教科書

シンプル理学療法学・作業療法学シリーズ

基礎運動学テキスト

監修 : 細田多穂
編集 : 藤縄理/濱口豊太/金村尚彦/阿南雅也
ISBN : 978-4-524-22861-4
発行年月 : 2025年3月
判型 : B5判
ページ数 : 304

在庫あり

定価5,610円(本体5,100円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

リハビリテーション養成課程の学生に必要な運動学のエッセンスを解説.わかりやすい解説,豊富な図表,臨床につながる内容を紹介したコラムなど,初学者がイメージして学べるよう工夫を凝らした一冊.

第T部 運動学の基礎
1 運動学とリハビリテーション
A 運動学とはどのような学問か
B 運動のとらえ方
 @物理学的視点
 A解剖学的視点
 B生理学的視点
 C運動学的視点
C 理学療法・作業療法・言語聴覚療法における運動学の重要性
D 人間の行動と姿勢,運動,動作,行為
 @姿 勢
 A運 動
 B動 作
 C行 為
E 骨と関節の運動の分析
 @骨運動学
 A関節運動学
 B骨の動きと関節副運動
 C運動学と理学療法・作業療法・言語聴覚療法評価

2 生体力学
A 物体の運動
 @物体に働く力
 Aニュートンの運動法則
 B重力と体重心
 C変位,速度,加速度
 D力のモーメント
 E平衡条件
B 身体の運動
 @体重心
 A身体に作用する力
 Bバランスの安定性
 C身体におけるテコ
 Dどのように関節運動が生じるか?
 Eどうやって体重心移動が生じるか?
C 身体運動の量・能力
 @仕 事
 Aパワー(仕事率)
 B力学的エネルギー

3 神経筋骨格系の機能
A 関節の構造と機能
 @関節の形態と種類
 A関節運動の種類
 Bクリニカルリーズニング
B 筋の構造と機能
 @骨格筋の構造
 A神経筋伝達と神経筋接合部
C 筋収縮のしくみと筋出力のメカニズム
 @筋収縮と筋線維タイプ
 A筋肥大と筋萎縮
D 運動における神経系の機能
 @ニューロン(神経細胞)とシナプス
 A中枢神経系
 B末梢神経

4 運動と呼吸・循環・代謝
A 運動のためのエネルギー供給機構
 @酸素運搬系
 A骨格筋収縮のエネルギー供給機構
B 運動と呼吸
 @呼吸系の機能
 A運動時の換気
 B有酸素性運動と無酸素性運動
 C運動負荷試験
C 運動と血液ガス
 @血液でのガス運搬
 A酸素解離曲線
D 運動と循環
 @循環系の機能
 A心拍出量と心拍数の関係
 B運動中の血流再配分
 C運動中の動脈血圧変化-運動様式の違い
E 運動と体温
 @体温調節
 A運動中の体温
F トレーニング効果
 @各種トレーニング方法
 A持久性トレーニングの効果

第U部 運動の構造と機能
5 顔面の運動,咀嚼・嚥下
A 機能解剖
 @顔 面
 A口 腔
 B咽 頭
 C喉 頭
B 運 動
 @顔面の運動
 A下顎の運動
 B嚥 下
C 運動に作用する筋
 @表情筋(顔面筋)
 A咀嚼筋,舌骨上筋
 B舌 筋
 C咽頭筋
 D喉頭筋
D 咀嚼機能
E 嚥下機能
 @期と相
 A嚥下に関与する神経機構
 B嚥下と呼吸の関係

6 頭部と脊柱の運動
A 機能解剖
 @頭部と脊柱を構成する要素
B 骨運動学
C 関節運動学
 @頭・頸部,脊柱の関節副運動
D 運動に作用する筋
 @頭・頸部の運動
 A脊柱の運動
7 胸郭と呼吸運動
A 呼吸とは
 @内呼吸と外呼吸
 A換気力学
B 機能解剖
 @胸郭と腹部の構造
 A胸郭の関節構造
C 胸郭と腹部の運動
D 吸気筋と呼気筋
 @吸気筋  A呼気筋

8 肩複合体の運動
A 機能解剖
 @肩複合体のアライメント
 A肩複合体を構成する関節
 B肩複合体の靱帯
 C回旋筋腱板
B 骨運動学
 @胸鎖関節の運動
 A肩鎖関節の運動
 B肩甲上腕関節の運動
 C肩甲上腕リズム
C 関節運動学
 @胸鎖関節運動時の関節副運動
 A肩鎖関節運動時の関節副運動
 B肩甲上腕関節運動時の関節副運動
D 運動に作用する筋
 @肩甲骨の運動と筋
 A肩甲上腕関節

9 肘・前腕の運動
A 機能解剖
 @ 肘を構成する関節
 A 前腕を構成する関節
 B 肘関節,前腕の靱帯
 C 肘関節のアライメント
B 骨運動学
 @ 肘関節の運動
 A 前腕の回内と回外
C 関節運動学
 @ 屈伸運動時の関節副運動
 A 回内・回外運動時の関節副運動
D 運動に作用する筋
 @ 肘関節
 A 前 腕

