乳房超音波診断ガイドライン改訂第4版
編集 | : 日本乳腺甲状腺超音波医学会 |
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ISBN | : 978-4-524-22763-1 |
発行年月 | : 2020年10月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 224 |
在庫
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
用語の定義、検査法、判定法等の標準化のため刊行され改訂を重ねている、乳房超音波診断における指針を示す定本。今改訂では、WHO分類・日本乳癌学会分類の改訂を反映して病理の記載をアップデート。また、エラストグラフィやドプラ法、造影超音波の評価等を充実させた。検診と精査における診断上の考えかたの違いをより明快に記載し、日常診療においてさらに使いやすい内容となっている。
乳房超音波診断ガイドライン改訂第4版(2020年改訂)の主な変更点
I 装置と検査法
A 超音波診断装置,走査条件と検査環境
1 超音波診断装置
2 記録媒体(記録装置)
3 走査条件(条件設定)
4 モニタ,プリンタの調整
5 記 録
6 検査実施件数
B 乳房超音波検査の手技
1 乳房検査の体位
2 検者の姿勢
3 探触子の持ち方
4 探触子の動かし方(操作法)
5 観察範囲
6 操作スピード
7 動的検査(dynamic test)
C 表示法
1 病変の存在部位
2 病変の定量的評価
D 画像処理技術
1 ティッシュハーモニックイメージング(THI)
2 コンパウンド走査
3 音速補正
4 その他
E 精度管理用ファントムを用いた画像劣化の管理
1 目的
2 ファントムの撮像時の注意点と撮像方法
3 評価方法
4 ファントム使用上の注意点
II 乳房の解剖と超音波画像
A 乳房の解剖
1 乳腺の発生
2 乳房の超音波解剖と組織像
3 乳房の解剖とその垂直断面図
B 乳腺の解剖
1 乳腺の超音波解剖と組織像
2 乳腺間質の経年変化・脂肪化
C 乳房構成の変化
III 乳腺疾患の病理
1 日本乳癌学会分類
A 上皮性腫瘍(epithelial tumors)
A-1 良性腫瘍(benign tumors)
1 乳管内乳頭腫(intraductal papilloma)
2 乳管腺腫(ductal adenoma)
3 乳頭部腺腫(nipple adenoma,adenoma of the nipple)
4 腺筋上皮腫(adenomyoepithelioma)
A-2 悪性腫瘍(乳癌)[malignant tumors(carcinomas)]
1 非浸潤癌(noninvasive carcinoma)
2 微小浸潤癌(microinvasive carcinoma)
3 浸潤癌(invasive carcinoma)
4 Paget病(Paget’s disease)
B 結合織性および上皮性混合腫瘍(mixed connective tissue and epithelial tumors)
1 線維腺腫(fibroadenoma)
2 葉状腫瘍(phyllodes tumor)
C 非上皮性腫瘍(nonepithelial tumors)
D その他(others)
1 いわゆる乳腺症(so called mastopathy)
2 過誤腫(hamartoma)
3 乳腺線維症(fibrous disease)
2 WHO分類
A 乳腺上皮系腫瘍(epithelial tumours of the breast)
1 良性上皮増殖性病変および前駆病変(benign epithelial proliferations and precursors)
2 腺症と良性硬化性病変(adenosis and benign sclerosing lesion)
3 腺腫(adenomas)
4 上皮・筋上皮腫瘍(epithelial-myoepithelial tumours)
5 乳頭状腫瘍(papillary neoplasms)
6 非浸潤性小葉新生物(non-invasive lobular neoplasia)
7 非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)
8 浸潤性乳癌(invasive breast carcinoma)
9 まれな腫瘍および唾液腺型腫瘍(rare and salivary gland-type tumours)
10 neuroendocrine neoplasms
B 乳腺の線維上皮系腫瘍と過誤腫(fibroepithelial tumours and hamartomas of the breast)
1 過誤腫(hamartoma)
2 線維腺腫(fibroadenoma)
3 葉状腫瘍(phyllodes tumour)
C 乳頭部の腫瘍(tumours of the nipple)
1 汗管腫様腫瘍(syringomatous tumour)
2 乳頭部腺腫(nipple adenoma)
3 乳腺Paget病(Paget disease of the breast)
