看護学テキストNiCE
地域・在宅看護論T 総論改訂第3版
地域における暮らしと健康の理解を深める
編集 | : 石垣和子/上野まり/コ田真由美/辻村真由子 |
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ISBN | : 978-4-524-23127-0 |
発行年月 | : 2024年1月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 340 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
地域・在宅看護の基礎となる知識を網羅的に学べるテキスト.新カリキュラムの「地域・在宅看護論」に対応し,前版『NiCE在宅看護論 改訂第2版』から全面リニューアルして2分冊化 .療養者の自分らしい生活の継続を支える看護をめざし,地域・在宅看護が必要とされる社会的背景やシステム,実践の場において求められる看護師の姿勢や考え方などを, 多くの図表を用いて初学者向けに解説.
目 次
序章 地域・在宅看護とは
A.地域包括ケアシステムの中の在宅看護
B.地域・在宅看護
C.家族のとらえ方
第1部 地域で暮らす人々の理解と支援
第T章 人々の営みの移り変わりと医療・看護の現在
1 自然界におけるヒトという存在
A.ヒトはどうしてここにいるのか
B.ヒトの進化の概略
1 進化の足取り
2 文化的進化
C.ヒトの形態的特徴
1 直立2足歩行である
2 毛皮がない
D.ヒトのライフサイクルの特徴
E.ヒトの生活の移り変わりと健康課題
1 狩猟採集生活から定住生活への変化と感染症
2 文化的進化によるライフスタイルの変化とミスマッチ病
3 疫学転換と現代の健康課題への視座
2 暮らしの知恵と専門職の誕生
A.江戸時代の暮らしと病
B.専門職の誕生
1 医師の誕生:江戸時代から明治初期
2 産婆(現在の助産師)の職業化
3 看護(現在の看護師)の職業化
4 保健婦(現在の保健師)の誕生
C.まとめ
3 在宅医療・在宅看護・地域保健活動の発展
A.明治時代の在宅医療・在宅看護・地域保健活動
B.大正時代〜昭和初期の在宅医療・在宅看護・地域保健活動
C.第二次世界大戦後〜高度経済成長期の在宅医療・在宅看護・地域保健活動
1 自治体の訪問看護
2 医療としての訪問看護
3 在宅医療の活動
D.老人保健法制定以降:訪問看護制度の確立
E.介護保険法施行以降:在宅看護の発展
コラム 訪問看護の誕生と発展にかかわった2人の先駆者
第U章 人々の暮らしの成り立ちと健康
1 人々の暮らしをとりまく社会
A.人々の日々の暮らしと世の中とのつながり
B.「暮らし」とは何か:暮らしを構成する要素
C.暮らしのストーリー性
D.人の一生と社会
E.俯瞰的にみた社会
F.社会と文化
G.人々の暮らしをとりまく社会
コラム 子どもの心理的・精神的発達と脳の関係
2 個人の暮らしと健康
A.暮らしと心身の健康
1 暮らしにおけるADLとBADL,IADL
2 暮らしの要素とQOL
B.暮らし方や生活習慣と健康レベル
1 生活習慣の健康への影響
2 健康のとらえ方と健康への影響要因
3 国際生活機能分類(ICF)の考え方
4 社会集団が暮らしに与える影響
A.家族と個人
1 家族とは何か:社会学的なとらえ方から
2 日本の家族の歩み:近年に焦点を当てて
3 現代の家族と個人化
4 家族の暮らしと行政サービスとの関係
B.さまざまな集団・組織と個人
1 暮らしと集団
2 組織と暮らし
C.地域社会と助け合い
1 地域社会の中での自助・互助・共助・公助
2 ソーシャル・キャピタル
D.人が社会・集団と交わって生きる意味
1 社会・集団と交わって生きる意味・生きがい
2 生きがいと役割
3 地域社会で生きがいをもって生きる
4 地域の環境が暮らしに与える影響
A.地理的特徴に基づく自然環境が暮らしに与える影響
B.地域社会の歴史,文化,産業などが暮らしに与える影響
1 農山村の暮らしの変遷と環境からの影響
