肘関節外科の実際改訂第2版
私のアプローチ
著 | : 伊藤恵康 |
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ISBN | : 978-4-524-23215-4 |
発行年月 | : 2023年2月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 420 |
在庫
定価22,000円(本体20,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
「神の手」として高名な著者が積み重ねてきた知識と技術の集大成.上肢・手の外科領域の中でも肘関節に焦点を当てた初版の構成を踏襲し,解剖理解から手術アプローチ,骨折をはじめとする多様な外傷・障害を網羅.病態の見極め,的確なタイミングでの手術,患者がたどる長期予後にいたるまで,今も研鑽を続ける著者の長年の経験に裏打ちされた,すべての整形外科医が一読すべきバイブルである.
T 肘関節診療の基礎
T-1 肘関節の機能解剖
A 肘関節の骨格
1 上腕骨
2 前腕骨
3 肘関節のX線像
4 成長期肘関節のX線像
B 肘関節の構成
1 関節面の形態と機能
2 靱帯
C 肘関節の運動
1 屈伸運動
2 回旋運動
3 キャリングアングル
4 スポーツ,あるいはADL上必要な可動域
5 肘関節に加わる力
D 肘関節の筋・神経
1 上腕前面の肘関節屈筋群
2 肘関節前面の血管と神経
3 前腕屈曲回内筋群と神経
4 上腕後面の肘伸展筋群と橈骨神経
5 前腕回外伸展筋群と橈骨神経
E 肘関節の血管
T-2 診断と治療の進め方
A 診断
1 問診
2 視診・触診
3 肘関節の画像診断
B 治療の進め方
1 骨折
2 変形・偽関節
3 関節炎
4 スポーツ障害
5 加齢変化
T-3 肘関節の手術進入路
A 肘関節後方アプローチ
1 三頭筋腱縦切法
2 三頭筋腱弁反転法
3 lateral para-olecranonアプローチ
4 肘頭骨切り法
B 肘関節外側アプローチ
1 Kocherのアプローチ
2 Kaplanのアプローチ
3 Kaplan extensile lateralアプローチ
C 後外側アプローチ(津下)
D 前方アプローチ
1 Henryのアプローチ
2 上腕筋縦割アプローチ
E 内側アプローチ
1 後内側の展開
2 内側前面の展開
3 Bryanの内側triceps reflecting approach
F 末梢神経へのアプローチ
U 肘関節診療の実際
U-1 骨 折
A 成人・年長児の上腕骨遠位端骨折
A-1 上腕骨顆上骨折
1 治療
1-1 保存的治療
1-2 新鮮例に対する手術
1-3 顆上骨折陳旧例(変形治癒・偽関節)に対する手術
A-2 上腕骨通顆骨折
1 通顆骨折の特徴
2 治療
A-3 上腕骨遠位端T・Y字型骨折
1 遠位端T・Y字型骨折の特徴と分類
2 治療
2-1 治療の方針
2-2 保存的治療
2-3 創外固定・牽引療法
2-4 手術的治療
3 後療法
4 合併症
[付]side-swipe injury
B 小児上腕骨顆上骨折
1 受傷機転
2 病態
3 分類
4 診断
5 治療
5-1 治療の方針
5-2 保存的治療
5-3 手術的治療
6 合併症
C 上腕骨遠位骨端離開
1 病態
2 分類
3 診断
4 治療
5 予後
D 上腕骨外側顆骨折
1 受傷機転と骨折線の走行による分類
2 診断
3 外側顆骨折の転位による分類
4 微小転位例に対する不安定性の診断
5 治療
5-1 保存的治療
5-2 手術的治療
6 合併症
[付]外側上顆骨折とsleeve fracture
E 上腕骨小頭・滑車骨折
1 受傷機転と分類
2 診断
3 治療
3-1 治療の方針
3-2 手術法
F 上腕骨内側上顆骨折
1 病態
2 頻度
3 受傷機転
4 分類と治療
5 合併症
G 上腕骨内側顆骨折
1 頻度と病態
2 発症年齢
3 骨折線の走行
4 骨折型の分類
5 受傷機転
6 症状と診断
7 治療
8 予後
9 スポーツによる内側顆疲労骨折
H 尺骨近位部骨折
H-1 肘頭骨折
1 病態・頻度・受傷機転
2 臨床像
3 診断
4 治療
4-1 治療の方針
4-2 内固定法
4-3 偽関節に対する手術
4-4 若年者の肘頭骨端離開に対する手術
5 合併症
6 予後
H-2 尺骨鉤状突起骨折とcomplex elbow instability
1 病態と歴史
2 診断と手術的治療
3 鉤状突起骨折の整復・固定術の実際
T 橈骨頭・頸部骨折
I-1 小児の橈骨近位部骨折
1 小児橈骨近位部骨折の分類
2 骨片の転位
3 治療
3-1 治療の方針
3-2 徒手整復法
3-3 経皮的整復法
3-4 手術的治療
4 予後と合併症
I-2 橈骨頭骨折
1 病態と分類
2 診断
3 治療
3-1 治療の方針
3-2 手術的整復固定術の実際
3-3 合併損傷の治療
3-4 骨頭切除術
3-5 人工橈骨頭置換術
