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包括的心臓リハビリテーション

編集 : 後藤葉一
ISBN : 978-4-524-22681-8
発行年月 : 2022年6月
判型 : B5
ページ数 : 432

在庫あり

定価8,580円(本体7,800円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

心臓リハの標準テキストの好評書『狭心症・心筋梗塞のリハビリテーション(改訂第4版)』を全面的に内容刷新.前書の心疾患の病態理解から評価法,心リハの実際までをエビデンスに基づき解説するスタンスを引継ぎながら,近年の進歩や最近の動向をふまえ,重症心不全・フレイル合併超高齢者・TAVI後・不整脈デバイス装着後の患者などの心リハを追加し,最新の「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」に準拠.多面的・包括的な心リハを学べる新しい教科書としてすべての医療者に役立つ一冊.

第1章 心臓リハビリテーション総論
 A 心臓リハビリテーションの定義と歴史的変遷
  1. 定義と構成要素
   a. 心臓リハビリテーションの定義
   b. 心臓リハビリテーションの構成要素
  2. 時期的区分
  3. 歴史的変遷
   a. 1950〜60年代:長期臥床から早期離床へ
   b. 1960〜70年代:AMI後の早期社会復帰をめざす入院型段階的プログラム
   c. 1970〜80年代:入院型から外来通院型心臓リハビリテーションへ
   d. 1980〜90年代:長期予後とQOLの改善をめざす包括的外来心臓リハビリテーション
   e. 2000年以降:心不全に対する外来心臓リハビリテーション・運動療法と疾病管理プログラム
   f. 日本における心臓リハビリテーションの歴史
  4. 対象疾患
 B 包括的心臓リハビリテーションプログラムとは
  1. 包括的心臓リハビリテーションの概念
  2. 心臓リハビリテーションのチーム構成
  3. 施設基準,設備・機器
   a. 2020年度診療報酬改定
   b. 対象となる患者
   c. 人員要件
   d. 面積要件,設備
   e. 必要な機器
  4. 包括的心臓リハビリテーションプログラムの全体像
 C 心臓リハビリテーションにおける重要な概念
  1. 運動耐容能,身体活動能力
   a. 運動耐容能
   b. 身体活動能力
  2. 身体デコンディショニング,廃用症候群
   a. 運動耐容能低下
   b. 起立性低血圧
  3. フレイル,サルコペニア,カヘキシア
   a. フレイル
   b. サルコペニア
   c. カヘキシア
  4. 虚血性心疾患の一次予防と二次予防
   a. 一次予防・二次予防の定義
   b. 一次予防・二次予防の管理目標
   c. 今後の課題
  5. 疾病管理プログラム
   a. 心疾患患者の退院後管理の重要性
   b. 疾病管理プログラムとは
   c. 冠動脈疾患における疾病管理の意義
   d. 冠動脈疾患の疾病管理プログラムとしての外来心臓リハビリテーション
   e. 心不全の疾病管理とセルフケア
   f. 心不全の疾病管理プログラムとしての外来心臓リハビリテーション
   g. 疾病管理プログラムの課題
 D 心臓リハビリテーションの有効性と安全性のエビデンス
  1. 心臓リハビリテーション・運動療法の効果の全体像
  2. 運動耐容能・身体機能に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   a. 心臓リハビリテーション・運動療法による運動耐容能の改善効果:一般的事項
   b. 心臓リハビリテーション・運動療法による peak VO2増加の意義
   c. 心臓リハビリテーションによる身体機能(身体活動能力)の改善効果とその意義
   d. 特別な患者群に対する心臓リハビリテーション・運動療法の運動耐容能改善効果
  3. 自覚症状・QOLに対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   a. 自覚症状に対する効果
   b. 不安・抑うつに対する効果
   c. QOLに対する効果
  4. 長期予後に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   a. 冠動脈疾患(AMI)の長期予後に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   b. 安定狭心症患者の長期予後に対するOMTと心臓リハビリテーション・運動療法
   c. PCI後患者の長期予後に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   d. 心臓術後(CABG後)患者の長期予後に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
   e. 慢性心不全の長期予後に対する心臓リハビリテーション・運動療法の効果
  5. 心臓リハビリテーション・運動療法の生物学的効果
   a. 冠危険因子(血中脂質,耐糖能,血圧,肥満)に対する効果
   b. 血管内皮機能・冠循環・心機能に対する効果
   c. 骨格筋に対する効果
   d. 自律神経機能に対する効果
   e. バイオマーカー・神経体液因子・酸化ストレス指標に対する効果
   f. 血液凝固線溶系に対する効果
   g. 情報伝達シグナルに対する効果
  6. 心臓リハビリテーション・運動療法の予後改善効果の機序
  7. 心臓リハビリテーションの安全性のエビデンス
  8. ガイドラインにおける心臓リハビリテーション・運動療法の位置づけ
 E 心臓リハビリテーションの現状
  1. 診療報酬制度と心臓リハビリテーション
   a. 心臓リハビリテーションと保険診療の歴史
   b. 疾患別リハビリテーションで複数疾患合併の扱い
   c. 回復期リハビリテーション病棟での心疾患の扱い
   d. 算定日数の上限の除外対象患者(150日期限超えの扱い)
   e. 包括的医療費支払い制度(diagnosis procedure combination:DPC)病棟での算定
   f. 今後の課題
  2. 日本における心臓リハビリテーションの現状と課題
   a. わが国の疾患別リハビリテーションの現況
   b. 医療機関における心臓リハビリテーション実施状況
   c. 心疾患患者の心臓リハビリテーション参加率
   d. 心臓リハビリテーションの継続率・完了率
   e. 心臓リハビリテーションプログラムの質
   f. 心臓リハビリテーションの社会的認知度
   g. わが国における心臓リハビリテーション普及のための課題と方策

