リウマチ病学テキスト改訂第3版
編集 | : 日本リウマチ財団教育研修委員会、日本リウマチ学会生涯教育委員会 |
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ISBN | : 978-4-524-23158-4 |
発行年月 | : 2022年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 608 |
在庫
定価6,600円(本体6,000円 + 税)
正誤表
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2023年06月09日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本リウマチ財団教育研修委員会,日本リウマチ学会生涯教育委員会の共同編集による,臨床リウマチ病学診療を網羅したテキストの改訂第3版.改訂第2版刊行以降のこの領域の進歩を盛り込むとともに,新規項目も拡充し,より充実した内容となった.リウマチ専門医を目指す医師の自己学習,専門医取得者のフォローアップ,またリウマチ病診療に関わる医師の知識更新に役立つ必携書.
A リウマチ性疾患へのアプローチ
1 筋骨格系疾患の病歴・診察・検査
2 検体検査
3 画像診断
a 単純X線
b US
c その他(CT・MRI・PET-CT)
4 病理学的アプローチ
5 関節穿刺法・関節液検査
6 関節炎へのアプローチ
7 若年性関節炎へのアプローチ
8 上肢の痛みへのアプローチ
9 下肢の痛みへのアプローチ
10 脊椎の痛みへのアプローチ
11 リウマチ性疾患の皮膚病変のみかた
12 妊娠とリウマチ性疾患(授乳含む)
a 全身性エリテマトーデス/抗リン脂質抗体症候群
b 関節リウマチ
c その他(高安動脈炎など)
13 移行期医療
B 関節リウマチと類縁疾患
1 関節リウマチ―病態,臨床所見,診断
2 関節リウマチ―疾患活動性の評価
3 関節リウマチ―内科的治療
4 関節リウマチ―外科的治療(周術期の薬剤の休薬)
5 関節リウマチ―リハビリテーション治療
6 悪性関節リウマチ・Felty症候群
7 成人Still病
8 若年性特発性関節炎
9 リウマチ性多発筋痛症
10 RS3PE症候群
11 回帰性リウマチ
C 脊椎関節炎と類縁疾患
1 脊椎関節炎―総論
2 体軸性脊椎関節炎―強直性脊椎炎
3 体軸性脊椎関節炎―X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
4 末梢性脊椎関節炎―乾癬性関節炎
5 末梢性脊椎関節炎―炎症性腸疾患に伴う関節炎
6 末梢性脊椎関節炎―反応性関節炎
7 末梢性脊椎関節炎―分類不能脊椎関節炎
8 脊椎関節炎類縁疾患―掌蹠膿疱症性骨関節炎等
D 全身性自己免疫疾患
1 全身性エリテマトーデス―病態,臨床所見,診断
2 全身性エリテマトーデス―活動性の評価と治療
3 抗リン脂質抗体症候群
4 Sjögren症候群
5 全身性強皮症
6 多発性筋炎/ 皮膚筋炎
7 混合性結合組織病/overlap症候群
E 血管炎
1 血管炎―総論
2 高安動脈炎
3 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
4 結節性多発動脈炎
5 川崎病
6 ANCA関連血管炎―総論
7 ANCA関連血管炎―顕微鏡的多発血管炎
8 ANCA関連血管炎―多発血管炎性肉芽腫症
9 ANCA関連血管炎―好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
10 免疫複合体性血管炎
11 さまざまな血管をおかす血管炎―Behçet病,Cogan症候群
12 単一臓器をおかす血管炎―皮膚に限局した血管炎,中枢神経系血管炎
