呼吸器疾患最新の治療2023-2024
編集 | : 弦間昭彦/西岡安彦/矢寺和博 |
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ISBN | : 978-4-524-23366-3 |
発行年月 | : 2023年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 508 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
正誤表
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2023年10月31日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新の治療シリーズの呼吸器版.巻頭トピックスでは,「呼吸器疾患におけるAI画像診断」「肺癌におけるゲノム医療」「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂のポイント」「喘息におけるILC2の役割」など,注目のテーマを15題取り上げた.各論では,主な呼吸器用薬剤・治療手技,各疾患の診断から処方例を含めた標準的治療について最新の知見を紹介し解説.巻末には薬剤一覧も収載.最新の呼吸器診療を網羅した一冊.
巻頭トピックス
1 呼吸器疾患におけるAI画像診断
2 呼吸器疾患とマイクロバイオーム
3 クライオバイオプシーと間質性肺炎診断
4 肺癌におけるゲノム医療
5 気管支拡張症の新規治療の展望
6 間質性肺炎合併肺癌の薬物療法
7 進行性線維化を伴う間質性肺疾患の診断と治療
8 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂のポイント
9 過敏性肺臓炎の国際ガイドライン
10 喘息とCOPDのオーバーラップの診断と治療
11 喘息におけるILC2の役割
12 抗体薬物複合体(ADC)の肺障害
13 肺癌学会データベースの構築とその活用
14 成人肺炎診療ガイドラインの展望
15 呼吸器感染症の原因菌における質量分析
T 主な呼吸器用薬剤の作用機序と適応
1 鎮咳薬
2 喀痰治療薬
3 気管支拡張薬
4 抗アレルギー薬
5 抗炎症・免疫抑制薬(マクロライドも含む)
6 副腎皮質ステロイド薬
7 抗癌薬
8 抗菌薬
U 呼吸器疾患の治療手技
1 気管挿管/気管切開
2 酸素吸入の流量決定と投与方法
3 侵襲的人工呼吸の適応とウィーニング
4 NPPVの急性呼吸不全における適応と実際
5 胸腔穿刺法と胸腔チューブの挿入法
6 心膜腔穿刺,開窓術
7 中枢気道狭窄治療−内腔拡張術とステント留置
8 在宅酸素療法の適応と導入
9 呼吸理学療法
10 運動療法の実際
11 在宅人工呼吸療法の適応
12 肺移植の現状
V 呼吸器系の救急治療
1 慢性呼吸不全の急性増悪
2 重症喘息発作
3 喀 血
4 気 胸
5 胸水貯留
6 気道異物
7 化学物質の吸入
8 気道熱傷
9 溺 水
W 呼吸不全と呼吸調節障害
1 急性呼吸不全とARDS
2 慢性呼吸不全
3 睡眠時無呼吸症候群
4 特発性中枢性肺胞低換気
5 過換気症候群
X 呼吸器感染症
1 かぜ症候群,急性咽頭炎と急性気管支炎
2 百日咳
3 肺炎のエンピリック治療
4 マイコプラズマ肺炎
5 クラミジア・ニューモニエ肺炎
6 オウム病
7 Q熱
8 レジオネラ肺炎
9 肺膿瘍
10 肺アスペルギルス症
11 肺クリプトコックス症とその他の肺真菌症
12 MRSA肺炎
13 緑膿菌感染症
14 肺結核(症)
15 結核性胸膜炎
16 非結核性抗酸菌症
17 寄生虫,リケッチアによる肺感染症
18 ニューモシスチス肺炎
19 誤嚥性肺炎
20 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
Y 閉塞性肺疾患と気道系疾患
1 気管支喘息
2 咳喘息(cough variant asthma)
