書籍

骨転移診療ガイドライン改訂第2版

編集 : 日本臨床腫瘍学会
ISBN : 978-4-524-23191-1
発行年月 : 2022年12月
判型 : A4
ページ数 : 164

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本臨床腫瘍学会編集による、がんの骨転移における診療ガイドラインの改訂版.関係する専門家により初版の内容をブラッシュアップし、ほぼ倍増となる48のClinical Questionとしてまとめた.初版に引き続き,骨転移の病態・診断・治療・ケアについて要点を整理しているほか,今回の改訂では特に,外科治療やリハビリテーション医療など,積極的な介入について提示している.がん診療に携わる医師,チーム医療で患者ケアにあたる医療者の必携書.

・骨転移診療ガイドライン改訂第2版 発刊にあたって
・骨転移診療ガイドライン改訂第2版 発刊によせて
・はじめに
・略語一覧
・骨転移診療のアルゴリズム
 
総 説
1 骨転移の病態
 1.疫学
 2.病理
 3.骨転移の細胞生物学
2 骨転移の診断
 1.診察
 2.生化学
 3.画像診断
3 骨転移の治療とケア
 1.整形外科的治療の目的と意義
 2.放射線治療の意義
 3.薬物療法の意義
 4.緩和ケアの意義
 5.リハビリテーション医療の意義
 6.看護の意義
4 高齢者,サルコペニア,フレイル患者の骨転移治療
 
Question
 Background Question 1 骨転移の有無は予後を規定するか?
 Background Question 2 緊急に対応が必要な骨転移の病態は何か?
 Background Question 3-1 骨転移診断に単純X線は推奨されるか?
 Background Question 3-2 骨転移診断にCTは推奨されるか?
 Background Question 3-3 骨転移診断にMRIは推奨されるか?
 Background Question 3-4 骨転移診断に骨シンチグラフィーは推奨されるか?
 Background Question 3-5 骨転移診断に18F-FDG-PET/CTは推奨されるか?
 Background Question 4 骨転移診断に病理学的検査は必要か?
 Clinical Question 5 骨転移を有する原発不明がん患者において,骨転移巣を用いた遺伝子パネル検査は原発巣の同定に有用か?
 Clinical Question 6 キャンサーボードや院内骨転移登録は骨転移診療に有用か?
 Clinical Question 7 脊髄圧迫症状を呈する転移性脊椎腫瘍の治療に手術は有効か?
 Clinical Question 8 病的骨折や切迫骨折のリスクのある四肢長管骨の骨転移に手術は有効か?
 Future Research Question 9 造骨型骨転移への治療介入は骨関連事象(SRE)の予防に有効か?
 Clinical Question 10 骨転移の治療に装具は有効か?
 Clinical Question 11 四肢長管骨骨転移に対し,腫瘍切除術および人工関節置換術の実施は有効か?
 Clinical Question 12 脊椎転移における画像評価は,麻痺の予防や予測に有効か?
 Clinical Question 13 四肢長管骨の病的骨折に対する手術では骨セメントの使用は有用か?
 Clinical Question 14 骨転移症例における予後予測スコアリングは有用か?
 Future Research Question 15 骨転移患者に対する転移巣以外の骨関節手術は有用か?
 Clinical Question 16 骨転移患者の歩行能力維持のための介入は有用か?
 Clinical Question 17 骨転移の痛みの緩和に外照射は有効か?
 Clinical Question 18 有痛性脊椎転移に体幹部定位放射線治療は有効か?
 Clinical Question 19 過去に外照射を受けた骨転移の痛みの緩和に再照射は有効か?
 Clinical Question 20 骨転移の治療に経皮的椎体形成術(セメント充塡術)は有効か?
 Future Research Question 21 骨転移の治療にアブレーション治療は有効か?
 Clinical Question 22-1 肺がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 Clinical Question 22-2 乳がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 Clinical Question 22-3 前立腺がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 Clinical Question 23 骨転移を有する前立腺がんの治療に新規内分泌療法や抗がん薬は有効か?
 Clinical Question 24-1 多発性骨髄腫の骨病変の治療に薬物療法は有効か?
 Clinical Question 24-2 消化器がん,その他(肺がん,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍を除く)のがんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 Future Research Question 25 骨転移に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は有効か?
 Future Research Question 26 骨転移に対する骨修飾薬(BMA)治療中に骨関連事象(SRE)が発現した患者に対するBMA治療の変更は有用か?
 Background Question 27 骨修飾薬(BMA)投与に伴う有害事象は何か?
 Clinical Question 28 ゾレドロン酸の投与間隔を4週から12週とすることは許容されるか?
 Background Question 29 骨修飾薬(BMA)投与前の歯科介入は顎骨壊死(ONJ)を予防するか?
 Future Research Question 30 骨修飾薬(BMA)で治療中の骨転移患者における非定型大腿骨骨折(AFF)発症予防は可能か?
 Future Research Question 31 骨転移の治療に外照射と骨修飾薬(BMA)の併用は有効か?
 Future Research Question 32 骨代謝マーカーは骨転移を有するがん患者の治療モニタリングに有用か?
 Clinical Question 33 骨転移の治療効果判定に有効な画像診断法は何か?
 Background Question 34-1 骨転移の痛みの緩和に非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs,アセトアミノフェン)は有効か?
 Clinical Question 34-2 骨転移の痛みの緩和に鎮痛補助薬は有効か?
 Background Question 35 骨転移の痛みの緩和にオピオイド鎮痛薬は有効か?
 Background Question 36 骨転移疼痛緩和にストロンチウム-89などの内用療法は有効か?
 Clinical Question 37 去勢抵抗性前立腺がん骨転移においてラジウム-223内用療法は有効か?
 Clinical Question 38 骨転移のある患者にリハビリテーション医療を実施することは推奨されるか?
 Future Research Question 39 病的骨折のある患者の外科的治療後にリハビリテーション医療は有用か?
 Future Research Question 40 痛みのある骨転移患者に対するマネジメント教育は有効か?
 Future Research Question 41 痛みのある骨転移患者にマッサージは有用か?