10 手・手部の運動
A 機能解剖
 @手関節
 A手指の関節
 B手・手指の靱帯
 C手のアーチ
B 骨運動学
 @手関節の運動
 A手指の運動
C 関節運動学
 @手関節
 A中手指節関節(MP関節)
 B指節間関節(IP関節)
D 運動に作用する筋
 @手関節の筋・腱
 A手内筋(内在筋)
 B手外筋(外在筋)
11 骨盤・股関節の運動
A 機能解剖
 @骨盤を構成する関節
 A股関節
B 骨運動学と関節運動学
 @骨盤の運動
 A仙腸関節の運動
 B股関節の運動
C 運動に作用する筋
 @股関節

12 膝関節複合体の運動
A 機能解剖
 @膝関節複合体を構成する関節
 A膝関節の靱帯
 B膝関節のアライメント
 C膝蓋骨の機能
B 骨運動学
 @膝関節の運動
 A下腿の回旋
C 関節運動学
 @屈伸運動時の関節副運動
 A終末強制回旋運動
D 運動に作用する筋
 @膝関節の屈曲
 A膝関節の伸展
 B下腿の回旋

13 下腿,足部・足関節の運動
A 機能解剖
 @下腿,足関節を構成する関節
 A足部を構成する関節
 B下腿・足関節・足部の靱帯
 C足のアーチ
B 骨運動学
 @下腿・足関節の運動
 A足部の運動
C 関節運動学
 @下腿・足関節の運動
 A足部の運動
D 運動に作用する筋
 @外在筋と内在筋
 A足関節,足部の運動に作用する筋

第V部 運動学の応用
14 感覚と運動
A 感覚と運動の基本事項
 @運動に関する基本事項
 A感覚に関する基本事項
B 感覚と運動の相互作用
 @視覚と運動
 A体性感覚と運動
 B前庭感覚と運動
C 運動学習
 @運動学習とは
 A運動学習理論
 B運動学習の3段階
 Cフィードバック
 D学習の方法
 E学習過程に影響する要因

15 運動発達と姿勢反射
A 運動発達
 @正常運動発達
 A運動発達指標
B 運動発達と姿勢反射
 @姿勢の成り立ち
 A姿勢反射の分類
C 姿勢反射の評価方法
 @原始反射
 A立ち直り反応
 B平衡反応
D 姿勢反射と運動発達
 @ミラーニチャートによる運動発達評価

16 姿勢と姿勢制御
A 姿勢と姿勢制御の定義
 @姿勢の定義と立位姿勢
 A姿勢制御の定義
B 姿勢制御の理論的背景
 @反射階層理論
 Aシステム理論
C 静的バランスと動的バランス
 @安定と不安定
 Aバランス機構
 B姿勢制御の運動戦略
 C姿勢制御に対する感覚機構
D 予測的姿勢制御
 @予測的姿勢制御とは
 A予測的姿勢制御の特徴

17 基本動作と歩行
A 基本動作の種類
B 基本動作分析の流れ
C 基本動作分析の実際
 @寝返りの分析
 A起き上がりの分析
 B立ち上がりの分析
D 歩  行
 @歩行分析における用語
 A歩行周期
 Bロッカー機能
 C体重心の移動
 D床反力
 E関節の変化
 F関節モーメントと関節パワー
 G筋活動
 H歩行の決定要因

18 身体運動分析
A 身体運動分析法総論
 @身体運動を測る
 A分析方法の種類
 Bその他の分析方法
B 床反力計,三次元動作解析装置による分析法
 @床反力計による分析
 A三次元動作解析装置による分析
 B床反力計と三次元動作解析装置を組み合わせた分析
C モーションセンサーによる分析法
 @ジャイロ・加速度センサーによる分析
D 筋力測定装置による分析法
 @トルクマシンによる分析
E 筋電図計による分析法
 @筋電図計による分析

学習到達度自己評価問題 解答

参考図書

索 引

監修のことば
 近年,高齢社会を迎え,理学療法士・作業療法士の需要が高まっている.したがって,教育には,これらを目指す学生に対する教育の質を保証し,教育水準の向上および均質化に努める責務がある.

 その一方で学生には,学習した内容を単に“暗記する”だけでなく,“理解して覚える”ということが求められるようになってきた.そのため講義で学んだ知識・技術を確実に理解できる新しい形の教科書として,理学療法領域の専門科目を網羅した「シンプル理学療法学シリーズ」が刊行された.

 そして,このたび,このシリーズと同じ理念のもとに理学療法士・作業療法士の共通基礎科目の教科書シリーズとして「シンプル理学療法学・作業療法学シリーズ」が刊行される運びとなった.

 編集にあたっては,「シンプル理学療法学シリーズ」と同様に以下の5 点を特徴とし,これらを過不足のないように盛り込んだ.