2 都市の暮らしと環境からの影響
3 工業地帯の暮らしと環境からの影響
4 特徴のある地域社会の暮らしと環境からの影響
5 社会経済が暮らしに与える影響
A.社会経済に影響される暮らしの実態
1 戦後の経済復興,それに続く経済成長の停滞にみる暮らしへの影響
2 所得の再分配による格差の是正
B.所得と健康との関連性
C.少子高齢化社会における社会経済と暮らし
第V章 地域の暮らしを支える保健・医療・福祉と専門職
1 日本の保健・医療・福祉制度の変遷
A.人口動態からみた社会基盤の変化
1 人口総数の年次推移(人口動態)
2 年齢区分別人口の推移
3 死因別死亡率と疾病構造の変化
B.保健・医療・福祉の変遷の概況
C.健康をめぐる保健施策の変遷
1 主な保健施策とその変遷
2 地域保健体制の再構築:保健所と市町村の役割の整理
3 労働者の健康確保対策
D.さまざまな対象に対する福祉施策の変遷
1 高度経済成長を背景とした福祉元年の到来とその後の在宅サービス充実施策
2 福祉8法の改正
3 1990年以降の福祉施策の変遷
4 障害者支援の変遷
E.医療施策の変遷
1 現在の医療提供体制の概略
2 医療提供体制の変遷
3 療養型病床群の課題と介護医療院の創設
4 地域医療構想による2025年に向けた医療体制の改革
2 日本の保健・医療・福祉制度の現状
A.健康の動向と疾病構造
1 健康の動向の現状
2 今日の疾病構造と人々の受診行動
3 死亡場所の変遷
B.保健に関する制度・施策
1 現在の地域保健の基盤となる法律と自治体保健師
2 母子保健
3 成人保健・高齢者保健
4 精神保健
5 自殺対策
6 感染症対策
7 難病対策
8 学校保健
C.公的医療保険制度と診療報酬制度
1 公的医療保険制度の概要
D.介護保険制度
1 介護保険制度の目的
2 介護保険制度のしくみ
3 介護保険制度のあゆみ
4 要介護状態等区分
5 介護保険の対象となる疾病
6 介護保険制度の課題
7 介護保険サービス
コラム 要介護認定の結果が出る前に,介護保険サービスは利用できるか?
8 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)
9 介護保険サービスの利用状況
E.社会福祉に関する制度
1 社会福祉の柱とその内容
2 社会福祉に関する主な相談機関
3 社会福祉の担い手
F.子どもの成育環境をとりまく法制度
1 子どもの成育環境をとりまく社会の動き
2 子どもの成育環境の近年の状況
コラム 子どもの集団での遊びがもつ重要性
3 日本における子どもの成育環境に関連する法と施策
4 健やかな子育て環境の整備のための施策
G.保健・予防活動の実際
1 生活習慣病予防
2 基本チェックリスト,後期高齢者の質問票と介護予防
3 介護予防と地域支援事業
4 メンタルヘルス活動(学校・職場)
5 健診・検診と二次予防(学校・職場)
6 児童虐待予防
3 地域包括ケアシステムと地域包括支援センター
A.地域包括ケアシステム
1 地域包括ケアシステムの背景
2 医療介護総合確保推進法
3 地域包括ケアシステムの構築と地域ケア会議
B.地域包括支援センター
1 設置目的,設置体制
2 職員体制と設置基準,設置状況
3 業 務
4 在宅医療
A.在宅医療の提供体制
1 在宅医療に関連するサービス
2 地域連携クリニカルパス
3 在宅医療の体制構築
4 在宅医療・在宅介護の連携推進
B.在宅医療で活用されているICT
1 遠隔医療の推進
2 介護ロボットの活用
5 保健・医療・福祉の専門職
A.在宅ケアに携わる保健・医療・福祉の専門職とその業務
B.在宅ケアに携わる保健・医療・福祉の専門職が働く機関
第W章 生命(いのち)と暮らしを地域で見守る看護
1 地域包括ケアシステムにおける看護職の役割
A.地域包括ケアシステムにおける看護職
1 地域包括支援センター
2 医 療
3 介 護
4 生活支援・介護予防
B.地域包括ケアシステムにおける多職種との連携
C.社会情勢と地域で暮らす人々に合わせた看護サービスの提供体制
2 地域共生社会における看護職の役割