3 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
4 びまん性汎細気管支炎/副鼻腔気管支症候群
5 気管支拡張症
Z 間質性肺疾患
1 急性間質性肺炎
2 特発性肺線維症
3 特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)
4 特発性器質化肺炎(COP/BOOP)
5 肺Langerhans細胞組織球症
6 慢性好酸球性肺炎
7 肺胞蛋白症
8 リンパ脈管筋腫症
9 肺胞微石症
[ 免疫・アレルギー性肺疾患
1 サルコイドーシス
2 過敏性肺炎
3 アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
4 急性好酸球性肺炎
5 ANCA関連血管炎における肺疾患
6 Goodpasture症候群
7 IgG4関連呼吸器疾患
\ 医原性肺疾患
1 薬剤性肺障害
2 放射線性肺臓炎
3 造血幹細胞移植後の呼吸器合併症
] 肺循環障害
1 肺血栓塞栓症
2 肺動脈性肺高血圧症
]T 全身性疾患による肺病変
1 腎不全,透析患者の肺合併症
2 膠原病の肺病変
3 HIV患者にみられる肺病変
4 血液疾患(白血病,悪性リンパ腫)による肺病変
]U 腫瘍性疾患
1 肺癌の外科治療
2 小細胞肺癌の治療(手術適応と化学療法)
3 非小細胞肺癌の集学的治療
4 肺癌合併症への対策
5 肺癌の緩和ケア
6 抗癌薬の副作用対策
7 縦隔腫瘍
8 転移性肺腫瘍
9 胸膜中皮腫
]V 先天性異常・形成不全
1 肺分画症
2 肺動静脈奇形(肺動静脈瘻)
]W 呼吸器疾患の患者指導
1 妊娠時の呼吸器薬の取り扱い方
2 慢性呼吸不全患者の日常生活指導と呼吸ケア・リハ(現状と問題点)
3 慢性呼吸不全患者に対する栄養指導
4 誤嚥性肺炎防止のための患者指導
5 肺癌患者の外来管理
6 禁煙指導の実際
● 巻末付録:薬剤一覧表
近年,呼吸器領域の診断,治療は目覚ましく進歩しており,本書「呼吸器疾患最新の治療」は,前々回より2 年ごとに発刊されております.感染症,アレルギー性疾患,肉芽腫性疾患,びまん性肺疾患,腫瘍,希少疾患と幅広い疾患が含まれる呼吸器疾患を網羅するべく,今回も,各領域の多くのエキスパートの先生方に執筆をお願いいたしました.
本書の特徴である巻頭トピックスでは,AI 画像診断,マイクロバイオーム研究,データベースの構築など,先端の研究技法の最新情報や,各領域の診断治療の進歩について,テーマを選択し取り上げさせていただきました.診断治療に関するテーマは,クライオバイオプシーによる間質性肺炎診断,抗線維化薬の適応拡大で注目される進行性線維化を伴う間質性肺疾患の診断と治療,ゲノム医療の最先端である肺癌におけるゲノム医療,標準的治療が決まりつつある間質性肺炎合併肺癌の薬物療法,有効性の非常に高い抗体薬物複合体における肺毒性,治療適応となる疾患因子の把握がより重要な喘息とCOPD のオーバーラップの診断と治療,喘息におけるILC2 の役割,新たな治療薬の登場で注目される気管支拡張症の病態と新規治療,病原体の検出では遺伝子検索と双璧をなす呼吸器感染症の原因菌における質量分析,成人肺炎診療ガイドライン,過敏性肺臓炎の国際ガイドライン,特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂など,各領域のガイドラインの最新情報と,大変魅力的な内容になっていると考えます.
総論的内容として,T章,U章は,呼吸器科医として必要な薬剤,治療手技などを解説いただきました.V章救急治療は,呼吸器内科のみならず,呼吸器外科や救急集中治療の医師とも連携協力が必須の領域です.W章では,新たに刊行されたARDS のガイドラインを踏まえた急性呼吸不全とARDS について,慢性呼吸不全や睡眠時無呼吸症候群での在宅high-flow nasal cannula(HFNC)療法などの最新の話題が含まれています.
