胆石症診療ガイドライン2021改訂第3版
編集 | : 日本消化器病学会 |
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ISBN | : 978-4-524-22786-0 |
発行年月 | : 2021年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 138 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本消化器病学会編集による診療ガイドライン.Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて記載.CQではエビデンスレベルと推奨の強さを提示.胆石症 (胆囊結石,総胆管結石,肝内結石) 診療における,疫学・病態,診断,治療,予後・合併症等について,エビデンスに基づき現時点の標準的な指針を示す.
クエスチョン一覧
第1章 疫学・病態
【疫学】
BQ 1-1 わが国の胆石保有率は増加しているか?
【病態と危険因子】
BQ 1-2 胆石症の成因は?
BQ 1-3 胆囊結石の危険因子は何か?
【自然史】
BQ 1-4 胆囊結石の自然史は?
CQ 1-1 胆囊結石は胆囊癌の危険因子か?
BQ 1-5 肝内結石は肝内胆管癌の危険因子か?
第2章 診断
(1)胆囊結石
【症状】
BQ 2(-1)-1 胆囊結石の症状は?
【検査】
BQ 2(-1)-2 胆囊結石の診断はどのように進めるか?
BQ 2(-1)-3 急性胆囊炎の診断はどのように進めるか?
(2)総胆管結石
【症状】
BQ 2(-2)-1 総胆管結石の症状は?
【検査】
BQ 2(-2)-2 総胆管結石の診断はどのように進めるか?
CQ 2(-2)-1 腹部USやCT,MRI/MRCPで結石が指摘できない総胆管結石疑い症例において,ERCP 前にEUS を行うことは,直接ERCP を施行するよりも推奨され
るか?
コラム 総胆管結石の原発結石と落下結石の鑑別は可能か?
(3)肝内結石
【症状】
BQ 2(-3)-1 肝内結石の症状は?
【検査】
BQ 2(-3)-2 肝内結石の診断はどのように進めるか?
第3章 治療
(1)胆囊結石
BQ 3(-1)-1 急性胆囊炎の治療の進め方は?
BQ 3(-1)-2 胆囊結石症に対する非手術的治療にはどのようなものがあるか?
CQ 3(-1)-1 無症状の胆囊結石症に対して,胆囊摘出術は経過観察よりも推奨されるか?
FRQ 3(-1)-1 胆囊の萎縮を伴う胆囊結石症に対して,胆囊摘出術は経過観察よりも推奨されるか?
CQ 3(-1)-2 有症状の胆囊結石症に対して,胆囊摘出術は非手術的治療よりも推奨されるか?
CQ 3(-1)-3 重症胆囊炎に対する早期手術は,ドレナージや抗菌薬投与による保存的治療よりも推奨されるか?
CQ 3(-1)-4 急性胆囊炎では,内視鏡的胆囊ドレナージは経皮経肝胆囊ドレナージよりも推奨されるか?
CQ 3(-1)-5 Mirizzi症候群・合流部胆石に対して,内視鏡的治療は外科手術よりも推奨されるか?
(2)総胆管結石
BQ 3(-2)-1 総胆管結石に対する内視鏡的治療にはどのようなものがあるか?
BQ 3(-2)-2 総胆管結石に対する外科的治療にはどのようなものがあるか?
BQ 3(-2)-3 胆囊結石合併総胆管結石に対する治療にはどのようなものがあるか?
BQ 3(-2)-4 胆囊結石合併総胆管結石に対して,内視鏡的総胆管結石除去術+外科的胆囊摘出術( 二期的併用治療) は外科的総胆管結石除去術+胆囊摘出術( 一期的外科治療) よりも有効か?
FRQ 3(-2)-1 胆囊結石合併総胆管結石治療において,乳頭機能に影響を与えない一期的外科治療は,内視鏡的治療よりも長期予後が優れるか?
FRQ 3(-2)-2 胆囊結石合併総胆管結石に対して,一期的外科治療を行う場合,腹腔鏡下手術は開腹手術よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-1 胆囊結石非合併総胆管結石や胆摘後総胆管結石に対して,内視鏡的治療は外科的治療よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-2 無症候性総胆管結石に対して,結石除去術は無治療で経過観察よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-3 急性胆管炎合併総胆管結石に対して,一期的内視鏡的結石除去はドレナージ後の二期的結石除去よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-4 胆石性膵炎に対して,内視鏡的治療は保存的治療よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-5 大結石・積み上げ結石症例に対して,EPLBDはESTよりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-6 巨大な総胆管結石に対しても,内視鏡的治療は推奨されるか?
