書籍

糖尿病最新の治療2022-2024

編集 : 荒木栄一/綿田裕孝/山内敏正
ISBN : 978-4-524-22996-3
発行年月 : 2021年11月
判型 : B5
ページ数 : 370

在庫僅少

定価8,800円(本体8,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

3年ごとの定期刊行で,糖尿病治療の最新情報と治療方針を簡潔にまとめた最新版.巻頭トピックスでは,「CGM metricsの最新のエビデンス」「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療」「新型コロナウイルス感染症と糖尿病」など,話題の10テーマを取り上げている.また,今版では新たに薬物療法について「GLP-1受容体作動薬とインスリンの併用療法」の項目を新設し,配合剤も含む併用療法について最新の情報を盛り込んだ.

T 巻頭トピックス
 1.第4 次「対糖尿病戦略5 ヵ年計画」
 2.糖尿病に対するスティグマとアドボカシー活動
 3.CGM metrics の最新のエビデンス
 4.糖尿病患者における目標体重やタンパク質・炭水化物摂取量の考え方
 5.糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療
 6.腎臓におけるケトン体代謝の意義
 7.新型コロナウイルス感染症と糖尿病
 8.単一遺伝子異常による糖尿病の成因,診断,治療
 9.2 型糖尿病感受性遺伝子多型の同定とその意義
 10.インスリン作用伝達に関与する新規転写因子FoxK1/K2 の役割

U 糖尿病治療の基本
 1.糖尿病の病型分類と診断基準,コントロール目標
 2.1 型糖尿病
 3.2 型糖尿病
 4.その他の特定の機序,疾患による糖尿病と糖代謝異常
 5.妊娠糖尿病
 6.小児・思春期の糖尿病
 7.高齢者糖尿病
 8.境界型の管理
 9.メタボリックシンドロームへの指導・管理

V 食事療法
 1.病態に応じた食事療法
 2.「食品交換表」の活用
 3.カーボカウントの活用
 4.糖尿病腎症合併時
 5.脂質異常症合併時

W 運動療法
 1.運動療法の効果と実際,注意点
 2.糖尿病合併症・併存症と運動療法

X 経口薬療法および注射薬療法
A.インスリン分泌非促進系
 1.ビグアナイド薬
 2.チアゾリジン薬
 3.α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
 4.SGLT2 阻害薬
B.血糖依存性インスリン分泌促進系
 1.DPP-4 阻害薬
 2.GLP-1 受容体作動薬
C.血糖非依存性インスリン分泌促進系
 1.スルホニル尿素(SU)薬
 2.速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
D.病態に応じた注射療法の基本
 1.1 型糖尿病
 2.2 型糖尿病
 3.糖尿病合併妊娠
E.インスリン療法
 1.インスリン製剤の種類と特徴
 2.強化インスリン療法
 3.持続皮下インスリン注入療法(CSII)
F.その他の薬物療法
 1.配合剤(経口薬)
 2.GLP-1 受容体作動薬とインスリンの併用療法

Y 糖尿病昏睡
 1.糖尿病性ケトアシドーシス
 2.高浸透圧高血糖状態
 3.低血糖 愛媛大学糖尿病内科学
 4.乳酸アシドーシス

Z 糖尿病性腎症
 1.腎症第1 期(腎症前期)
 2.腎症第2 期(早期腎症期)
 3.腎症第3 期(顕性腎症期)
 4.腎症第4 期(腎不全期)
 5.腎症第5 期(透析療法期)
 
[ 糖尿病網膜症
 1.黄斑浮腫
 2.単純網膜症
 3.増殖前・増殖網膜症
 4.網膜症以外の眼合併症
 
\ 糖尿病性神経障害
 1.感覚運動神経障害
 2.単神経障害
 3.自律神経障害
 4.勃起障害
 
] 糖尿病性大血管障害
 1.脳血管障害
 2.冠動脈疾患
 
]T 糖尿病性足病変
 1.足潰瘍・足壊疽
 2.下肢動脈狭窄・閉塞
 
]U その他の併発症
 1.高血圧
 2.脂質異常症
 3.感染症
 4.歯周病
 5.皮膚病変(足,爪白癬)
 6.骨病変
 7.認知症
 8.糖尿病患者の手術
 
]V 二次性糖尿病
 1.ステロイド糖尿病
 2.肝疾患における糖尿病
 3.膵疾患による糖尿病
 4.免疫チェックポイント阻害薬による1 型糖尿病
 
]W 移植・再生医療
 1.膵臓・膵島移植
 2.再生医療
 
]X 糖尿病療養指導
 1.生活指導と自己管理
 2.シックデイの対応方法
 3.災害時の糖尿病診療
 4.血糖自己測定の指導法
 5.CGM の活用と注意点(iCGM も含む)
 6.予防的フットケア
 7.心理的支援
 8.ICT を用いた自己管理支援
 9.糖尿病療養指導士の役割
 10.糖尿病におけるクリニカルパスの活用
 