13 全身性疾患に伴う続発性血管炎―全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,サルコイドーシス
14 誘因の推定される続発性血管炎
15 Buerger病
F 変形性関節症
1 変形性関節症―総論・疫学
2 変形性関節症の病態
3 変形性関節症の治療(薬物治療)
4 変形性脊椎症
5 変形性肩・肘関節症
6 変形性手・手指関節症
7 変形性股関節症
8 変形性膝関節症
9 変形性足関節症
10 全身性変形性関節症・びらん性変形性関節炎(症)
G 結晶誘発性関節症
1 痛風
2 ピロリン酸カルシウム結晶沈着症,偽痛風
3 その他の結晶誘発性関節症
H 感染性関節炎
1 細菌性関節炎(含む嫌気性菌)
2 抗酸菌性関節炎
3 真菌性関節炎
4 スピロヘータ関節炎
5 ウイルス感染と関節炎
I 全身性疾患に伴う関節炎
1 サルコイドーシス
2 内分泌代謝疾患
3 悪性腫瘍,血液疾患
4 アミロイドーシス
J 骨疾患
1 骨粗鬆症の疫学
2 骨粗鬆症の診断
3 骨粗鬆症の治療
4 ステロイド性骨粗鬆症
5 骨壊死
6 骨系統疾患
K その他の疾患
1 リウマチ熱0
2 腱鞘[滑膜]炎
3 滑液包炎
4 結節性紅斑をきたすリウマチ性疾患
5 肥厚性硬膜炎
6 好酸球性筋膜炎
7 Behçet病
8 再発性多発軟骨炎
9 自己炎症性症候群
10 IgG4 関連疾患
11 肥厚(大)性骨関節症
12 神経病性関節症
13 リウマチ性疾患の絞扼性神経障害と神経炎
14 線維筋痛症
15 複合性局所疼痛症候群
16 免疫関連有害事象(irAE)
L リウマチ性疾患への整形外科的アプローチ
1 運動器の外科的療法(総論)
2 運動器の外科的療法(脊椎)
3 運動器の外科的療法(肩・肘関節)
4 運動器の外科的療法(手指)
5 運動器の外科的療法(股関節)
6 運動器の外科的療法(膝関節)
7 運動器の外科的療法(足部・足関節)
8 運動器のリハビリテーション
M リウマチ性疾患における合併症
1 日和見感染症,呼吸器感染症,ワクチン
2 呼吸器疾患
3 肝炎ウイルス活性化
4 血栓性血小板減少性紫斑病,血球貪食症候群
5 悪性腫瘍(含リンパ増殖性疾患)
6 高齢者に対する治療(CKD,心血管病変,フレイル)
N リウマチ性疾患に使用される薬剤,治療法
1 薬物療法に必要な免疫の知識 オーバービュー
2 非ステロイド抗炎症薬
3 ステロイド
4 メトトレキサート
5 その他の抗リウマチ薬
6 カルシニューリン阻害薬
7 シクロホスファミド
8 その他の免疫抑制薬
9 免疫グロブリン静注療法
10 生物学的製剤(TNF 阻害薬)
11 生物学的製剤(IL-6阻害薬)
12 生物学的製剤(IL-17阻害薬)
13 生物学的製剤(IL-12・IL-23阻害薬)
14 生物学的製剤(アバタセプト,リツキシマブ,ベリムマブ,メポリズマブ)
15 低分子標的薬
16 抗痛風薬
17 ビスホスホネート
18 骨疾患に対するその他の薬剤
19 血液浄化療法
20 肺高血圧症治療薬
O リウマチ性疾患に対する社会的・公的支援
1 リウマチ性疾患に対する社会的・公的支援
2 リウマチ性疾患に関する医療経済学的事項
改訂第3版 序文
リウマチ性疾患の診療の進歩は近年目覚ましいものがあります.その大きな原動力は,生物学的製剤やJAK阻害薬をはじめとした画期的な治療薬が次々に登場していることであり,それにともなって多くのリウマチ性疾患の診療ガイドラインも刻々と進化しています.
このようなリウマチ学の進歩に応えるべく,このたび『リウマチ病学テキスト改訂第3版』を発刊する運びとなりました.本書は,2016年に発刊された改訂第2版の6年ぶりの改訂版となります.初版,第2版とも,リウマチ診療に携わる皆様方の好評を博して増刷を重ねましたが,今回の第3版も勝るとも劣らない充実した内容に仕上がったと編集委員一同自負しております.