各論では,各種呼吸器感染症,閉塞性肺疾患,気道系疾患,間質性肺疾患,免疫・アレルギー性疾患,医原性肺疾患,肺循環障害,腫瘍性疾患,先天性異常・形成不全など,わが国屈指のエキスパートに最新の状況を踏まえて執筆いただきました.そのほか,Ⅺ章では,腎不全や透析,膠原病,HIV,血液疾患などの全身性疾患による肺病変について,]W 章では,妊娠時の薬剤の取り扱いや,慢性呼吸不全の生活指導と訪問看護,栄養指導,誤嚥性肺炎の防止などの患者指導について詳細に解説していただき,お役立ていただける内容になったと思います.
本書は,基本的に,毎回執筆者の先生方に交代いただき,新鮮な視点から執筆いただく編集方針で作成されています.執筆の先生方には,非常に多くのお時間をかけていただき,ご尽力を賜りましたこと,感謝申し上げます.また,きめ細やかなサポートをしていただいた南江堂の皆様には深謝いたします.本書が,診療の現場で,呼吸器疾患の診断,治療のバイブルとして活用いただける一冊になることを願います.
2023 年1 月
弦間昭彦
西岡安彦
矢寺和博
AI画像診断からガイドラインまで―最先端の呼吸器診療を網羅したバイブル
『呼吸器疾患最新の治療』の2023-2024年版が刊行された.シリーズ化されている本書を呼吸器診療に従事している医師で知らない人はいないであろう.呼吸器診療のすべてを網羅しており,かつ最先端の情報にアップデートされていることから,まだ経験の浅い医師だけでなく,エキスパートである専門医にとっても参考になる教科書である.
なかでも本書の編集者が注目している項目は,「巻頭トピックス」に記載されている.今回のトップバッターはAI画像診断である.医療の世界でもAIが急速に普及しつつある現状を反映しており,近い将来にはAI画像診断が身近なものになるであろう.二つ目のマイクロバイオームも,免疫への影響という観点からとても注目されている領域であり,gut-lung axisによる呼吸器疾患の理解が進むものと思われる.検査手技としてはクライオバイオプシーが取り上げられており,通常の経気管支肺生検(TBLB)に比べて採取できる組織量が多く,びまん性肺疾患の診断に寄与することが期待される.肺がん診療においては,ゲノム医療,間質性肺炎合併肺がん,抗体薬物複合体そしてデータベース構築が取り上げられた.遺伝子診断に基づく個別化医療の流れは今後も加速するであろう.また,新規抗がん薬として抗体薬物複合体が注目を集めているが,肺障害に注意が必要である.データベース構築も様変わりしており,リアルワールドデータを簡単に入手できれば,それをもとに新薬開発も進むと思われる.そのほか,気管支拡張症の新規治療,喘息における2型自然リンパ球(ILC2)の役割,呼吸器感染症の原因菌における質量分析など,新たな話題が満載である.また,診療の手引き・ガイドラインに関しては,進行線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD),特発性間質性肺炎,過敏性肺臓炎,喘息とCOPDのオーバーラップ,成人肺炎が取り上げられた.こちらは日常臨床に直結する内容であり,呼吸器内科医としては必ず目を通しておく必要がある.いずれの項目も比較的コンパクトにまとめられており,この2年間における呼吸器診療の進歩をよく理解できる内容である.
「巻頭トピックス」に続いて,本書は14の章により構成されている.こちらも2021-2022年版から内容がアップデートされており,今回は呼吸器感染症の章のなかに,新型コロナウイルス感染症が項目として追加された.第9波が到来しているとされる現状においては,呼吸器内科医に限らず,すべての医師が知っておくべき知識であろう.
呼吸器診療におけるバイブルともいわれる本書をぜひ手にとって,日々の臨床に役立てていただきたい.
臨床雑誌内科132巻3号(2023年9月号)より転載
評者●山浩一(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学 教授)