もう迷わない!外来インスリン療法マスターブック改訂第2版
GLP-1受容体作動薬、配合剤も含めたマネージメント
著 | : 弘世貴久 |
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ISBN | : 978-4-524-23212-3 |
発行年月 | : 2024年4月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 144 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
外来インスリン導入のコツから一歩進んだ知識までがマスターできる実践的な書籍の改訂版.今改訂では,インスリン導入に関する内容のほか,現在では広く使われるようになったGLP-1受容体作動薬,インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の使い方も盛り込み,臨床現場で糖尿病注射療法を行うのに役立つ内容へとアップデート.インスリン導入を始めたい方はもちろん,導入で困っている方,一歩進んだインスリン療法を目指したい方にもおすすめ.
T 大きく変わった2型糖尿病の注射療法
A.その歴史をいま一度振り返る
B.外来導入の主役は今やGLP-1受容体作動薬
U 注射療法の外来導入を始めるためのキホンを学びましょう!
A.最初は治療内容をできるだけシンプルに
1.注射回数は少なく!
2.血糖自己測定は導入時に開始しない!
B.インスリンもGLP-1受容体作動薬も,急がずゆっくり増量
1.インスリン開始量を計算する意味などない
C.導入後の急激な血糖コントロールの悪化を避ける:急がないが戻らない
D.わからなくなったら無理させない:導入したら何がなんでも注射をしてもらわないといけないのか?
V 以前に比べて注射薬を嫌がる患者はずいぶん減ったかな?
A.患者をどうやって説得するか?:GLP-1受容体作動薬の場合
B.インスリンってわるいイメージ?
C.インスリン療法は,一度始めると一生やめられないのか?
D.インスリンを体験する
W 注射薬に納得! さて,それではどんな注射薬で始めるか?
A.ランタス発売とともに一世を風靡したBOT
B.なぜ基礎インスリンによる導入が優れているのか?:その理論は伝説的論文4T研究から
1.1種類のインスリンを用いて外来で導入する:1st phase
2.2種類目のインスリンでステップアップ:2nd phase
3.低血糖頻度は基礎インスリンの追加で大きく変わる!
4.追加インスリンと基礎インスリンのバランスとは?
C. 私たちの研究からみる最適なレジメンとは?:日本発,JUN-LANスタディ6から
D.BOTとステップアップの実際(おさらいです)
1.BOTは段階的にステップアップできる!
2.実践編:どのようにインスリンの用量を決めていくのか?〜決め打ちのスライディングスケール〜
E.20年を経て集積してきたBOTの限界点と注意点
1.空腹時血糖値があまり高くない患者にBOTはお勧めできない
2.BOTは3回打ちの代用にはならない:ステロイド糖尿病に使わないで!
3.BOTはかなり太る
4.夕食が遅くて過食な患者のtreat to targetやり過ぎは危険
5.ステップアップは追加インスリンを使う前に未使用の経口薬やGLP-1受容体作動薬を試してみる
X インスリンとGLP-1受容体作動薬,そしてその配合剤を使い分ける!
A. GLP-1受容体作動薬をファーストインジェクションとする対象患者は?
B. 基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤のcommon senseとnew philosophy
1.new philosophy:今までの配合剤の概念を考え直してみる
2.主治医にtreat to targetの自信と勇気を与えてくれる配合剤の潜在力
3.2種類ある配合剤の使い分け
C.2型糖尿病患者における注射療法導入のながれ
Y これであなたもインスリンマスター
A.進化するアナログインスリン製剤を有効活用するために最低限行わなければいけないこととは?
B.注射療法に経口血糖降下薬を併用する
1.DPP-4阻害薬との併用は理想的?
2.欧米のインスリンレジメンには必ずビグアナイド薬が併用されている!