本書は,日本リウマチ学会リウマチ専門医の資格取得のための基本テキストとして位置づけられていますが,加えてすでに専門医となっている医師やリウマチ学を専門としない医師にも役立つように企画されています.今回の改訂にあたって改めて項目の見直しを行い,執筆陣も全面的に刷新して新進気鋭の専門家が参加し,それぞれの分野の最新の知見をお届けすることができたと確信しています.またすべての原稿は,日本リウマチ学会生涯教育委員会,日本リウマチ財団教育研修委員会から構成される編集委員会の複数の委員による査読を受けていますので内容についての担保もできたと思っています.また今回から南江堂に出版業務をお願いしました.新たな視点から,さらに進化した紙面や構成を提供できたのではないかと思っています.
紙面の制限もあるなか,短期間で執筆いただいた執筆者の皆様方,お忙しい中企画に携わりそして真剣に査読をしてくださった編集委員の皆様方,そして出版作業に携わってくださった南江堂の皆様方にこの場をお借りして心よりお礼を申し上げます.
本書がリウマチ診療に関わるたくさんの皆様方に愛され,そして活用されることを切に願っております.
2022年3月
編集委員を代表して
公益財団法人 日本リウマチ財団 教育研修委員会 委員長 冨田 哲也
一般社団法人 日本リウマチ学会 生涯教育委員会 委員長 堀内 孝彦
勉強すればするほど,奥の深さを感じる.どの分野もそうなのであろうが,特にリウマチ病学やリウマチ診療は,そのような学問・臨床分野の一つと思う.代表疾患である関節リウマチをみても,いまだ不明な点は数多いが,その病因・病態に関するさまざまな新しい知見が日々積み重ねられ,新規の治療法につながっている.生物学的製剤やJanus kinase(JAK)阻害薬をはじめとした画期的な治療薬が次々と登場し,それに後押しされるように診療ガイドラインや治療ガイドのアップデートも続く.ほかのリウマチ性疾患のなかにも,生物学的製剤やJAK阻害薬など新たな治療薬の導入がすすんでいる.今日のリウマチ病学を俯瞰すると,さまざまな知識,経験が複合的,多角的に求められる現実がそこにあるように感じる.本書は日本リウマチ学会リウマチ専門医の資格取得のための基本テキストとの位置づけで刊行され,今回は改訂第3版にあたる.公益財団法人日本リウマチ財団教育研修委員会と一般社団法人日本リウマチ学会生涯教育委員会が合同で企画・編集し,それぞれの分野で活躍する新進気鋭の先生が執筆を担当している.時宜にかなった珠玉の一冊である.
本書は,リウマチ性疾患へのアプローチからはじまり,関節リウマチと類縁疾患,脊椎関節炎と類縁疾患と続く.この2項には最新の知識がコンパクトにまとめられている.さらに全身性自己免疫疾患,血管炎,変形性関節症,血晶誘発性関節症,感染性関節炎,全身性疾患に伴う関節炎,骨疾患と続き,ほかのリウマチ性疾患の概説も読み応えがある.リウマチ性疾患についての整形外科的アプローチ,合併症,薬剤,治療法,社会的・公的支援もわかりやすい.最新版を手に取り,初版,第2版と時代を追って読み比べると,その充実ぶりに目を見張る.新しい専門医制度にも十分対応している.私自身といえば,知識の整理,確認の際には,より詳細に記載された洋書と併用しながら,本書を愛用してきた.手軽で利便性に優れているのがありがたい.専門医資格取得のための基本テキストの域にとどまらないことは一目瞭然と思う.
整形外科医は,関節痛や腰痛,腰背部痛を主訴に来院する患者にファーストタッチする機会が多い.関節炎や脊椎炎の理解は欠かせない.非外傷性の関節痛を主訴とする疾患では,変形性関節症はいうに及ばず,関節リウマチやほかの膠原病と呼ばれる一連の自己免疫性の疾患群や,乾癬をはじめとする脊椎関節炎の知識は無論のこと,代謝性疾患や遺伝性疾患,感染症や悪性腫瘍に随伴する関節炎,さらに抗悪性腫瘍薬など薬剤に伴う関節炎や関節痛の存在も知っておく必要がある.非外傷性の腰痛,腰背部痛を伴う場合,変形性脊椎症のみならず,体軸性病変を主体とし強直性脊椎炎に代表され脊椎関節炎を生じる一連の疾患群や,びまん性特発性骨増殖症の知識も欠かせない.関節痛や腰痛,腰背部痛を訴える患者のなかには,さまざまな疾患や病態が潜んでいる.日々,心して診療にあたりたい,そう自戒を込めて,本書を手にすることのいかに多いことか.
