むかしの頭で診ていませんか?皮膚診療をスッキリまとめました
編集 | : 林伸和 |
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ISBN | : 978-4-524-22753-2 |
発行年月 | : 2020年11月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 232 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
「専門」ではないけれども「診る機会」がある、一般臨床医が遭遇する可能性が高い皮膚症状・皮膚疾患および皮膚診療における“従来の考えかたから大きく変わったこと”を取り上げ、要点をギュッと凝縮してオールカラーで分かりやすく解説。「そもそも、どう考えるの?」「具体的にどうするの?」「なぜ考え方が変わったのか?」など、押さえておきたい知識・情報をスッキリ整理。全臨床医におすすめの一冊。
1 顔にできる黒いモノの正体は
2 赤ら顔は病気?
3 下腿に紅斑がいくつかある
4 下肢に水疱を診たら
5 下肢に潰瘍を診たら
6 手足に黒いできものを診たら
7 陰部に難治性紅斑がある
8 全身に紅斑が出ている
9 皮膚に病変がないのに痒い
10 アトピー性皮膚炎のおさらいと最新の知識
11 接触皮膚炎を見逃さないために
12 即時型アレルギーはなぜ起こる
13 花粉症と食物アレルギー
14 しつこい蕁麻疹との付き合い方
15 薬疹に注意
16 重症型の薬疹には何があるか
17 急速進行性間質性肺炎を起こす皮膚筋炎
18 Raynaud現象を診たら
19 強皮症は早めに疑おう
20 乾癬は治る?
21 光線(紫外線)療法とはどんなもの?
22 高齢者のシミとイボを治します
23 日光角化症に注意
24 一般診療で診る褥瘡はどこまで?
25 褥瘡に使う衛生材料の選び方
26 脱毛症は治る?
27 にきびの抗菌薬はいつまで続ける?
28 腋窩のおでき
29 腋臭がつらい
30 多汗症は治る?
31 輸入感染症に注意
32 感染性皮膚疾患で登校(園)していいですか
33 帯状疱疹を診る
34 爪水虫の新しい治療薬
35 疥癬の患者さんが出た
36 正しい靴の履き方:陥入爪,巻き爪の予防のための足育学
索引
序文
30年前には、皮膚科の外用薬はステロイドや抗真菌薬、抗菌薬が中心で、これらを使ってみて効果がなければ皮膚科専門医にコンサルトいただいていました。しかし近年、皮膚科の診断と治療は大きく進歩しています。
診断の視点からは、皮膚筋炎をはじめとする膠原病では自己抗体による分類が進みました。アナフィラキシーの原因となる食物についても詳しく解明されてきています。ダーモスコピーの普及に伴って皮膚がんの診断も変わりつつあります。一方で、国際化が進み、輸入感染症に伴う皮膚疾患も増えてきています。治療面では、アトピー性皮膚炎や乾癬にタクロリムス軟膏、ビタミンD3製剤軟膏、シクロスポリン内服、生物学的製剤(デュピルマブ、抗TNFα抗体など)、ナローバンドUVBによる紫外線療法など新しい治療法が取り入れられています。
本書は、『むかしの頭で診ていませんか?』シリーズの皮膚科版です。皮膚科の進歩を感じていただきながら、一般医が日常診療の中で皮膚疾患を目にした際、あるいは皮膚科専門医にご紹介いただく際の手助けとなることを目的に作成しました。一般医が遭遇する皮膚科のcommon diseaseと、見落としてはいけない皮膚症状を伴う全身性疾患を取り上げました。前半では、部位や症状によって鑑別すべき疾患を包括的にイメージしていただくような項目を集め、後半では個々の疾患や症状を取り上げています。気軽に手に取っていただけると幸いです。
2020年10月
編者
内科診療のなかで,患者さんからちょっと皮膚をみてほしいと,手足,腹部,顔面などの様子を拝見する機会は多い.とくに糖尿病を専門にしている当方は,患者さんが定期受診のついでにと,しばしば血糖値のことは置いておき患者さんの皮膚と向かい合っている時間がある.インターネットが発達した今日では,患者さんも予習されていて,「○○病では
ありませんか」と具体的な病名も準備されている.そのような内科医の助けとなる本書をレビューする機会をいただいた.
虎の門病院皮膚科の林伸和部長が編集を担当され,36のトピックスを集めた『むかしの頭で診ていませんか? 皮膚診療をスッキリまとめました』は,南江堂で2015年から刊行されている内科系疾患を中心とした非専門医が診るための診療のコツをまとめたシリーズのなかで初めて内科系以外のジャンルを特集したものである.皮膚科は内科的な側面と外科的な側面がある診療科だと当方は感じており,虎の門病院の林先生の前任者である大原國章前部長や後継の岸晶子医長は皮膚外科を専門とする外科医である.一方で林先生は痤瘡や化膿性汗腺炎,抗がん薬による手足症候群などを専門とする皮膚内科医である.したがって本書では,とくに内科医に関連のある皮膚疾患のポイントが随所に散りばめられており,一読すれば日ごろ知りたかった皮膚病の最新情報を短時間で確認することが可能となっている.
たとえば,「下肢に水疱を診たら」の項目では,高齢者にみられやすい類天疱瘡がまず簡潔に紹介され,診断のポイントと悪性腫瘍の合併に気をつけるという内科医に重要な情報が続く.さらに,糖尿病薬のDPP4阻害薬と関連したDDP4阻害薬関連類天疱瘡や糖尿病性水疱との鑑別のポイント,見逃しやすい虫刺症があげられている.ネコノミ刺症が下肢に多く,緊満した水疱を形成するとは初見であった.
「むかしの頭で診ていませんか?」とのタイトルのとおり,最新治療の紹介も満載である.アトピー性皮膚炎の治療の項では,ステロイド外用,tacrolimus外用によるプロアクティブ療法(寛解維持療法)の紹介,さらに最新治療である抗IL‒4Rα抗体(dupilumab)や外用JAK阻害薬の適応等が紹介されている.
どのタイミングで皮膚科専門医への受診を勧めるかも日常診療で内科医が悩む点である.「しつこい蕁麻疹との付き合い方」の項では,抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの従来治療では効果不十分な慢性蕁麻疹につき,専門医の診療のもとヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体(omalizumab)による治療強化の選択肢が紹介されている.
皮膚科緊急症の代表である重症薬疹(Stevens‒Johnson症候群や中毒性表皮壊死症(TEN),薬剤性過敏症症候群(DIHS))は症例の写真を含めて詳細に記載されている.DIHSの軽快後,ときに1型糖尿病や甲状腺疾患などの自己免疫疾患が発症することは内科医として押さえておきたいポイントである.
そのほか,間質性肺炎を合併する皮膚疾患,内科を受診することが多いRaynaud症候群など内科医を悩ませる皮膚診療のポイントが紹介されている.本書を2時間くらいで通読したあとは,患者さんから皮膚や手足を診てほしいといわれたときへの心積もりがスッキリ整ったように感じた.すべての項が現在第一線でご活躍の皮膚科専門医が執筆されてい
る.特定の領域に詳しい皮膚科をお探しの際にも有用であろう.書店の内科のコーナーに置いていただければ,内科医必読の一冊となること間違いなしの,お勧めの書籍である.
臨床雑誌内科128巻2号(2021年8月号)より転載
評者●虎の門病院内分泌代謝科 部長 森 保道