第2章 心血管疾患の病態・診断・治療
 A 心血管疾患の疫学と冠危険因子
  1. 心血管疾患の疫学
  2. 冠危険因子
   a. 高血圧
   b. 脂質異常症
   c. 糖尿病
   d. 慢性腎臓病(CKD)
   e. 肥満・メタボリックシンドローム
   f. 喫煙
   g. 身体不活動
  3. 動脈硬化と心血管疾患
 B 冠動脈疾患
  1. 冠動脈疾患の分類
   a. 冠動脈の解剖と灌流域
   b. 冠動脈疾患の分類
  2. 狭心症
   a. 安定労作性狭心症
   b. 不安定狭心症
   c. 冠攣縮性狭心症
   d. 微小血管狭心症
  3. 急性心筋梗塞
   a. 定義・分類
   b. 治療
   c. 合併症
   d. 予後
  4. 冠血行再建術:カテーテル治療,冠動脈バイパス治療
   a. 冠血行再建術を考慮する場面
   b. 冠血行再建術の選択法
   c. PCI
   d. CABG
  5. 冠動脈疾患の二次予防
   a. 禁煙
   b. 肥満,体重管理
   c. 血圧管理
   d. 薬物療法
   e. 糖尿病管理
   f. 身体活動
   g. 外来心臓リハビリテーション
 C 心不全
  1. 心不全の病態別分類,原因疾患,病態
   a. 心不全の病態別分類
   b. 原因疾患
   c. 病態の特徴
  2. 心不全の身体機能分類(NYHA分類)とステージ分類
   a. 心不全の身体機能分類
   b. ステージ分類
  3. 急性心不全:診断・治療・予後
   a. 診断
   b. 治療
   c. 予後
  4. 慢性心不全:診断・治療・予後
   a. 診断
   b. 治療
   c. 予後
  5. 心不全における運動耐容能低下の機序
   a. 運動耐容能指標としての最高酸素摂取量
   b. 中枢性因子
   c. 末梢性因子
   d. 運動耐容能低下の主要機序
  6. 心不全における運動耐容能低下と予後の関係
   a. 運動耐容能と予後の関連
   b. β遮断薬,年齢,性別,肥満の影響
   c. 最大負荷の重要性
   d. 運動耐容能の変化と予後の関連
   e. peak VO2とその他の指標による予後比較
 D 弁膜症・心筋疾患・先天性心疾患
  1. 弁膜症
   a. 弁膜症の最近の動向
   b. 大動脈弁狭窄症(AS)
   c. 僧帽弁閉鎖不全症/僧帽弁逆流症(MR)
   d. 三尖弁閉鎖不全症 /三尖弁逆流症(TR)
  2. 心筋疾患:心筋症・心筋炎
   a. 心筋症とは?
   b. 肥大型心筋症(HCM)
   c. 拡張型心筋症(DCM)
   d. 二次性心筋症
  3. 先天性心疾患
   a. 成人先天性心疾患の頻度
   b. 心房中隔欠損症
 E 不整脈
  1. 不整脈の分類・疫学
   a. 不整脈の分類
   b. 不整脈の疫学,機序
  2. 不整脈の診断
   a. 自覚症状
   b. 不整脈の検査
   c. 期外収縮の診断
   d. 徐脈性不整脈の診断
   e. 頻脈性不整脈の診断
  3. 不整脈の治療
   a. 期外収縮の治療
   b. 徐脈性不整脈の治療
   c. 頻脈性不整脈の治療
 F 肺動脈疾患・血管疾患
  1. 肺動脈疾患
   a. 肺高血圧症の診断と分類
   b. 肺高血圧症の治療と予後
  2. 大血管疾患
   a. 大動脈瘤
   b. 大動脈解離
   c. 高安動脈炎(大動脈炎症候群)
  3. 末梢動脈疾患 柳生 剛
   a. 下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)
   b. ASO以外の末梢動脈疾患
   c. 下肢以外の末梢動脈疾患
   d. 急性動脈閉塞
   e. 重症虚血肢

