図解でスッキリ!抗がん薬の薬理作用
編集 | : 南博信/寺田智祐 |
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ISBN | : 978-4-524-22817-1 |
発行年月 | : 2023年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 200 |
在庫
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
近年,多種多様な抗がん薬が登場している一方,分子標的治療薬を中心に作用機序や適応は複雑になっている.本書は,殺細胞性抗がん薬から分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬まで,その作用機序や違い,副作用を,イラストやグラフを多用しつつコンパクトにまとめた.がん治療を学びたいメディカルスタッフに,最初に手に取って欲しい一冊である.
第1部 抗がん薬のキホン
がんの発生と増殖のメカニズム
がん薬物療法の考え方
抗がん薬の種類と分類
第2部 図解でスッキリ!各薬剤の特徴と薬理作用
1章 殺細胞性抗がん薬 〜がん細胞を直接攻撃
A.核酸の代謝・合成を阻害〜核酸と類似の構造を有している
ざっと図解! 薬理作用
a 葉酸代謝拮抗薬
b フッ化ピリミジン代謝拮抗薬
c プリン系代謝拮抗薬,b以外のピリミジン系代謝拮抗薬
d その他の代謝拮抗薬—消化器がんに使用するもの
e その他の代謝拮抗薬—血液腫瘍に使用するもの
B.DNAの損傷や複製の障害
ざっと図解! 薬理作用
a アルキル化薬
b 白金製剤
c 抗がん性抗生物質
d トポイソメラーゼT阻害薬
e トポイソメラーゼU阻害薬
C.細胞分裂を阻害
ざっと図解! 薬理作用
a 微小管阻害薬(ビンカアルカロイド)
b 微小管阻害薬(タキサン)
c 微小管阻害薬(その他)
2章 分子標的治療薬 〜がん細胞に関わる特定物質を狙い撃ち
A.がん細胞の細胞膜表面の抗原を標的とする
a 免疫の働きを利用する抗体(抗CD20抗体など)
b 抗体薬物複合体(ADC)
c 放射性同位元素標識抗体
B.がん細胞の増殖因子・受容体・シグナル伝達系を標的とする
ざっと図解! 薬理作用(EGFRとHER2が標的の薬)
a 抗EGFR抗体・EGFR阻害薬
b 抗HER2抗体・HER2阻害薬
c ALK阻害薬
d FLT3阻害薬,BCL-2阻害薬
e BCR-ABL阻害薬
f mTOR阻害薬
g BTK阻害薬,JAK阻害薬
h BRAF阻害薬,MEK阻害薬
C.その他のがん細胞の系や分子を標的とする
a プロテアソーム阻害薬
b サリドマイド関連薬
c PARP阻害薬
d CDK4/6阻害薬
e レチノイド,ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬
D.がんの環境をターゲットとする〜血管新生阻害薬
a 抗VEGF抗体,抗VEGFR抗体,VEGF阻害薬
b VEGFR阻害薬・マルチキナーゼ阻害薬
3章 免疫チェックポイント阻害薬 〜がん細胞による免疫抑制を阻止
A.免疫チェックポイント機構を標的とする
a 抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体
4章 ホルモン療法薬 〜性ホルモンが関わるがんへのホルモン供給を阻止
ざっと図解! 薬理作用
A.乳がん・前立腺がんに使用するもの
a GnRHアゴニスト
B.乳がんに使用するもの
a アロマターゼ阻害薬,プロゲステロン
b 抗エストロゲン薬
C.前立腺がんに使用するもの
a GnRHアンタゴニスト
b CYP17阻害薬
c 抗アンドロゲン薬
がん薬物療法が目覚ましく進歩している.がんの分子生物学と免疫学の進歩に基づいて,毎年新しい分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場し,ほとんどのがんの治療体系を変えている.ホルモン治療薬も新しい機序を有する薬物が登場している.一方で,以前から使用されている殺細胞性薬物もキードラッグとして使用されている.これらの薬物の作用機序は多岐にわたる.特に分子標的治療薬は様々な分子を標的として開発され,したがって薬理作用も多様である.さらに,効果は標的分子だけでなく,その下流や周辺のシグナル伝達系にも影響を受けるためさらに複雑である.複雑であるが,これを理解しないと適切な治療はできない.
様々な遺伝子の異常に基づく治療薬が開発されているが,個々の異常の頻度は希少であることが多い.遺伝子の検査を効率的に行うために,がん遺伝子パネル検査が保険診療に実装され,頻度が低い異常を標的とした治療薬の開発が促進するものと思われる.これらの効果や副作用を大規模なランダム化比較試験で検証することは困難である.小規模な単群の第U相試験の結果に基づいて,実地診療で使用されるようになる.数例の日本人のデータでわが国でも使用されるようになった薬物もある.ところが,薬物動態や副作用に民族差が知られている分子標的治療薬も多い.数例の日本人しか評価せずに市販される薬剤の民族差を臨床開発で検出することは困難である.市販後の質の高いデータにより,有効性や安全性を評価する必要がある.
また,特定の遺伝子異常の生物学的意義が各がんにおいて共通であれば,がん種を越えて効果が期待できる.そのような場合,特定の遺伝子異常を認めれば,がん種を問わず保険承認された薬剤もある.実際に臨床試験で治療されていないがん種まで保険承認されたことになる.ところが,臨床試験ではすべての患者で腫瘍が縮小しているわけではない.市販後に特定のがん種では効果がなかったと判明する可能性もある.これも市販後の質の高いデータで解明されるべき問題である.そのためには実地でがん医療に携わる者が,各薬剤の特徴を十分理解していることが求められる.
本書はそれぞれの抗悪性腫瘍薬の作用機序および効果・副作用を一瞬で理解できるようにまとめてある.執筆にあたっては,がん治療医と薬剤師がペアになって各薬物を担当していただいた.医師が薬理作用や効果・副作用の特徴を解説し,それを薬剤師がビジュアルにわかりやすく図解した.複雑な薬理作用を理解するための一助となるはずである.日々の診療および知識の整理に役立てていただければ幸いである.
2023年5月
南 博信