新 PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法
達人が教える119のテクニック
編集 | : 村松俊哉 |
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ISBN | : 978-4-524-23017-4 |
発行年月 | : 2021年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 520 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
正誤表
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2022年06月09日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
PCI困難例やカテーテル室のトラブル解決策をエキスパートが解説した好評書『達人が教える!PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法119』の改訂新版.今版ではマイクロカテーテル,ダイアモンドバック,3Dワイヤリング法などの新デバイス・手技についても盛り込み,「どうしてもうまくいかないときの奥の手」などのTipsも充実させた.ピンチに立ち向かうPCI医へ贈る一冊.
コロナ下でのカテーテル治療の在り方
T PCI前の戦略を熟知する!
■ 001 迷ったときに助けになるPCIのエビデンスは?
■ PCIの適応
002 PCIの適応は?
003 PCIよりCABGが好ましい症例とは?
004 左主幹部狭窄に対する戦略は?
■ 正しい冠動脈造影はどう撮影するか
005 狭窄病変の評価が難しいときは?
006 左主幹部造影のピットフォールは?
007 右冠動脈完全閉塞病変が描出しにくいときは?
■ 正しい冠動脈造影はどう描出する
008 左冠動脈完全閉塞病変が描出しにくいときは?
■ 治療法決定に迷うとき
009 左主幹部病変でCABG かPCI か迷ったときは?
010 治療抵抗性入口部病変に対する治療はどうするか?
011 3枝病変でPCI 治療は可能か?
012 透析患者の石灰化病変に対する治療はどうするか?
013 出血傾向患者のPCI治療はどうするか?
014 心房細動を伴うPCI治療はどうするか?
015 慢性完全閉塞病変の治療選択に迷ったときは?
U 穿刺法のトラブルも解決!
■ 大腿動脈穿刺
016 大腿動脈穿刺部位がわかりにくく穿刺に難渋したときは?
017 高度大動脈の屈曲,蛇行症例の対策は?
018 穿刺時の血管穿孔の対策は?
019 大腿動脈穿刺後の仮性瘤はProGrideTMを用いてどう修復するか?
■ 橈骨動脈穿刺
020 橈骨動脈拍動触知が難しいときは?
021 橈骨動脈ガイドワイヤーの挿入が困難なときは?
022 ガイドワイヤー穿孔時の対応は?
023 遠位橈骨動脈アプローチの利点,不利益は?
024 遠位橈骨動脈アプローチの実際は?
V ガイディングカテーテルを使いこなす!
■ ガイディングカテーテル挿入困難時
025 右冠動脈にガイディングカテーテルが挿入できないときは?
026 TAVI 後のPCIでガイディングカテーテルがかからないときは?
■ ガイディングカテーテルでの冠動脈入口部損傷時
027 右冠動脈に関するトラブルシューティングは?
028 左冠動脈に対するトラブルシューティングは?
■ 029 ガイディングカテーテルのバックアップ力が不十分なときは?
■ 030 大動脈損傷を誘発したときは?
W ガイドワイヤーを使い倒す!
■ ガイドワイヤー通過困難時
031 90°以上の屈曲が通過しないときは?
032 長いステントストラットにあたって通過しにくいときは?
033 石灰化病変に挟まり通過しにくいときは?
034 慢性完全閉塞病変で1stチョイスガイドワイヤーが通過しないときは?
035 慢性完全閉塞病変で2ndチョイスガイドワイヤーが通過しないときは?
■ 036 ガイドワイヤーが抜けてしまうときは?
■ 037 ガイドワイヤー先端がナックルになってしまったときは?
■ 038 側枝へのガイドワイヤーがステントストラットを通過しないときは?
■ 039 ガイドワイヤーが偽腔に迷入してしまったときは?
■ 040 ガイドワイヤーが断裂してしまったときは?(ロータワイヤー TM含む)
■ 041 ガイドワイヤーが冠動脈穿孔を起こしてしまったときは?
■ 042 FILTRAP ®を誤ってステント外に留置してしまったときは?
X マイクロカテーテル,バルーンのピンチも乗り越える!
■ マイクロカテーテル通過困難時
043 マイクロカテーテルが病変通過しないときは?
044 分岐部病変の側枝にマイクロカテーテルが通過しないときは?
045 完全閉塞病変にマイクロカテーテルが通過しないときは?
■ 046 分岐部病変の側枝にガイドワイヤーは通過したがバルーンが通過できないときは?
■ バルーン通過困難時
047 分岐部病変にKBT はいつ必要か?
048 スコアリングバルーン通過困難時はどうするか?
049 慢性完全閉塞病変で1.25 mm バルーンが通過しないときは?
■ 050 20気圧以上でもバルーン拡張できないときは?
■ 051 バルーン破裂した後はどうするか?
