書籍

整形外科卒後研修Q&A改訂第8版

問題編/解説編

編集 : 日本整形外科学会Q&A委員会
ISBN : 978-4-524-22809-6
発行年月 : 2021年5月
判型 : B5
ページ数 : 664

在庫あり

定価13,200円(本体12,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

整形外科専門医試験受験者の必読書.専門医試験のための参考書としてのみならず,定期的に改訂を重ねることで,整形外科専門医として必要な知識が学べる最高レベルのテキストとなっており,指導医や開業医にも必携の書である.今改訂では,これまでの目次構成(章分け)を見直し,現在の専門医試験の出題分野に合わせ8章に再構成.前版までの一般問題をすべて見直し,さらに第29回〜第31回の専門医試験で出題された筆答試験問題358題を追加.ロコモティブシンドロームや関係法規に関する新問題も追加.従来どおり各分野の専門医による解説文も掲載した.

目次(問題編/解説編 共通)


1.基礎科学
 @骨の生理,構造,化学
 A骨の発育,形成,再生
 B関節の構造と生化学
 C筋,神経の構造,生理,化学
 D骨,関節の病態生理
 Eバイオメカニクス

2.診断学
 @診断学と臨床検査
 A神経・電気生理学的診断
 BX線など画像診断
 C病理組織診断

3.治療学
 @保存療法
  1)消炎鎮痛薬
  2)疼痛治療薬など
 A手術療法
  1)骨移植,生体材料
  2)麻酔,輸血
  3)感染予防
  4)深部静脈血栓症(DVT)

4.疾患総論
 @骨・関節の感染症
  1)一般化膿性疾患
  2)結 核
  3)MRSA,AIDS
  4)その他
 Aリウマチとその類縁疾患
 Bその他の関節疾患
 C四肢循環障害
 D骨端症
  1)上 肢
  2)下 肢
  3)その他
 E小 児
 F代謝性骨疾患
 G骨・軟部腫瘍
 H神経・筋疾患
 Iロコモティブシンドローム

5.疾患各論
 @肩関節
 A肘関節
 B手関節・手・指
 C頚部・頚椎
 D胸椎・胸郭
 E腰椎・仙椎
 F脊椎・脊髄腫瘍
 G骨盤・股関節
  1)小児股関節
  2)大腿骨頭壊死
  3)OA,他
 G膝関節
  1)OA(保存, HTO, TKA)
  2)骨壊死など
  3)その他
 I足関節・足・趾

6.外 傷
 @軟部組織損傷
 A骨折・脱臼総論
 B骨折・脱臼各論
  1)脊椎・脊髄損傷
  2)肩甲帯〜上腕
  3)肘〜手関節・手
  4)骨盤・下肢
 C末梢神経損傷
 Dスポーツ外傷・障害
  1)上 肢
  2)股関節・大腿
  3)膝関節
  4)足部,足関節
 Eその他

7.リハビリテーション
 @理学療法,作業療法,運動療法
 A装具療法
 B切断,義肢
 Cその他

8.関係法規・産業医・医療安全

改訂第8版の序

 『整形外科卒後研修Q & A』が5年ぶりに改訂され,第8版として刊行されることになりました.本書は整形外科専門医を目指す若手医師にとっては必読の書であるとともに,専門医取得後も常に知識の整理,確認を行うための座右の書としてもご活用いただけます.

 本書の初版は故津山直一東京大学名誉教授が発案され,1976年に全国の整形外科医に問題・解答の執筆が依頼されたことに始まり,1980年に山内裕雄委員長(順天堂大学名誉教授)を中心とする初代Q & A委員会の東京と九州の委員の方々により新規問題作成,検証,整理が行われたのちとりまとめられ,実に9年の歳月を経て1985年4月に刊行されました.初版完成と同時に,5年に一度の改訂の方針が示され,その後もこの方針に従って地区単位で選出された委員の先生方により5年ごとの改訂が継続されてきました.このように先人の先生方の先見の明によって本書は常に時代に即した内容になるように編集されてきました.