A.地域社会における健康・生活上の課題
B.地域共生社会づくりと看護職の役割
C.暮らしの身近で看護職者が提供するさまざまなサービス
1 暮らしの身近にある看護サービスの始まり
2 多様で自然発生的なサービスの数々
第2部 生活の場における看護の基盤となる知識
第X章 日本の訪問看護の現状と諸外国の在宅看護
1 訪問看護制度のしくみ
A.訪問看護制度とは
B.医療保険制度による訪問看護
1 年 齢
2 精神科訪問看護
3 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する者
4 小児への訪問看護
5 特別訪問看護指示書の交付
C.介護保険制度による訪問看護
1 ケアプランに位置づく訪問看護
2 訪問看護の展開
D.他のサービスや支援者との連携
E.訪問看護サービスを提供する機関
1 訪問看護ステーション
2 医療機関
3 看護小規模多機能型居宅介護
4 定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行う事業所
F.訪問看護を提供する場
1 自 宅
2 サービス付き高齢者向け住宅
3 認知症対応型共同生活介護
4 有料老人ホーム
5 介護老人福祉施設
6 学 校
G.診療報酬,介護報酬
2 訪問看護を提供する施設や利用者の状況
A.訪問看護ステーションからの訪問看護の状況
1 訪問看護ステーションに勤務する看護職
2 訪問看護ステーションの設置主体
3 訪問看護の利用者の状況
B.その他の機関・施設からの訪問看護の状況
1 医療機関からの訪問看護の状況
2 看護小規模多機能型居宅介護サービス事業所からの訪問看護の状況
3 訪問看護ステーションの運営と管理
A.訪問看護ステーションの運営
1 方針の明確化
2 理 念
3 経営戦略と経営計画
B.訪問看護ステーションの管理
1 訪問看護ステーションの人員
2 管理者
3 設備・備品
4 連 携
5 記 録
6 利用者
7 安全管理
8 教 育
9 経営管理
C.訪問看護ステーションの業務の流れ
1 利用申し込みと受け入れ準備
2 訪問看護の実施
3 実績報告と保険請求
4 居宅等における医行為の特徴と課題
A.医行為とは
1 居宅とは
2 医行為とは
3 介護職の業務
B.居宅等における医行為の特徴と課題
1 居宅における医行為は基本的には療養者本人や家族が行っている
2 在宅医療に必要な薬剤・医療材料・衛生材料の調達の問題
3 訪問看護師と医師との連携上の課題
C.居宅等における安全で確実な医行為の実施に向けて
コラム 看護師の役割拡大
5 諸外国の在宅医療・訪問看護制度
A.米 国
1 米国の医療保障制度,医療提供体制
2 米国の訪問看護の特徴
B.英 国
1 英国の医療保障制度,医療提供体制
2 英国の看護職の教育背景と役割
3 英国の訪問看護の特徴
C.オランダ
1 オランダの医療保障制度,医療提供体制
2 オランダの訪問看護の特徴
D.フィンランド
1 フィンランドの医療保障制度,医療提供体制
2 フィンランドの訪問看護の特徴
コラム 実際の在宅ケアチームの活動
第Y章 在宅看護の姿勢・考え方
1 在宅という場の特徴
A.在宅という場
B.自宅に代わる地域の住まい
2 対象者との支援関係の構築
A.対象者と看護職の関係の理解
B.対象者との関係に必要とされる姿勢と態度
C.生活の場で展開する看護の特性
3 病状・病態変化の予測と予防
A.訪問看護における訪問頻度と滞在時間
B.病状・病態の予測と予防
C.家族の介護力
4 自立支援(セルフケア)
A.自立支援(本人・家族によるセルフケアの支援)とは
B.急変時の対応における自立支援
5 活動・参加の促進
A.活動・参加とは
B.活動・参加の促進
C.リハビリテーションとは
6 人々の尊厳と権利の擁護
A.基本的人権と個人の尊重
B.多様な文化・価値観とその尊重
1 時代性や生活背景が影響する価値観
2 医療に対する価値観
C.権利擁護とは
D.権利擁護のために重要な視点
E.高齢者の虐待予防