第3章 運動負荷試験と循環機能評価法
 A 運動負荷試験総論
  1. 運動に対する心血管反応
   a. 運動様式の影響(動的運動・静的運動)
   b. 体位の影響(臥位・座位・立位)
   c. 運動強度の影響(有酸素運動・無酸素運動)
  2. 運動負荷試験の目的,種類,禁忌,実際の手順
   a. 運動負荷試験の目的
   b. 運動負荷試験の種類
   c. 運動負荷試験の禁忌
   d. 運動負荷試験の実際の手順
  3. 運動負荷試験の中止基準
 B 運動負荷心電図
  1. 運動負荷心電図による心筋虚血の判定
   a. ST低下
   b. ST低下以外の判定基準
  2. 運動負荷試験における不整脈の評価
   a. 上室期外収縮(supraventricular premature contraction:SVPC)
   b. 心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)
   c. 心房細動・心房粗動・発作性上室頻拍
  3. Holter心電図ほかにおける虚血および不整脈の評価
 C 心肺運動負荷試験(CPX)
  1. CPXの意義,実施方法
   a. CPX機器と負荷方法
   b. 校正
   c. CPXの実施方法
  2. CPXで得られる指標とその解釈,活用法
   a. パラメーター
   b. 代表疾患のCPX
  3. CPXの結果に基づく運動処方の決め方
 D CPX以外の身体機能評価法
  1. 身体活動量の評価法とその活用
   a. 測定方法
   b. 臨床的意義
  2. 6分間歩行試験
   a. 実施方法
   b. 臨床的意義
   c. 6分間歩行試験実施の禁忌
   d. 測定時の注意点
  3. short physical performance battery(SPPB)・その他の身体機能評価法
   a. SPPB
   b. 歩行速度
   c. 片脚立位時間
  4. 骨格筋機能(筋力・筋量)の評価
   a. 筋力
   b. 筋量
 E 循環機能評価法:心筋虚血と心不全の評価を中心に
  1. 心エコー図検査による循環機能評価
   a. TTEの基本的な画像
   b. TEEの基本的な画像
   c. 心機能評価
   d. 壁運動評価─狭心症・心筋梗塞
   e. 弁膜症評価
   f. 冠血流予備能(coronary flow reserve:CFR)検査
   g. dyssynchronyの評価
  2. 核医学による心筋虚血と心不全の評価
   a. 心筋血流SPECTおよびPETについて
   b. 心筋虚血の評価:負荷心筋血流SPECT
   c. 心筋生存性(viability)の評価
   d. 心不全の評価
  3. CT・MRIによる心筋虚血と心不全の評価
   a. CTによる心筋虚血評価
   b. 負荷心筋パーフュージョンMRI
   c. 心臓MRIによる心筋梗塞・心筋症の診断
  4. 観血的検査による循環機能評価法(Swan︲Ganzカテーテル,冠動脈造影,FFRなど)
   a. 右心(Swan︲Ganz)カテーテル
   b. 冠動脈造影(coronary angiography:CAG)
   c. 冠動脈FFR

第4章 運動療法総論
 A 運動療法の対象患者,適応と禁忌
  1. 運動療法の対象患者
  2. 運動療法の適応と禁忌
  3. 患者選択とリスク層別化
 B 運動療法の分類と運動様式
  1. 目的・形態による分類
   a. 目的別
   b. 形態別
  2. 運動様式による分類
   a. 有酸素運動
   b. レジスタンストレーニング
   c. 呼吸筋トレーニング
   d. 高強度インターバルトレーニング
 C 運動処方(定義,要素,決定方法,定期的評価と見直し)
  1. 運動処方の定義,要素,目的
  2. 運動処方の決定方法
   a. CPXを用いた運動処方
   b. CPXを併用しない運動処方
   c. レジスタンストレーニングの処方
   d. 心臓リハビリテーションにおける運動処方の定期的評価と見直しについて
 D 運動療法における安全確保 折口秀樹
  1. 運動療法のリスク
   a. 有害事象の種類
   b. 有害事象の頻度
  2. 運動療法の中止基準
   a. 運動療法プログラムからの中止離脱基準
  3. 運動中の安全確保・事故防止対策
   a. 運動中の事故防止のための安全確保・事故防止策
 E 運動療法の実際
  1. ベッドサイドにおける心臓リハビリテーション・運動療法の実際
   a. ベッドサイドにおける心臓リハビリテーションの目的
   b. ベッドサイドにおける運動療法の方法
   c. ベッドサイドでの運動療法の進行基準
   d. ベッドサイドでの運動療法における留意点
  2. 心臓リハビリテーション室における運動療法の実際
   a. 心臓リハビリテーション室での運動療法の実施方法
   b. 心臓リハビリテーション室運営の実際
  3. 外来心臓リハビリテーションにおける運動療法の実際
   a. 外来心臓リハビリテーションにおける運動療法の目的
   b. 外来心臓リハビリテーションの流れおよび注意事項
   c. 外来運動療法の実施方法
   d. 在宅運動療法との併用の工夫
  4. 在宅運動療法と注意点
   a. 在宅運動療法の実践
   b. 在宅運動療法の注意点
   c. 在宅運動療法から包括的在宅心臓リハビリテーションへ

