ほぼ初めての心電図
最初はここからはじまります
著 | : 村川裕二 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-22971-0 |
発行年月 | : 2021年7月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 380 |
在庫
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
正誤表
-
2021年12月03日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
“初めて心電図を学ぶひと”“心電図の勉強を始めたことはあるものの前に進めなかったひと”におくる,とにかくシンプルでやさしい一冊.「正確さ・一貫性・こだわり」はあえて省き,@心臓の動きと心電図波形の関係,A基本的な所見と異常所見の目のつけどころ,B心電図を通した簡単な病態生理,について軽妙な筆致でまとめ,楽しく読み通せる.項目ごとの理解度チェックテスト&心電図の考え方が染み込むための練習問題も収載.
A.心臓の活動と電位
第1章 心電図とは
01 心電図とは何ですか
02 心電図を学ぶときに必要なこと
03 心電図でわかること
04 心電図でわからない情報はどうやって得るのか
05 気圧の変化と電位の変化
06 心電図の電位差
07 心電計と電極
08 心電図のアーチファクト
09 心電図の「視線」
10 12誘導心電図は12 個の波形
11 手足の電極と四肢誘導
12 波形のルール
13 誘導と直交する興奮
14 肢誘導に用いる電極
15 どちらがプラスで,どちらがマイナスか─T,U,Vの3 つの誘導
16 単極肢誘導とは何か─ aVR,aVL,aVFの3 つの誘導
17 なぜ単極肢誘導には“a”の文字があるのか
18 6 つの肢誘導の並び方
19 肢誘導は心臓をどこから見ているか
20 胸部誘導とは何か─追加するのは「水平面」の情報
21 胸部誘導の電極をどこに置くか
22 胸部誘導の電極をそこに置くわけ
23 心電図で見えにくいところ
第2章 心筋細胞の活動はどうなっているか
01 心臓の形
02 心臓の筋肉細胞の興奮─分極と脱分極
03 活動電位の形─分極→脱分極→プラトー相→再分極
04 イオンの動きとその経路(チャネル)
05 イオンの動きの舞台裏
06 心筋のタイプ
07 洞結節は刺激伝導系のリーダー
08 洞結節の活動電位の形─緩徐脱分極
09 房室結節は刺激伝導系のかなめ─心房と心室をつなぐ関所
10 房室結節の性質と特徴
第3章 心電図の基本
01 心電図の横軸と縦軸
02 P 波は心房の興奮
03 右房と左房
04 知っている人は知っている─いびつなP 波の理由
05 P 波と興奮起源
06 P 波の形と病態
07 肺性P 波
08 QRS 波は心室の興奮
09 T 波は心室の再分極
10 心室の活動電位持続時間─QRS 波とT 波の向きが同じわけ
11 U 波
12 PQ 時間
13 QT 時間
14 P 波の幅とQRS 波の幅
15 しつこく,大きなマスと小さなマスのこと
16 測ってみると
17 パラメータで知っておきたい数字
18 心拍数を数える
19 すぐに心拍数を知る方法─その1
20 すぐに心拍数を知る方法─その2
B.基本的な心電図の所見と異常
第4章 脚ブロック
01 心室の刺激伝導系─右脚と左脚
02 右脚ブロックの12 誘導心電図
03 脚ブロックのもつ意味
04 左脚ブロック
05 左脚ブロックの12 誘導心電図
06 右脚ブロックと左脚ブロックを区別するだけなら
07 脚ブロックとST-T 変化
第5章 電気軸
01 心室の電気軸
02 電気軸の正常値
03 第T誘導と第U誘導で軸偏位を知る
04 心室の伝導脚と軸偏位
05 電気軸を知って何の役に立つのか
06 心電図から心臓の形がわかります
第6章 不整脈─期外収縮
01 生理的な心拍数とは
02 不整脈の種類
03 期外収縮はタイミングが早い
04 心房期外収縮と心室期外収縮をどう見分けるか─PAC とPVC
05 心室期外収縮とは
06 期外収縮は危険か
07 QRS 幅が拡大した心房期外収縮もある
第7章 不整脈─徐脈性不整脈
01 徐脈性不整脈とは
02 洞不全症候群と房室ブロック
03 洞不全症候群の3 タイプ
04 ルーベンシュタイン分類U型の洞不全症候群
05 ルーベンシュタイン分類V型の洞不全症候群
06 房室ブロック
07 第1 度房室ブロックのリスク
08 第2 度房室ブロック
09 第3度房室ブロック(完全房室ブロック)と高度房室ブロック
10 房室ブロックを招く薬剤
11 自律神経の2 つのタイプ
12 自律神経と心臓
13 ジギタリスという薬
14 アダムス・ストークス症候群
第8章 不整脈─上室性頻拍
01 頻拍の名前
02 洞頻脈
03 呼吸性洞不整脈
04 発作性上室頻拍
05 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)
06 房室回帰性頻拍(AVRT)とWPW 症候群
07 WPW 症候群の心房細動─偽性心室頻拍
