PCI・EVT・SHDインターベンションスペシャルハンドブック
監修 | : 南都伸介/中村正人 |
---|---|
編集 | : 新家俊郎/藤原昌彦/渡邊雄介 |
ISBN | : 978-4-524-23258-1 |
発行年月 | : 2023年3月 |
判型 | : B6変型 |
ページ数 | : 296 |
在庫
定価4,730円(本体4,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
冠動脈インターベンション(PCI)と末梢血管インターベンション(EVT)に関する総合的な知識を提供した好評書『PCI・EVTスペシャルハンドブック』がリニューアル.今回は新たにSHD(structural heart disease)インターベンションについても盛り込み,病態や診断の基本,各種デバイスの概説,手技のコツなど,臨床現場で必要な情報をギュッと凝縮.白衣のポケットに入るサイズで,若手医師の知識整理にも役立つ一冊.
T PCIパート
A 知っておくべき病態
1 急性冠症候群(ACS)
1)ACSの定義
2)ACSの診断アルゴリズム
3)STEMI
4)NSTE-ACS
2 慢性冠動脈疾患
1)慢性冠動脈疾患のシナリオ
2)慢性冠動脈疾患の治療
3 冠攣縮性狭心症,INOCA,MINOCA
1)冠攣縮性狭心症
2)INOCA
3)MINOCA
4 PCIの適応を考える:血行再建のガイドライン
1)PCIと薬物療法の比較
2)PCIとCABGの比較
B 虚血性心疾患の診断
1 総論 外海洋平
2 非侵襲的・解剖学的検査
1)冠動脈CT
2)FFR-CT
3 非侵襲的・機能的検査
1)SPECT
2)PET
3)心臓MRI(CMR)
4 新しい非侵襲的虚血診断(負荷perfusion CT,負荷心臓MRI)
5 冠動脈造影:読影のコツ
1)病変描出のための撮影方向と部位の表現方法
2)代表的な起始異常と冠動脈奇形
3)病変形態の評価
4)心筋血流の評価
5)側副血行路の評価とRentrop分類
6 侵襲的・機能的評価
1)FFR
2)iFR
7 ステント留置慢性期の診断
1)ステントの新生内膜被覆,再狭窄,neoatherosclerosis(IVUS, OCT)
C これから始めるための基礎知識
1 PCIデバイスの種類と使用方法
1)ガイディングカテーテル
2)ガイドワイヤ
3)バルーンカテーテル
4)マイクロカテーテル
5)ステント
6)イメージングガイド:IVUS
7)イメージングガイド:光干渉断層映像法(OCT)
8)イメージングガイド:PCIに役立つ血管内視鏡
9)血栓吸引カテーテル
10)末梢保護デバイス
11)ロータブレータの構造と使い方
12)ダイアモンドバックの構造と使い方
13)DCA
2 アプローチと止血法
1)橈骨動脈アプローチ(TRI)
2)遠位橈骨動脈アプローチ(dRA)
3)大腿動脈アプローチ(TFI・TBI)
3 PCIに特異的な合併症
1)PCIの合併症
2)冠動脈穿孔への対処法
4 PCI後療法
1)抗血小板薬
5 機械的補助循環デバイス
1)大動脈内バルーンパンピング(IABP)
2)経皮的心肺補助装置(PCPS)
3)Impella
4)PCI時の使い分け
D PCI手技のプロの技
1 橈骨動脈アプローチ(TRI)のコツ
1)バックアップ力が欲しいときのガイディングカテーテルの選択(左冠動脈)
2)バックアップ力が欲しいときのガイディングカテーテルの選択(右冠動脈)
3)ガイディングカテーテルエンゲージ困難時の対応
4)TRIの落とし穴
2 複雑病変でのTip & Tricks
1)バルーンステントが通過しないときの工夫
2)屈曲病変はこう治療する
3)分岐部病変はこう治療する
4)高度石灰化病変はこう治療する
5)慢性完全閉塞病変(CTO)の治療
U EVTパート
A 下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)
1 下肢動脈の解剖と血管造影法
1)腸骨動脈
2)大腿膝窩動脈
3)膝下動脈
2 PADのガイドラインと定義/分類
1)LEAD患者の予後
2)ICとCLTI
3)知っておくべき分類
4)その他の定義(PACSS/ワイヤルート/解離)
3 PADの評価方法とEVT適応
1)CT, MRA, DUS, ABI, TBI, SPP, TcPO2
2)部位・定義ごとのEVTの適応
4 アプローチ部位選択と穿刺方法, 止血方法
1)総大腿動脈(CFA)アプローチ
2)上肢からのアプローチ
3)病変別アプローチ
5 ガイドワイヤ選択・周辺デバイス
1)0.035/0.018/0.014 inchワイヤ
2)マイクロカテーテル・狭窄部貫通用カテーテル
