フィジカルアセスメントと画像の図鑑
監修・編集 | : 後藤順一 |
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編集 | : 金井信恭/吉田拓生 |
ISBN | : 978-4-524-22968-0 |
発行年月 | : 2022年12月 |
判型 | : AB |
ページ数 | : 256 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
症状・患者さんの訴えからケアや病態の把握に必要なフィジカルアセスメントを引ける,頻度の高い101疾患を網羅した図鑑.ケアの開始や,急変時や患者さんの訴えがあったときに有用なフィジカルアセスメントだけでなく,画像検査も疾患ごとに見開きで紹介しており,フィジカルアセスメントと画像所見を繋げて理解することができる.初学者からエキスパートまで満足の1冊.
症状から引く索引
正常画像一覧
頭部&頸部
001 くも膜下出血
002 脳梗塞
003 被殻出血
004 皮質下出血
005 小脳出血
006 視床出血
007 橋出血
008 正常圧水頭症
009 単純ヘルペス脳炎
010 慢性硬膜下血腫
011 急性喉頭蓋炎
012 頸動脈狭窄症
胸部(呼吸器など)
013 胸 水
014 無気肺
015 肺気腫(COPD)
016 細菌性肺炎
017 ニューモシスチス肺炎
018 COVID-19
019 誤嚥性肺炎
020 間質性肺炎
021 ARDS
022 肺結核
023 肺血栓塞栓症
024 肺がん
025 気 胸
026 特発性縦隔気腫
027 食道破裂
028 乳がん
心大血管
029 心筋梗塞
030 たこつぼ型心筋症
031 心筋炎
032 感染性心内膜炎
033 心タンポナーデ
034 うっ血性心不全
035 大動脈弁狭窄症
036 大動脈弁逆流症
037 僧帽弁逆流症
038 僧帽弁狭窄症
039 急性大動脈解離
040 腹部大動脈瘤破裂
腹 部
041 腹 水
042 便秘症
043 上腸間膜動脈閉塞症
044 急性肝炎
045 肝硬変
046 肝細胞がん
047 総胆管結石,胆管炎
048 急性胆嚢炎
049 急性膵炎
050 膵臓がん
051 脾 腫
052 腸閉塞
053 上部消化管穿孔
054 下部消化管穿孔
055 上部消化管出血
056 下部消化管出血
057 腹膜炎
058 胃がん
059 大腸がん
060 急性腸炎
061 急性虫垂炎
062 腸重積
063 アニサキス症
064 鼠径ヘルニア
泌尿生殖器
065 水腎症
066 尿管結石
067 腎盂腎炎
068 腎がん
069 膀胱がん
070 精巣捻転
071 子宮筋腫
072 子宮がん
073 卵巣腫瘍茎捻転
074 異所性妊娠(子宮外妊娠)
整形&外傷
075 頭蓋骨骨折
076 硬膜外血腫
077 急性硬膜下血腫
078 頸髄損傷
079 頸椎骨折
080 外傷性血気胸
081 緊張性気胸
082 肋骨骨折
083 フレイルチェスト
084 肝損傷
085 脾損傷
086 腎損傷
087 腰椎損傷
088 骨盤骨折
089 肩関節脱臼
090 股関節脱臼
091 開放骨折
092 大腿骨頸部骨折
093 骨髄炎
その他
094 末梢動脈閉塞
095 深部静脈血栓症
096 尿道カテーテル閉塞
097 脱水症
098 気管チューブの位置異常
099 CVCの位置異常
100 異物誤飲
101 異物挿入
付 録
1.基本的フィジカルアセスメント手技
2.患者が訴える症状とその原因
患者から「頭が痛い」という訴えを聴いたことはないだろうか.その際にはどのように患者をアセスメントしているだろう.頭痛の訴えを聴いて,バイタルサインである血圧,脈拍,呼吸,体温,SpO2の測定を行うのが常である.その後,何を考え行動するだろうか.医師へ報告し指示をもらうことも一つの方法かもしれない.しかし,次の方法はどうだろう.患者の訴えをよく聴き,頭痛とともに随伴している症状を把握する.それらの症状の性状や関連する動作・時間などを聴き出す.また看護師の五感を用いて,患者を診て,患者から発せられる音を聴き,患部を手で触り,その触っている手の感触と押す程度での反応を確認し,軽く叩いたときの音と,その反応を確認する.これら,いわゆるフィジカルアセスメントである.
このフィジカルアセスメントは,現場で行われるべき看護技術の一つである.しかし,フィジカルアセスメントは,看護師が最も修得に苦労する技術の一つとも言える.なぜなら,修得には多くの経験が必要である.例え看護師20年のキャリアであったとしても,このフィジカルアセスメントを使用した経験が少なければ,そのアセスメントは未熟である.逆に看護師年数が少なくても,日々の業務で,フィジカルアセスメントを駆使している看護師のアセスメントは,大きな信頼となりうる.さらにフィジカルアセスメントは,単に観察技術だけではなく,患者に触れることにより,「安心感」や「癒やし」を同時にもたらすことができる.看護は「手と目でみて(看)観察し見守る(護)」という「手」と「目」という漢字から成り立ち,患者の肌に触れることが大切であることを先人から伝えられてきた.フィジカルアセスメントを駆使する看護師は,より患者に近く,安心を与え,より異常の発見に長けた存在となりうると言える.
数年前,韓国ドラマの『宮廷女官チャングムの誓い』というドラマを観て驚いたことを今でも思い出す.主人公であるチャングムは宮廷の医官であり,患者の肌と脈拍に触れ,観察をしただけで病名を当てる.ドラマという脚色はあれども,当時の医官はこのような手法で患者の病態を把握し治療を行っていたことを知った.現代において,医療は進歩しており,神業的な医業を行わなくても,多くの検査により疾患や病態を判断できるようになった.また,電子カルテ化により画像診断も進歩している.看護師には無縁であった画像診断が,ますます身近なものとなり,さらに10年後の未来には今よりもさらに進歩していることは事実だろう.このような現代においても,フィジカルアセスメントがなお学び続けられているのは,患者を把握するための最初の技法はやはりフィジカルアセスメントであり,その判断で患者診療と治療の舵取りがなされている.これら先人から伝わるフィジカルアセスメントと,現在の画像診断の知識を看護師が学習することで,より効果的な看護アセスメントへと繋げられるのではと考えている.
本書は看護師に診断する能力をつけるわけではない.しかし,見えない疾患に対して,盲目的にケアを行うのではなく,しっかりとしたアセスメントと患者の病態予測の上で,看護ケアに繋げてほしいと考えている.そのために,本書では,患者の訴え,症状,疾患で索引が分けられている.それぞれの状況に応じてこの本を活用し,学習していただきたい.
最後に,金井先生,吉田先生には,医学的観点からていねいな医学指導と資料提供をしていただきましたことに心から感謝します.さらに,貴重な資料をご提供してきただいた上,ご執筆いただきました諸先生方,本書の制作に加わっていただきましたスタッフの皆様方に厚く御礼を申し上げます.
2022年11月吉日
社会医療法人河北医療財団 河北総合病院
急性・重症患者看護専門看護師
後藤 順一