F.尊厳や権利擁護のために設けられている諸制度
1 成年後見制度
2 高齢者虐待防止法
3 高齢者虐待への対応と養護者支援に関するマニュアル
7 意思決定の支援
A.自己決定権とは
B.意思決定支援に関するガイドライン
C.意思決定支援の基本的原則
D.アドバンスケアプランニング(ACP)とは
8 多職種連携・協働
A.地域包括ケアシステムにおける多職種連携・協働の特徴
B.在宅看護における多職種連携・協働の目指すこと
1 個別支援のための多職種連携・協働
2 地域の課題解決に向けた多職種連携・協働
第Z章 地域・在宅看護における家族の理解と支援
1 家族の概念・家族規範
A.家族の概念の移り変わり
B.家族規範
C.現代のさまざまな家族像
1 ひとり親家庭(シングルマザー,シングルファーザー)
2 ステップファミリー
3 事実婚
4 里親と養子縁組
5 LGBTQ+カップル
コラム 家族化するペットやロボット
2 家族を理解する
A.家族の特性
B.健康な家族とは
C.家族の機能
1 家族は発達する:家族発達理論
2 家族は健康を維持しようとする:家族のセルフケア機能
3 家族はシステムである:家族システム論
4 家族はストレスに対処する:家族ストレス対処理論
D.介護が家族にもたらす影響
1 家族介護者の状況
2 介護・ケアにより家族が得られるもの
3 家族への支援
A.家族を支援する看護職の姿勢
1 家族成員を含んだ一単位としての家族との関係
2 看護者に求められる基本的な援助姿勢
B.家族アセスメント
C.家族援助方法
コラム ヤングケアラー
第[章 療養の場の移行支援
1 療養の場の移行とその支援
A.療養の場所の変化
B.継続看護とは
C.切れ目のない医療・療養の提供
D.療養の場の主な移行パターン
E.移行パターン別の支援
1 介護保険における移行支援
2 転棟,転院および施設から在宅,病院への移行支援
3 施設や自宅から病院への移行支援
F.療養の場の移行における意思決定支援
2 入退院支援
A.入退院支援の必要性
B.入退院支援の流れ
1 入院前
2 入院時
3 入院中
4 退院前
5 退院後
第\章 地域・在宅でのエンドオブライフケアと看取り
1 さまざまな死生観と死の迎え方
A.日常の暮らしの中で遭遇する「死」の場面
1 「暮らしの場」「治療の場」と死のイメージ
2 日常の中で訪れる死
B.死の判定と訪問看護のかかわり
C.葬儀,墓所の多様化
D.死生観の変容と死の質(QOD)
E.最期まで自分らしく生きるための工夫とその変遷
1 事前指示(AD)
2 リビング・ウィル
2 人生の最終段階にある人々へのケア
A.人生の最終段階にある療養者
1 長い人生を生き抜いてきた高齢者
2 治療法のない疾患や進行性の疾患に罹患した患者
3 突然急性期疾患などに襲われ命の危険を感じる人
B.地域・在宅におけるエンドオブライフケア
1 終末期ケアからエンドオブライフケアへ
2 高齢者のエンドオブライフケア
3 終末期にある非高齢者へのエンドオブライフケア
コラム DNARと急変時の対応
コラム がん患者の苦痛緩和
3 地域・在宅における看取り
A.「看取りの場」の視点でとらえた地域・在宅の特徴
B.地域・在宅での看取りを実現する在宅医療体制
C.地域・在宅における看取りケア
1 死にゆく人への看護ケア
2 家族などへのケア
D.グリーフケア
E.さまざまな場における看取りの実際と多職種連携
1 自宅での看取り
2 施設での看取り
3 サービス付き高齢者向け住宅での看取り
4 多職種連携による「地域・在宅看取り」の実現
第]章 在宅看護におけるリスクマネジメント
1 リスクマネジメント
A.リスクマネジメントとは何か
B.リスクマネジメントをめぐる最近の状況
C.在宅療養者や家族にとってのリスク
1 転倒・転落のリスク
2 誤嚥・窒息のリスク
3 熱傷のリスク
4 医療処置・機器に関する事故のリスク
5 温度差による病状悪化のリスク
6 感染のリスク
D.在宅看護時に起こりうるリスク
1 看護行為に伴う医療事故のリスク