08 心房細動とは
09 心房細動の持続時間と基礎疾患
10 心房細動の診断
11 心房細動だと何が困るか
12 心房粗動
13 見慣れた心房粗動と見慣れない心房粗動
第9章 不整脈─心室性不整脈
01 心室の不整脈のよび方
02 狭義の心室頻拍─単形性心室頻拍
03 特発性心室頻拍
04 QT延長症候群とtorsade de pointes
05 二次性QT 延長症候群
06 心室細動
07 遺伝性の心室細動─ブルガダ症候群
第10章 冠動脈疾患
01 心臓の冠動脈と心拍出量
02 冠動脈の構造
03 狭心症
04 プラークと狭心症
05 狭心症と心筋梗塞
06 急性冠症候群
07 狭心症の心電図
08 労作性狭心症と負荷試験
09 T 波の変化
10 冠攣縮性狭心症
11 急性心筋梗塞のST-T 変化
12 心筋梗塞の領域と心電図変化
13 心筋梗塞の時間経過
第11章 心室肥大
01 均一な肥大と不均一な肥大
02 心室壁の厚さ
03 心室拡大
04 左室肥大のQRS 波
05 左室肥大のST-T 変化
06 左室肥大の心電図
第12章 虚血性心疾患以外のST-T 変化
01 急性心膜炎のST 上昇
02 早期再分極によるST 上昇
C.心電図を読む
第13章 心電図が体に染みこむ練習問題
01 心電図が体に染みこむ練習問題
解答と解説
心電図は永久に消えることのない検査です。
「簡便で・負担がなく・コストも低く・情報が多い」からです。
この本は、「初めて心電図を学ぶ人」と「勉強を始めたことはあるけど前に進めなかった人」を対象にしています。
目的は、「とりあえずのニーズを短い時間でクリアすること」です。
本書は大きく3 つのパートから成り立っています。
A.心臓の活動と電位:第1〜3 章
➡ 心臓の構造と心筋細胞の電気的活動の基本を学び、そこから心電図の成り立ちを理解します。
B.基本的な心電図の所見と異常:第4〜12 章
➡ よく出会う心電図所見を学びます。
C.心電図を読む:第13 章
➡ 心電図の考え方を体に染みこませるための練習問題です。
1 時間では読み通せませんが、5 時間あれば読み通せます。
「正確さ・一貫性・こだわり」を捨てるとは、細かいことにこだわらないということです。
心電図で計測されるパラメータは、測るたびに変化します。
心電図の所見は、判読する人により異なります。
同じ人が読んでも、明日は別な診断になります。
ゆったりした気持ちで歩けば無事にゴールに辿り着けるでしょう。
では、ゆっくりと心電図の世界をお楽しみください。
2021 年7 月
村川裕二
これは全研修医,ナース,そして学生にとって朗報である.本書は心電図の初学者,挫折者にとって,必読の聖書(バイブル)である.親しみやすい導入部から専門的な内容まで,見た目の薄さからは想像できないほど内容は濃く,一度読むと,いつの間にか心電図への苦手意識が消えていることに気づくであろう.そんな魔法のような参考書である.
せっかくだから,少し内容を紹介しよう.本書は,第1章の「心電図とは」から始まり,第2章の「心筋細胞の活動はどうなっているか」,第3章の「心電図の基本」と,最低限のルールを押さえた後,第4章以降,脚ブロック,電気軸,不整脈各論,冠動脈疾患,心室肥大と,まるで海底を遊覧する潜水艦のように徐々に心電図の深みへと潜っていく.ただ,「細
かいことにこだわらなくてOK」という本書の根幹のメッセージどおり,やさしい言葉で書かれているので,読者自身もその深度の変化に気づかずに,戸惑うことなく読み進められるであろう.
個人的に第1章からハートを掴まれた.何を隠そう,私は本書で双極誘導と単極誘導(ホントは単極ではない)の意味,aVR,aVL,aVF の文字の意味を知った.おそらくこのあたりは昔,“典型的な教科書”を読んでしまったばっかりに,退屈で読み飛ばしてしまっていたのかもしれない…….
続く第2章では,挫折の定番“心筋細胞の電気生理とイオンの動き”を,最低限の知識で単純に,しかし過不足なく学ぶことができる.イオンチャネルの本を眠気と戦いながら読んだ研修医の1 ヵ月…….あの努力はいったい何だったのであろうか.
第3章以降も目から鱗が止まらない.P・QRS・T波の成因に始まり,脚ブロックの機序,電気軸の意義を簡単に,しかしポイントを絞って深く解説されている.続く各論,期外収縮,徐脈性不整脈,頻脈性不整脈,ST 変化の機序の解説は,“村川先生節”の効いたわかりやすいたとえが炸裂し,圧巻である.
本書の最大の魅力は,「単純さ」と「深さ」の同居であろう.一般的に参考書というものは,単純さを追求すればとっつきやすくなるものの,深い理解が得られなくなり,また深さを追求すれば,正確な知識が得られる反面,挫折する読者も増える.この一見相反する特徴が,絶妙なバランスで見事に同居した参考書は,本書以外に思い当たらない.一冊読み終わる頃には,心電図を苦手と感じていた初学者も,心電図が好きになり得意分野となっているに違いない.こんなに濃い内容とユーモアに溢れる参考書はあるだろうか.毎年,桜が咲く頃,キミドリ色をした研修医,ナース,学生に勧めてみよう.
臨床雑誌内科129巻4号(2022年4月号)より転載
評者●日本大学医学部内科学系循環器内科学分野 准教授 永嶋孝一