Y ステントの困難だって克服する!
■ ステント挿入困難時
052 高度屈曲,石灰化病変でステントが挿入できないときには?
053 入口部病変で適切位置にステント留置が難しいときは?
054 分岐部狭窄病変で側枝にステントが挿入できないときは?
055 ステントがガイディングカテーテルに引っかかり収納できないときは?
056 慢性完全閉塞病変で2.25 mm ステントが挿入できないときは?
057 血管径2.0 mm 以下の血管に解離をきたしたときは?
■ 058 ステントが冠動脈内でfractureしたときは?
■ 059 ステントバルーンが拡張中に破裂したときは?
■ 060 ステントが冠動脈内から抜去困難でガイドワイヤーが残っているときは?
■ 061 ステントが冠動脈内から抜去困難でガイドワイヤーも抜けてしまったときは?
Z アテレクトミーのトラブルも対応できる!
■ 062 ロータワイヤー TMへの交換が困難なときは?
■ 063 ロータブレーター TMが石灰化病変をなかなか切除できないときは?
■ 064 ロータブレーター TM後,重度のslow flowが発現しショックになったときは?
■ 065 ロータブレーター TM burrスタックへの対応は?
■ 066 ロータブレーター TMよりもダイアモンドバック ®が有効になるときは?
■ 067 ダイアモンドバック ®のエンドポイントはどうするか?
■ 068 DCAで仮性瘤・穿孔してしまったときは?
■ 069 DCA+DCBで終了できるかの判断は?
[ 慢性完全閉塞のトラブル対処法
■ 070 ガイドワイヤー交換のタイミングがわからないときは?
■ 071 マイクロカテーテルの選択に迷うときは?
■ 072 エントリーポイントがわからないときは?
■ 073 順行性ガイドワイヤー進行方向の確信が得られないときは?
■ 074 リエントリーポイントがわからないときは?
■ 075 逆行性側副血行路の選択に難渋するときは?
■ 076 逆行性からreverse CARTできずCTOクロスに難渋するときは?
■ 077 逆行性からのexternalizaionが達成できないときは?
\ イメージングモダリティも上手に使える!
■ IVUS
078 IVUS ガイド活用:逆行性アプローチへのガイド
079 IVUS ガイド活用:IVUS ガイド3D ワイヤリング
080 IVUS ガイド活用:DCA
081 IVUS ガイド活用:冠動脈解離,穿孔への応用
082 IVUS カテーテルのNURD 発生への対応は?
083 IVUS カテーテルスタックへの対応は?
■ FFR
084 FFR 測定値がグレーなときは?
085 FFR ガイドワイヤーで病変通過しないときは?
086 FFR 値と造影上の狭窄率が乖離しているときは?
087 FFR とiFR が乖離したときは?
■ OCT
088 OCT ガイド活用:IVUS に勝る活用法
089 OCT ガイド活用:3D イメージの使い道
090 OCT ガイド活用:ステントエンドポイントへの応用
091 OCT ガイド活用:合併症への対処
092 OCT カテーテルが通過しないときは?
093 OCT を有効活用するためのポイントは?
] 合併症もドンと来い!
■ カテーテル全般
094 出血性合併症の対処法は?
095 造影剤,薬剤の副作用への対応は?
096 カテーテル誘発脳塞栓症への対応は?
097 空気塞栓症へのトラブルシューティングは?
098 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)への対応は?
099 冠スパズムへの薬剤投与の注意点は?
100 重度冠動脈解離はどうするか?
101 slow flow/no reflow 現象の原因と対策は?
102 繰り返す血栓性閉塞はどうするか?
■ 冠動脈穿孔時
103 ガイドワイヤー穿孔時はどうするか?
104 冠動脈大穿孔時はどうするか?
105 逆行性アプローチに伴う冠動脈穿孔時はどうするか?
106 心タンポナーデ後の迅速な心囊穿刺はどうする?
107 CHIP症例への対応は?
]T 止血法も困らない!
■ 108 正しい用手止血法はどうするか?
■ 109 止血デバイス不具合例への対応は?
■ 110 穿刺部血腫,瘤への対応は?
■ 111 外科的対応のタイミングは?
■ 112 DRAの止血はどうするか?
]U PCI後療法もうまくやる!
■ 113 抗血小板薬,抗凝固薬はいつまで必要か?
■ 114 遅発性ステント血栓症のメカニズムと対処法は?
■ 115 ステント再狭窄例の外科適応のタイミングは?
■ 116 stent fracture, malappositionのメカニズムと対処法は?
■ 117 造影剤腎機能障害・造影剤腎症(CIN)の予防は?
■ 118 コレステロール塞栓症(CES)への対応は?
■ 119 放射線障害の防御法は?