第5章 主要な心血管疾患に対する心臓リハビリテーション・運動療法
 A 急性心筋梗塞(急性冠症候群を含む)
  1. 急性期心臓リハビリテーション(ICU・CCU,病棟)
   a. 急性期心臓リハビリテーションの目的(目標)
   b. ICU・CCU, 病棟での急性期心臓リハビリテーションの実際
   c. 急性期心臓リハビリテーションの際の注意点
   d. ICU・CCU における超急性期心臓リハビリテーション
  2. 回復期心臓リハビリテーション(心臓リハビリテーション室,外来)
   a. 回復期心臓リハビリテーションの目的(目標)
   b. 心臓リハビリテーション室・外来での回復期心臓リハビリテーションの実際
   c. 在宅運動療法指導
  3. 維持期心臓リハビリテーション(外来,地域・在宅)
   a. 維持期心臓リハビリテーションの目的
   b. 外来での維持期心臓リハビリテーションの実際
   c. 地域や在宅での維持期心臓リハビリテーションの実際
   d. 維持期心臓リハビリテーションの際の注意点
 B 狭心症
  1. 冠動脈インターベンション後
   a. 心臓リハビリテーションの目的と効果
   b. 実施法
  2. 安定労作性狭心症(虚血残存例)
   a. 薬物療法とPCIの比較
   b. 心臓リハビリテーションの目的と効果
   c. 実施方法
   d. 注意点
 C 心不全
  1. 急性心不全
   a. 急性心不全に対する心臓リハビリテーションの目的
   b. 急性心不全に対する心臓リハビリテーションのエビデンス
   c. 急性心不全入院中の心臓リハビリテーションの適応
   d. ベッドサイド心臓リハビリテーション
   e. 静注強心薬投与中の重症心不全症例に対する心臓リハビリテーション
   f. リスクと中止基準
  2. 慢性心不全
   a. 慢性心不全に対する心臓リハビリテーション・運動療法の適応,禁忌,安全性
   b. 慢性心不全に対する心臓リハビリテーション・運動療法の実際
   c. 外来心臓リハビリテーションにおける心不全モニタリング
   d. 心不全の心臓リハビリテーションにおける患者教育
   e. HFpEFの心臓リハビリテーション・運動療法
 D 心臓手術後(冠動脈バイパス術,弁膜症手術)
  1. 冠動脈バイパス術後・弁膜症手術後
   a. 冠動脈バイパス術の特徴
   b. 弁膜症手術の特徴
   c. 手術前のオリエンテーション
   d. 手術後の急性期心臓リハビリテーションプログラム
   e. 回復期リハビリテーションへ
  2. TAVI後
   a. SAVRとTAVIの違い
   b. TAVIの特徴・合併症
   c. TAVI後の心リハの特徴
 E 不整脈・デバイス埋め込み後
  1. 不整脈合併患者(期外収縮,非持続性VT,心房細動など)
   a. 心室性不整脈(期外収縮・非持続性VT)を有する患者に対する心臓リハビリテーションの効果
   b. 心室性不整脈(期外収縮・非持続性VT)を有する患者への運動処方と注意事項
   c. 心房細動を有する患者に対する心臓リハビリテーションの効果
   d. 心房細動合併患者における運動処方と注意事項
  2. ペースメーカ,植込み型除細動器(ICD)・両心室ペーシング機能付きICD(CRTD)植込み後
   a. ペースメーカ,ICD・CRTD 植込み後の患者に対する心臓リハビリテーションの効果
   b. ペースメーカ,ICD・CRTD 植込み後の患者における心肺運動負荷試験(CPX)の役割と注意点
   c. ペースメーカ,ICD・CRTD植込み後患者における運動処方と注意事項
 F 肺高血圧症(肺動脈性高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症,BPA後,PEA後)
  1. 肺動脈性高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)
   a. PAH患者における心臓リハビリテーションの有効性のエビデンス
   b. 心臓リハビリテーションの実際と注意点
  2. CTEPH, バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)後,肺動脈内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)後
   a. 心臓リハビリテーションの位置づけと有効性のエビデンス(欧米と日本)
   b. 心臓リハビリテーションの実際と注意点
 G 大動脈疾患(解離,術後,ステントグラフト後)
  1. 大血管疾患における心臓リハビリテーションの有効性
  2. 大動脈瘤術後,ステントグラフト内挿術後
   a. 外科手術
   b. 術後のリハビリテーション
   c. 病態別の手術・非手術例における心臓リハビリテーションプログラム
  3. 急性大動脈解離
   a. 内科的治療
   b. 外科的治療
   c. 心臓リハビリテーションプログラム
   d. 心臓リハビリテーション進行上の注意と合併症
 H 末梢動脈疾患
  1. 運動療法の有効性
  2. PADに対する運動療法の実際
   a. メディカルチェック
   b. 運動負荷試験
   c. 運動療法プロトコル
   d. 運動療法と薬物療法の組み合わせ
   e. 患者教育の重要性
   f. 運動弱者に対するアプローチ

