書籍

心不全療養指導士認定試験ガイドブック改訂第2版

編集 : 日本循環器学会
ISBN : 978-4-524-23213-0
発行年月 : 2022年3月
判型 : A4
ページ数 : 280

在庫あり

定価3,960円(本体3,600円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本循環器学会より創設された「心不全療養指導士」認定制度のカリキュラムに準拠した学会編集の公式ガイドブックの改訂第2版.心臓の構造といった基礎的な内容から,ガイドラインに準拠した心不全の診断・治療・療養指導について網羅的に解説.今版では,心不全ステージ別の療養指導の実際,妊娠期の治療,せん妄の支援について追加し,資格取得に必要な症例報告書の記載方法もよりわかりやすく解説し,知識確認問題は全問リニューアルした.本資格取得を目指す受験者が自己学習のために広く活用できる一冊.

第1章 心不全療養指導士の役割・機能
 1.日本心不全療養指導士制度の目的
 2.日本心不全療養指導士制度の役割
 
第2章 心不全の概念
 
第3章 療養指導の基本
 1.患者教育に必要な基礎的理論
 2.療養指導の評価および修正
 
第4章 心不全の予防活動
 1.心不全における予防の重要性
 2.予防啓発活動
 
第5章 心不全の診断,成因,検査
 1.心臓の構造
 2.心臓の働き(健常人)
 3.心不全の原因疾患
  a.虚血性心疾患
  b.心筋症
  c.心筋炎
  d.心毒性心筋障害,浸潤性疾患
  e.高血圧,高血圧性心疾患
  f.弁膜症,先天性心疾患
  g.不整脈
  h.肺高血圧症
 4.心不全の身体所見
  a.Nohria-Stevenson 分類:うっ血・低灌流の所見と自覚症状
  b.NYHA 心機能分類
  c.身体活動能力質問票(SAS)
 5.検査
  a.バイオマーカー(BNP/NT-proBNP)
  b.胸部単純X線写真
  c.心エコー
  d.心臓カテーテル検査・生検
  e.血液検査
 
第6章 心不全の治療
 1.薬物治療
  a.心不全治療概論
  b.β遮断薬
  c.ACE 阻害薬,ARB,ARNI,MRA
  d.利尿薬
  e.SGLT2 阻害薬
  f.その他
 2.非薬物治療
  a.植込み型除細動器(ICD)
  b.心臓再同期療法(CRT)
  c.陽圧呼吸療法,在宅酸素療法
  d.運動療法
  e.手術
  f.植込み型人工心臓,心臓移植
 3.併存疾患の治療
  a.糖尿病
  b.慢性腎臓病(CKD)
  c.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  d.貧血
  e.睡眠呼吸障害
 4.その他の治療(妊娠期)
 
第7章 心不全の療養指導
 1.患者教育に活用する心不全に関する知識
  a.定義,原因,症状,病の軌跡
  b.増悪の誘因:医学的因子と生活因子
 2.セルフモニタリングと定期受診・増悪時の対応
  a.モニタリングの方法
  b.患者手帳の活用
  c.定期的な受診の必要性
  d.増悪時の対応
 3.服薬アドヒアランスへの支援
  a.服薬アドヒアランス不良の要因
  b.服薬アドヒアランスの評価
  c.服薬アドヒアランスの向上策
 4.栄養管理
  a.バランスのよい食事の重要性
  b.適正な塩分管理(6g未満/日)
  c.適正体重の維持
  d.飲水制限
  e.サルコペニア,フレイル,カヘキシー
  f.栄養アセスメント
  g.併存疾患における食事療法
 5.身体活動と運動
  a.運動の種類,強さ,時間と回数
  b.運動耐容能の評価
  c.具体的な運動の方法
  d.運動をしてはいけないとき,注意点
 6.禁煙支援
  a.禁煙の必要性
  b.禁煙支援の具体的方法
  c.禁煙外来における禁煙治療の流れ
 7.日常生活の心がけ
  a.活動の目安
  b.適切な入浴方法
  c.排便コントロール
  d.過度なアルコール摂取の危険性
  e.感染予防とワクチン接種
  f.日常生活のストレスマネジメント
 8.精神的・心理的支援
  a.心不全と精神心理的変化
  b.抑うつのスクリーニング
  c.対応の検討( コミュニケーション,専門家への連携など)
  d.せん妄のアセスメント,介入,支援
 
第8章 心不全ステージ別の療養指導の実際
 1.ステージA に対する療養指導
 2.ステージB に対する療養指導
 3.ステージC に対する療養指導
 4.ステージD に対する療養指導
 
第9章 特殊な病態時の療養指導
 1.認知機能低下のある患者への対応
 
第10章 特殊な状況時の療養指導
 a.季節の変化に伴う対処
 b.旅行
 c.災害時・医療安全上の留意点
 
第11章 心不全の緩和ケア
 a.心不全におけるACP
 b.意思決定支援
 c.末期心不全における症状と緩和
 
第12章 病院と在宅の連携
 1.チーム医療の提供
 2.心不全における在宅医療
  a.在宅医療の基本的な考え方
  b.病院と在宅医療の連携
  c.在宅で働く職種と役割(理解)
  d.福祉制度の活用
 3.家族・介護者への支援
  a.心不全患者の家族あるいは介護者が抱える問題
  b.家族あるいは介護者への支援
 4.心不全医療における地域連携
  a.心不全医療における地域連携の重要性
  b.地域連携を促す多職種カンファレンス