 初版の序には“先進諸国に伍して国際的,対外的に恥ずかしくないような卒後教育研修プログラムを一日も早く作り上げて,医療水準の質を高め,より広く人類福祉に貢献しよう”というQ & A刊行の背景が述べられており,この高邁な目標は日本整形外科学会,そして最近では日本専門医機構による専門医制度の発展として結実しようとしております.Q & Aで学び,専門医試験に合格した日整会および機構認定の整形外科専門医は2020年9月現在,合計19,658名に上っており,良質な整形外科医療を国民の方々に提供しています.

 今回の改訂作業はQ & A委員会において大鳥精司担当理事,赤澤 努委員長を中心に,関東地区の委員の先生方が担当され,直近の専門医筆答試験の動向に合わせて,問題分野の再編,問題の作成と厳選(前版より42問減),症例問題の掲載中止・日整会ホームページへの移行などが精力的に行われました.2020年1月以降,本邦でも新型コロナウイルス感染症が拡大し,対面での会議も制限される中,委員の先生方には大変献身的に改訂版の作成に取り組んでいただきました.2020年度は専門医試験そのものも新型コロナの影響により筆答試験は各都道府県に設けられた会場でcomputer based testing(CBT)の方式により時間を短縮して行われました.今後も感染が終息するまではCBT方式での試験が行われることになると思いますが,試験形態が変わりましても本書の意義は不変のものであると思います.

 最後になりますが,改訂に多大なるご尽力を頂きましたQ & A委員会,ご協力を頂いた日整会各委員会,事務局の皆様,その他関係各位に心からの敬意と感謝を申し上げます.

令和3(2021)年4月
日本整形外科学会
理事長 松本守雄




改訂第8版の刊行にあたって

 『整形外科卒後研修Q&A』は昭和60年に初版が刊行され,その後,5年に1度の改訂を行っており,このたび改訂第8版を刊行することになりました.日本整形外科学会Q&A委員会での改訂作業は,関東地区より選出された34名の委員で担当いたしました.第₁回の委員会は令和元年9月に東京で開催し,2ヵ月に1回のペースで委員会を開催し討議を重ねておりました.令和9年にはいり,新型コロナウイルス感染症の流行に伴い委員会の開催を中断せざるを得なくなりましが,メールでの討議を続け,5月にはオンラインミーティングという形で委員会を再開しました.令和2年7月には改訂作業を終えて入稿,校正へと進みました.このたび,全委員による校正を終え,無事に第8版を刊行することができ安堵しております.

 さて,今回の改訂の主眼は「整形外科専門医試験にあわせた再編」といたしました.章分けの変更と専門医試験で出題された筆答試験問題の追加を行っており,大幅な改訂を行っております.まず,初版より第₇版まで続いていた章分けを見直し,現在の専門医試験の出題分野に合わせた₈つの章に再分配いたしました.前版より引き継いだ一般問題1,267題をすべて見直し,さらに第₂₉回から第₃₁回専門医試験に出題された筆答試験問題358題を追加いたしました.さらに,日本整形外科学会広報・渉外委員会にて作問していただいたロコモティブシンドロームや関係法規に関する新作問題₉題を追加しました.専門医試験に出題された問題は正答率や識別指数を参考に採用し,その分野の専門医による解説文を作成しております.また,国家試験や専門医試験の出題基準に沿った用語の統一を可能な限り図りました.総計で1,634題について修正や削除を検討し,最終的には1,188題を掲載しております.

症例問題につきましては,新たな制度下での専門医試験では面接試験を行わないことから,紙面掲載せず日本整形外科学会のURLから参照していただくことにいたしました.診療レベルの向上にお役立ていただければ幸いです.

 最後に,今回の改訂にあたりコロナ禍のなか多大なるご協力をいただいたQ&A委員会の先生方,担当理事の大鳥精司先生,アドバイザーの仁木久照先生,作問に携わっていただいた広報・渉外委員会の先生方,事務担当の柳澤ゆき江さん,及川千晶さん,そして出版業務を担当していただいた南江堂の担当者の皆様に,この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます.本書が,専門医試験の準備をしている専攻医にとって,そして,専門医にとってもお役に立てることを願っております.