第6章 特別な患者群・環境下における心臓リハビリテーション・運動療法
 A 集中治療室における早期心臓リハビリテーション
  1. 心臓リハビリテーションにおける早期離床の意義
  2. 長期臥床の循環器系への影響
  3. 集中治療室での急性期心臓リハビリテーション
  4. 早期心臓リハビリテーション実施上の注意点
 B 重症心不全患者
  1. 静注強心薬投与中の重症心不全患者(血行動態安定例)
   a. 静注強心薬投与中の重症心不全患者における疾患・病態の特徴
   b. 静注強心薬投与中の重症心不全患者に対する心臓リハビリテーションの位置づけ
   c. 集中治療室における静注強心薬投与中患者の心臓リハビリテーション
   d. 一般病棟における静注強心薬投与中患者の心臓リハビリテーション
   e. 心臓リハビリテーション実施に際しての注意事項
  2. 補助人工心臓装着中の重症心不全患者
   a. 植込み型 LVADについて
   b. 植込み型 LVAD装着患者に対する心臓リハビリテーションの目標
   c. 植込み型 LVAD装着患者に対する心臓リハビリテーションの適応
   d. 心臓リハビリテーション実施前に確認すること
   e. 心臓リハビリテーションを実施するにあたって
   f. 心臓リハビリテーションの中止基準について
 C 心臓移植後患者
  1. 心臓移植後患者の運動耐容能
  2. 移植心における運動時の循環反応
  3. 心臓移植後の運動療法
   a. 拒絶反応と免疫抑制療法による易感染性
   b. 除神経心の特性
   c. ドナー心の心機能
   d. 四肢筋力の低下やデコンディショニング
   e. ステロイドの長期使用による骨密度低下
 D フレイル合併超高齢患者
  1. 超高齢患者の評価方法
   a. 身体機能と運動耐容能
   b. 認知・精神機能
   c. 社会的情報
   d. 合併症
  2. 心臓リハビリテーション介入方法
   a. フレイル合併超高齢患者の運動療法・運動処方
   b. フレイル合併超高齢患者の疾病管理・注意点
 E 慢性多重併存疾患保有患者
  1. 脳卒中合併心疾患患者
   a. 評価方法
   b. 運動処方
   c. 注意点,リスク管理
  2. 運動器疾患合併疾患患者
   a. 評価方法(禁忌含む)
   b. 運動処方
   c. 注意点,リスク管理
  3. 慢性腎臓病合併心疾患患者
   a. 慢性腎臓病患者と心血管疾患
   b. リハビリテーション・運動療法の効果と実際
   c. リハビリテーション・心腎連関
 F がん合併心疾患患者に対する心臓リハビリテーション・運動療法
  1. がん医療の進歩と腫瘍循環器学
  2. 腫瘍循環器リハビリテーション(CORE)
  3. COREの必要性,実施上の留意点および今後の課題
 G 緩和ケアにおける心臓リハビリテーション
  1. 心不全緩和ケアの概要
  2. 緩和的心臓リハビリテーションの実際
  3. 終末期における心臓リハビリテーションのエビデンス
  4. 心臓リハビリテーションとAdvance Care Planning
 H 高温環境下における運動療法と熱中症予防
  1. 熱中症とは
  2. 熱中症の症状と重症度分類
  3. 高温時の運動療法の指針
  4. 運動中の熱中症予防のための注意点
第7章 心臓リハビリテーションにおける栄養と食事療法
 A 心臓リハビリテーションにおける栄養評価
  1. 心臓リハビリテーションにおける栄養評価の意義
  2. 心臓リハビリテーションにおける栄養評価指標と栄養評価のタイミング
   a. 現病歴の正確な評価
   b. 問診・栄養評価ツールを用いた栄養評価
   c. 体格・体組成の測定
   d. 身体機能の評価
   e. エネルギー収支バランスの測定
   f. 血液・尿検査による評価
   g. CTや超音波(エコー図)などによる筋肉量や脂肪量の評価
 B 冠動脈疾患患者における栄養指導・食事療法の実際
  1. 食事療法
   a. 適正体重の維持
   b. 適正な栄養素配分
   c. 脂質
   d. コレステロール摂取量
   e. 日本の伝統的な食事(The Japan Diet)
  2. 栄養指導の実際
   a. 問題行動の特定
   b. 問題行動における前後関係のアセスメント
   c. 介入技法の適用
   d. 効果の維持
 C 心不全患者における栄養指導・食事療法の実際
  1. 栄養指導
  2. 食塩
  3. エネルギー
  4. 油脂(脂質)
  5. 飲酒
 D 高齢サルコペニア(るい痩)患者における栄養介入の実際
  1. 高齢サルコペニアに対する栄養管理の考え方
  2. 経口栄養補助食品の選択
  3. 経口摂取が困難な場合