用語集

骨転移診療ガイドライン改訂第2版 発刊にあたって

 治癒切除不能進行・再発がんの多くは全身の臓器に転移し,進行すると予後を決定する重篤な臓器障害にいたる.骨転移は肺がん,乳がんや前立腺がんなど頻度の高いがん種に高頻度に認められ患者数は多い.骨転移は疼痛,病的骨折,脊髄圧迫,高カルシウム血症など多彩な合併症をきたし,がん治療の中断やQOLの低下など患者に大きな不利益をもたらす.しかし,骨転移に対する治療は機能障害が直接予後を決定づける脳,肺,肝などの主要臓器転移に対する治療よりも長年軽視されてきた.
 そこで当学会は日本整形外科学会,日本泌尿器科学会ならびに日本放射線腫瘍学会の協力のもとで,2015年3月にわが国ではじめて「骨転移診療ガイドライン」を発刊した.当時,骨転移に対する内科的治療法としてビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体薬が使われるようになった時期と重なり,この両薬剤の開発が発刊の契機となったが,このガイドラインは外科的治療や放射線治療を含めた骨転移の治療の標準化に寄与したと考える.
 その後,2016年に骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対する放射線医薬品・塩化ラジウム(223Ra)が保険承認され薬価収載されたが,それ以外に骨転移を適応とする新薬開発は進んでいない.しかしこの間,骨転移治療薬の使い方や骨転移合併症のマネジメント,特に整形外科的介入やリハビリテーション医療に関する医学的エビデンスが少しずつ蓄積されてきた.また,治療医の骨転移治療に対する関心の高まりとともに一部の医療機関で診療科連携が構築されるようになり,ガイドラインの改訂が切望されてきた.
 このような背景のもと当学会は7年ぶりに本ガイドラインを改訂した.今回の改訂にあたり,当学会のガイドライン委員会(馬場英司委員長)のもとに新たにガイドライン作成ワーキンググループ(WG)が組織された.初版に引き続き柴田浩行WG長(秋田大学教授)が中心となり,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠し,クリニカルクエスチョンの策定,文献検索とエビデンスの抽出と評価,推奨の決定のために会合が重ねられた.その結果,多くの臨床の現場の声に応え得る改訂となったと考える.作成に貢献した多くの皆様(9学会からご参画の作成委員33名・協力委員29名と,ガイドライン作成指導1名,評価委員15名)のご尽力とご協力にこの場を借りて深謝したい.最後に,この改訂版ガイドラインが多くの医療従事者に活用され,骨転移診療と患者のQOLの向上に寄与することを期待する.