D 乳腺の間葉系腫瘍(mesenchymal tumours of the breast)
1 血管系腫瘍(vascular tumours)
2 線維芽細胞および筋線維芽細胞系腫瘍(fibroblastic and myofibroblastic tumours)
3 末梢神経鞘腫瘍(peripheral nerve sheath tumours)
4 その他の間葉系腫瘍および腫瘍様状態(other mesenchymal tumours and tumor-like conditions)
E 乳腺の血液リンパ系腫瘍(haematolymphoid tumours of the breast)
F 男性乳腺の腫瘍(tumours of the male breast)
1 女性化乳房(gynaecomastia)
2 上皮内癌(carcinoma in situ)
3 浸潤癌(invasive carcinoma)
G 乳腺への転移(metastases to the breast)
IV 乳房超音波組織特性
A 超音波組織特性
1 減衰(attenuation)
2 後方散乱(back scattering)
3 各疾患の後方エコーレベルと内部エコーレベルとの関係
4 超音波の音速
5 組織の音速が異なるために発生するひずみ
V 腫瘤
A 腫瘤の所見用語
1 形状(shape)
2 境界(辺縁,周辺,境界部)
3 内部エコー(internal echoes)
4 後方エコー(posterior echoes,posterior features)
5 随伴所見(associated findings)
B 腫瘤の評価
1 特徴所見からの評価
2 充実性腫瘤の良・悪性判定における各所見の意義
3 充実性腫瘤に対する初学者教育用Bモード判定フローチャート
VI 非腫瘤性病変
A 非腫瘤性病変の所見用語
1 所見
2 参考所見
B 非腫瘤性病変の評価
1 乳管の異常
2 乳腺内の低エコー域
3 構築の乱れ
4 多発小嚢胞
5 点状の高エコーを主体とする病変
C 非浸潤性乳管癌における超音波画像所見の頻度(JABTS BC−02研究)
D 参考:乳腺像に変化を与える要素
1 成長・妊娠
2 乳管拡張像の正常バリエーション
VII 主な乳腺疾患の概念と超音波画像
A 悪性疾患
1 非浸潤性乳管癌[ductal carcinoma in situ(DCIS),noninvasive ductal carcinoma]
2 浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma)
3 粘液癌
4 浸潤性小葉癌
5 髄様癌
6 化生癌(metaplastic carcinoma)
7 悪性リンパ腫
B 良性疾患
1 線維腺腫
2 乳管内乳頭腫
3 いわゆる乳腺症
4 嚢胞
5 葉状腫瘍
6 乳腺線維症(fibrous disease)
7 過誤腫
8 乳管腺腫
9 脂肪壊死
10 シリコン肉芽腫
VIII リンパ節の検査
A 正常リンパ節およびその構造
B 乳腺の領域リンパ節
C リンパ節検査の手技
1 検査時の体位
2 観察範囲
D 正常リンパ節の超音波所見
E リンパ節の評価
1 Bモード
2 参考所見
F リンパ節腫大の鑑別診断
G 参考:ACR BI-RADS Atlas ®5th Edition
IX 超音波検診における要精検基準とカテゴリー判定
A 背景
B 要精検基準作成における基本的考え方
C 所見の分類と検診のためのカテゴリー分類
D 腫瘤
1 嚢胞性パターンの判定
2 混合性パターンの判定
3 充実性パターンの判定
E 非腫瘤性病変
1 局所性あるいは区域性の内部エコーを有する乳管拡張
2 区域性あるいは局所性に存在する乳腺内低エコー域
3 構築の乱れ
F 参考所見
G 今回の改訂のポイント
H 所見用紙
X 診断超音波検査におけるカテゴリー判定
XI 乳房超音波ドプラ法と造影超音波
A 乳房超音波ドプラ法:基礎とその臨床的意義
B カラードプラ法(速度モード)の検査手順
1 探触子走査とB モード画像の調整
2 カラー表示エリアの調整
3 パルス繰り返し周波数(PRF)あるいは速度レンジの調整
4 カラーゲインの調整
5 ウォールフィルタ(wall filter)
6 参照周波数(reference frequency)
7 各種血流表示法の種類と特徴
C 血流波形分析の検査手順
1 パルスドプラ法
2 高速フーリエ変換(FFT)波形の調整
3 ドプラスペクトラムのトレース調整,血流波形指標の求め方
D 乳房超音波ドプラ法の臨床的評価
1 乳房超音波カラードプラ法判定基準
2 B モード+ドプラ法の有用性
3 非腫瘤性病変のカラードプラ法
E ペルフルブタンマイクロバブル(ソナゾイド)を用いた乳房造影超音波検査
1 第2世代超音波造影剤:ソナゾイド
2 検査プロトコル
3 検査時のコツと注意点
4 良・悪性の判定基準および診断能
5 乳癌における広がり診断
6 乳癌術前薬物療法における効果判定能
7 時間輝度曲線(time intensity curve:TIC)
8 今後の展望
XII 乳房超音波組織弾性映像法(乳房超音波エラストグラフィ)