さらに思うことがある.超高齢社会が到来し,関節リウマチ患者の高齢化や,高齢発症の関節リウマチ患者に対応していると,骨粗鬆症や変形性関節症,変形性脊椎症など,ほかの運動器疾患を併存した患者の治療に難渋することは少なくない.運動器の専門家を自負する私どもにとって,関節痛や腰痛,腰背部痛を訴える患者の診断,治療をどのようにすすめていくべきか,他領域の専門家や職種の方々とどのように連携していけばよいのかについて,本書は整形外科学の教科書とは別の視点から,さまざまなヒントを与えてくれる良書である.適切な鑑別除外診断を行い,多分野,多職種と連携して治療をすすめる機会が多くなる一方の日常診療で,本書は欠かすことのできないミニマルエッセンスが詰まったおすすめの一冊である.
臨床雑誌整形外科74巻1号(2023年1月号)より転載
評者●山形大学整形外科教授 高木理彰
リウマチ診療の現場に直結するテーマを網羅した素晴らしいテキスト
リウマチ性疾患の社会全体に及ぼす影響が多大であることを受けて,世界的にリウマチ性疾患に対する理解の深化とその知識の普及の必要性が叫ばれている.リウマチ性疾患の医療に従事する者にとってのテキストが求められるなか,医療現場に直結するテーマを網羅してまとめた『リウマチ病学テキスト』の改訂第3版が2022年5月に発行された.600頁を超える大部の書籍ではあるが,開きやすいつくりになっており,また美しいカラー写真が満載で,章立ても工夫されていることが一見してわかる.
本書は,公益財団法人日本リウマチ財団の教育研修委員会と一般社団法人日本リウマチ学会の生涯教育委員会が協力してその編集に当たり,執筆は国内の第一線でご活躍されている先生方が担当している.本書を開くと,まずA章「リウマチ性疾患へのアプローチ」で,リウマチ性疾患の疾患背景,病態生理,診断,鑑別診断,症状と徴候など,リウマチ性疾患全体に関する総論的な解説が展開される.続けて,B〜K章では,日常診療の現場で経験する頻度の高い疾患である関節リウマチをはじめとして,脊椎関節炎,全身性エリテマトーデス,血管炎,さらにはきわめてまれな疾患や最近話題の自己炎症症候群,IgG4関連疾患,免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(immune—related adverse events:irAE)など,疾患ごとに詳細かつ最新の情報が記載されている.L章以降では,リウマチ性疾患への整形外科的アプローチ,薬物治療(治療薬の実際の用法・用量など),さらにはワクチンなどの合併症対策,社会的・公的支援などが書かれており,必要な内容が網羅されている.新しい内容も十分に取り入れられ,かつ全体的なバランスにも配慮された素晴らしいテキストであると感嘆した.
大変お忙しい業務の合間で多くの時間を割いてご執筆いただいた先生方,ご支援いただいた日本リウマチ財団,日本リウマチ学会の事務局の皆様,そして最後に,今回の版から出版を引き受けて美しい紙面に仕上げていただいた南江堂の皆様に,一読者として感謝申し上げる.
本書は,リウマチ病学の初学者からベテランのリウマチ医まで,多くの方にさまざまな場面でご活用いただけるテキストであると確信している.読者の皆様にとって有用なテキストになることを心より祈念申し上げる.
臨床雑誌内科131巻3号(2023年3月号)より転載
評者●埼玉医科大学 副学長,慶應義塾大学 名誉教授,日本リウマチ学会 理事長 竹内 勤