3)CTO貫通デバイス
6 部位ごとのEVT
1)腸骨動脈(SES, BES, SG)
2)大腿膝窩動脈(DCB, DES, SG, IWS)
3)膝下動脈
7 イメージングデバイス
1)ガイドワイヤ通過
2)病変評価
3)慢性期評価
4)新しいデバイス
5)今後の課題
8 合併症とそのベイルアウト
1)穿刺部合併症
2)血管損傷
3)遠位塞栓
9 ALIへのEVT
1)定義・評価方法
2)治療選択
10 EVT後療法(抗血小板薬,抗凝固薬)
B AVアクセス
1 シャント血管の基礎
1)自己血管内シャント(AVF)
2)人工血管内シャント(AVG)
3)シャント治療(VAIVT)
2 VAIVTの実際 末光浩太郎
1)経皮的バルーン血管形成術(POBA)
2)薬剤コーティングバルーン(DCB)
3)ステントグラフト
C 腎動脈ステント
1 腎動脈ステントの適応
2 手技
V SHDインターベンションパート
A 大動脈弁
1 大動脈弁狭窄症(AS)
1)診断
2)治療
3)TAVIの適応
2 TAVI
1)TAVIの臨床試験・エビデンス
2)TAVIの術前CT
3)TAVIのアプローチ選択
4)TAVIの弁・サイズの選択
5)バルーン拡張型弁の手技の実際
6)自己拡張弁の手技の実際
7)valve in valveの手技の実際
8)透析症例へのTAVI
9)TAVI合併症例とその対策
3 大動脈弁バルーン拡張術(BAV)
1)BAVの準備
2)必要な物品
3)手技の実際
B 僧帽弁
1 僧帽弁閉鎖不全症(MR)と解剖
1)僧帽弁の解剖
2)MRの病態
2 MitraClip®
1)MitraClip®の臨床試験・エビデンス
2)MitraClip®の術前経食道心エコー(TEE)
3)MitraClip®の中隔穿刺
4)MitraClip®の手技の実際:FMR
5)MitraClip®の手技の実際:DMR
6)MitraClip®合併症とその対策
3 僧帽弁狭窄症(MS)
1)病態生理と解剖
4 経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)
1)PTMCの適応と手技の実際
C シャント疾患
1 心房中隔欠損症(ASD)
1)病態生理と解剖
2)経皮的ASD閉鎖術の適応と手技の実際
3)経皮的ASD閉鎖術の合併症と対策
2 卵円孔開存(PFO)
1)病態生理と解剖
2)経皮的PFO閉鎖術の適応と手技の実際
3 動脈管開存症(PDA) 志村徹郎
1)経皮的PDA閉鎖術の手技の実際
2)ADO-T留置の実際
3)ADO-U留置の実際
D 左心耳
1 病態生理と解剖
2 経皮的左心耳閉鎖術
1)経皮的左心耳閉鎖術の術前TEE
2)経皮的左心耳閉鎖術の術前CT
3)経皮的左心耳閉鎖術の適応と手技の実際
4)経皮的左心耳閉鎖術の合併症と対策
5)経皮的左心耳閉鎖術の術後管理
E 心筋疾患
1 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
1)PTSMAの概念
2)PTSMAの適応
3)PTSMAの手技の実際
4)治療のポイント
5)治療成績
6)合併症
F 肺動脈疾患
1 バルーン肺動脈形成術(BPA)―適応と手技の実際(合併症も含めて)
1)適応
2)手技
3)合併症
付録
A 造影剤
1 造影剤腎症の診断基準
2 造影剤腎症予防のためにできること
B ヘパリン・HIT
1 ヘパリン
2 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の病態・病因
3 HITの症状・疫学
4 HITの診断
5 HITの治療
C 放射線防護
1 放射線防護の基本
2 放射線防護において特に注意すべき臓器とその対応
1)水晶体
2)皮膚
3)甲状腺
4)女性医療従事者に関する事項
監修の序
前著である『PCI・EVTスペシャルハンドブック』を発刊してから13年が経過し,内容の大幅な改訂が必要な時期を迎えた.そこで新たに『PCI・EVT・SHDインターベンションスペシャルハンドブック』を発刊することとなった.しかし,本書は,前著のコンセプトをただ継承した改訂版ではなく,新刊として“いま”の読者のニーズに応える書籍を目指すこととした.その方向性とは,心血管インターベンションに携わる関係者のみでなく,すべての循環器医に必携の書とすることである.それは,心血管インターベンションの決定にはshared decision making(SDM)が求められるが,心血管インターベンション治療はこの13年で多岐にわたったため患者説明に知っておくべき必要な知識(手技の概要,適応,合併症等)が非常に増えたからである.もちろん,自分自身が行わない手技であってもしかりである.
