書籍

入門 ケースから学ぶ循環器集中治療ドリル

明日の診療に役立つキホンと実践

監修 : 日本集中治療医学会
編集 : 佐藤直樹/伊藤智範/澤村匡史/田原良雄
ISBN : 978-4-524-22928-4
発行年月 : 2022年4月
判型 : A5
ページ数 : 212

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

心臓血管系の集中治療・管理を最前線で行っている日本集中治療医学会(CCU)委員会メンバーが中心となり,「重症心不全管理」「補助循環装置」「体温管理療法」「他科との連携」に関する実症例からクイズを出題し,循環器集中治療のキホンと実践を考えながらたのしく学べるよう解説した入門書.コラムでは「新規の心不全治療薬」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とECMO」等を取り上げ,いまの循環器集中治療を学びたい若手医師に役立つ一冊.

第T章 重症心不全管理
1.これだけは知っておきたい! 重症心不全管理の基本
2.case とクイズで学ぶ重症心不全管理の実践
 @血行動態評価
  症例1/Q1
  Q1 の答え・解説
  症例2/Q2
  Q2 の答え・解説
 A重症心不全におけるNPPV の限界と気管挿管のタイミング
  症例3/Q3
  Q3 の答え・解説
  症例4/Q4
  Q4 の答え・解説
 B急性心筋梗塞の機械的合併症の適切な診断・治療法
  症例5/Q5
  Q5 の答え・解説
  症例6/Q6
  Q6 の答え・解説
 C最近のトルバプタン使用例
  症例7/Q7
  Q7 の答え・解説
3.完全攻略! 重症心不全管理の総まとめ
 
第U章 補助循環装置
1.これだけは知っておきたい! 補助循環装置の基本
2.case とクイズで学ぶ補助循環の実践
A.ECMO
 @カニューレ挿入側に順行送血を行ったが下肢虚血を回避できなかった1 例
  症例8/Q8
  Q8 の答え・解説
 A急速な右心系優位の血行動態悪化を呈し,両心補助循環装置装着により救命できた劇症型心筋炎の1 例
  症例9/Q9
  Q9 の答え・解説
B.Impella®
 @Impella® 時代のVA‒ECMO[経皮的心肺補助装置(PCPS)],大動脈内バルーンポンプ(IABP)の立ち位置
  症例10/Q10‒@,A
  Q10‒@の答え・解説
  Q10‒Aの答え・解説
 AImpella® 導入における疑問〜適切なサイズの選択と有効性〜
  症例11/Q11
  Q11 の答え・解説
  症例12/Q12
  Q12 の答え・解説
3.完全攻略! 補助循環装置の総まとめ
 
第V章 体温管理療法
1.これだけは知っておきたい! 体温管理療法の基本
2.case とクイズで学ぶ体温管理療法の実践
 @済生会熊本病院における体温管理療法〜体表クーリングデバイスおよび血管内クーリングデバイスの管理
  症例13‒@〜B/Q13‒@,A
  Q13‒@の答え・解説
  Q13‒Aの答え・解説
 A敗血症における体温管理:ECMO 使用症例
  症例14/Q14
  Q14 の答え・解説
 B獨協医科大学病院における体温管理療法
  症例15/Q15
  Q15 の答え・解説
 C大阪市立総合医療センターにおける体温管理療法〜救急外来と集中治療室のシームレスな連携
  症例16/Q16
  Q16 の答え・解説
3.完全攻略! 体温管理療法の総まとめ
  
第W章  他の専門医との連携を要する循環器系集中治療管理
1.これだけは知っておきたい! CCU における循環器関連診療科との連携〜循環器内科医の立場から
2.これだけは知っておきたい! CCU における他の診療科との連携〜集中治療医の立場から
3.case とクイズで学ぶ他の診療科との連携の実践
 @消化管出血:オフポンプ冠動脈バイパス(off pump CABG)後に消化管出血により心停止した1 例
  症例17/Q17
  Q17 の答え・解説
 A急性期脳卒中(脳出血・脳梗塞):急性心筋梗塞後に脳血管障害を合併した1 例
  症例18/Q18
  Q18 の答え・解説
 B非閉塞性腸管虚血(NOMI)の診断と治療のタイミングに苦慮した1 例
  症例19/Q19
  Q19 の答え・解説
 
