正しい食事で健康になろう
日本消化器病学会からのメッセージ
編集 | : 日本消化器病学会 |
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ISBN | : 978-4-524-23296-3 |
発行年月 | : 2022年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 92 |
在庫
定価1,650円(本体1,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
「食に関する様々な疑問に対し,科学的根拠に基づいた正しい情報を提供する」ことを目的とした座談会「食と消化器病」の書籍化.毎回5〜7名の医師・管理栄養士・料理研究家が,自らの専門知識を共有しながら,「食事とがん」「肥満にならない食事」といった気になる食事と疾患との関係性について,平易な言葉で深く掘り下げる.
第1 回座談会「日本人の食生活の現状について」
コラム:機能性表示食品とは
コラム:何をどうたべれば長生きできるのか?
コラム:食事とエピジェネティクス
用語解説:生体時計
用語解説:腸内フローラ(腸内細菌叢)
第2 回座談会「中食と食品添加物について」
コラム:インスリン抵抗性とは?
コラム:コレステロールは本当に悪玉か?
用語解説:飽和脂肪酸
用語解説:コレステロール
用語解説:トランス脂肪酸
用語解説:NAFLD/NASH
第3 回座談会「食事とアレルギーについて」
コラム:消化器内科医が知っておきたい即時型食物アレルギーの治療 (経口免疫療法)
用語解説:好酸球性消化管疾患
用語解説:アナフィラキシー
コラム:アレルギー患者用の食事メニューの組み立て方
用語解説:逆流性食道炎
第4 回座談会「肥満にならない食事」
コラム:性差と消化器病
コラム:地中海食の献立例
コラム:低脂肪食の献立例
コラム:低炭水化物食の献立例
用語解説:フレイル
用語解説:サルコペニア
第5 回座談会「食と腸内細菌」
コラム:高脂肪食と腸内細菌
用語解説:過敏性腸症候群
用語解説:神経性やせ症
第6 回座談会「食と飲酒」
コラム:断酒・飲酒指導のポイント
コラム:慢性膵炎と飲酒
用語解説:フラッシング
第7 回座談会「食とがん」
コラム:「がん予防の12 箇条」から「がんを防ぐための新12 か条」へ
用語解説:ヘリコバクター・ピロリ
用語解説:ダンピング
日本消化器病学会の目的の一つに消化器病研究の推進があります。2017 年に当時の下瀬川徹理事長から、これから日本消化器病学会が積極的に取り組んでいくべき4 つの研究課題が提案されました。そのうちの一つが「食」でした。これを受けて私がまとめ役として、橋本悦子先生( 東京女子医科大学) を委員長として「食と消化器病委員会」が立ち上がりました。活動内容に関しては委員会に一任されましたが、「正しい食事で健康になろう」というスローガンのもとで食にアプローチしていくこととしました。
偏った食生活でさまざまな病気が起こったり悪化したりすることは明らかで、正しい食事は健康の第一歩です。「正しい食生活とはどのようなものか」、「正しい食生活でどこまで健康になれるのだろうか」との命題に答えたい。しかしこの問題に答えることは至難です。実際には専門家であっても食や食生活について断片的にしか理解していないからです。そこでまずは巷にあふれている情報を整理して会員や一般の市民の方に届けることから始めようということになりました。個々の食品や栄養素を評価するのではなく、食に対する偏りのない正しい情報を日本消化器病学会からわかりやすく発信するのです。このため毎回テーマを決めて、食の専門家を集めて座談会を開催し、それを公開することにしました。こうして2018 年10 月から2021年5 月まで合計7 回にわたって座談会が開催されました。第4 回までは私と橋本悦子先生が、第5 回からは橋本先生に変わり新たに「食と消化器病委員会」の委員長になられた飯島尋子先生(兵庫医科大学) が司会を務めました。