2022年9月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会 理事長
石岡 千加史

骨転移診療ガイドライン改訂第2版 発刊によせて

 悪性腫瘍に対する治療は日毎に進歩を遂げ,患者さんの生存期間は確実に延長してきました.そして医療者は同時に,治療期間を通じた患者さんの生活の質の向上も目指してきました.その点でがんの骨転移は重要な問題のひとつです.がん罹患数自体の増加,生存期間延長による骨転移の増加,さらに画像診断の進歩による骨転移の診断機会の増加などにより,骨転移が臨床上の課題となる場面は明らかに増えてきました.骨転移の診断治療には多くの診療科,医療スタッフが関与しており,それぞれなくてはならない役割を果たしています.骨転移を有するがん患者さんにおいて,薬物療法により見込める予後は様々であり,これを十分考慮して,外科的な介入方法が選択されます.一方で,外科治療の内容に応じて,その後の可動域や活動の違いを予測して,より負担が少なく効果が高い内科,放射線治療が実施されます.まさに集学的治療が強く求められる局面です.骨転移診療の必要性は増すとともにより密接なチーム医療が求められており,臓器横断的,そして診療科や職種を越えた骨転移診療の指針を示すガイドライン作成の意義は極めて大きいと思われます.
 本ガイドラインの初版が発刊された2015年は,骨修飾薬が登場し,骨転移に対して積極的な薬物治療が可能となった時期でした.骨転移診療のエビデンスを網羅的に記した本ガイドライン国内版は増刷を重ね,英語版はESMO Open誌に掲載されると年間トップアクセスに選ばれるなど,国内外で注目を集めました.その後,骨転移に対する薬物療法は,本ガイドラインの普及もあり広く用いられるにいたりましたが,2022年の現在までにさらに多くの新知見が報告されています.乳がん,肺がんではエビデンスが蓄積し骨転移に対する薬物療法が強く推奨される一方,それ以外の固形腫瘍では必ずしもエビデンスが十分でないなど,がん種による治療モダリティの位置づけが異なる状況です.
 このたび発刊された改訂第2版では,登場後10年が経過した骨修飾薬の長期経過の報告がまとめられました.幸いなことに骨修飾薬を投与する前段階で骨関連事象を起こしている患者割合が低下していること,骨修飾薬投与前に歯科検診やカルシウム値の補正が行われていることが示され,一方,その投与間隔や至適投与期間は有害事象,利便性,コストなどの面から検討の必要性が指摘されました.また骨転移の病理学的,分子生物学的理解の深まりを反映して,初版では骨髄がん症としてCQに取り上げられた病態は,第2版では,骨転移の組織像に基づく4つの分類,溶骨型,造骨型,骨梁間型,混合型のうちの,骨梁間型に位置づけられた明確な解説が加えられました.さらに今回の改訂では,外科治療やリハビリテーション医療などによる積極的な介入を推奨し,「失われた機能」と生活の質を取り戻すという医療者の強い意志が提示されました.この考え方は今後がん治療全般にも拡がることが期待されます.
 この改訂第2版が,初版に引き続き柴田浩行ワーキンググループ長のリーダーシップのもと,関連9学会から参集いただいた63名の作成委員,協力委員,作成指導委員による昼夜を問わないご努力によって完成いたしましたことを心より御礼申し上げます.また,ここに記し得ない多くの関係の皆様の力強い御支援をいただきましたことも重ねて感謝申し上げます. この珠玉の骨転移診療ガイドライン改訂第2版が,がん診療現場でさらに広く用いられ,患者さんの充実した生活と人生を支える助けになることを願っています.

