病態栄養専門医テキスト改訂第3版
認定専門医をめざすために
編集 | : 日本病態栄養学会 |
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ISBN | : 978-4-524-22805-8 |
発行年月 | : 2021年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 344 |
在庫
定価9,350円(本体8,500円 + 税)
正誤表
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2022年09月22日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本病態栄養学会の病態栄養専門医研修カリキュラムに準拠した,オフィシャルテキスト.栄養および栄養補給法に関する基本的な解説のほか,代表的な疾患・症候について病態栄養を中心に説明し,栄養・食事療法と薬物療法との関係が理解できるよう構成.専門医の資格取得をめざす医師,実地臨床でチーム医療に携わり病態栄養学の知識を深めたいと考えている医師にも最適な一冊.
第T章 病態栄養専門医としての研修目標
1.病態栄養学の必要性
2.病態栄養専門医としてのプロフェッショナリズム
3.専門医として心得ておくべきこと
第U章 病態栄養を理解するうえでの解剖と生理
第V章 栄養評価法
第W章 栄養投与量の決定法
第X章 病態栄養の症候
第Y章 病態栄養と検査値異常
第Z章 主要疾患の栄養管理
1.内分泌・代謝疾患
@糖尿病
A脂質異常症
B痛風・高尿酸血症
C肥満症
D骨粗鬆症
2.呼吸器疾患
@慢性閉塞性肺疾患(COPD)
A誤嚥性肺炎
B肺癌
C間質性肺炎
D肺結核
3.循環器疾患
@高血圧
A虚血性心疾患
B心不全
C動脈硬化
D不整脈
4.腎疾患
@急性腎不全
A急性腎炎
B急速進行性腎炎
Cネフローゼ症候群
D慢性腎不全(保存期)
E慢性腎不全(透析療法)
F糖尿病性腎症
5.消化器疾患
A.上部消化管
@胃食道逆流症
A食道癌
B食道・胃静脈瘤
C胃・十二指腸潰瘍
D胃癌
E胃切除後障害
F胃巨大皺襞症(Menetrier 病)
B.小腸・大腸
@吸収不良症候群
A蛋白漏出性胃腸症
B短腸症候群
C炎症性腸疾患:CD
D炎症性腸疾患:UC
E大腸癌
C.肝
@急性肝疾患
A慢性肝炎
B肝硬変
C脂肪肝
D肝癌
D.胆膵
@急性膵炎
A慢性膵炎
B膵癌
C胆道系疾患
6.血液疾患,アレルギー疾患,膠原病
@貧血
A血液がん
付)造血幹細胞移植
Bアレルギー疾患
C食物アレルギー
D自己免疫疾患
E免疫不全症候群
7.脳血管疾患
8.精神・神経疾患
@ビタミン異常症
A電解質異常症
Bアルコール関連神経疾患
C金属代謝異常
D変性疾患
E神経性やせ症
9.悪性腫瘍
10.周術期(ICU を含む)
@術前術後の栄養管理
A ICU での重症患者の栄養管理
11.皮膚疾患
@熱傷
A褥瘡
12.小児疾患
@正常小児の成長・発達
A低出生体重児
B摂食行動障害
C重症心身障害
D先天性心疾患
E先天性代謝異常
13.高齢者疾患
@高齢者の病態栄養と代表的症候
Aフレイル
Bサルコペニア
C摂食・嚥下障害
D耐糖能異常
E副腎皮質機能低下
F高齢者の栄養管理で求められる4 つの視点
14.妊娠・周産期疾患
第[章 食事療法
第\章 経腸栄養法
第]章 静脈栄養法
1.末梢静脈栄養
2.中心静脈栄養
第Ⅺ章 病態栄養に関する薬物
■付録
1.静脈栄養剤一覧
A.末梢静脈栄養剤
B.中心静脈栄養剤
2.経腸栄養剤一覧
A.医薬品扱いの経腸栄養剤
B.食品扱いの経腸栄養剤
序文 改訂第3 版発刊にあたって
増進に貢献するために,専門的知識および技術を有する優れた医師を病態栄養専門医として認定する制度を発足させた.病態栄養・栄養治療学では,疾患・病態を臓器にとらわれることなく系統的全身的に理解し,各種疾患は栄養素の摂取・吸収・代謝に変化を及ぼすこと,低栄養あるいは偏・過栄養は各種疾患の発症・進展・予後に大きな影響を及ぼすこと,栄養管理が各種疾患の治療・予防の基本であることを理解する必要がある.そして栄養管理の実践のためには,各診療科,各職種,各医療施設と協働してチーム医療を行う必要がある.病態栄養専門医取得のための参考書として,「病態栄養専門医テキスト」の初版が2009 年に,そして改訂第2 版が2015 年に発刊された.