第8章 心臓リハビリテーションにおけるQOL評価および精神心理サポート
 A 心臓リハビリテーションにおけるQOL評価(評価方法,指標)
  1. 心臓リハビリテーションにおけるQOL評価の意義,評価方法
   a. 心臓リハビリテーションとQOL
   b. QOL概念
   c. 健康を中心にみたQOL
   d. QOL評価における留意点
   2. QOL指標とその活用
   a. QOLの尺度
   b. 心臓リハビリテーションの現場におけるQOL評価の尺度
   c. 包括的尺度と疾患特異的尺度の使い分けについて
 B 心臓リハビリテーションにおける精神心理的評価(不安・抑うつの評価方法,指標)
  1. 心臓リハビリテーションにおける不安・抑うつ評価の意義,評価方法
   a. 心理学的状態が心疾患に及ぼす影響
   b. 心臓リハビリテーションにおける心理的サポートの重要性
   c. 心不全における不安と抑うつ症状
   d. 不安の心理学的状態と心疾患
   e. 抑うつの心理的学状態と心疾患
   f. 心不全患者における不安・抑うつの心理的介入
   g. 心不全患者に対する抑うつの治療効果
   h. 心理アセスメントの必要性
   i. 心理アセスメントを行う場合の注意点
   j. 心理検査による心理アセスメント
   k. 心理検査の種類と選び方
  2. 不安の指標とその活用
   a. 顕在性不安尺度(Manifest Anxiety Scale:MAS)
   b. 状態 ・特性不安検査(State︲Trait Anxiety Inventory:STAI, Form X)
  3. 抑うつ指標とその活用
   a. 自己評価式うつ性尺度(Self︲rating Depression Scale:SDS)
   b. Beck 抑うつ質問票(Beck Depression Inventory︲Second Edition:BDI︲II)
   c. うつ病(抑うつ状態)自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale: CES︲D)
   d. HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)
   e. PHQ︲9(Patient Health Questionnaire︲9)
   f. 心臓リハビリテーション現場における心理アセスメントツール使用の実際
 C 心臓リハビリテーションにおける心理的介入・指導の実際
  1. 心臓リハビリテーションにおける精神科医・心理士の関わり
  2. 心臓リハビリテーションにおいて心理サポートを誰がどう行うか
   a. 心臓リハビリテーションにおける「こころのサポート」
   b. 精神科医や心理職がいない環境でのサポート方法
  3. 集中治療室(CCU・ICU)における心理サポートの実際
   a. せん妄
   b. ICU・CCUでの特殊な経験が患者の心理に与える影響
  4. 回復期心臓リハビリテーションにおける心理サポートの実際
   a. これまでの生活習慣の修正に伴うストレス
   b. 元の生活に戻る準備と変化のストレス
   c. 回復期心臓リハビリテーションにおける不安感
   d. 回復期における抑うつ症状

第9章 心臓リハビリテーションにおける疾病管理と患者教育
 A 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理と患者教育
  1. 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理
   a. 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理の必要性
   b. 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理の意義
   c. 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理の内容
   d. 外来心臓リハビリテーションにおける疾病管理の具体的方法
  2. 外来心臓リハビリテーションにおける患者教育の意義,エビデンス
   a. 外来心臓リハビリテーションにおける患者教育の意義
   b. 外来心臓リハビリテーションにおける患者教育のエビデンス
   c. ガイドラインでの位置づけ
  3. 外来心臓リハビリテーションにおける患者教育の実際,具体的方法,評価
   a. 冠動脈疾患
   b. 慢性心不全
   c. 高齢患者
  4. 退院後生活での行動変容をいかに実現するか
   a. 退院後生活指導のポイント
   b. 退院後の生活における行動変容に向けた問題点を可視化する
   c. 入退院を頻回に繰り返す心不全患者の場合
   d. 心不全療養指導士制度
   e. 遠隔医療と地域病診連携
   f. スマホアプリによる疾病管理
   g. 循環器病プレシジョンメディスンとしての外来心臓リハビリテーション
 B 外来心臓リハビリテーションにおける冠危険因子管理・禁煙指導
  1. 外来心臓リハビリテーションにおける冠危険因子管理の実際
   a. 冠危険因子管理のための外来心臓リハビリテーションの位置づけ
   b. 心筋梗塞急性期で生じる冠危険因子の変化
   c. 冠危険因子の管理目標と留意点
   d. 参加継続のための工夫
   e. ヘルスリテラシーの向上
  2. 外来心臓リハビリテーションにおける禁煙指導の実際
   a. 心臓リハビリテーションにおける禁煙の必要性
   b. 新種のたばこ製品
   c. 禁煙指導ガイドライン
   d. 禁煙指導の実際
 C 外来心臓リハビリテーションにおける心不全の疾病管理・生活指導
  1. 外来心臓リハビリテーションにおける心不全の疾病管理の意義
  2. 外来心臓リハビリテーションにおける心不全患者の疾病管理・生活指導の実際
   a. 外来通院方式による運動処方に基づく運動療法
   b. 慢性心不全の治療アドヒアランス遵守・自己管理への動機づけとその具体的方法
   c. 心不全増悪の早期徴候の発見および心不全再入院を未然に防止するための対策
 D 復職指導と運動許容範囲
  1. 心疾患患者の復職指導の実際
   a. 器質的心疾患への対応
   b. デバイスが植込まれている場合
   c. 自動車運転について
  2. 心疾患患者の運動許容範囲
   a. 運動許容範囲設定のための基本的な考え方

