PT・OT・STクリニカル・クラークシップ かんたんな解説とQ&Aでお悩み解決! きっとうまくいく診療参加型臨床実習
編集 | : 中川法一 |
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ISBN | : 978-4-524-23119-5 |
発行年月 | : 2023年4月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 248 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
手軽に読めてクリニカル・クラークシップに基づいた臨床実習ができるようになる臨床現場のPT・OT・ST向け書籍が誕生.総論では基本的事項をコンパクトに解説し,各論では臨床実習の場で生じる悩みに133のリアルなQ&Aで応える.初めて臨床実習生を受け持つスタッフはもちろん,もう一度学びたいベテランスタッフにも最適な一冊.本書を読めば臨床実習は“きっとうまくいく”!
1. クリニカル・クラークシップとは
A クリニカル・クラークシップとは
1 患者担当制実習とクリニカル・クラークシップに基づく臨床実習の違い
2 CCSによる症例理解と実践
3 CCSにおける教育学習理論とリスクヘッジ体制
B クリニカル・クラークシップによる指導展開
1 指導の段階
2 臨床スキル項目の細分化の必要性
2. クリニカル・クラークシップによる段階的教育
A 見学
1 意図的な見学を
2 見学対象と学び
3 見学実習の到達目標
4 効果的な見学での誘導
B 模倣
1 見学から模倣へ
2 模倣の段階的指導
3 模倣段階でのフィードバック
C 実施
1 模倣から実施への移行
2 実施に至る能力確認
D 水準
1 水準の考えかた
2 水準に応じた指導法
E CCS だから可能となり拡大した臨床実習場面
3. クリニカル・クラークシップによる指導
A 運動スキル
1 指導方法と細分化
2 指導順の考えかた
3 サブスキルへの細分化例
B 認知スキル
1 実習生に伝えるべき認知スキルにはどのようなものがあるか
2 認知スキル指導の概念
3 認知スキルの段階的指導
4 臨床思考図
4. CCS をより効果的に行うための指導ツール
A 指導に必要なツールとは
1 CCSでなぜ指導ツールが必要なのか(利便性,有効性について)
2 CCSで活用できる指導ツール
3 指導ツールを用いることでの各立場における有効性
4 対象者,実習生の保護としての有効性について
5 ツールを作成することが目的化しないために
B チェックリスト
1 チェックリストとは
2 チェックリストの使いかた
3 チェックのタイミングとフィードバック
4 臨床教育を促進するためのツール
C 多様な指導ツール
1 指導ツールの有効活用
2 さまざまな指導ツールの例
D 臨床教育計画・学生指導ノート(経過記録)
1 臨床教育計画・学生指導ノート(経過記録)を残す意義
2 学生指導ノートの記載項目
E ポートフォリオ
1 CCSにおけるポートフォリオ教育とは
2 ポートフォリオの構成
3 ポートフォリオの活用方法
4 ポートフォリオによる形成的評価
5 シームレスな卒後教育へ
5. 脳卒中片麻痺患者を実習モデルとしたPT・OT・ST の指導法概論
A 脳梗塞左片麻痺(右中大脳動脈)を呈した症例
1 基本情報
2 社会的情報
3 医学的情報
4 評価結果
5 各職種のアプローチ内容
B 理学療法・作業療法・言語聴覚療法での指導法概論
1 理学療法・作業療法・言語聴覚療法
2 理学療法
3 作業療法
4 言語聴覚療法
6. クリニカル・クラークシップによる臨床実習教育実践
@各職種に共通のQ&A
A理学療法のQ&A
A 急性期のQ&A
B 回復期のQ&A
C 生活期のQ&A
D その他のQ&A
B作業療法のQ&A
A 身障@ 急性期のQ&A
A 身障A 回復期のQ&A
A 身障B 生活期のQ&A
B 精神@ 急性期のQ&A
B 精神A 回復期のQ&A
B 精神B 生活期のQ&A
B 精神C 病期分けできないQ&A
C その他のQ&A
C言語聴覚療法のQ&A
A 成人@ 急性期のQ&A
A 成人A 回復期のQ&A
A 成人B 生活期のQ&A
B 小児@ 維持期・生活期のQ&A
B 小児A その他のQ&A
参考文献
索引
わが国の理学・作業・言語聴覚士(POS)の臨床教育にクリニカル・クラークシップの導入を,との提唱は30 年前に遡る.活動当初は痛烈な批判を受けたが,その殆どが「レポートを書かせない」,「患者を担当させない」,「低能力学生への救済」などと末節だけを取り上げた酷いものばかりで閉口してしまった.臨床教育なのにレポート指導が中心,患者の尊厳を無視したコンプライアンス違反などの諸々の問題は平然と見過ごす独自の臨床実習観が形成され,体系化されていない経験則で断片的に語り継がれてきた私たちの臨床実習は,卒業前の通過儀礼と化していたのである.
そこでクリニカル・クラークシップを臨床教育の体系として提唱することの必要性を痛感し,語尾にSystem を加え略称をCCS とすることとした.すでに導入を始めていた医学教育では本国どおりのCC としていたが,POS 教育に適合した体系づくりをめざし差別化するために,あえてCCS としたのである.医学教育界が国民の理解を得るために診療参加型臨床実習を造語したのと同様に,POS教育のためにCCS の語を使ったのであり,クリニカル・クラークシップの提唱者とされるWilliam Osler 氏の「臨床教育をデスクワークからクリニカルワークへ転換する」という根底に流れる理念は全く同じである.
臨床教育体系という限りは,その骨幹となる教育学習理論が必要である.認知的徒弟制と正統的周辺参加は本書で頻繁に登場するので,是非とも理解を深めていただきたい.この世界的にオーソライズされた理論を基盤にして,見学─模倣─実施という段階的学習を原則とする指導方法論を確立してきた.また,活動早期から1 名の臨床教育者による複数の実習生への指導体制も,正しい教育効果という側面から強く推奨してきた.
これらの理論的部分の解説は『セラピスト教育のためのクリニカル・クラークシップのすすめ(第3 版)』(三輪書店,2019)に委ね,本書は初学者でもすぐに実践できるハウツー本として企画した.特に力を入れたのはPOS の共通場面と各々の特徴的な場面を可能な限り想定したQ&A であり,実践上の疑問と解決戦略を簡潔にまとめた.質問が多かった段階的学習の留意点や教育ツールに関する詳細な説明も加え,さらにCCS の必須ツールであるチェックリストはダウンロード可能としたので,実習の進行に応じタイムリーに活用いただけると確信している.
臥薪嘗胆とは大げさであるが,本書が正しくパラダイムシフトを伴う臨床教育の改革の一助になれば,30 年あまりの時間は色あせた過去ではない.2020 年の指定規則改正で示された内容はCCS を追認するような形となり,やっと時代が追いついてきたと活動をともにしてきたメンバーと讃えあったことが歩みに彩りを与えてくれた.
2023年3月 中川法一