3-6 肋骨・肋軟骨移植術
4 予後
I-3 Essex-Lopresti損傷
J Monteggia骨折
1 受傷メカニズムと損傷分類
2 診断
2-1 骨折・脱臼の診断
2-2 早期治療の効果
2-3 尺骨骨折の病態と整復・固定
2-4 尺骨急性塑性変形を伴うMonteggia骨折
3 治療
3-1 新鮮Monteggia骨折の手術
3-2 陳旧性Monteggia骨折の手術
U-2 脱臼と靱帯損傷
A 肘関節脱臼
1 受傷機転と病態
2 分類
3 診断
4 治療
4-1 徒手整復法
4-2 手術的整復法
5 反復性肘関節脱臼
B 肘関節後外側回旋不安定症(PLRI)
1 概説
2 肘関節外側の解剖学的特徴
3 病態
4 診断と症状
5 治療
5-1 手術適応
5-2 手術的治療
C 小児肘内障とバネ肘
C-1 小児肘内障
1 病態
2 診断
3 治療
4 予後
C-2 バネ肘(いわゆる成人型肘内障)
1 病態
2 診断
3 治療
U-3 肘関節のスポーツ障害
A スポーツ障害総論
1 概説
2 肘スポーツ障害の発生機序
3 肘関節部痛を主訴とする紛らわしい病態
4 肘スポーツ障害の分類
5 野球肘の年齢的特徴と問診
6 診断
B スポーツ障害の病態と治療
B-1 リトルリーグ肘
1 原因と病態
2 診断
3 治療
3-1 保存的治療
3-2 手術的治療
3-3 後療法
B-2 内側[尺側]側副靱帯損傷
1 原因と病態
2 診断
3 治療
3-1 保存的治療
3-2 手術的治療
3-3 後療法
3-4 合併障害の治療と結果
B-3 肘頭骨端離開・疲労骨折
1 原因と病態
2 診断
3 治療
3-1 治療の方針
3-2 手術の実際
B-4 内側顆疲労骨折
B-5 上腕骨小頭部離断性骨軟骨炎
1 原因と病態
2 病型分類と好発年齢
3 診断
4 治療
4-1 保存的治療
4-2 手術的治療
B-6 上腕骨小頭以外の離断性骨軟骨炎
1 橈骨頭の離断性骨軟骨炎
2 肘頭の離断性骨軟骨炎様病変
3 滑車の離断性骨軟骨炎
4 Panner病
4-1 病態
4-2 診断
4-3 治療
5 滑車の離断性骨軟骨炎といわゆるHegemann病
B-7 滑膜ひだ障害とバネ肘(成人型肘内障),肘筋のentrapment
1 病態
2 診断
3 治療
B-8 スポーツによる変形性肘関節症
1 原因と病態
2 診断
3 治療
3-1 保存的治療
3-2 手術的治療
4 術後の注意
B-9 スポーツによる肘関節部末梢神経の障害:特に尺骨神経障害
1 肘部管より近位の障害
2 肘部管高位での障害
B-10 スポーツ障害からの復帰に向けて
U-4 肘関節拘縮の病態と治療
1 関節拘縮の概要
2 肘関節拘縮の病態
3 術前病態の診断
4 治療
4-1 保存的治療
4-2 肘関節授動術
4-3 術後処置と後療法
U-5 肘関節周囲の腱断裂
A 上腕二頭筋遠位部腱断裂
1 病態
2 診断
3 治療
B 上腕三頭筋腱断裂
1 病態
2 診断
3 治療
U-6 肘関節上顆炎
A 外側上顆炎
1 総括的事項
2 治療
B 内側上顆炎
1 病態と治療
U-7 肘の炎症性疾患
A 関節リウマチ,非特異性関節炎
1 病態と治療方針
1-1 関節リウマチ
1-2 非特異性関節炎
2 手術的治療
2-1 肘関節滑膜切除術
2-2 人工肘関節置換術(変形治癒骨折後,肘関節結核後)
B 変形性肘関節症
1 病態と治療方針
2 保存的治療
3 手術的治療
4 労働によるものとスポーツに続発する肘関節症の相違
U-8 肘関節部の末梢神経障害
A 肘部管症候群
1 肘部管の解剖
2 原因と病態
3 臨床症状と診断
4 重症度分類
5 治療
5-1 保存的治療
5-2 手術的治療
6 術後の回復
B 橈骨神経麻痺
1 病態と定義
2 橈骨神経管の解剖
3 広義の橈骨神経管症候群の病態・病因
4 広義の橈骨神経管症候群の症状
5 広義の橈骨神経管症候群の治療
6 神経束のくびれによる後骨間神経麻痺
C 正中神経麻痺
1 前肘窩の解剖
2 回内筋症候群
3 前骨間神経麻痺
D 上腕二頭筋腱膜による神経・血管障害
1 病態と症状
2 治療
U-9 麻痺肘(肘屈筋・伸筋麻痺)
1 病態
2 再建術の概要
3 再建術の実際
U-10 肘関節の先天異常
A 先天性上腕骨小頭形成不全
B 先天性滑車形成不全
C 先天性橈骨頭脱臼
1 概説
2 症例提示
D Leri-Weill dyschondrosteosis
1 概説
2 症例提示
E 尺側列形成不全症
1 概説
2 症例提示
F 橈尺骨癒合症
1 概説
2 治療
G Crouzon syndrome(craniofacial dysostosis)
1 概説
2 症例提示
H その他の先天性肘関節形成異常
1 Nievergelt-Pearlman syndrome
2 Mietens症候群
3 先天性肘関節屈曲拘縮症
改訂第2版の序
『肘関節外科の実際』を書き上げて,いつの間にか11年も経ってしまった.