そこで,「SHD」を加えた3領域を対象とし網羅することとした.疾患概念などの基本的知識,手技に係る重要なエビデンス,手技の流れ,実臨床における手技の工夫などを盛り込みつつ,コンパクトにまとめることを基本とし,エッセンスとして凝縮した情報が満載のハンドブックとなった.細かい手技の説明や冗長な記述は可能な限り避け,図を多用することで文章だけではわかりにくい手技の内容も理解できるよう工夫した.そのうえで,全ての治療手技を一律に記載するのではなく濃淡のある内容とした.日常臨床での頻度が多い手技を中心とし,以前に比し重要性が低下した手技は要点のみの記載に留めたため,EVTは主流である下肢EVTに重きを置き,AVアクセスを追加,腎動脈に関しては必要最小限とした.また,SHDは手技の詳細は省いて,治療概要やリスクなど知識として必須事項に絞ることとした.
本書の成功の鍵は,現場のニーズに精通している医師に企画・編集を依頼する点にあったといっても過言ではない.PCIパートは新家俊郎先生,EVTパートは藤原昌彦先生,SHDインターベンションパートは渡邊雄介先生に編集をお願いし,膨大な内容を厳選しつつもコンパクトで濃淡のある記載としてまとめていただいた.過去には見ない良書として,またすべての循環器医が必携すべきハンドブックとして完成したものと確信している.最後になるが,最初の段階から多くの助言をいただいた南江堂の方々に感謝を申し上げる.本書が心血管インターベンションのさらなる発展の一助となればこの上ない幸いである.
2023年1月
南都 伸介
中村 正人
編集者の若手医師への思いやりを感じる,臨床ニーズに基づいた特別な小冊子
ハンドブックとは,あるテーマについての方法を伝える小冊子である.本書のテーマはPCI・EVT・SHDインターベンションと多岐にわたっており,小冊子のテーマとするには広大である.だから,この本は特別な「スペシャルハンドブック」なのである.
心血管カテーテル治療の進歩は目覚ましい.これまで治療が不可能であった疾患に対する治療法が次々と誕生し,臨床応用されている.カテーテル治療医を志す医師のみならず,心血管診療に携わる循環器内科医に求められるカテーテル治療に関する情報は,指数関数的に増加している.今,若手循環器内科医が当たり前のように学んでいる事柄は,実は当たり前ではなく,ほんの最近始まったことがほとんどである.前著『PCI・EVTスペシャルハンドブック』に対し,今回新たに追加されたSHDインターベンションだけでも相当な情報の追加が必要になる.これらを以前からあるPCI・EVTに漫然と付け加えると,途方もない分量の成書となってしまう.新しい情報が数多く生まれる一方で,過去の情報を完全に捨ててよいわけではなく,適切な取捨選択が望まれる.これに応えるように編集者側で,臨床に求められるものが多い領域については記載を厚く,そうでない領域については必要な部分だけ記述するように構成されている.すなわち,これだけの広大な領域を臨床の必要性に合わせて記述の分量を調整しているのである.一方で,インターベンションのハンドブックであるにもかかわらず,冠動脈CTに関する記載がある.経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)や経皮的左心耳閉鎖術の項目でも,CTによる術前評価が記載されている.わが国ではカテーテル治療医であっても画像診断を知らなければ,求められている質の高いカテーテル治療はできない.本書の編集者らは臨床を深く理解し,心血管カテーテルインターベンションを愛してやまない循環器内科医であるに違いない.
PCIのTips & Tricksに関する記載は秀逸である.屈曲病変,分岐部病変,高度石灰化病変,慢性完全閉塞病変(CTO)について,血管造影と冠動脈イメージングによる病変の評価から,デバルキングデバイスの使用法やステントの最適な植込み方法まで,至適PCIを行うための実践が詳細に記載されており,方法を伝えるハンドブックの領域をはるかに超えている.カテーテル治療医を志す若手医師のみならず,若手医師の教育に携わっている指導医にもぜひ読んでもらいたい内容である.これは若手医師にとってわかりやすいハンドブックを目指してはいるものの,今も臨床医である編集者らのカテーテル治療医としての矜持であろう.
嬉しいことに,専修医に推薦したい本がまた一冊増えた.多くのことを限られた時間で学ばなければならない若手医師にとって,本書がカテーテル治療医としてのキャリアを豊かにする一冊となることを確信している.
臨床雑誌内科132巻4号(2023年10月号)より転載
評者●七里 守(公益財団法人榊原記念財団附属榊原記念病院循環器内科 主任部長)