Column
1.循環器系集中治療室における心肺機能評価
2.新規の心不全治療薬
3.急性心筋梗塞の合併症対策
4.新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)とECMO
5.心肺蘇生後症候群(PCAS)トレーニング
6.循環器救急および循環器集中治療の現状と今後の課題
 
付 録
@日本心臓病学会学術集会でのアンケート・回答集
A意識スケール(JCS,GCS,NIHSS,CPC)

 『入門 ケースから学ぶ循環器集中治療ドリル―明日の診療に役立つキホンと実践』(以下,本書)は,2018 年9 月に開催された第66 回日本心臓病学会学術集会(会長:増山理先生,現星ヶ丘医療センター院長)の会長特別企画『ケースに学ぶセッション;心臓血管系の集中治療』をベースに企画したものです.このセッションは,若手医師が症例を提示し,その症例について日本集中治療医学会CCU 委員会のメンバーと議論しながら,循環器集中治療の重要なポイントを共有するという趣旨で行われました.当日の学術集会会場の盛況さとその後の反響から,会場で聴講していた南江堂編集部より,是非ともこのセッションを本にしたいとご提案いただき,本書を刊行する運びとなりました.
 本書はこのセッションを踏襲しつつ,全体を大きく「重症心不全管理」「補助循環装置」「体温管理療法」「他科との連携」の4 章にテーマ分けしました.各章のテーマごとに,@キホン知識をまとめた「これだけは知っておきたい!〇〇」,Aセッションで発表された症例を提示し,その症例についてのオリジナルクイズと解説を加えた「症例提示,クイズ&解説」,B知識の総仕上げとして「完全攻略!〇〇の総まとめ」,という基本構成で解説しています.とくにAは,当時の演者本人を症例提示の執筆者に迎え,CCU委員会のメンバーが中心となりクイズと解説を作成した,オリジナリティに溢れた内容です.実際の症例と経過,治療内容について臨場感をもって学べるとともに,クイズ形式で楽しみながら循環器集中治療のキホンと実践を身につけていただける,今までにないものとなっているかと思います.
 会長特別企画として『ケースに学ぶセッション;心臓血管系の集中治療』をご提案いただけなければ本書は世に出なかったことになりますので,増山先生はまさに本書の生みの親です.この場を借りて心より深謝申し上げます.
 また,このようなチャンスをいただけたのは,歴代の日本集中治療医学会CCU 委員会の皆様のご尽力の賜物と敬意を表する次第です.ここに名簿を掲載し感謝を申し上げます.

2022 年3 月吉日
編集者を代表して
国立循環器病研究センター 田原良雄

 本書は2018年に開催された第66回日本心臓病学会学術集会(会長:増山理先生,現 西宮渡辺心臓脳・血管センター)の会長特別企画「ケースに学ぶセッション:心臓血管系の集中治療」の内容をベースに,日本集中治療医学会の監修で発行された書籍である.
 循環器疾患では刻々と血行動態が変化することから,適切な検査と迅速な治療判断が必要で,選択やタイミングを誤ると病態が悪化することも少なくない.したがって,良好な結果を導くには,エビデンスに基づいた診療に加え,経験を積むことが欠かせない.
 本書の帯には「実臨床での対応力はケースを通して培われる」と書かれているが,本書はまさにそういった場を提供するためのものといえる.症例を集めた書籍は多く出ているが,本書は現在の循環器集中治療における疑問に答える,より実践的な内容となっている.
 まず,テーマとしては「重症心不全管理」「補助循環装置」「体温管理療法」「他の専門医との連携を要する循環器系集中治療管理」の四つが選ばれている.重症心不全管理については,心不全パンデミックといわれる時代において心不全はいまやありふれた疾患となったが,病態に基づいた正しい治療が求められ,新しい心不全治療薬の知識が必要となる.補助循環装置については,Impella®をはじめとするさまざまな装置の知識が必要である.体温管理療法については,最新の知見に基づいた管理方法を理解しなくてはならない.専門医との連携については,集中治療ではさまざまな専門医が連携してチーム医療を行う必要がある.これらはいずれも,現在の循環器集中治療の実践において欠かせない知識である.
 本書では,テーマごとの基本的事項の解説に加え,実際の症例が合併症を含めて提示される.症例に基づいたクイズもあり,治療経過を含めた丁寧な解説により臨場感をもちながら読み進めることができる.多くの章の最後にはまとめが記載されており,知っておくと役に立つ知識はColumnで解説されている.読み進めていくにつれ,日本集中治療医学会の先生方とケースカンファレンスを行っているかのような気分になり,知識と実践力が自然とついてくる.大変読み応えのある本だが,読む際に留意していただきたい点が二つある.
 一つは,クイズの問題と解答が見開きになっている箇所があるという点である.意志の弱い私は問題を解く前につい解答をみてしまいがちであるが,読者の皆様にはページごとに(まずは解答をみずに)読むことをお勧めする.
 もう一つは,実際のカンファレンスではないので,心エコー図や血管造影などの画像は静止画のみという点である.webなどで別途動画や拡大像などを閲覧できれば,さらに臨場感を得られるのではないかと思う.
 本書は循環器集中治療を実際に行っている若い先生方にとって,知識と実践力をつけるための良書である.また,エビデンスや治療法は日々更新されていくので,ぜひ続編を期待したい.