CQ 3(-2)-7 上部消化管再建後症例の総胆管結石に対して,バルーン内視鏡下結石治療は経皮的や外科的結石治療よりも推奨されるか?
BQ 3(-2)-5 内視鏡的経乳頭アプローチが困難な急性胆管炎合併総胆管結石に対して経皮経肝胆道ドレナージは有用か?
BQ 3(-2)-6 どのような総胆管結石例にEPBDは有用か?
CQ 3(-2)-8 抗血栓薬使用中の総胆管結石においても内視鏡的治療は推奨されるか?
CQ 3(-2)-9 高齢者や重篤な基礎疾患を有する総胆管結石症例に対して,胆管ステント永久留置は内視鏡的結石除去よりも推奨されるか?
CQ 3(-2)-10 総胆管結石に対する内視鏡的結石除去において,バルーンカテーテルはバスケットカテーテルよりも有用か?
CQ 3(-2)-11 総胆管結石に対する内視鏡的結石除去後の胆囊摘出術は経過観察よりも推奨されるか?
FRQ 3(-2)-3 総胆管結石治療後の利胆薬内服は無治療よりも有用か?
(3)肝内結石
BQ 3(-3)-1 肝内結石症の治療にはどのようなものがあるか?
BQ 3(-3)-2 肝内結石症における肝切除術の適応は?
CQ 3(-3)-1 無症状の肝内結石症に対して経過観察は推奨されるか?
BQ 3(-3)-3 肝内結石症にESWLは有用か?
BQ 3(-3)-4 経口的内視鏡治療は経皮経肝胆道鏡(PTCS) 下治療に比べて有用か?
第4章 予後・合併症
BQ 4-1 胆囊結石例における胆囊摘出術後の長期合併症は何か?
BQ 4-2 胆囊摘出術は消化吸収機能を低下させるか?
BQ 4-3 総胆管結石症や肝内結石症治療後の遺残結石は急性胆管炎・肝膿瘍の危険因子となるか?
BQ 4-4 総胆管結石治療後の長期合併症は何か?
BQ 4-5 肝内結石治療後の長期合併症は何か?
刊行にあたって
日本消化器病学会は、2005 年に跡見裕理事長(当時)の発議によって、Evidence-Based Medicine(EBM)の手法にそったガイドラインの作成を行うことを決定し、3 年余をかけて消化器6疾患(胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、肝硬変、クローン病、胆石症、慢性膵炎)のガイドライン(第一次ガイドライン)を上梓した。ガイドライン委員会を積み重ね、文献検索範囲、文献採用基準、エビデンスレベル、推奨グレードなどEBM 手法の統一性についての合意と、クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など、基本的な枠組み設定のもと作成が行われた。ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)を重要視し、EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員のCOI を公開している。菅野健太郎理事長(当時)のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として継続されたガイドライン作成は、先進的な取り組みであり、わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価される。
第一次ガイドラインに次いで、2014 年に機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)、大腸ポリープ、NAFLD/NASH の4 疾患についても、診療ガイドライン(第二次ガイドライン)を刊行した。この2014 年には、第一次ガイドラインも作成後5 年が経過するため、先行6 疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行われた。改訂版では第二次ガイドライン作成と同様、国際的主流となっているGRADE(The Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)システムを取り入れている。
そして、2019〜2021 年には本学会の10 ガイドラインが刊行後5 年を超えることになるため、下瀬川徹理事長(当時)のもと、医学・医療の進歩を取り入れてこれら全てを改訂することとした。2017 年8 月の第1 回ガイドライン委員会においては、10 ガイドラインの改訂を決定するとともに、近年、治療法に進歩の認められる「慢性便秘症」も加え、合計11 のガイドラインを本学会として発刊することとした。また、各ガイドラインのCQ の数は20〜30 程度とすること、CQ のうち「すでに結論が明らかなもの」はbackground knowledge とすること、「エビデンスが存在せず、今後の研究課題であるもの」はfuture research question(FRQ)とすることも確認された。