3.SU薬併用のメリット
4.グリニド薬と基礎インスリンの併用
5.チアゾリジン薬は塩分制限で併用を
6.α-グルコシダーゼ阻害薬との併用は食後高血糖患者に
7.SGLT2阻害薬の併用
C.特殊な糖尿病への対応
1.ステロイドによる悪化
2.妊娠糖尿病
3.シックデイの対応
Z せっかくインスリン療法を始めたのにうまくいかないときのチェックポイント
A.理由1:食事療法や運動療法がまるでできていない
B.理由2:1日4〜5回もインスリンを注射しているのにコントロールが不良
C.理由3:間違った注射方法を行っている
D.理由4:決められた単位を注射していない
E. 理由5:いつも同じ場所に注射しているので腹部に硬結ができている
F.やっぱりうまくいかない理由がわからない
[ 今後上市予定のインスリン製剤
A.高齢化が著しいわが国の糖尿病治療に必須の製剤,週1回注射の基礎インスリン
付録
A.インスリン関連の医療保険点数一覧(2022年4月版)
B.インスリン製剤,GLP-1受容体作動薬,配合剤一覧
C.インスリン導入の際に役立つ資料
コラム
・GLP-1受容体作動薬,インスリンとどう使い分ける?
・ビクトーザ超少量療法
・今さらながらの混合型インスリンの3回注射を用いたインスリン外来導入:ヒューマログミックス50注の3回注射
・経口GLP-1受容体作動薬は注射嫌いの患者のための代替薬か?
・経口GLP-1受容体作動薬を本当に飲んでくれるのか?:内服方法と服薬アドヒアランス
・インスリン離脱の必殺技,グリニド薬への切り替え:インスリンから「おさらば」してしまわない離脱法
・食事療法を無理なく行えるようにするために薬が使えるようになってきた!:インクレチン薬は肥満2型糖尿病治療のブレークスルーになりうるか?
・強力GLP-1受容体作動薬の登場でむしろ立ち位置がはっきりした基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤
・新しいインスリンペンのここに注目
・スマートインスリンペン
・長年のインスリン注射で起こる腹壁変化を画像化する!
・流行りの持続血糖モニターを普段の診療で有効利用しよう!
・インスリン注射と運動療法
・持続血糖モニターの利用法を考え直す
改訂に添えて
『もう迷わない! 外来インスリン療法マスターブック』を執筆し,初版が発売されたのが2013年.おかげさまで,本書は第3刷まで刷を重ねて多くの医療関係者の方に愛用していただくことができました.しかし,発刊から10年も経ってしまいました.COVID-19の流行で大変な最中,2021年の年頭,南江堂さんから「この本をそろそろ改訂しませんか?」といううれしいお話をいただきました.しかし,よく考えてみると「改訂で済む話かな?」と思いました.この10年で糖尿病,とくに2型糖尿病の注射療法は大きく変わりました.一応改訂ということで本書の書名はそのまま「もう迷わない! 外来インスリン療法マスターブック」とさせていただきましたが,内容は3分の2以上が書き直しです.何よりも注射療法に変革を与えたのはGLP-1受容体作動薬の存在でしょう.初版はちょうど世の中に基礎インスリンを使用してインスリン療法を開始するBOTという治療法が広く認識され,糖尿病専門医でない医師もインスリン療法をやってみようという雰囲気が広がりつつあったときでした.一方,発売数年を経ていたGLP-1受容体作動薬はインスリン療法のアップグレードあるいはステップダウンに用いられるのがメインであり,専門医以外にはほぼ使用されない状況でした.そのGLP-1受容体作動薬がここにきて大きく評価が上がり,欧米では2018年以降注射療法の最初の一手,すなわちファーストインジェクションとして推奨されるにいたりました.それが影響して,これまで2型糖尿病においても最初の注射療法として認識されていたBOTの立ち位置はかなり変わってきています.
ということで,改訂にあたってずいぶんと手を入れましたので,初版同様,そして初めて手にとる方もぜひこの“2代目”『もう迷わない! 外来インスリン療法マスターブック』を最後までお読みいただき日常診療の参考にしていただけますと幸いです.そうすれば,きっとあなたも新世代インスリンマスター間違いなしです!
追伸)本書は大改訂ですので初版とはかなり内容が変わりました.ついつい,初版を読んでいただいた方に向けた「T.大きく変わった2型糖尿病の注射療法」となってしまいましたので,初めての読者の方は「U.注射療法の外来導入を始めるためのキホンを学びましょう!」からお読みいただくのがよろしいかと思います.
2024年2月
東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 教授
弘世 貴久