分子化合物は,臨床の場で広く用いられ,それぞれの疾患に対して高い有効性を示している.抗体薬剤についても,初発進行期Hodgkinリンパ腫に対して,抗体薬物複合体であるbrentuximab vedotinを用いたA+AVD療法は,標準治療であったABVD療法に無増悪生存率(PFS)で勝った.さらに,中間/高リスクの初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してpolatuzumab vedotin(PV)とR—CHPの併用(pola—R—CHP)療法は,標準治療R—CHOP療法にPFSで勝ることが示された.このように,これまで長年不変であったエビデンスがこの数年で書き換えられた.さらに,発作性夜間血色素尿症や寒冷凝集素症などの良性疾患や同種造血幹細胞移植後のGVHDに対しても有効性の高い新規薬剤の承認が続いている.また細胞療法としては,急性リンパ性白血病,DLBCLに加えて,多発性骨髄腫に対するCAR—T療法も承認された.血液疾患に対する治療は,今後も進化し,治療成績の向上が期待される.
本書の編集にあたっては,すさまじい血液学の進歩に対応した内容にすることを重視した.このため「巻頭トピックス」では,最近の血液学の進歩についてまとめている.同時にそれ以降の章は,本書1冊で,主要な血液疾患の診断から,最新治療,支持療法に至るまでの知識が残すところなく得られるよう構成されている.T章「主な血液疾患用薬剤の作用機序と適応」には,各薬剤の適応だけでなく,副作用などの日常診療における使用時の注意点が記載されている.U,V,W章には,主要な赤血球系疾患,造血系・リンパ系疾患,出血・血栓性疾患に対する最新の治療について,具体的な処方とともに詳細な解説がなされている.その後には,X章「造血幹細胞移植」,Y章「主な診断法・治療法」を設けている.
本書は,それぞれの領域の第一線で活躍中の先生に最新のエビデンスをもとに執筆いただいた.本書1冊で,専門医を目指す先生,知識の刷新を目的とする専門医の先生のいずれにも満足いただける内容になっていると自負している.本書が読者の先生方の日々の診療に役立つことを期待したい.
2022年8月
松村 到
張替秀郎
神田善伸
変貌を遂げる血液疾患治療において,初学者からエキスパートにまで幅広く役立つ良書
「血液疾患最新の治療」は,著名な3名の編集者らにより,2010年より約3年ごとに改訂されている伝統のある良書である.このたび,待望の2023—2025年版が発刊された.2022年秋に開催された第84回日本血液学会学術集会の書籍売り場でも,多くの参加者の購入意欲を搔き立てた一冊である.本書の特徴の一つは,表紙に巻頭トピックスのタイトルが記されていることである.本書を「すさまじい血液学の進歩に対応した内容にする」という編集方針を強く感じる.
内容をみてみると,血液疾患の最近のトピックス,ならびに主要な血液疾患の診断から最新治療,支持療法に至るまでの情報が余すことなく掲載されている.具体的には,「巻頭トピックス」に始まり,「主な血液疾患用薬剤の作用機序と適応」「赤血球疾患」「造血系・リンパ系疾患」「出血・血栓性疾患」「造血幹細胞移植」「主な診断法・治療法」という章立てとなっている.各疾患・項目について,「疾患の概説」「治療のための検査・診断」「治療の一般方針」「その他の治療法」に加えて,「患者への説明ポイント」や「生活指導とリハビリテーション」などが要領よくまとめられているのが魅力的である.また,図表を用いて疾患の分類や治療チャート,処方例などについて解説されている点も実臨床に大いに役に立つ.さらに,随所に散りばめられているトピックス,役に立つ豆知識,治療の奥の手,治療のご法度なども,血液疾患治療に対する理解を大いに深めるものである.
血液疾患においては,病態解析が急速に発展している.それに呼応するように,新たな診断技術や画期的な新薬が続々と登場し,血液疾患の診断や治療は飛躍的に進歩している.たとえば,小分子化合物(FLT3阻害薬,BCL—2阻害薬,STAMP阻害薬,腎性貧血に対するHIF—PH阻害薬)や抗体薬剤(brentuximab vedotin,抗PD—1抗体,抗補体治療薬)の登場によって,治療法が大きく変わったのである.しばらく触れていなかった領域についてインターネットなどで調べると,治療法が大きく進化しており驚くことがしばしばである.血液疾患領域は,悪性疾患や難病が多く,治りづらいという印象をもたれがちであるが,最近は新薬の登場や細胞移植技術の改善により治療成績が向上し,治癒が期待できる疾患も多いのである.
変貌を遂げている血液疾患の最新治療に関して,本書は読者にとってわかりやすく,しかも簡潔に必要事項がまとめられている.血液疾患治療の実用書・参考書として,初学者からエキスパートにまで幅広く役立つものである.わが国における血液疾患の理解と治療成績の向上のために,多くの方に本書を活用していただけることを切望する.
臨床雑誌内科131巻5号(2023年5月号)より転載
評者●一般財団法人住友病院 院長 金倉 譲