臨床雑誌内科130巻6号(2022年12月号)より転載
評者●船橋市立医療センター 救命救急センター長 角地祐幸

 心臓血管外科手術後の急性期管理の重要性はいうまでもなく,その管理のよしあしが手術成績に反映するといっても過言ではない.手術対象患者が高齢化,重症化した現在では,手術後のいろいろな局面でその対処法に迷うことは多い.近年では多数の呼吸循環管理に関する書物が刊行され,諸兄も参考にされてこられたかと思う.それでもこの領域は,新たな循環呼吸動態指標や薬剤など日進月歩の領域であり,常に知識をアップデートしなければならない.そういった最新の情報をコンパクトにまとめ,かつ携帯しいつでも繙ける,したがって質の高い心血管集中治療を提供するための必携の書,それが本書である.
 本書は,2018年9月に開催された第66回日本心臓病学会学術集会の会長特別企画「ケースに学ぶセッション:心臓血管系の集中治療」(若手医師が症例を提示し,その症例について日本集中治療医学会CCU委員会のメンバーと議論しながら循環器集中治療の重要なポイントを共有するという趣旨のセッション)をベースに企画された.本書の構成は,「重症心不全管理」「補助循環装置」「体温管理療法」「他科との連携」に分かれており,それぞれの項目が,@基本知識をまとめた「これだけは知っておきたい! ○○」,A学会で発表された症例を提示し,その症例についてのクイズと解説を加えた「症例提示,クイズ&解説」,B知識の総仕上げとして「完全攻略! ○○の総まとめ」という構成になっている.Aの症例提示では19例が提示されているが,読者はほぼすべての症例と類似した症例を経験されていると思う.そういった症例に関する基礎知識・アップデートな情報などがまとめてあるので,一読すればまさに生きた知識となるであろう.また,各章の最後にコラムが付記されている.@循環器系集中治療室における心肺機能評価,A新規の心不全治療薬,B急性心筋梗塞の合併症対策,C新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とECMO,D心肺蘇生後症候群(PCAS)トレーニング,E循環器救急および循環器集中治療の現状と今後の課題,以上の6つのコラムが各章の最後に掲載されているが,どれも最新の知識と今後の方向性など示唆に富む内容になっているので,このコラムだけでも通読する価値がある.
 本書には多数のケーススタディが含まれているので,読者がこれからの臨床で似通った症例に遭遇した場合,今一度読み返すことにより,より病態に対する理解が深まり治療法の一助になるであろう.このような構成の成書は少なく,これからシリーズ化されるとよいかもしれない.
 本書の帯には,この企画の元となった日本心臓病学会の学会長・増山理先生の“一症例一病型.実臨床での対応力はケースを通して培われる!!”との言葉が掲載されている.当然のことではあるが,まさに真理である.このようなテキストを手元におき,症例を経験するたびに参照し,その経験を深めることが,臨床医としての真の実力を身につける唯一の方法であり王道であろう.
 私事ではあるが,現在,術後の管理はスタッフに任せているが,筆者も密かにこのテキストで最新の循環管理を学び,明日から鋭い指摘ができるようにしたいと思う.

胸部外科76巻5号(2023年5月号)より転載
(琉球大学胸部心臓血管外科教授・古川浩二郎)

9784524229284