1 . 理学療法・作業療法の教育カリキュラムに準拠し,教育現場での使いやすさを追求する.
2 . 障害を系統別に分類し,障害を引き起こす疾患の成り立ちを解説した上で,理学療法・作業療法の基礎的なガイドラインを提示する.このことにより,基本的な治療原則を間違えずに,的確な治療方法を適応できる思考を養えるようにする.
3 . 実際の講義に即して,原則として1 章が講義の1 コマにおさまる内容にまとめる.さらに,演習,実習,PBL(問題解決型学習)の課題を取り込み,臨床関連のトピックスをラム形式で解説する.また,エビデンスについても最新の情報を盛り込む.これらの講義のプラスアルファとなる内容を,教員が取捨選択できるような構成を目指し,さらに,学生の自習や発展学習にも対応し,臨床に対する興味へつながるように工夫する.
4 . 網羅的な教科書とは異なり,理学療法士・作業療法士を目指す学生にとって必要かつ十分な知識・技術を厳選する.長文での解説は避け,箇条書きでの簡潔な解説と,豊富な図表・写真を駆使し,多彩な知識をシンプルに整理した理解しやすい紙面構成になるように努める.
5 . 学生の理解を促すために,キーワード等により重要なポイントがひとめでわかるようにする.また,予習・復習に活用できるように,「調べておこう」,「学習到達度自己評価問題」などの項目を設ける.

 また,いずれの理学療法士・作業療法士養成校で教育を受けても同等の臨床遂行能力が体得できるような,標準化かつ精選された「理学療法・作業療法教育ガイドライン=理学療法・作業療法教育モデル・コアカリキュラム」となり得ることをめざした.これらの目的を達成するために,執筆者として各養成施設で教鞭をとられている実力派若手教員に参加いただいたことは大変に意味深いことであった.

 既存の教科書の概念を刷新した本シリーズが,学生の自己研鑽に活用されることを切望するとともに,理学療法士・作業療法士の養成教育のさらなる発展の契機となることを期待する.

 最後に,発刊・編集作業においてご尽力をいただいた諸兄に,心より感謝の意を表したい.

令和7年2月
埼玉県立大学名誉教授 細田 多穂



序 文
 人間の動きを科学的に理解することは,リハビリテーション専門職にとって必要不可欠な基礎能力です.運動学は,この人間の動きを多角的に理解するための中核となるものです.運動学は,解剖学的構造,生理学的機能,力学的特性を統合して学ぶことができます.実際の運動は心理的要因や社会的背景の影響を受けることから,これらの視点も含めた包括的な理解が求められます.

 一方で,高等学校教育に選択の幅が広がり,学生のなかには理科科目のうち生物,化学,物理の一部だけを履修していて,入学後の解剖学や生理学,運動学の基礎である力学に苦手意識をもつ人も少なくありません.そこで本書では,これらの基礎知識の学習が不十分であっても理解できるよう,豊富な図表と段階的な説明を用いて,基礎から応用まで体系的に学習できる構成としました.

 本書の構成は全3部,18章からなっています.第T部は運動学の基礎として,第1章の運動学とリハビリテーションでは医療専門職にとっての運動学とその必要性を述べています.第2章の生体力学では解剖学と生理学を基礎とした運動に関する力学について,高校で物理学を専攻していなかったり,社会人から新たに学習を始めたりした皆さんにも分かりやすくなるように解説しています.第3章は神経筋骨格系の機能がどのように運動に関係しているかを説明しています.第4章では運動と呼吸・循環・代謝について理解を深められるように述べています.

 第U部は運動の構造と機能について,第5章 顔面の運動,咀嚼・嚥下,第6章 頭部と脊柱の運動,第7章 胸郭と呼吸運動,第8章 肩複合体の運動,第9章 肘・前腕の運動,第10章 手・手部の運動,第11章 骨盤・股関節の運動,第12章 膝関節複合体の運動,第13章 下腿,足部・足関節の運動として各部位の運動について,骨格がどのように運動しているかという骨運動学(Osteokinematics)の視点と,骨運動の際に各関節内でどのような運動が起こっているかという関節運動学(Arthrokinematics)の視点から解説しています.

 第V部は運動学の応用として,第14章 感覚と運動,第15章 運動発達と姿勢反射,第16章 姿勢と姿勢制御,第17章 基本動作と歩行,第18章 身体運動分析からなっています.実際の臨床において,運動学がどのように関わってくるかを説明しています.

 本書の前身となる『運動学テキスト』は2010年4月に発行され,幸いにも多くの養成校で使用していただき,2015月11月には改訂第2版を発行しました.改訂第2版も多くの方々に支持をいただいてきましたが,一方で,養成校の講義体系にあわせて「基礎運動学」と「臨床運動学」の内容を分けてほしいという要望も多くありました.そこで,その要望にお応えして『運動学テキスト』を『基礎運動学テキスト』と『臨床運動学テキスト』に分冊化し新たなスタートを切ることになりました.

 最後に本書の企画と編集に多大なご尽力をいただいた南江堂の担当各氏に深く感謝いたします.

令和7年2月
編集者一同

9784524228614