]Y 糖尿病の予防
 
巻末付録 糖尿病治療薬一覧

 糖尿病治療の目標は、糖尿病による合併症の発症・進展を阻止し、健康な人と変わらない寿命を確保するとともに、高齢化などで増加するサルコペニアやフレイル、認知症、悪性腫瘍などの併発症を予防・管理し、さらには糖尿病患者に対するスティグマや社会的不利益などを取り除き、健康な人と変わらない人生を送っていただくことである。「糖尿病治療ガイド2020-2021」において示されたこの目標は、これからの糖尿病治療のあるべき姿を示している。一方、2020 年に発表された、第4 次「対糖尿病戦略5 ヵ年計画」では、1,000 万とおりの個別化医療構築に向けたアプローチとして、糖尿病治療目標の達成のために重要な目標とその実現に向けたプランが示された。
 日本糖尿病学会では、さらに日本循環器学会と共同で「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」を、日本老年医学会と共同で「高齢者糖尿病治療ガイド2021」を発行するなど、糖尿病治療目標の達成に向けた活動を推進している。
 本書では、このような糖尿病診療に直結する新たな情報を、巻頭トピックスや関連する各項目で取り上げた。さらに、「糖尿病診療ガイドライン2019」において注目された食事療法に関しては、引き続いて2020 年に日本糖尿病学会から報告された「糖尿病患者の栄養食事指導」に関するコンセンサスステートメントも含めて巻頭トピックスとして取り上げている。新型コロナウイルス感染症と糖尿病に関するトピックスも、もちろん含まれている。また、糖尿病の薬物療法に関しては、「糖尿病治療ガイド2020-2021」において新しい作用機序分類として示された、インスリン分泌非促進系、インスリン分泌促進系(血糖依存性と血糖非依存性)に沿った形式に糖尿病治療薬の分類を改めた。また、GLP-1 受容体作動薬とインスリンの併用療法に関して、新しい項目を設けた。
 本書は、糖尿病診療に携わるすべての医療関係者を対象に執筆されたものであり、本書をご覧いただくことで、最新の糖尿病診療をご理解いただけるものと確信している。ご多忙のなか、最新の情報を含めてご執筆いただいた著者の皆様に深謝申し上げるとともに、本書が多くの糖尿病患者の診療に活用されることを願うものである。

2021 年9 月
編集者一同

 2021年はインスリンの発見から100年の記念の年であった.この100年間の糖尿病治療の進歩を振り返る多くの学術集会が開催された.
 死に至る疾病であった1型糖尿病をコントロール可能な疾病に変え続けているインスリンは,いまだにmagic, miracle drugである.一方,ありふれた疾病,2型糖尿病に対しても,必要となれば機を逸することなくインスリン療法を外来診療で施し,速やかに血糖応答を良好にすることが糖尿病治療に熱心な医師にとっては日常茶飯事になってきた.しかし,“インスリンは2型糖尿病治療の最後の手段”と考えている医師も多い.現実に,本邦で130万人もの2型糖尿病患者がインスリン療法を長時間続けざるをえなくなっている.患者は,「2型糖尿病だから経口薬でいいとずっと言われていたのに,結局は1型糖尿病と同じようにインスリン分泌がなくなるのですね」とがっかりしている.軽度であれ高血糖を放置し続けることが内因性インスリン分泌能を低下させる機序が,分子,細胞,動物レベルで,小生らによるものを含めさまざまな研究により次々と証明されてきている.ということは,2型糖尿病患者の長い余生を考慮し,発症直後から,診断直後から,正常血糖応答への復帰を目指し,内因性インスリン分泌を保持し続けるような治療を緻密に継続し,結果的に内因性インスリン分泌を疲弊させないようにすべきであろう.多くの経口糖尿病治療薬が次から次へと開発され,臨床応用され,新たな知見をもたらし続けているが,その大半は,内因性インスリン分泌を活用することにより,効果を発揮しているのだから.
 2型糖尿病の発症機序は一例一例で異なり,かつ各時点で病態は刻々と変動することから,病態生理を正しく読み取り,是正する最適な手段を駆使すべきであり,かつ相乗効果が認められるような併用療法すら考慮に入れて,実践すべきであろう.
 『糖尿病最新の治療』は,2004年より3年ごとに発刊され,文字通り,その時点での最新の治療のあり方,その学問的裏づけなどが詳細に記載されている.小生も「2004-2006年版」から「2010-2012年版」まで編集に携わってきたが,そのつど,どのように項立てし,どなたに執筆してもらうかの判断,決定に長時間要したことを今思い出している.しかし毎回,執筆者の先生方が丁寧に緻密にわかりやすく書いてくださり,読者にも好評であり,執筆者に感謝してきた.
 今回も,各項目にわたって執筆者の熱意が伝わる文面が展開されている.さらに,10ものトピックスが巻頭にまとめられている.いずれも最新の知見であるが,とくに「新型コロナウイルス感染症蔓延の状況下で,いかにして糖尿病患者を守るか」や「“糖尿病”というスティグマに患者が曝されていることを理解し,療養支援すべく,社会や制度の変革を目指して働きかける活動,アドボカシーに注力すべき」といった,喫緊の話題などが注目されるのではなかろうか.

臨床雑誌内科129巻6号(2022年6月号)より転載
評者●順天堂大学 名誉教授 河盛隆造

9784524229963