「改訂版を出されたらいかがですか?」と南江堂の枳穀さんに話しかけられたのは,たぶん学会場でお会いした時だったと思う.
初版を刊行してからいくつか工夫・改善した手術法を考えると,「陳旧性Monteggia骨折と尺骨鉤状突起骨折に対する手術くらいだったかな? それに骨切り術もちょっと便利になったな」等と思い出した.それに,関節リウマチの手術は大きく減ったため,記述を縮小して臨床の実情に沿った内容とした.また,後骨間神経,前骨間神経における“くびれ”の発見・治療のパイオニアとなられた諸先生の業績に関する記述が不十分であったので,この改訂版で加筆させて頂いた.
術中のカラー写真も,全て自分で撮影したもので自信があったが,編集部の皆さんが若干暗い画像があるのに気がつき,明るく鮮明な画像に補正して下さった.
この改訂版が,少しでも諸先生の日常診療のお役に立てれば幸いである.
2022年11月
伊藤惠康
肘関節外科の進歩は手外科の進歩と同様に近年著しい.本書は整形外科医が日常診療上もっとも遭遇する機会の多い肘関節の外傷と障害に関し,奥義の深い,ダイナミックでかつ繊細な注意が必要なところを,肘関節手術のエキスパートでありレジェンドでもある伊藤惠康先生独自のオリジナルな手法で解説した改訂第2版である.特に伊藤先生は日本整形外科学会および日本肘関節学会,日本スポーツ整形外科学会,日本手外科学会でご高名な先生であり,たとえば欧米で席巻している肘関節鏡視下手術に関しての記述は本書にはない.これはすでに伊藤先生が長年にわたって行ってきた手術法が,近年欧米で行われている手術法よりも絶対的な自信をもってよいアウトカムが得られると確信しているからであろう.手外科ならではの小皮切,最小侵襲手術をお極めになっている.プロ野球選手や成長期の野球肘,肘内側側副靱帯損傷に対するパイオニアとしてもたいへんご高名な先生である.いわゆる米国のビッグネームであるJobe法から伊藤法(ドッキング法)として世に広まったのもまだつい最近の話である.
1990年代から米国のFelix H Savoie 3rdやメイヨークリニックなどの諸グループがスポーツ障害や外傷後の関節拘縮に対する関節鏡手術の開発を行い,世界に向けて広めてきた.本邦では同時に伊藤先生らを中心にオープンでの小皮切・小侵襲手術が行われ,良好な成績が得られており,たとえば肘関節拘縮に対する治療はHarvard大学のJupiter教授の分類における「重症」のものは後者のほうが成績がよい.これは肘関節特有の機能解剖,すなわち一次的安定化要素である内側側副靱帯は関節外に存在するという解剖学的常識を熟知しているからこその伊藤先生の「私のアプローチ」であろう.
本書の真骨頂はタイトルのとおり,肘関節外科を真正面から取り扱い,きわめてその必要不可欠なことを論理的に説明されており,さらには具体的な臨床的手順とその注意点を列記してあることである.そして現行の臨床が陥りがちなピットフォールに警鐘を鳴らしている.また,本書では肘関節外科の実際に関することにとどまらず,機能解剖学と生理学から診断学,整復法,腱や神経まで含めた軟部組織の取り扱い方,保存的治療から手術的治療にいたるまでを研修医から上級医,専門医レベルにまでわかりやすく簡潔に,そして最新知識まで広く論述されている.近年この手の書籍の執筆は臨床経験と教育経験の豊かなベテランの外科医による分担執筆が多いが,本書の真骨頂は肘関節のエキスパートである伊藤先生ご自身の豊かな経験とサージカルエクスパティーズ,オリジナルな発想から生まれた独自の手術法をご本人自ら執筆されていることである.
本書を契機に,本邦でも肘関節外科のよりよい優れた治療だけでなく,肘関節外科全体の高い専門性への理解と患者へのよい医療が積み重ねられていくことを切望している.
臨床雑誌整形外科74巻11号(2023年10月号)より転載
評者●昭和大学整形外科客員教授 稲垣克記