令和3(2021)年4月
日本整形外科学会Q&A委員会
委員長 赤澤 努

 2020年度の日本整形外科学会専門医試験は,新型コロナウイルス感染拡大に伴い,各都道府県に設けられた会場でcomputer based testing(CBT)方式で行われた.ビデオ問題と症例問題による従来の口頭試験がなくなり,筆答試験のみ120分間で計100問と時間を短縮して行われたわけであるが,これにより従来の試験に比べ筆答試験の一問一問の重みはより大きくなったといえる.私は2021年度の専門医試験委員会委員長を務めているが,専門医試験は,受験者が専門医レベルに達しているか判定するのが目的であるのはもちろんのこと,試験対策として過去問や整形外科卒後研修Q&Aに掲載された問題に取り組むことにより,誤った知識や理解を整理する機会を必然的に生み出すことも重要ではないかと考えている.本書は,過去の専門医試験で出題された選りすぐりの良問を収載している.良問を測る基準は,識別指数や正解率などから導き出されるものであるが,それらの条件を満たし,修正や削除を繰り返された計1,188題が最終的に採用されている.別冊の各分野の専門医による解説編も充実しており,専門医試験対策だけでなく,専門医取得後も自らの知識を総点検するために活用できる内容となっている.実際に自分で問題を解いてみて,やはり知識というのは成書を読み流すだけでは身につかず,疑問を解決する過程をふんでこそ記憶に定着することを改めて実感する.

 本改訂では,問題分野の再編のほか,前版までの一般問題をすべて見直し,第29〜31回の専門医試験で出題された筆答試験問題358題を新たに追加,さらに症例問題の削除など新しい試験形式に沿うかたちに編集されており,ロコモティブシンドロームや関係法規に関する最新の知見も追加されている.本書の歴史は古く,1985年に初版が発行されてから5年ごとに改訂が継続され,2021年6月に発行されたのが第8版となる.1985年発行の初版の巻頭で,日本整形外科学会Q&A委員会の山内裕雄委員長(当時)は,卒後研修の成果による資格づけを行う前に,卒後教育そのものの質的向上,標準化がまず行われるべきであるとの認識のもと,研修の目標としてまずガイドラインを設定された.そして,いずれ認定試験が行われるようになれば,このような問題が出るであろうとの予測をもとに問題,解答,解説の修正が当時の卒後教育等検討準備委員会小委員会で開始されたのが本書誕生の経緯である.当然,すべてがオリジナルの問題であったはずであり,刊行に具体的作業開始から実に9年もの歳月を要したのも,各設問について徹底的な討論があったからであろう.それらの背景には,「先進諸国に伍して国際的,対外的に恥しくないような卒後教育研修プログラムを作り上げて,医療水準の質を高め,より広く人類福祉に貢献しよう」という日本整形外科学会としての使命感と強い念願があったと当時の会長赤星義彦先生は述懐されている.この理念は現在の新専門医プログラムの理念そのものであり,すでに35年前に先人がそのあり方を予見されていたことに驚かされる.さまざまな専門医制度の乱立による専門医の質の低下が,新専門医制度設立の一つの呼び声になったわけであるが,日本整形外科学会が独自に質の高い専門医を輩出してきたと自他ともに認める理由は,本書の発行によるところが大きいのかもしれない.

 こういった長い歴史の上に成り立つ本書が新たに改訂第8版として発行されたことは,単なる定期的な改訂にとどまらず,日本整形外科学会の専門医教育にかける並々ならぬ情熱と精神の伝承ともいえよう.本書を繰り返し熟読することにより,知識に裏打ちされた高度な臨床能力を備えた専門医が誕生するのに加え,若手医師への教育精神に溢れた多くの指導医も同時に育つことを願わずにはいられない.

臨床雑誌整形外科72巻12号(2021年11月号)より転載
評者●鹿児島大学大学院整形外科教授・谷口 昇

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