明日から役立つ 疾患・場面別アドバンス・ケア・プランニング
事例と対話で読み解く意思決定支援
編集 | : 福井小紀子 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-22834-8 |
発行年月 | : 2022年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 184 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
近年特に注目を集めているアドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてビジュアルに解説.がんはもちろんACPの対象となりうる代表疾患・症候がたどる典型的な経過に沿って , 外来〜入院〜退院後と様々な場面でのACPについて解説している .会話例や事例も豊富で,患者・家族・チームへの関わり方もよくわかる!患者さんのために今すぐACPを実践したい若手ナース,ワンランク上のACPを実践したい中堅ナースの悩みを解決する一冊.
第1章 総論
A. まずおさえよう!──ACPがなぜ重要か
B. このスキルを身につけよう!
第2章 疾患ごとにみる病棟・外来でのACP
導入
A. がん
B. 心不全
C. 呼吸不全
D. 老衰・認知症
第3章 退院・転院後のACP
A. 在宅
B. 居住系サービス
索引
近年,多くの看護師には,入院中の看護のみならず,外来・病棟・退院・在宅という「場の移行」を含めた看護実践が求められている.今後,地域完結型で看護するという視点はますます重要性を増してくる.
また,これからの超高齢多死社会において,人生の最終段階にある患者は,より増えていく流れであり,そのケアに対する看護師の役割はより高まっていく.
このような背景から,アドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生会議)に注目が集まっているが,多くの看護師は,人生の最終段階にある患者に対して,「どのような会話をして希望を引き出し,その希望にどのように対応していくか,そして,その会話をいつ始めたらよいか」について難しく感じ,日々悩みながらケアに当たっている状況がある.
とりわけ,ACPは「がん」領域を中心に発展してきたが,日本における主要な死因としてあげられる「心不全」,「呼吸不全」,「老衰・認知症」の人びとに対しても,ACPをどのように進めていけばよいかについては,十分な看護実践のノウハウが蓄積されているとはいいがたい.
このような状況から,本書は,疾患別・場面別のACPについて,日々素晴らしい看護実践を繰り広げている信頼する看護実践者に執筆をお願いし,仕上げた.
各疾患のACPの全体像やポイントについては,理解の助けとなるよう「ACPの観点からみた疾患の軌跡図」や「分かれ道と選択肢チャート」として,ビジュアルにまとめている.また,本書では,看護師が実際に直面する「外来・入院・退院・在宅」といった場面にフォーカスし,SPIKES,SURE,SBAR などのコミュニケーション技法や多職種連携の手法を用いて,患者・家族へのかかわりかた,ならびにチームとしてのかかわりかたを,読んだ次の日から実践に役立てられるように,事例とともに具体例をふんだんに盛り込んで解説した .
ACPの実践に難しさや悩みを感じている看護師を読者対象として,日々の実践で具体的に役立つ内容を届けたいとの思いから,「明日から役立つ 疾患・場面別アドバンス・ケア・プランニングー事例と対話で読み解く意思決定支援」と本書を名付け,完成させた.ACP の実践に携わる1 人でも多くの看護師の皆様に,手に取っていただけることを願う.
患者本人の希望を叶えるケアの実現に向けて本書が役立てば幸いである.
2022年3月
福井小紀子
「今年の桜はもう見られないっていわれたよ」
医療の現場に身を置いていると,何気ない会話の中で,清拭をしている時に,検温の途中で,そんなふとした時に目の前の患者さんからポロっと発せられる言葉に私はドキッとさせられることがある.そんな時は一瞬,言葉に詰まる.何を話せばよいか逡巡する.そのような経験を幾度もすることがある.あの時,私の選んだ言葉が正解だったのだろうか,そもそも正解があるのだろうか.普段奥に隠れている患者の思いが顔をのぞかせるような瞬間は本当にふとした時に訪れる.
この本にはたくさんの場面,事例が登場する.人は自分の経験だけでは世界の広がりをもつことはできない.他者の経験を知り,学び,当てはめることで,同じようなことが起こったときに対処できるようになる.だからこそ事例から得られる学びはよりよいケアにつながる.がん,心不全,呼吸不全,老衰とではその疾患の違いによって,経過によってもいつ,どのタイミングがアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の時期なのかが異なる.事例を読むと,なるほど,このように考えて話し合いを進めるのか,と役に立つ.病院,在宅医療・訪問看護,居宅系サービス,どの場であっても,連携することでより希望に合わせた選択肢を広げることができる.
患者さんから発せられる言葉にドキッとさせられた時は,そこをスタートとしてこれからの生き方を一緒に考えていくきっかけとなる.そのためにタイミングを逃さずにACP につなげるためのとっさの一言の引き出しを増やしておかなくてはと思う.そのヒントは本書の掲載事例や会話の詳しい解説,“Point とっさの会話例“に散りばめられている.
目の前のこの人にとって桜はどのような意味をもつのだろう,今どのような気持ちでいるのか,これまでどのような道を歩まれてきて,これからの生き方にどんな希望をもっているのだろうか.本書の先人の経験は,これからの道をともに考えるACP の糧になる.
がん看護28巻3号(2023年3-4月号)より転載
評者●山上 睦実(東京大学医学部附属病院/がん看護専門看護師)