第10章 心臓リハビリテーションの立ち上げと運営
 A 心臓リハビリテーションの新規立ち上げ
  1. 心臓リハビリテーションの新規立ち上げと施設基準
   a. 新規立ち上げへの準備
   b. 施設(T)と施設(U)の選択
   c. 入院心臓リハビリテーションのみか,外来心臓リハビリテーションも実施するか
  2. 心臓リハビリテーションの新規立ち上げに必要なもの
   a. ハード面で必要なもの
   b. ソフト面で必要なもの
  3. 心臓リハビリテーションの採算性
  4. 心臓リハビリテーション立ち上げ後の運営
   a. 心臓リハビリテーションプログラムの質の管理
   b. 初期参加率の向上方策
   c. 外来心臓リハビリテーション継続率の向上方策
 B 心臓リハビリテーションにおける各職種の役割と協働
  1. 心臓リハビリテーションにおける各職種の役割と協働
   a. チーム医療における協働のモデル
   b. 包括的心臓リハビリテーション
  2. 心臓リハビリテーションにおける医師の役割
   a. 医師の果たすべき役割
   b. 具体的業務内容
  3. 心臓リハビリテーションにおける看護師の役割
   a. 包括的心臓リハビリテーションにおける看護師参画の意義
   b. 心臓リハビリテーションにおける看護師の役割
  4. 心臓リハビリテーションにおける理学療法士・作業療法士の役割
   a. PTの役割
   b. OTの役割
  5. 心臓リハビリテーションチームのなかで管理栄養士が果たす役割
   a. 栄養管理業務の変化
   b. 集中治療室における管理栄養士の役割
   c. 一般病棟における管理栄養士の役割とカンファレンスの工夫
   d. 栄養指導:自己管理能力育成の役割
 C 心臓リハビリテーションの運営の実際
  1. 心臓リハビリテーションにおけるカンファレンス
  2. 心臓リハビリテーションにおける実施計画書
  3. 心臓リハビリテーション参加率・継続率を高める方法
 D 心臓リハビリテーションにおけるリスク管理
  1. 心臓リハビリテーションにおける医療安全
   a. 心臓リハビリテーションにおいて発生しうる事故とその対応
   b. 日常における医療安全対策
   c. 医療事故の定義とその対応
  2. 心臓リハビリテーションにおける感染対策
   a. リハビリテーション医療と医療関連感染の関係
   b. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA) などの院内感染と外来心臓リハビリテーションにおける持ち込み予防対策
 E 心臓リハビリテーションの医療経済評価
  1. 心臓リハビリテーションの採算性
   a. 心臓リハビリテーションの採算性
   b. 心臓リハビリテーションの採算性向上への対策
  2. 心臓リハビリテーションの医療経済学評価
   a. 医療経済学評価(費用と患者アウトカム)の概念
   b. 心臓リハビリテーションの医療経済学的な評価の傾向

第11章 心臓リハビリテーションにおける連携
 A 心臓リハビリテーションにおける連携
  1. 心臓リハビリテーションにおける院内連携
   a. 心臓リハビリテーションへの参加の促進
   b. 外来での心臓リハビリテーションへの移行や外来からの新規導入
   c. 安全かつ有効な心臓リハビリテーションの実施に向けて
  2. 地域連携における心臓リハビリテーション
   a. 循環器領域の地域連携医療と急性心筋梗塞の地域連携クリニカルパス導入
   b. 心筋梗塞の慢性期心臓リハビリテーション実施と地域連携パスの現状
   c. 地域リハビリテーションと慢性心不全
   d. 慢性心不全の地域連携パスにおける心臓リハビリテーション
   e. 地域の実情または地域医療連携のモデル事業による心臓リハビリテーションの展開
 B 病院外環境における心臓リハビリテーション
  1. 地域運動施設における心臓リハビリテーション:フィットネスクラブ,42条施設,自治体施設など
   a. スポーツ・運動施設を利用した心臓リハビリテーションの現状
   b. 施設事例紹介
   c. 生涯スポーツとしての維持期心臓リハビリテーション
  2. 通所サービスでの心臓リハビリテーション
   a. 通所サービスにおける心臓リハビリテーションの実情
   b. デイケアでの心臓リハビリテーションの展望
  3. 在宅医療と心臓リハビリテーション:訪問心臓リハビリテーション
   a. 訪問リハビリテーションにおける心臓リハビリテーションの実情
   b. 訪問心臓リハビリテーション
   c. 訪問心臓リハビリテーションの効果
  4. 遠隔医療と心臓リハビリテーション
   a. リアルワールドでの心臓リハビリテーションの実施率の低さ
   b. 世界各国における遠隔心臓リハビリテーション研究
   c. IoT を活用した在宅管理型心臓リハビリテーション