A 組織弾性評価の意義と有用性
B 超音波組織弾性映像法(エラストグラフィ)の分類
C 生体組織の弾性特性
1 組織弾性の非線形性(nonlinearity of tissue elasticity)
2 初期圧(pre-load compression)と画質の関係
D 超音波組織弾性映像法の原理
1 strain elastography[歪み(ひずみ)エラストグラフィ]
2 ARFI imaging
3 shear wave elastography
E 検査手技の要点
F エラストグラフィの臨床
1 strain elastography
2 ARFI imaging
3 shear wave elastography
G アーチファクト
1 初期圧過剰によるもの(strain elastography,shear wave elastography共通)
2 BGR sign(strain elastography)
3 応力集中によるもの(strain elastography)
4 ひずみの滲みによるもの(strain elastography)
5 剪断波伝搬の反射・屈折によるもの(shear wave elastography)
6 blue cancer(shear wave elastography)
H 参考:ACR BI-RADS Atlas®5th Edition
XIII 超音波ガイド下インターベンション
A 超音波ガイド下穿刺の基本事項
1 超音波診断装置
2 freehand法とprobe-guided法
3 同一平面法と交差法
4 探触子の消毒
5 ポジショニング
6 術者の条件
7 検査環境・安全対策
B 超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(ultrasound-guided fine needle aspiration cytology:FNAC)
1 適応
2 器具
3 手技
C 超音波ガイド下針生検(ultrasound-guided core needle biopsy:CNB)
1 適応
2 器具
3 手技
D 超音波ガイド下吸引式組織生検(ultrasound-guided vacuum assisted biopsy:VAB)
1 適応
2 被検者への説明
3 手技
4 合併症の対処と予防
E 病理医との連携と安全管理
F 超音波ガイド下の組織マーカー留置
1 適応
2 組織マーカーの種類
参考 所見判定の再現性に関する検討
用語欧文表記
索引
ガイドライン改訂第4版序
本ガイドラインの初版が2004年に遠藤登喜子委員長のもとで発刊されてから早年、第3版からは6年が経ち、この間に超音波装置・技術の目覚ましい進歩がみられている。現在、カラードプラ法の技術はほとんどの装置に搭載されており、その感度もかなり高く評価され、加えてエラストグラフィ(組織弾性映像法)も多くの装置に装備されるようになってきている。Bモードのみで検査を終了する症例もあるが、必要に応じて、Bモード、カラードプラ、エラストグラフィと進めていき、総合して診断(判定)するようになってきている。
技術の進歩だけでなく、診断面でも目覚ましい進歩がみられている。JABTSでは2009年からBC-01研究(JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究)をはじめ、最近ではBC-04研究(乳房腫瘤の超音波診断におけるカラードプラ法判定基準作成およびその有用性に関する多施設研究)を行った。BC-04研究では、多施設から画像を登録していただき、現在の診断基準をたたき台とし、多数の項目について読影者が目合わせを行い、判定項目を二人一組のペアを組み、まずはそれぞれが一次読影、その後、方法を変えて二次読影を行うというかなり時間を要する研究で、参加していただいた読影者の皆様、統計学的解析については山口拓洋教授はじめ東北大学臨床試験データセンターの皆様に多大なご協力・ご支援をいただいた。その解析結果より、良悪性の判定に有用な所見、注意を要する診断のポイント等、多くの点が検証され、研究の成果を論文化するに至った。JABTSから日本の超音波診断法を世界に向けて発信し、世界からも注目されていると言っても過言ではなく、実際に最新のBI-RADS 5th editionでも日本を意識した用語の使用がみられている。
第4版の大きな改訂点は、日本乳癌学会編の乳癌取扱い規約(第18版)で浸潤性乳管癌の分類が変わったこと、WHO分類も5th editionとして改訂されたことに伴うものである。また検診の要精検基準についても研究部会で検証され、変更点が記載され、精度管理の面でも精度管理用ファントム等についての記載が改訂されている。装置を正しく使用し、過剰診断のないように判定するルール作りの礎が作成されている。
本ガイドライン改訂は、多くの方に学んでいただけるガイドラインにしようという関係者の惜しみない労力の上に成り立っている。私の委員長としての期間一杯にわたり、改訂に至るまでご尽力くださったすべての方に深謝し、序文とする。
2020年8月
一般社団法人日本乳腺甲状腺超音波医学会
乳腺用語診断基準委員会
現副委員長 加奥節子