2018 年7 月の同年第1 回ガイドライン委員会において、11 のガイドラインのうち、肝疾患を扱う肝硬変、NAFLD/NASH の2 つについては日本肝臓学会との合同ガイドラインとして改訂することが承認された。前版ではいずれも日本肝臓学会は協力学会として発刊されたが、両学会合同であることが、よりエビデンスと信頼を強めるということで両学会にて合意されたものである。また、COI 開示については、利益相反委員会が定める方針に基づき厳密に行うことも確認された。同年10 月の委員会追補ではbackground knowledge はbackground question(BQ)に名称変更し、BQ・CQ・FRQ と3 つのQuestion 形式にすることが決められた。
刊行間近の2019〜2020 年には、日本医学会のガイドライン委員会COI に関する規定が改定されたのに伴い、本学会においても規定改定を行い、さらに厳密なCOI 管理を行うこととした。また、これまでのガイドライン委員会が各ガイドライン作成委員長の集まりであったことを改め、ガイドライン統括委員会も組織された。これも、社会から信頼されるガイドラインを公表するために必須の変革であったと考える。
最新のエビデンスを網羅した今回の改訂版は、前版に比べて内容的により充実し、記載の精度も高まっている。必ずや、わが国、そして世界の消化器病の臨床において大きな役割を果たすものと考えている。
最後に、ガイドライン委員会担当理事として多大なご尽力をいただいた榎本信幸理事、佐々木裕利益相反担当理事、研究推進室長である三輪洋人副理事長、ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生、刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい。
2021 年11 月
日本消化器病学会理事長
小池 和彦
このたび,『胆石症診療ガイドライン2021(改訂第3版)』が発刊された.胆石症は日常診療で比較的遭遇する消化器関連疾患の一つである.2009年に本ガイドラインの初版が発刊され,胆石症診療においてのランドマークとなった.一般的にガイドラインは5年に一度改訂されるのが望ましいとされる.改訂第2版は2016年と少し間が開いたものの,本改訂第3版は藤田直孝作成委員長のもと,5年ぶりに発刊された.今回の作成委員も,現在胆石症診療の第一線の先生方であり,評価委員の先生方もこの分野のauthorityであることは言うまでもない.何よりも今回,作成委員長の肝いりで作成委員,評価委員ともに外科系・内科系から偏りのない人選を行い,意見集約した点において,公平性を目指したガイドラインといえるのではないだろうか.
項目立ては,改訂第2版を踏襲しており,これまで使用していた読者,新しい読者のいずれにも理解しやすいものとなっている.また,最近のガイドラインの潮流として,従来のclinical question(CQ)のなかですでに結論が明らかなものをbackground question(BQ)に,将来の研究課題であるものをfuture research question(FRQ)として別項目をつくり,よりCQの立場,すなわち現在問題となっているポイントを明らかにしている.たとえば,これまでも多くの研究によりすでに広く知られている「どのような総胆管結石例にEPBDは必要か?」はBQとなり,近年の結石除去術の進歩によって,「巨大な総胆管結石に対しても,内視鏡的治療は推奨されるか?」として通常のCQに位置づけられている.一方で,日常診療で行われている,総胆管結石治療後のウルソデオキシコール酸の漫然とした投与についてはまだエビデンスがないため,FRQで「総胆管結石治療後の利胆薬内服は無治療よりも有用か?」と問いかけている.本書の各項目のうちCQは青(本文は黒)に,BQは黒,FRQは濃青を使用しており,読み手側の立場に立って微に入り細を穿つ工夫がされている.なお,学会レベルでもしばしば議論となる「総胆管結石の原発結石と落下結石の鑑別は可能か?」という素朴な疑問は上記の範疇に入らずに,コラムとして解説されている.
本ガイドラインはquestion形式にかかわらず,いずれにも最新の論文が引用されており,本書を読むことで胆石症についての現時点でのエビデンスを知ることができる.すなわち日常診療において最新の胆石症診療を行う一助となると思われる.
以上のように,本書は胆石症診療を行ううえでの道標として,胆石症診療を専門とする方々のみならず,専門外の方々にも役立つ,必携の診療ガイドラインである.
臨床雑誌内科130巻3号(2022年9月号)より転載
評者●東京医科大学消化器内科主任教授 糸井隆夫