 心臓リハビリテーションは,その黎明期であった1960〜70年代には「急性心筋梗塞患者の早期離床をめざす段階的動作拡大プログラム」であったが,現在では「心血管疾患患者の運動耐容能(身体活動能力)・QOL・長期予後の改善をめざして,運動療法・疾病管理・患者教育・カウンセリングを含む多面的介入を多職種チームが協調して実施する包括的プログラム」として認識されている.
 わが国の循環器診療の最近約20年間の動向として,@急性期医療提供体制の整備や治療法の進歩により心血管疾患患者の急性期死亡率は大幅に低下したものの,退院後の再入院率は依然として高く,再入院防止が重要な課題となっていること,A糖尿病・慢性腎臓病などの慢性併存疾患保有患者が増加し,急性期医療に引き続いて退院後も継続する長期的な疾病管理の必要性が高まっていること,B高齢化に伴いサルコペニア・フレイル合併心血管疾患患者が増加し,身体活動能力向上をめざす運動療法・リハビリテーションの重要性が高まっていること,があげられる.したがって今後のわが国の循環器診療では,急性期以降の回復期・慢性期において,「再発/再入院予防をめざす包括的疾病管理」と「運動耐容能向上/要介護化防止をめざす運動リハビリテーション」を普及・充実させることが重要であり,その両方を実現できる「包括的心臓リハビリテーション」のニーズがいっそう高まると予想される.
 本書『包括的心臓リハビリテーション』は,心臓リハビリテーションの標準テキストとして1984年の初版刊行以来38年間にわたり好評を博した『狭心症・心筋梗塞のリハビリテーション』(南江堂)の後継書として,内容・タイトルとも全面的に刷新し刊行するものである.
 本書は,前書『狭心症・心筋梗塞のリハビリテーション』の特徴であった心疾患の病態や運動負荷に対する心血行動態反応を重視するスタンスを受け継ぎながら,対象として近年新たに加わったフレイル合併超高齢患者,重症心不全,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)後,不整脈デバイス装着後,肺高血圧症,集中治療室早期心臓リハビリテーションなどを追加し,介入内容として,運動療法だけでなく,栄養介入,精神心理サポート,疾病管理を充実させ,さらには心臓リハビリテーションの新規立ち上げ,各職種の役割,運営,地域連携なども記載し,現在のわが国において求められている多面的・包括的な心臓リハビリテーションの新しい教科書となるべき書籍をめざした.
 執筆の方針として,医師および医師以外の医療スタッフ(看護師・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・臨床検査技師・心理士など)の読者を想定し,心臓リハビリテーションの現場で役に立つ実際的・具体的な事項について,表や図を多用してビジュアルに理解しやすい記述を心がけつつ,その一方で内容としては最新のエビデンスやガイドラインに基づいた高い学術レベルを維持することをめざした.
 本書が,世界に類を見ない超高齢社会を迎えたわが国において,心血管疾患患者が退院後も長期にわたり活動的で快適な生活を送ることができる社会の実現に向けて,新しい心臓リハビリテーションの普及と発展の一助となれば幸いである.
 最後に,本書の執筆をご担当いただいた先生方に感謝しますとともに,刊行に際してご尽力いただいた南江堂の担当者の皆様に深謝申し上げます.

2022年5月
後藤葉一

心臓リハビリテーション室にとって“一家に一冊”ともいえる新時代の教科書

 本書は,心臓リハビリテーションの標準テキストとして1984年に刊行された『狭心症・心筋梗塞のリハビリテーション』(南江堂)の後継書として,タイトル・内容ともに全面的な刷新を行った書籍である.
 心臓リハビリテーションは,身体デコンディショニングをきたしていることが明らかとなった急性心筋梗塞患者に対する早期離床の試みに端を発する.1960〜1970年頃には早期離床をしても予後が変わらないことが明らかとなり,段階的に身体強度が増やされていった.その結果,1980年代になると急性心筋梗塞患者の入院期間は10日間にまで短縮され,外来型に移行していった.その後「包括的心臓リハビリテーション」という概念が生まれ,さらに心不全の心臓リハビリテーションへと拡大していった.このような心臓リハビリテーションの歴史が第1章に明快にまとめられており,心臓リハビリテーションが心不全を対象とするようになった必然性をよく理解できる.
 心不全の心臓リハビリテーションには,心臓病に関するさまざまな知識が必要である.そのため,いままでの教科書のなかには心臓病に関する記述に多くの紙面を割いているものもあるが,本書では全体の1/6程度の分量でコンパクトに整理されており,非常にバランスがよい.リハビリテーションに関する内容は,運動負荷試験と運動療法の概説に始まり,急性心筋梗塞などの主要な心血管疾患,そしてフレイル合併超高齢患者のような特別な患者群(これはいまや特別ではなく主要な患者群のような気がするが)での実際の心臓リハビリテーションや運動療法が詳述されている.私の専門である重症心不全においても,強心薬の静脈内投与患者,補助人工心臓装着中あるいは心臓移植後の患者に対する心臓リハビリテーションについて,フロントランナーである国立循環器病研究センターでの実際のプロトコールや確認事項,中止基準が具体的に記載されており,大変参考になった.本書全体を通して,内容はエビデンスなど学術的記載が多いにもかかわらず,表や図を多用することでビジュアルで理解しやすいつくりになっているのも,読みやすさの理由であろう.本書は,これから心臓リハビリテーションを勉強しようと考えているスタッフがゆっくり通読するのにも,またすでに日常医療で専門的に心臓リハビリテーションを行っているスタッフが知識の確認のために辞書的に使うのにも耐えうる.まさに,心臓リハビリテーション室にとって“一家に一冊”ともいえる書籍である.
 では,心臓リハビリテーションの課題は何であろうか.それは,第1章と最終章である第11章の最後に記載されている.2016年のAMED—CHF研究の報告では,本邦において,本来は入院から外来リハビリテーションへ移行し,継続して治療しなければならない患者の約7%しか治療できていないとされている.本書に記載されている素晴らしい医療が届いているのは,たったそれだけの患者のみということである.すべての循環器医療スタッフはこの理由がどこにあるのか,何を変えていかなければいけないのかといったことについて,真剣に考える必要がある.そして,その答えもこの本のなかにあるはずである.

臨床雑誌内科131巻4号(2023年4月号)より転載
評者●大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授 坂田泰史

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