思考プロセスと実践をミニマムにまとめました 循環器診療エッセンシャル
編著 | : 永井利幸 |
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ISBN | : 978-4-524-22884-3 |
発行年月 | : 2022年3月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 280 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
要領よく情報を得たいという若手読者のニーズに適った一冊!“これさえ理解していれば診療に困らない・大失敗を避けられる”……そんな,研修医が知っておきたい循環器診療の基本知識,考えかた,実践法を,日本の臨床現場に即した内容のみに絞ってポケットサイズに凝縮しました.指導医の思考プロセスが一目でわかる「ミニマム診断・治療チャート」や,おススメしたい「必読文献」,付録には「当直中に必須の循環器治療薬一覧」も収載.コンパクトながら大充実の内容.
T 診断編:問診のコツとエビデンスを踏まえた検査計画
A.有症状での受診
1. 胸痛
2. 動悸
3. 呼吸困難
4. ショック
5. めまい・失神
6. 間欠性跛行・四肢痛
7. 浮腫
B.無症状・検査異常での受診
1. 心電図異常(不整脈以外)
2. X 線異常
3. 心雑音・心機能低下
U 治療編:エビデンスを踏まえた治療アプローチ
1. 心停止
2. ショック
3. 急性冠症候群
4. 急性心不全
5. 心室期外収縮・心室頻拍・心室細動
6. 上室頻拍(心房細動,心房粗動以外)
7. 心房細動・心房粗動
8. 徐脈性不整脈
9. 急性心筋炎
10. 急性大動脈解離
11. 大動脈瘤
12. 急性肺血栓塞栓症
13. 慢性冠症候群
14. 慢性心不全:@ HFrEF(LVEF≦40%)
15. 慢性心不全:A HFmrEF(LVEF 41〜49%),HFpEF(LVEF≧50%)
16. 重症心不全
17. 弁膜症
18. 肥大型心筋症
19. 心臓サルコイドーシス
20. 心アミロイドーシス
21. Fabry 病
22. 感染性心内膜炎
23. 心膜疾患
24. 肺高血圧症
25. 閉塞性動脈硬化症
付録 当直中に必須の循環器治療薬一覧
巻頭言
最近ふと自分のルーツについて考えた際、研修医時代を思い出した。医師になったのは約20 年前のことであるが、今考えると恥ずかしいくらい情報の整理が苦手であった。特に循環器内科をローテートした際は、覚えておくべきエビデンス・知識が多すぎて、よりその傾向が顕著であった。そのため、症例プレゼンテーションでは患者の臨床状態を上級医に報告するたびに極度の緊張に襲われ、自分の知識不足もしっかり露呈されていたことを強烈に記憶している。そんな時、圧倒的な臨床力と豊富な知識でカンファレンスを沸かせていた指導医に、「先生はどのようにして情報を整理しているのですか?」とお聞きしたところ、「僕は患者さんを診て何か思ったその瞬間に根拠となる論文を検索し、特に臨床現場にパラダイムをもたらした論文はリストするようにしている。そして研修医の先生に質問された時には必ず根拠を示すようにしているのだよ」と、その秘訣を教えてくださった。
確かに、臨床研修において最も重要なことは、患者さんの診療に全力で取り組み、常に“今行っているプラクティスは最新・最善なのか?”と自問自答しながら、耳学問を鵜呑みにせず、可能な限り自分の目で根拠となる情報を調べることで、診療に役立つ情報を活きた知識として吸収していくことであろう。
本書は、もし時間を過去に戻せるのであれば、自分自身が研修医として循環器内科をローテートした際にこんな本があれば良いなあという想いで編著に臨ませていただいた。研修医向けのハンドブックは数多あるものの、本書の特徴は、@指導医のアタマの中(思考プロセス)が一目でわかるミニマム診療チャートを提示したこと、A“ 現在エビデンスが確立されて既に決まりきっている”、“これさえできれば診療に困らない・大失敗を避けられる”という知識や対応に絞ったこと、B研修中におさえておくべき必読文献を検索しやすいようにPMID 付きで紹介したこと、である。そして、本書の要である執筆陣には循環器診療のGeneralist そしてSpecialistとして活躍されている全国気鋭の先生方にお願いし、循環器内科研修で役立つTips を情熱の魂とともにふんだんに盛り込んでいただき、情報過多なハンドブックと一線を画した、研修医にとって真に実践的な書籍に仕上げることができたと確信している。本書が循環器内科を研修するすべての医師にとってお役に立てば幸いである。
最後に、度重なる原稿校正に快く応じてくださった執筆陣の先生方、そして本書の企画段階から、編集者のこだわりに最後までお付き合いいただいた株式会社南江堂編集部の平野 萌氏、松家智子氏に深謝申し上げたい。
2022 年2 月吉日
永井 利幸
今回,北海道大学循環病態内科学 永井利幸 准教授の編集による書籍『思考プロセスと実践をミニマムにまとめました:循環器診療エッセンシャル』が南江堂から出版された.書評を書かせていただく機会を得たため,推薦の言葉をお届けする.
本書の第T章「診断編:問診のコツとエビデンスを踏まえた検査計画」では,有症状,無症状(健康診断結果で来院に相当)に分けての診断方法の解説,第U章「治療編:エビデンスを踏まえた治療アプローチ」では,25項目の病態や疾患名に関する治療方法の解説がなされ,付録として「当直中に必須の循環器治療薬一覧」があり,3部構成となっている.
本書の最大の特徴は,「思考プロセスと実践をミニマムにまとめました」との書名どおり,各項目の冒頭頁に診断もしくは治療に関して,各項目の具体的な思考プロセスと実践方法をミニマムチャートを用いて非常にわかりやすく簡潔に示されている点にある.さらにミニマムチャートに引き続き,臨床の最前線で活躍されている新進気鋭の循環器医師が体得している臨床上着眼すべきポイントがエッセンスとして示されている.これは循環器疾患を主訴として来院した症例の臨床診断や治療内容を決定していくうえで大変参考になる.そのうえ,検査所見やさまざまな重要事項などの情報に関して,色調を変え,図表を多用して具体的に掲載されており,無味乾燥な教科書と異なり,非常に視覚的にも読みやすいものとなっている.また,本書には近年の必読文献が要所要所に示されており,さらにみずから勉強し知識を深めたいときに有用な情報が提示されている.
本書は臨床の場で,医学生,初期研修医から,一般診療や救急診療に携わる開業医,内科医,総合診療医,救急医はもちろん,ベテラン循環器医まで幅広く利用できる,非常に実践的な書物であることを断言する.サイズは白衣やスクラブのポケットに入る程度のコンパクトな書籍であるが,内容は本書の帯に書かれた「とにかく“ぎゅっ”と凝縮しました」のキャッチフレーズのとおり,非常に有用かつ豊富な知識がふんだんに詰め込まれている.当直時の枕元に置く必携の一冊としてももちろん有用であるが,小生はカンファレンス時の若手医師に対する教育上のtipsとしても多用させていただくつもりである.
臨床雑誌内科130巻3号(2022年9月号)より転載
評者●順天堂大学医学部附属静岡病院救急診療科教授 柳川洋一