2022年9月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会 ガイドライン委員会 委員長
馬場 英司

 がん治療は日々進歩を遂げ,生存率も向上してきている.結果として骨転移発生の可能性が高いがん腫では,その発生数が増加し治療全体へ与える影響が大きくなってくることが推測される.そのため早期からの骨転移治療への介入の重要性が認識されるようになってきており,多職種の連携が必要な骨転移治療においては,診療指針を示すガイドラインの役割はとても大きいと感じる.また,患者にとっても日常生活動作と生活の質(QOL)を取り戻すというアプローチを通して,より質の高いがん治療を受ける機会につながると思われる.本書は2015年3月にはじめて初版が発刊し,その後骨修飾薬の効果,整形外科的介入やリハビリテーションなどの医学的エビデンスの蓄積を経て7年ぶりの改訂となっている.しかし,まだまだ十分とはいえないエビデンスをまとめて本書を改訂された柴田浩行委員長をはじめとするワーキンググループの先生方および関係者の方々に心より敬意を表したい.

 本書は総説で骨転移の病態,診断,治療とケア,そして高齢者,サルコペニア,フレイル患者の骨転移治療について解説しており,知識の整理ができて非常にわかりやすい.また9のbackground questionと22のclinical question(CQ)について推奨と解説が提示してある.さらに,いまだ十分なエビデンスが醸成されていない臨床疑問についてはfuture research question(FRQ)として回答が記載されている.その内容は主に画像診断,手術,放射線治療,骨修飾薬の効果と有害事象,疼痛管理,リハビリテーションについて述べられている.初版と比較して,手術に関しては四肢長管骨骨転移に対する腫瘍切除と人工関節置換術の有効性,四肢長管骨病的骨折に対する骨セメントの有用性,FRQとして転移巣以外の骨関節手術の有効性について追加されており,普段専門的に骨転移診療を行っていない整形外科医にとっても治療方針の選択のための重要な情報となっている.骨修飾薬については長期経過を含む多くの研究がまとめられており,肺がん,乳がん,前立腺がん骨転移に対する有効性が強調されている.またゾレドロン酸の投与間隔を比較した試験では乳がん,前立腺がん,多発性骨髄腫などの患者に対して,骨関連事象予防のため,投与間隔を4週から最大12週まで延長することが許容されている.骨転移患者へのリハビリテーション医療の実施には,リハビリテーション医療に習熟した専門職によるか,その監督下が望ましいとされており,初版と比較してやや厳しい推奨となっている.このような種々の介入は骨転移患者のQOLの改善を目標としているが,CQ16の「骨転移患者の歩行能力維持のための介入は有用か?」という質問に対して,推奨度が弱いながらも「歩行機能やパフォーマンスステータス(PS)維持は,患者のQOL維持に重要であるだけでなく,生命予後を改善する可能性もあるため,歩行能力を維持するための介入を行うことを提案する」とされている.解説に記載されている研究はいずれも後方視的観察研究であり,エビデンスレベルは低いが,いずれも介入後に歩行機能が保たれると,生命予後が改善したという結果を示している.このように生命予後改善の可能性が明記されたことは,すべての骨転移診療に携わる医療者にとって,積極的に治療介入を行う必要性があることをあらためて認識することになったと感じている.

