薬剤師が実践すべき副作用へのロジカルアプローチ
その症状,きちんと評価できていますか?
編集 | : 川上和宜/松尾宏一/吉村知哲 |
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ISBN | : 978-4-524-22836-2 |
発行年月 | : 2021年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 282 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
薬剤投与後に出現した症状を安易に副作用にむすびつけるのではなく,正しくモニタリングするための具体的問診やその後の思考回路をわかりやすく図解した実践書.“服薬説明だけから抜け出したい",“症候学を身に着けたい"と思う薬剤師に役立つ1冊.
CHAPTER1 総 論
1 副作用へのアプローチの考え方
2 患者の状態をみることについて薬剤師に伝えたいこと
3 診察の進め方
CHAPTER2 副作用へのロジカルアプローチ
1 発熱
2 発疹
3 腹痛
4 悪心・嘔吐
5 食欲不振
6 口渇
7 便秘
8 下痢
9 浮腫
10 貧血
11 出血傾向
12 呼吸困難
13 動悸
14 多尿・排尿障害
15 関節痛
16 意識障害
17 頭痛
18 痙攣
19 めまい・耳鳴
20 不眠・抑うつ
21 視覚障害
22 聴覚障害
23 血圧異常
薬物療法において薬剤師は,患者情報を十分に把握したうえで,薬剤の適正使用の観点から患者個々に合わせた投与量および投与法を見極め,適切な患者指導によりアドヒアランス向上につなげる.次に,治療後の患者状態や服薬状況を確認し,効果および副作用を適切にモニタリングし,薬物治療を評価することが求められる.とくに副作用が発現した場合には,しっかりと患者に向き合って適切な対応をとる必要があるが,副作用かどうかを判断するのは容易ではない.
薬物治療中,ある症状が発現した場合,とくに薬剤師は「薬剤による副作用」と判断しがちである.その症状が,薬による副作用か,それ以外が原因であるかどうかを見極めるスキルが要求される.見極めるには,症状を適切に評価し薬剤以外の要因も十分に検討したうえで論理的に(ロジカルに)アプローチすることが重要となる.
本書は,2 章に分かれた構成となっている.「CHAPTER 1 総論」では副作用アプローチの考え方について解説するとともに,医師の立場から患者の状態をみるうえで薬剤師に伝えたいこと,診察の進め方について執筆していただいた.「CHAPTER 2 副作用へのロジカルアプローチ」では副作用に関連するおもな症状を取り上げ,大きく「A:症状を適切に評価する」,「B:可能性のある原因をピックアップする」,「C:薬の副作用である可能性を追求する」の3 ステップでアプローチしていく形とした.「A:症状を適切に評価する」では,症状の重症度,緊急性,発症様式(突然発症,急性発症,ゆっくり発症)を見分けるうえでの情報,そして,服薬指導だけから抜け出すための問診の論理的手法が,「B:可能性のある原因をピックアップする」では,症状と関連するよくある疾患(原因),ときどきある疾患(原因),まれにある疾患(原因)をリスト化し,発症様式とも関連付けて重症度と押さえたいポイント,確定診断のための検査などをまとめた.さらに,「C:薬の副作用である可能性を追求する」では,薬の副作用として,その症状を起こしやすい薬剤のリストを示し,薬剤師が考えるべきポイント,知っておくとよい知識,診断のアルゴリズムなどを解説した.
解説に続いて,各症状の具体的症例も紹介している.ここでは症例に対しどうアプローチするかを,上記A〜C の流れに沿った患者との問診(対話)形式で,より実践的な形で提示している.また対話の横には,「薬剤師のアタマのなか」として問診中の薬剤師の具体的な思考過程を併記した.さらに,問診を通じて得た仮説を踏まえ,薬剤師として最終的にどんなアクションを起こすべきか,その結果どのような治療につながったかまで,具体的治療・処方を含め記載した.
副作用の予防および早期発見は,安全・安心な薬物療法を行ううえで不可欠である.副作用は除外診断であるといわれ,そのためにもロジカルに副作用を評価するスキルが求められる.本書が,薬物療法に携わる皆様にとって,臨床現場での一助になれば幸いである.
2021年9月
編集者を代表して
大垣市民病院薬剤部薬剤部長 吉村知哲