座談会は、毎回新しい情報にあふれ、気づきの多い楽しい会になりました。日本消化器病学会のホームページに掲載されましたが、多くのアクセスがあり高い評判を呼びました。そこでもっと多くの人に読んでもらいたいとの声に応えて書籍化することにしました。これがこの本です。今改めて読み返してみても、わかりやすくそして正しい情報にあふれたよい本ができたのではないかと満足しています。医療関係者だけではなく一般の方々もこの本を活用して「正しい食事で健康」になっていただきたいと思います。
最後にお忙しいところ座談会に出席していただいた医師、管理栄養士、料理家の専門家の先生方、そして中心となって座談会を主宰していただいた橋本悦子先生、飯島尋子先生、委員会の活動を献身的にサポートしてくれた柳田慎穂さんをはじめとする日本消化器病学会事務局の方々、座談会を記録と編集を行ってくれた日本コンベンションサービスの方々、そして書籍化に際してご尽力いただいた南江堂の米田博史さんに篤く御礼を申し上げます。
令和4 年1 月28 日
兵庫医科大学消化器内科学
三輪洋人
あらためていうまでもなく,「食」は私たちが生きていくために必要不可欠な日々の行動である.ヒトにはそれぞれ「食」に対する嗜好があり,またライフスタイルが多様化した今日では,私たちの「食行動」も千差万別で,それによって個々の「食生活」が形成されている.自分自身の「食生活」は健康によいものだろうか? この素朴な疑問を誰もが一度はもったことがあるのではないだろうか.この疑問に答える書物が南江堂から2022年春に刊行された.日本消化器病学会が編集した『正しい食事で健康になろう:日本消化器病学会からのメッセージ』である.本書は,消化器に関する権威ある学会が編集した書物であり,表紙に「科学的根拠に基づく食の情報に,専門医・管理栄養士・料理研究家がそれぞれの立場から迫る」との文言が添えられている.この種の書物では,往々にして偏った情報がみられがちであるが,本書では現在求めうるエビデンス(証拠)に基づいて正しい答えを見出そうとする努力が感じられる.ご自身やご家族の食行動に不安や疑問をもたれている方にとっては,信頼のおける情報源として一読の価値があると思う.
本書は,2017年に日本消化器病学会が今後の研究活動の柱の一つとして掲げた「食」に関して,学会内に設けられた「食と消化器病委員会」が企画した計7回の座談会の内容をまとめたものである.第1回から第4回までを三輪洋人先生(兵庫医科大学消化器内科教授,日本消化器病学会副理事長(いずれも当時))と橋本悦子先生(東京女子医科大学消化器内科教授,同学会理事(いずれも当時))が司会を務められ,第5回から第7回までを三輪先生と飯島尋子先生(兵庫医科大学消化器内科教授,同学会理事)が司会を担当された.座談会では,毎回テーマを変えて「食」に関する疑問に対し,専門家がさまざまな視点から意見を述べた.「長生きするための食事法とは?」「中食とは何か? 健康によいのか?」「食品添加物は害がないのか?」「食物アレルギーとはどのような病気か? 注意すべき点は?」「肥満にならない食事とは?」「腸内細菌は全身に影響を与えるのか? 食事で変わるのか?」「飲むときの食事のポイントは?」「がんになりやすくなる食品とは? なりにくくする食品とは?」など,大変興味をそそられる内容が盛りだくさんである.座談会の内容は同学会のホームページに掲載されたが,その評判が高かったため,今回の編纂に至ったとのことである.イラストをふんだんに使用し,図表もわかりやすく,重要なポイントが「コラム」で解説され,また,専門用語については「用語解説」で説明するなど,一般の方でも楽しく読めるよう工夫されている.
表紙はロゼワインのような明るくきれいな赤色で彩りされ,可愛らしい女性が姿勢正しく食事をとっている中央のイラストが何とも微笑ましい(女性の周囲には幸せのオーラが漂っている).本書の責任編集者である三輪先生,橋本先生,飯島先生の「品位」と「知恵」が感じられるのも印象的で嬉しい.
臨床雑誌内科130巻5号(2022年11月号)より転載
評者●日本消化器関連学会機構(JDDW) 理事長/日本消化器病学会 前理事長 下瀬川 徹