 骨転移に対しては腫瘍専門医以外の一般整形外科医も治療に関与すべきと考えているが,中には専門医の意見を聞く必要のある症例が含まれる.本書は医療者が治療方針を決めるだけでなく,相談すべき症例の見極めや,患者自身が治療選択をするうえでの一助になると思われ,骨転移にかかわる方々にとって有益な一冊であるといえる.

臨床雑誌整形外科74巻8号(2023年7月号)より転載
評者●久留米大学整形外科教授 平岡弘二

初版にも増して,多くのCQの作成,文献レビュー,解説がなされた力作

 『骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)』が日本臨床腫瘍学会編集,さらにほかの8学会の協力のもと,2022年12月に発刊された.
 進行固形がんでは骨転移が一定頻度でみられ,それにより疼痛,骨折,麻痺,高カルシウム血症などの症状をきたし,がん患者の生命予後やQOLに悪影響を及ぼす.ただし,がんそのものに対する治療のエビデンスと比較し,骨転移に対する治療のエビデンスは,対象がん腫が多彩なこともあり,限られていた.近年のがん治療,とくに薬物療法の進歩に伴い,がん患者の生存期間が延長し,骨転移のマネジメントに対する注目度がより高まってきている.そうした状況のなかで,さらなるエビデンスの創出,それに基づく治療ガイドラインの作成・普及の必要性が増している.
 国内では,『骨転移診療ガイドライン』(初版)が日本臨床腫瘍学会編集のもと,2015年に発刊された.英語版はESMO Open誌に掲載されて,2019年の同誌でのトップダウンロード論文となり,国外でも注目を集めたガイドラインとなった.
 初版発刊から7年が経過して改訂された第2版では,この間エビデンスが徐々に蓄積された結果が盛り込まれ,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠して作成された.Clinical Question(CQ)は初版では計26個であったが,第2版ではBackground Question(BQ),Future Research Question(FRQ)を加えて,計41個となり,頁数も大幅に増えている.
 改訂点の一つとして,ビスホスホネート製剤や抗RANKLモノクローナル抗体などの骨修飾薬が日常診療で使用されるようになってから10年以上が経過し,蓄積された長期使用に関するデータを反映している.2000年の報告では,骨転移のある乳がん患者において,骨関連事象が2年以内に50〜60%,5年以内に80%で発症していた.2017年に報告されたzoledronic acidの投与間隔を比較する第V相試験(CALGB 70604)では,乳がんや前立腺がん,多発性骨髄腫の患者のうち,zoledronic acid開始前の骨関連事象の既往は26%,開始後の2年間の発症率は30%で,骨修飾薬使用前の骨関連事象発生率が,がん薬物療法の発展を背景に減少している可能性がある.また,骨修飾薬による顎骨壊死について,投与期間が長くなるほど増加することを示唆する後方視解析が複数あるが,前方視的臨床試験では検証されていないことが指摘されている.CQ28では,zoledronic acidなどの骨修飾薬のde—escalationに関する文献がレビューされ,zoledronic acidの投与間隔を4週から最大12週まで延長することが提案されている(推奨度;弱い,合意率90.6%(29/32),エビデンスレベルB).
 また,内科的治療以外の改訂点として,外科的治療やリハビリテーションなどの介入がより積極的に推奨されている.初版発刊時やそれ以前の考え方に比べて,骨転移がん患者に対してQOL維持・改善を目的に,より積極的な治療介入を行うという考え方にシフトしつつあることを強く感じる.
 必ずしもエビデンスの創出が豊富ではないなか,本書は初版にも増して多くのCQの作成や文献レビュー,解説がなされており,力作となっている.1人でも多くのがん診療従事者にご閲読いただき,それにより1人でも多くの骨転移がん患者のお役に立つことを願う.

臨床雑誌内科132巻3号(2023年9月号)より転載
評者●高橋雅信(東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野 准教授)

9784524231911