医学・医療は日進月歩であり,病態栄養・栄養治療学の分野でも第2 版発刊後,多くのエビデンスの蓄積が得られ,進歩してきた.高齢者におけるサルコペニア・フレイル対策の重要性とその方法,糖尿病合併症重症化予防の方法,各種疾患に対する分子標的治療薬や抗体製剤,免疫チェックポイント阻害薬の登場とその効果,などである.
改訂第3 版では,基本的に改訂第2 版の項目を踏襲しながら最新の知見を含めるよう,各執筆者にお願いした.本書は,病態栄養専門医を目指す医師の習得すべき内容や指導医のための指導内容のみでなく,専門医を取得してからも目標とすべき内容を含んでいる.広く臨床の場で利用されることを期待している.
最後に,執筆していただいた先生方,細かな点まで気を配っていただき発刊いただきました南江堂のスタッフの方々に感謝します.
2021 年3 月
編集代表
日本病態栄養学会 専門医制度委員会 委員長
愛媛大学 地域生活習慣病・内分泌学
松浦文三
日本病態栄養学会は2008年に適切な栄養管理の推進と医療の向上を図り,ひいては国民の健康増進に貢献することを目的として,日本病態栄養学会専門医制度を発足させた.この病態栄養専門医を取得するための参考書が『病態栄養専門医テキスト』であり,2009年に初版が刊行され,2015年に第2版,そしてこのたび改訂第3版が上梓された.
病態栄養学は,疾患や合併症の発症機序や病態を栄養学的側面から精査し,発症の予防,治療を行う学問である.わが国においても生活習慣病を有する過栄養状態の者が増加する一方で,高齢化に伴ってサルコペニア・フレイルなどの低栄養状態またはリスクを有する者が増加している.このような栄養に起因した疾患や合併症の予防医療を推進し,健康寿命を延伸することで,将来的な医療費の抑制が期待されているなか,病態栄養学の重要度が年々増していることを実感している.
病態栄養を正しく理解するためには,咀嚼・嚥下,消化管運動と消化酵素の分泌制御などから,体液の恒常性,食欲の制御機構を含めた中枢神経,末梢神経のネットワーク,脳‒肝,脳‒腸相関など広範囲にわたる解剖生理を学ぶ必要がある.本書では,それぞれの制御機構がわかりやすい図表と簡潔な文章でまとめられており,病態栄養に必須の項目を学びやすい構成となっている.
栄養評価も重要である.とくに入院患者では栄養管理の適応である栄養不良患者をスクリーニングにより拾い上げ,栄養サポートチーム(NST)の介入につなげることで,適切な栄養療法を提供することが求められる.しかし,「栄養不良」は明確な定義づけがされていないため,画一的な方法で栄養評価を行う必要がある.今版では,主観的包括的評価(SGA)と日本病態栄養学会が提唱する栄養評価ガイドラインに加えて,認知機能評価ツールのmini mental state examination(MMSE)をモデルに65 歳以上の高齢者の栄養状態を評価するために開発されたmini nutritional assessmen(tMNA)および簡略版のMNA‒SFについても詳細な解説がなされている.さらに,どの程度の体重や食事量の減少を栄養不良とするかの目安についても記載されており,このような情報を施設内で正しく共有することで,栄養療法の第一歩となる栄養評価の質を向上することができると思われる.
各領域の代表的な疾患については,第2版を踏襲して疾患の解説,病態栄養,評価と診断,治療の四つのセクションから構成されている.たとえば,肝硬変に関しては,身長・体重,血清BTR(分岐鎖アミノ酸チロシンモル比),血清亜鉛値など11項目にわたる栄養評価項目を具体的に提示している.治療についても,2020年に日本消化器病学会・日本肝臓学会が発表した『肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版)』における栄養療法のフローチャートを引用するなど,具体的な評価項目や最新のガイドラインの図表なども引用しながら解説が行われており,各疾患領域の専門医が実際の臨床の現場で栄養療法を行う場合にも参考になるような内容となっている.
現在の栄養療法は専門医が単独で実施することはなく,栄養士,看護師,薬剤師,さらには理学・作業療法士など,さまざまなメディカルスタッフとのチーム医療として提供されている.本書は,病態栄養専門医を目指す医師にとって必須のテキストであるだけでなく,病態栄養学に馴染みのない研修医から各領域の専門医に至るあらゆる医師,メディカルスタッフにとってもわかりやすく,実践的な内容の良書であり,多くの読者にとってお勧めの1 冊である.
臨床雑誌内科129巻3号(2022年3月号)より転載
評者●愛媛大学大学院地域医療学講座 准教授 徳本良雄