第13章 症例報告書の記載方法
 
付録 知識確認問題

改訂第2版 刊行にあたって

 心不全はあらゆる循環器病の終末像であり,増悪と寛解を繰り返しながら,運動耐容能の低下をきたし,生命予後を悪化させる症候群である.心不全の増悪による再入院は医療負荷増大の原因となることに加え,心不全特有の症状や運動耐容能の低下は生活機能の低下や精神状態の悪化を引き起こし,患者や家族の生活の質(quality of life:QOL) は低下する.さらに治療抵抗性の心不全に移行すると,患者は苦痛を伴う症状や病状の進行に対する不安を抱えた生活を強いられる.このような特徴を持つ心不全は加齢性疾患であり,高齢化が急速に進行しているわが国において心不全が増加することが予測されている.様々な問題を抱える心不全患者を包括的に支援し,患者や家族のQOL を維持し,かつ医療負荷の増大を抑えるためには,適切な治療の実施に加えて,医療専門職がチームを組み,それぞれの専門性を活かしつつ協働するチーム医療の推進が不可欠である.
 日本循環器学会が日本脳卒中学会とともに,2016 年12 月に策定した「脳卒中と循環器病克服5 ヵ年計画」のなかで,心不全は重要3 疾病のひとつと位置づけられ,人材育成,医療体制の充実,登録事業の促進,予防・国民への啓発,臨床・基礎研究の強化の5 戦略が提案されている.そのうち人材育成への取り組みのひとつとして,日本循環器学会が主体となり「心不全療養指導士」資格を創設した.
 本書『心不全療養指導士認定試験ガイドブック』は「心不全療養指導士」認定制度のカリキュラムに準拠した本学会編集の公式ガイドブックであり,2020 年3 月に初版を発行し,このたび「改訂第2 版」発行の運びとなった.「改訂第2 版」では,2021 年に発表した「2021 年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」,本資格の第1 回認定試験結果をふまえて内容を見直した.具体的には,新章として「心不全の概念」「心不全ステージ別の療養指導の実際」「特殊な病態時の療養指導( 認知機能低下のある患者への対応)」「症例報告書の記載方法」を設け,「妊娠期の治療」「せん妄のアセスメント,介入,支援」の項目を新たに追加し,巻末の知識確認問題は全問リニューアルした.他項目も現状に則した内容となるようブラッシュアップした.
 本書は,心不全療養指導士の資格取得を目指すメディカルスタッフが心不全の病態や治療,療養指導の実際,緩和ケアや地域連携に関する知識を学習することを目的に構成されている.本書とe-ラーニングを活用しながら,資格取得に向けた学習を進めてほしい.
 日本の心不全医療の向上のために,本資格が広く普及し,心不全療養指導士に心不全チーム医療の中心的役割を担っていただくことを期待したい.

2022 年3 月
日本循環器学会

 超高齢社会を迎えた今,本邦の心不全患者は増加し続けており,その平均年齢は80歳を超えた.心不全は入退院を繰り返し死に至る疾患であり,がん,認知症,腎不全などの併存症も多く,独居やフレイルなど社会的・家庭的にも多くの問題を抱えるようになってきている.心不全患者に対しては,医師が単独で医学的介入を行うだけでは入院回避やQOL,ADLの維持が困難なことが多く,看護師,薬剤師,リハビリ指導士,栄養士,医療ソーシャルワーカーなどの多職種が多面的に介入する必要がある.これにより,生活態度が改善,セルフモニタリングが可能となり,薬剤アドヒアランスが上昇し,運動能力や栄養状態が維持され,その相乗効果が入院回避やQOL,ADL改善などに結びつくと考えられている.
 2016年に日本脳卒中学会,日本循環器学会などの21学会は連名で「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を発表した.このなかで心不全は重要疾患として記載され,人材育成,医療体制の充実,登録事業の促進,予防・国民への啓発,臨床・基礎研究の強化の五つの戦略が提案されている.また,2018年12月には「脳卒中・循環器病対策基本法案」が成立した.現在,都道府県単位で循環器病対策推進計画が策定されている.本書は,そのような状況のなか,日本循環器学会が人材育成への取り組みの一つとして,心不全療養指導士資格を創設したのに伴って2020年に出版され,このたび改訂第2版の発行となった.
 本書の特徴としてまずあげるべきは,心不全の治療が最新のガイドラインに沿って書かれているだけでなく,看護,リハビリ,栄養などについては欧米の心不全チーム医療の骨格に沿った形で非常に正確に理論的に書かれている点である.第1章では心不全療養指導士の役割・機能が明記された.第3章は初版から記載されている「患者教育に必要な基礎的理論」と「療養指導の評価および修正」であるが,その内容は他の書籍とは一線を画している.第7章の「心不全の療養指導」では,患者視点での日常生活における指導が網羅されているが,第10章では季節の変化,旅行時,災害時などのような,より特殊な指導にも踏み込んである.第11章では,がんと比較すると歴史が浅い,心不全の緩和ケアについても詳細に述べられている.また,第12章では今後の地域包括ケアシステムを見据えて在宅医療や介護との連携,介護者への支援にまで踏み込んである.第13章の症例報告書も,単なる療養指導士資格取得のためのフォーマットではなく,どのような記載が実践的で患者の役に立つかという視点で網羅されている.2色刷りで読みやすい点も強調されるべきで,本邦の高齢心不全患者は医療と介護の両者に関わることが多いのであるが,療養指導士を目指す方ばかりではなく,多くの職種の方に読んでいただけるのではないだろうか.「心不全療養指導士の主な役割は,幅広い専門知識と技術を有する医師以外の医療専門職が,患者に対して最適な療養指導を行うことにある」と記述にもあるが,本書は以上のような点で,本邦で最もわかりやすく実践的な心不全の書である.

臨床雑誌内科130巻2号(2022年8月号)より転載
評者●兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科 診療部長 佐藤幸人

9784524232130