2 訪問に伴うリスク
3 情報管理に関するリスク
4 事業所の評判に関するリスク
5 在宅看護における感染のリスク
E.大規模災害のリスク
2 情報管理
A.個人情報の保護に関する法律
B.個人情報とは
C.個人情報取扱事業者が守るべきルール
1 取得・利用
2 保管・管理
3 提 供
4 開示請求などへの対応
D.指定訪問看護事業者としての情報管理
3 感染対策
A.感染防止の原則
1 感染対策の概要
2 標準予防策と経路別予防策
3 その他の感染対策
B.在宅の高齢者に多い感染症とその感染対策
1 肺 炎
2 尿路感染症
3 ウイルス性胃腸炎
4 その他の感染症
コラム 新型コロナウイルス感染症をふまえた訪問看護師の役割
4 地域・在宅における災害対策と備え
A.地域・在宅療養者への災害対策の必要性
B.地域・在宅における自然災害への備え
1 地域のハザードマップを理解する
2 地域で実施される防災訓練に参加する
3 要支援者への備えの充実を図る
C.保健・医療・福祉サービス事業所の備え
1 業務継続計画(BCP)の作成
2 避難所における支援体制の整備
3 仮設住宅における支援体制の整備
D.災害サイクルに応じた支援
1 災害サイクルに応じた支援
E.災害時に発動される体制,法・制度
1 災害経験を生かした対策の組み立てと関係機関の連携
2 災害対策基本法
3 災害救助法
4 自衛隊の派遣
はじめに
今日,在宅看護の発展は目覚ましく,訪問看護利用者数はここ10 年で3 倍になり,その年齢幅や重症度および対象疾患の多様性も大幅に増しています.訪問看護師への期待はますます大きなものとなっています.
2020 年に,保健師助産師看護師学校養成所指定規則上の「在宅看護論」という科目は名称が「地域・在宅看護論」に変更され,学ぶ順番が早まって基礎看護学の次に位置づけられました.単位数も4 単位から6 単位に増加しました.それを受けてこのテキストは,2011 年の『NiCE 在宅看護論』初版,2016 年の同改訂第2 版を土台にしながら2 名の新編集者を加え,書名を『NiCE 地域・在宅看護論T 総論/U 支援論』の2 分冊に改めて発刊するものです.
本書『NiCE 地域・在宅看護論T 総論』は大変盛りだくさんの内容で構成されています.
盛りだくさんになった理由の一つ目は,テキストの名称に「地域・」がついたことに象徴されます.在宅看護の広がりや地域包括ケア時代の到来によって,看護師に地域社会や人の暮らしへの基本的な理解が求められているのです.そこで,このテキストでは一般教養科目(基礎分野)における学びとのつながりや,看護に必要な地域の理解を重視し,人の暮らしと保健・医療・福祉施策との関係の理解などを盛り込みました.
二つ目は,在宅看護の提供方法や体制が多様な対象に合わせて充実・発展してきたことです.介護保険や行政によるサービスの開発,保健師をはじめ多様な専門職や地域包括ケアシステムに関する諸団体の理解・連携など,在宅看護をとりまく諸制度や訪問看護制度と関連させて学ぶ内容が膨らんでいます.臨地実習前にしっかり学び,実習の機会を生かして理解を深めてください.
三つ目に,在宅看護において考慮すべき事柄が増えたことです.本書では性や結婚に関する価値観の多様化,いわゆる終活や死の準備,頻発する災害対応も含めたリスクマネジメント,ICT 技術の発達などを取り上げました.これらを通して地域社会に生じているさまざまな事象に対する視野を広め,より対象の心に届く看護の提供や新たな在宅看護の追究,そして安全で安心な在宅看護の提供に資する学習ができると考えています.
在宅看護が信頼され発展してきた背景には,困難に立ち向かい暮らしの場での医療・看護を育て,大きくしてきた先人たちの努力があります.これから看護職となる皆さんには,どのような場で働こうとも在宅で療養することの意義を忘れず,連携に努めていただきたいと思います.そしてその中から先人の後を追って在宅看護に進む方が出てくれたならうれしく思います.
2023 年12 月
石垣 和子
上野 まり
コ田 真由美
辻村 真由子