序文
2021年の秋口現在、日本の世相は大きく変わっている。言わずと知れたCOVID-19感染症の猛威である。社会への影響も甚大であるが、とりわけ医療界には多くの変革と厳しい忍耐を求められている。
そんな中でも、心臓病に苦しむ患者さんが絶えることはなく、我々カテーテルインターベンション医師は常にベストを尽くして良い結果をもたらせねばならない。
7年前に上梓した『PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法119』はありがたいことに多くの若手インターベンション医に読んでいただき、日頃の臨床の一助となることができた。今回、新版として刊行することとなり以下の点に留意して企画した。まずは、この7年間にカテーテル業界もデバイスも技術も進化しており、新しい技術・デバイス・データ・考え方などを多く取り入れて、全く新しい視点から内容を刷新した。さらに、筆者の先生がたも現在第一線でインターベンションに携わっている中堅医師にお願いした。また、「コロナ禍でのカテーテル室の在り方」も特別寄稿として加えさせていただいた。わかりやすく、できるだけ症例や画像を掲載して、視覚的にも理解が深まるようにした。
私事で恐縮だが、還暦も近い2年前に再生を目指す循環器施設の院長にさせていただいた。空っぽの病棟から1歩ずつ前に進めていく毎日で、さまざまな困難に直面し貴重な経験をさせていただいた。ともに頑張ってくれた職員や仲間にも沢山恵まれた。3月、やっと患者さんが戻り始めてきたときにクラスターに見舞われた。再度、動きが止まり底に沈み収束の見えない病院で頭をよぎったのは、60年も生きてきたのはこういう時のためではないかということである。30年間のカテーテルで学んだことは逆境においてこそ、結果を恐れず逃げずに最後まで自分のベストを尽くすことである。いま、それができなければ何のための日々(鍛錬)だったのかわからないのである。まさに「ピンチからの脱出」である。
後輩諸君もそのような気持ちで日々のカテーテル治療、診療や人生そのものに悔いのない毎日を送っていただければと思う。光陰矢の如しである。気づいたら還暦も終わってしまった(笑)。
カテーテルの世界のさらなる発展を若手医師に期待して、この本がその一助になることを願っている。
2021年10月
村松 俊哉
南江堂から本書の書評を依頼されたときには,これは2014 年に出版された『達人が教える! PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法』の改訂版に対する書評の依頼だろうと想像していた.しかしながら,本書を手にして大変驚いた.つまり,多くの執筆者が新しく選ばれており,したがって内容も大きく刷新されているのである.表紙をよくみると「PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法」の前にさりげなく「新」という文字が追加されている.あらためて本書は前作の改訂版ではなく,新しい別の本であることに気づかされた.私ならまったく別のタイトルにするのだが,ものすごいことをさり気なく完遂される編集者の村松俊哉先生のお人柄が表れているように感じた.当たり前ではあるが,ピンチからの脱出法は一つとは限らない.今回の執筆者が前回と異なる方法論を提案されている章もある.多くの脱出法を学ぶために,前書を所有されている先生にもぜひ本書の購入をお勧めしたいし,前書を所有されていない先生にはぜひ二冊揃えていただきたい(すでに書店などでは入手しづらいようであるが,電子版は継続的に販売されているようである).
冠動脈インターベンション(PCI)において成功率の高い初期成績を得るには,他の外科的手技と同じように多くの症例の経験が必要である.合併症やトラブルなども一度経験すれば,次回からは事前に回避することが可能であるし,もし発現しても速やかな対処が可能である.しかしながら,合併症やトラブルに関してPCI に携わる多くの術者各々がすべて
の事象を経験することは困難である.また,手技中にはただちに対応することが求められる.医局に帰って本を読んでよく考えて,明日対処するというような一般内科的な対応は許されない.つまり,術中の難局を“今”切り抜けることが要求されるのである.そのためには,本書を熟読されて,起こりうるすべてのトラブルに関する対処法を完璧に会得し,発生時にただちに対応していただきたい.
チェズレイ・サレンバーガー三世は,乗客・乗員155 人が乗ったUS エアウェイズ旅客機が両エンジン停止状態に陥った際に,冷静な判断でハドソン川への不時着水を成功させた機長として知られている.彼は事後のインタービューで「訓練してきたことをやっただけ.自慢も感動もない」と言ったとされているが,まさにPCI の術者がトラブル解消後にもつべき心境であろう.本書を読むことにより,PCIのさまざまなピンチを疑似体験することが可能である.何度も熟読し,ピンチからの脱出法をご自身のものにされ,万が一のピンチに遭遇された場合には,サレンバーガー機長のように冷静な対処をお願いしたい.明日からの皆様のPCI には,ピンチが起こらないことをお祈りしつつ筆を擱かせていただきたい.
臨床雑誌内科129巻5号(2022年5月号)より転載
評者●西宮市病院事業管理者 南都伸介